さいくろーん



<オープニング>


●たつまき
「つー訳でお仕事っす」
 ピーカン霊査士・フィオナ(a90255)は、今日も雑な感じで席についた冒険者に切り出した。
「いきなりだなぁ……」
「アタシに会いにきただけ何スか?」
「いや、違うけど」
 冒険者即答、フィオナ暴れる。
 閑話休題。
「えーと、今回の仕事はモンスター退治っす。
 相手は台風の目」
「何だそら」
 相変わらずフィオナの説明はアレである。
 きっと、コイツは一回以上相手に発言を聞き返されるのが趣味に違いない勢いである。
「手足の生えた目玉っぽいモンスターなんですが。周囲に風と水分を纏ってるです」
「……シュールだな」
「飛び跳ねて、スキップしますよ。
 そんでもって風雨で家屋に大被害っす」
 おふこーす、とフィオナは拳を握る。
 変なテンションだが、突っ込むだけ無駄な労力だろうか。
「ナリはお笑いっすけど、一応気をつけやがるですよ」
「ああ」
「何か結構モノスゲー風圧みてーですから」
 当然、それ相応の注意は必要だろう。

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参加者
アルカナの・ラピス(a00025)
沈戈待旦・ハル(a28611)
ヒトの武人・ロゼ(a28747)
悪鬼羅刹・テンユウ(a32534)
漆黒の雷閃・クオン(a35717)
まじかるすないぱー・ユキナ(a36082)
ユリシア・メルローズ(a38473)
旋律の白・ショウ(a41422)
弓使い・ユリア(a41874)
漂う耀きの記憶・ロレンツァ(a48556)


<リプレイ>

●ピーカン後……
「……暑いでござる」
 台風対策、頭巾にマントの歌う山伏・ハル(a28611)は、呟いて流れ落ちる汗を拭っていた。
 空で眼窩の全てを睨みつける熱の塊は赤く。雲一つ無い青空は抜けるように澄んでいる。
 その日は、嫌気が差す程、いい天気だった――陽炎が立つような気温だから、せめて空の太陽に雲がかかればいいのにと誰もが思うような、そんな風な。
「時期とはいえ妙なモンスターが現れたものだな」
 漆黒の雷閃・クオン(a35717)が小さく嘆息する。
「……いや、まぁ、確かに」
 だが、アレは一体どうなのか。
「奇怪と言うか面妖と言うか……元はどんな人物だったのか気にならんか?」
 少し呆れたように呟いたヒトの武人・ロゼ(a28747)の視線の先には、すっげぇ限定的な荒天が存在していた。馬鹿馬鹿しい程のピーカンの光景に、一部だけ切り貼りしたような台風がある。
「すげー! 僕、台風って初めて見たー!! 友達に自慢できるよ〜!」
 いや、待て弓使い・ユリア(a41874)。
「うわ〜気持ち悪〜」
 その中心で楽しそうにスキップする目玉男(?)は、「台風の目」とでも洒落ているつもりなのか。烈風を従えて、スキップしている。気が抜けるけど。
「また風変わりな相手だな……生前はどんな奴だったのだろうな?」
「……プチ台風か。一人位、友人に居れば楽しそうだが」
 と、旋律の白・ショウ(a41422)に、漂う耀きの記憶・ロレンツァ(a48556)。
 ……そうか?
「目玉おやじって瞬きするのでござるかな」
「さあな」
 ハルの言葉は、ふと口を突いた結構どうでもいい疑問。
 平穏な日常のオーパーツに小さな苦笑いを浮かべ、悪鬼羅刹・テンユウ(a32534)は答えた。
「……ま、どんなナリでも仕事には変わるまい」
 彼我の距離は僅か百メートルばかりだろうか。
 踊る台風は、待ち受ける冒険者達の姿を認めているのかいないのか。
 内心(?)の読み難いその姿から察する事は難しいのだが……
「早急に、参りませぬと」
 ヴルルガーン・メルローズ(a38473)の言う一事が全てである。
 何処ぞの村が暴風雨に直撃されるのは忍びない。
 収穫の秋を迎える前に、田畑に被害を受けてしまえば彼等は立ち行かなくなるだろう。
「今回も一緒か……宜しく頼む」
 ショウの言葉に頷いた彼女は、真っ直ぐ前を見据えていた。
「風圧が大きすぎる……修正が必要だ」
 何か口調が違う気もするが、その辺きっと仕様である。

