あやしもの市に行こう



<オープニング>


 世の中には、不思議なものが多種存在している。
 禁忌の場所、誰も見た事のない宝。
 そういった噂にはデマが多いのが実情である。
 そして。
 そんなデマにデマを重ねた怪しいにも程がある、ゴミ一歩手前のガラクタが集まる市があるという。
 ひょっとしたら本物があるかもしれない。
 そんな淡い期待を寄せては打ち砕かれる場所。
「そんな楽しげな場所があるのですけれど……行ってみませんか?」
 いつもの表情でそう語る夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)の口調は、何処と無く楽しげであったという。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

●あやしもの市で
 みーん、みーん。夏の暑さは毎年の事なれど、今日は特に暑い日であった。
「暑いのに、元気だな……」
 ヒトの重騎士・ヴィクター(a53842)は、目の前の市を見て溜息をつく。
 こんなに暑いというのに、市からは恐ろしいまでの熱気が漂ってくる。
「ミッドナーって、こういうトコ好きなの?」
「人の多い所は苦手ですが……嫌いではないです」
 神速の鼓動・セリア(a16819)の言葉に、そんな言葉を返すミッドナー。
 そんな会話をかき消すかのように大きな店主達の客寄せの叫び声と、駆け引きの言葉。ある種の別空間であった。
「何つーか、いっつもスーツだと暑そうだから夏着でも捜してみたらどうだ?」
「……夏着、ですか」
 悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)の言葉にいつも通りスーツに手袋と完全装備な夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)は、ふと考え込む。
「……考えてみます」
 夏着を着た自分の姿が想像できなかったらしく、そんな事を言う。
 何より、この市でまともな夏着が見つかるかどうか。