●決死&レポーター
「なんか矢が普通に通ってくれなさそうな嫌な敵ですね」
 射程まではもう少し。
 直感的に状況を察した五番テーブルに指名入りました・ユキナ(a36082)は、その得物より一撃を放つまでも無く敵の性質を看破していた。
 周囲には耳障りな轟音。
「端っこ」に差し掛かったばかりだと言うのに、台風は物凄い。
 烈風と飛び散る雨がかき鳴らす戦場の音楽は、重い雰囲気を作り出していた。
「此方、現場のラピスなのじゃー!」
 風雨に晒された常時寝落ちしてる・ラピス(a00025)の必死の声が響き渡る。
「妾は今〜台風の接近するカナク方面に来ていますのじゃー!
『さいくろーん』はどこかの平原を北北西の方向に毎時人歩く速度で侵攻中なのじゃ〜♪」
 必死な――いや、何処か楽しそうな彼女の言葉はある意味童心を示すものか。
 今回の相手がどうかはさて置いて、幼い頃に台風の訪れにドキドキした人間は居るだろう。
「台風といえば現地リポーターじゃな」
 合羽を着込み、傘を差し。猛烈な風に煽られる彼女は、何とはなしにそう言った。
 まぁ、そろそろ戦闘は始まるだろうから、そんな風にばかりはしていられないのではあるが――
「赤龍氣志團、参る」
 風雨裂く、鮮烈な一言は白い騎士より。
 そこはかとなくマウサツ気分風味っぽい白刃を構えたショウは、気炎を上げて地を蹴っていた。

●直撃!
「目玉大きければ、正確に狙いを付けなくても当たりそうですけどねー」
 狙いを外したユキナが、「甘くは無いか」と溜息を吐き、
「こちらメルローズ。ターゲット確認。排除開始」
 黒炎を纏ったメルローズが、何処かクールに敵を睨む。
「やはり体が重いな……動かないことはないが」
 本来ならば、「春風のような優しさだな」と嘯いただろうか?
 戦いに臨むテンユウは、不調の身体に小さな舌打ちをしてその身を翻していた。
 戦闘が始まって既に一分以上が経つ。予め作戦で定めた通り、彼とラピスは鎧聖の付与をパーティに与えていた。性質柄、接近や命中の難しそうな相手である。
 今回に限り弓手が多い事も、このテンユウが不覚の傷を負ったままというのも重大な一因である。
 彼等は、慎重性をもってこの戦いに臨んだのではあるが……
「わふっ――! これは、これで……しんどいのぅ……」
 前衛で盾を構えるラピスは、既に風に取られそうなマント等を外してここに挑んでいたが。叩きつけるような風圧は、彼女の身体を起こそうと威力をぶつけて来るばかりなのである。
 ジリジリと接近しながらも、油断は出来ない。姿勢を乱せば、吹き飛ばされかねないのは明白だ。
「厄介な……」
 弓の射程の分烈風の渦からは遠いクオンの放った一撃は、寸前で目標を逸れ捉え切るには到らない。
 貫き通す力を秘めた一矢が逸れたという事は、その風の力場も特殊な力を秘めているのだろう。種別柄、弓での攻撃は中々難しい事はすぐに分かっていた。
「しかし、そう幾度もは……」
 尤も、クオンの言う通りでもある。
 今までの攻防から、その防御能力がそう完全では無い事は既に分かっていたのだが。
「アーッ、アーッ、南無サンダー!」
 やや姿勢を落とし、ロッドをぬかるんだ地面につきながらハルは前へ進む。
 頬を容赦なく叩く雨と刺さるかのような風の中で目を開けている事は難しいが、彼はそれでも進んでいた。
 やや大仰に怒鳴るようにやけくそな凱歌になったのは、ノイジーなそれを振り払う為である。
(「た、楽しそうなのが何故か許せんでござる……」)
 つぶらな瞳の変生物は、荒れ狂う台風の中楽しそうに跳ねている。
 それが纏うのは、洒落では済まないと言うか――一般人や、一般家屋なら既に取り返しのつかない事になっていてもおかしくはない暴虐なのだが。フォルムだけは愉快だから性質が悪い。
「この程度で、止まる訳には――行かぬ……!」
 烈風の強さとて、一定ではない。
 瞬時緩んだ圧力を感じ取ったロゼは、乱れる呼吸を整え、強引に間合いを駆けていく。
 失敗する訳にはいかないという強い想いは、初仕事の気負いか。しかし、その一念はこの場合、良いように作用したと言えるだろう。
「は――!」
 裂帛の気合を込めた彼女は、遂に到達した「台風の目」に向けて威力を増した得物を抜き放つ。
 神速の居合い抜きには、刹那の無為すら要らぬ。
 一瞬後、攻撃にバランスを崩した彼女は後退を余儀なくはされたが……
 一撃は、見事に巨大な目玉を傷付けていた。

 ごおおおおおお……!