「どれもこれも見るからに胡散臭いものばかりだが、掘り出し物ってのは、案外こういう所にあるものだよね」
「そんな事ないぜ、兄ちゃん! うちの商品を見ていってくれよ!」
 ストライダーの紋章術士・セイ(a53711)を呼び止めたのは、何やらたくさんの本を売っている店。
 如何にも何かの歴史を積み重ねていそうな本が、所狭しと積んである其処では、真夜中の道化師・ロウ(a52146)が店主と駆け引きをしている。
「おかしいな…俺が聞いた所によると、その本は偉大な紋章術士が自らの業を書き残した秘密の書の内、究極の三日坊主をやめる為に創った魔道書で実はそれが一番難しい業だったという伝説が……」
 店主のデマに更なるデマを付け加える紅炎の紋商術士・クィンクラウド(a04748)の姿も見える。
「どうだい、凄いだろ。これこそ、かのオペラグ・ラス氏が所有していた遠眼鏡にソックリな筒だぜ!」
「……筒なのかよ」
 追い求める射手・エスター(a53462)と店主が駆け引きをしている場所より更に先では、武器を扱う店が立ち並ぶ。
「これが当店お勧めの一品! かの有名なバイオスのレプリカだぜ!」
「……バイオス……? 聞いたことが全く無いぞ?」
「しょうがねえなあ。いいかい? バイオスってのはな、真価を発揮すれば空高く飛翔する鳥をも撃ち落す事が出来るかもすれないという……」
 真価を発揮してその程度というのはどうだろう。しかもレプリカである。ともかく、そんな市なのではあるが。
 そんな事を考えながら歩いていた放浪看護婦・ティアノフェン(a52827)が視線を向けると、黒曜鱗・ユゼン(a52745)がミッドナーと何やら話し込んでいるのが見えた。
 一個くらい、一個くらいは本物が。そんな淡い期待を込めて歩く。そう思ったら負けなのではあるが。
「煙管をお探しかい。それならコイツはどうだい? かつて身の丈3メートルを越す大男が使ったという……」
「土管だろ、それは」
 紫煙の医術士・ヴィヴィス(a52494)が店の主人の出した商品を軽く一蹴する。
「よーし、これならどうだ! クッキー用として作られながら、不幸にもケーキ用として使われたという伝説を持つ金型だ!」
「買ったっス!」
 のほほん猫な天使・モンブラン(a52322)と店の主人の交わす固い握手。
「食い物? それなら確かあっちに……」
「ありがとうなぁ〜ん!」
 イカサマ銀狐・ソイチ(a52268)と野性至上主義・ジャム(a52197)のような情報交換をする者もいる。
 かと思えば、ダウジングで探す看板娘の妖精さん・フェリス(a01728)のような者もいる。
 そうでもなければ、とても目的のものは探せそうにも無かった。
「安売り……向こうで「俺のポエム」とかいうのが凄い安値で売ってたみたいですけど」
「えーと……そういうのではなくて」
 琴瑟・ビョウ(a51797)は、ミッドナーに相談した事を早くも後悔する。どうも、ぬいぐるみとかいうモノは端から頭にないらしい。
「そういえば、ぬいぐるみが」
「あら、ミッドナー様。何かお探しですか?」
 ビョウの目的の情報がミッドナーから引き出される直前、無銘鶺鴒・ミルファリア(a51392)が現れる。
「いやあ、結構賑やかなところだなあ」
 続けて碧刃の姐さんの子分・アレクス(a51769)まで現れ、ビョウは諦める。自分がぬいぐるみを探しているという事は、何となく知られたくないのだ。
「いえ、そういうわけでもないのですが……」
 ミッドナーが視線を向けている方向に目をやると、何だか歓声が上がっている。
「ねんがんのアイスソードをてにいれたぞ!」
 蒐集狂・ティニィ(a51378)が何やら怪しげな剣を高く掲げている周りで、譲ってくれとか奪い取るとかいう歓声だか罵声だか分からない声が上がる。
「……あそこの店主の人、アイスさんって言うんだそうですよ」
 アイスの剣。アイスソード。嘘はついてないが、ティニィの探している剣とは明らかに違うであろう。
「……教えてあげればよかったのでは……」
 守るための破竜・サルテス(a51121)の言葉に、ミッドナーは真顔で言い返す。
「それじゃあ、面白くないじゃないですか」
 そんな一同に近寄ってきた月夜の姫御子・アキナ(a50602)が、ミッドナーに声をかける。
「良ければ……だけど一緒にお買い物したいな」
「ええ、いいですよ」
 あっさりと頷いて去っていく2人を眺め、セイレーンの旅人・エーリーズ(a50433)はふと呟く。
「まともなモノ……薦めると思うか?」
「どうでしょうね」
 何やら大きな鎖を持って、スミレアフロ大佐・シュゼット(a50578)が現れる。
「何ですか? それ」
 答えは、眼鏡のチェーンであったらしい。

●あやしいものばかり
「どれも素敵なものばかりですね……」
「どれどれ?」
 いつの間にやら現れたミッドナーに、杏仁豆腐・ラウロ(a50184)が驚いたような様子を見せる。
「以前からミッドナーさんの素敵センスに惹かれていて、私もいつかミッドナーさんみたいなセンスを持ちたいと……」
 とりあえず握手を求めた後、わたわたしながらアイテムを選んで貰いたいと告げる。
「まあ、構いませんけど」
 そういって何やら怪しい人形を選別し始めるミッドナーの横をヒトの武人・アーウィン(a50101)と紅色の剣術士・アムール(a47706)が通り過ぎていく。
「ミッドナーさん、どれがいいと思いますかなぁ〜ん?」
「それです」
 隣で3つ並べたアイテムを前に悩んでいたのんびり冒険者・クル(a49708)の言葉に、ミッドナーは即座に判定を下す。
 何処がいいのかは分からないが、そんなものらしい。
「ソレ、面白そうですね。見せてもらってもいいですか?」
「いいなぁ〜んよ♪」
 ヒトの紋章術士・アルフォンス(a49542)を加え、何事かと寄ってきた光へ導きし者・リスティー(a49437)を合わせた大所帯となった露店には、何事かと人が集まり始めていたとか。
「お、ミッドナーの嬢ちゃんも一緒にやらんかいな?」
 そこに現れた飲み屋のおっちゃん・ベア(a49416)が、酒の瓶を持って呼びかける。
「ええ、勿論です」
 人の群れをすり抜けていくように来るミッドナーの近くの店では、真剣な顔で一握の良識・シェルディン(a49340)がポールアームを選んでいる。

「すっげえ……これが伝説の剣なのかい?」
「おう、そうだとも! かの「折れた聖剣伝説」にも登場した……」
「でもこれってさ、どう見ても斧の欠片だよな」
 店の親父を一言で黙らせた秘宝探索者・クラム(a45697)の後ろを、ミッドナーが流離せし驟雨・アマレット(a48275)に手を引かれるようにして通り過ぎていく。
「ふっふのふー、コレでまたビーフシチューを作って頂こうかとっ」
 瞑捜するオカリナ奏者・ユナン(a37636)が買った調理器具を見て、水華釣師・フェルディア(a46259)がクスクスと笑う。
 そんな光景を見ながら戦女神の寵愛を受けし店長・オレサマ(a45352)は、何となく苦笑する。
 そのすぐ近くの場所でも、闇より深い咎の断罪人・ラオ(a45058)と月夜に咲き誇る紅き焔華・アテラ(a45064)が互いに指輪を交換していたからだ。
 それぞれの関係も至った経緯も違うのであろうが。それを取っ払えば、何とも甘酸っぱい光景であった。

「……う〜ん、かわいい狸さんにしか見えないなぁんけど、世の中って不思議なぁ〜んね……」
「そうそう、世の中ってのはな。不思議な事が一杯あるんだぜ」
 店の親父の口車に乗せられている蒼天の重騎士・ルーディア(a44215)の隣では、武具王・ゼラン(a44038)と話していたミッドナーが、仁風月華・ルナ(a43935)に連れられて何処かへと去っていく。
 しばらくして鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)が真剣な顔で霊枝を選んでいる近くにいた深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)は、ミッドナーと共に歩いている光牙咆震閃烈の双刃・プラチナ(a41265)の姿を見つけた。
「やぁ、ミッドナー君。久し振り。君に選んでもらったこのスーツ、依頼だろうと闘技大会だろうと着ているよ。ガラクタばかりと言われるこの場所で、真実は唯一つ! それは僕から君への『愛』だ!!」
 格好よくポーズを決める真の愛狩人・ミシェイル(a42000)に歓声が上がる。
「運命の出会いとやらを信じるかい? ミッドナー……ふふ。望むものを引き当てる力なきものが崩れ落ちる様が目に浮かぶね。だが私は違う!今日、ここで、覇者となる! というわけで服が透けて見える眼鏡とかナイカナ♪」
 続けて放たれた彩雲追月・ユーセシル(a38825)の言葉にも、別方向から歓声が上がる。
「あの男……すげえぜ!」
「ああ、あそこまでスッパリ言えるなんて」
 しかし、そのミッドナーは、というと。
「あ、こんにちはミッドナーさん」
「ええ、こんにちは」
 生命の監視者・ラシェット(a40939)と挨拶を交わした後、白龍・メルザー(a39230)と共に何処かへと去っていく。
「まあ、あれはさておき……随分な人出だな」
 見物を終えた櫻を愛する栗鼠・ガルスタ(a32308)を影から見つめる人影が1つ。
「……何故、居る」
 父であるガルスタにプレゼントを買いに来た魔騎士を照らす黒き月光・ルナ(a40003)が、焦ったような表情で店主に早く見繕うよう急かす。
「美肌効果? いらん」
 ルナの後ろを、呼び込みに目もくれない漆黒の剣・シグルド(a22520)と干戚羽旄ノ黒蝶・リー(a41243)が歩いていく。
 途中でアイギスの赤壁・バルモルト(a00290)がちゃっかりと混ざって店を出しているのが見えるが、やはり気にしない。
「いや、ほんとに冗談だよ。本気で探すつもりなら大声で言わないし、こそこそ行くから」
「そうですか」
 更にそれとすれ違うようにミッドナーとユーセシルが早歩きで現れ。
「フゥハハハ、どうよこれ!」
「そんなのつけて、斧振れるんですか?」
「ぬはぁー!」