 風雨が唸る。
 コミカルな姿に獰猛性を見せたさいくろんは、攻撃にいきり立つ。
 叩き付けるばかりだった烈風が鋭く収束し、刃を形作る。不可視の斬風は、
「――――!」
 誰が声を上げるよりも早く、間合いの中、全員の横を斬り抜けていた。

●大型の台風
「――っ! 気をつけて下さい!」
 暴風の中を、ユリアの警告が走る。
 逆棘の矢を目玉に突き刺し、有効打を与えた彼女は、動作から反撃が来る事を察したのだ。
「は――!」
 風が踊る。
 敵を溶かし、穿つ雨が横殴りの志向性を持ってショウ、メルローズを狙う。
「貴様ごときにくれてやるほど……俺の命、安くはない!」
「同感ですわ――」
 だが二人は、連携良く散り、その一撃を紙一重で避ける。
「――この先、生き残る為には、当たる訳には」
 横滑りに姿勢を崩したメルローズは、視線を上げる。
 何ら澱みない戦闘動作の中で、彼女は即座に態勢を立て直していた。
 冒険者の順応性は、一般人のそれとは土台異なる価値がある。
 能力以上に「極めて戦闘し難い相手」であると言えるさいくろんと相対しながらも、彼等は徐々に戦い方というモノを理解し始めていたのだ。
「気持ちだけライトニングアロー! こいつを踏み台にしてもっとキャパシティ多くなってやるんです!」
 ユキナの貫き通す矢も、当初のように逸れる事は無い。
 直撃はならないまでも、確かな効力を発揮したこの一撃にメルローズは黒炎を重ねていた。
「行くぞ!」
 連撃は、ショウへの道を作る。
 威力ある一撃を、真下に振り下ろした彼は、一撃と共に横に飛ぶ。
 その後方には、更なる構えを取るロレンツァが居た。
「しかし、お前も……降雨量の少ない地域に行けば、重宝されるだろうに……」
 心なしの憐憫(?)を秘めた一言と共に、彼のギターは音色を奏でた。
 決して騒音では無い弦の音は、しかし騒音そのものと言える暴風の渦にも負けず空気を切り裂いた。
 生み出された針の雨は、次々とさいくろんの足元へ突き刺さり、その動きを阻む。
「今の内だ」
 中衛の位置で、戦線を支えた彼やメルローズが攻勢に出た事は当然、好機を示している。
「いかに風と言えどもそれに敵意があるのなら……この辺かな?」
 その研磨は、些かの傷で揺らぐ所ではない。
 漸く、とばかりに風を捉え捻じ曲げたテンユウは、薄く笑い、
「悪いが雷撃はこちらの方が専売特許だ。滅びろ!」
 鮮烈に叫んだクオンは、雷光をその手に紡ぎ出した。
「今回エンジェルは意識を失うわけにはいかぬでござるなあ。吹き飛ばされるからなぁ」
 更には――(ちょっと見てみたくはあるが)断固足る決意を言葉に載せたハルが華麗なる音撃を放つ。
 パーティが次々と繰り出した一連の攻撃は、さいくろんを一気に追い詰めていた。
 気が付けば、間合いを吹き荒れる烈風すらその威力を減じている。
 されど――されどである。
 追い詰められながらも、それはまだ最後の余力を残していた。
「……来るよっ!」
 ロレンツァの声が、戦場に響く。
 巨大で歪な瞳に、バチバチと爆ぜる雷光を溜めたさいくろんは、迫るラピスを視ていた。
 その眼は、確実に目標を捉えんと大きく開き、一瞬後には溜めた力を光線とし撃ち出した。
「台風は、何れその力を減じるものじゃ――」
 威力ある光線は、身を沈めたラピスの髪の毛を一房、灰に変える。
 だが、それまで。
 等しく、溜めた力を解放し、護天と共に一気に目標へ肉薄した彼女は、
「さっさと熱帯低気圧に変わるがよいっ!」
 いい感じに素敵な決め台詞と共に、さいくろんの両断を果たしていた。

●号数
「さいくろんのつぶらな瞳を拙者等は忘れぬでござるっ」
 ハルは、特徴的過ぎるソレを脳裏に描き大きく頷いていた。
 戦い終えて、空は再びピーカン全開。
 戦場跡は「局地的過ぎる台風」の所為でぐちゃぐちゃではあったが……「何故そうなったか」を示す名残は、最早何処にもありはしない。
「埃やら酸やらで、かなり汚れた……くたびれたな。水浴びでもしたいとこだ」
 ロゼはふぅと息を吐く。
 そうでなくても、こんな所に長居をすれば汗だくになってしまうだろう。
 あくまで限定的に暑いか涼しいかだけで言えば、先刻までの風雨すら、心地良さには懐かしい位。尤も、あんなモノを直撃されて心地いいも何も無いモノではあるのだが。
「それにしても……台風がスキップか……歌があったな……
 雨が降るのを願い、それがとても楽しくなるような。あいつも、そんな気分だったんだろうか?」
「まぁ、どっちみち迷惑なんだが」濡れた袖を絞りながら、ロレンツァは呟く。
「台風ですから、二号三号と出てこなきゃいいんですがね」
 ユキナの言葉に、一同は一瞬想像して絶句する。
 即ち、さいくろんがラインダンスを踊っている光景を。まぁ、何だ、ロクデモネェ。
 最後の最後に一抹の不安を残しつつも、風物詩との戦いは終わった。

 ――へへ、僕台風の目を見たんですよ!

 後日、嬉々として友人に其れを報告したユリアが、笑われ倒したのは全く微笑ましい余談である。


マスター:YAMIDEITEI 紹介ページ
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