 命知らずの燈火・ジャムル(a38662)が自信満々に見せ付けたトゲトゲなメリケンサックを批評して去っていく。
「ふわふわが付いていたりして難だか妙に可愛いのう……」
 ねこじゃらしのような鞭を試している桜花の許の眠り猫・フルル(a37802)の横で、路傍の花・セリンデ(a15599)が怪しげな向上で鉄屑を売りつけられている。
「おう、そうかい。それならコイツはどうだい!? これはかの伝説の……」
 やはり、怪しげな口上で何やらアクセサリーを売りつけられている夢語りの蛍・ユウノ(a10047)の姿も見える。
「ええ!? マジでレグルズの剣が……うおっ、しかも安い!」
「いやあ、お兄さん。お目が高いねえ!」
 安いという時点で疑うべきだが、さっぱり疑っていない盆暗剣士・ユーサー(a37603)の先には、大樹の寵愛を授かる者・モニカ(a37774)と話し込んでいるミッドナーの姿。
 何やら「素敵な伝説」がないか聞いているようであるが、近くの露店の主人達が耳をでっかくして聞いているのには気づかないようであった。
「つまりだね、かの聖アドヴァーシュ侯がかつて傭兵だった頃の……」
 露店の主人の話を話半分で聞いている宵藍の夜空の星華・アルタイル(a37072)の視線の向こうに、日向ぼっこ兄さん・ナハル(a36935)とミッドナーを乗せたフワリンが漂っていく。
「お姉さん、聞いてるかい?」
「あ、うん。聞いてるってば」
 やはり話半分に聞いていると、後ろから終焉の白・エスティア(a33574)の声が聞こえてくる。
「ふむふむ、モンスターになった恋人を射ち落としたと……」
 一体どんなデマ話が展開されているのやら。
「ほら、出来たぜお嬢ちゃん!」
「わあ、素敵ですねえ」
 月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)が美しい羽ペンを受け取っている。
 なるほど、本物はなくても、元々手先が異常に器用な商人達のそろう場所である。そういう事も出来るのだろう。
「こ、これが伝説の……」
 愛の詩・サガン(a18767)が振り向くと、何やら大きな狸……ではなく、弾丸着ぐるみ変身・ラクウンマル(a24209)が何やら妙な箱を抱えて感動に打ち震えている。
「ほう……『馬鹿には見えない服』か、おもしろいな、試しに着てみてくれ」
「あー、いや。間違えました! こちらが「着ていれば馬鹿には見えない服」です。ほんとほんと!」
 蒼明水鏡・ミナト(a17811)が店主を虐めている姿も見えるが、そんなものを売りつけようとする店主も店主である。 
 かと思えば空夜の黒猫・シンハ(a07807)と極楽蜻蛉式武装少女・アムル(a06772)が、我先にゴテゴテと飾りのついた怪しげな装備品を見ている。
「むむ……これは」
 武侠・タダシ(a06685)が見つけたものは、自分にそっくりな人形。ただし、肌も露なレザースーツを身につけている人形だ。
 両手を高らかに上げたその姿は、非常に恥ずかしい。
 誰にも見られないように、こっそりと買って懐に入れる、が。
「どうも」
 振り返ると、ミッドナーが何事も無かったかのような顔で立っている。
 何処から見られていたか考えるが、とりあえず誤魔化すしかない。
「よう、ミッドナー。いつも美しいが今日のお前の美しさはいっそう際立っているな」
「……む」
 思わぬ台詞で反応に困っている間に、興味もない商品を手にとって何事もなかったかのように振舞う。
 そんな様子を見ていた黒の少女・ルノア(a42211)はミッドナーに近づき、何かを耳元で囁いて去っていく。
 答えこそ無かったが、ミッドナーはルノアの背中へ向けて、優しい視線を投げかける。
「おぉ! コレは500年前に聖騎士ボハレフスキーが竜退治に着て行ったという黄金の鎧! こっちは300年前の名将……」
 アムルの声が響き、デマ伝説を語る隙の無い店主が何処と無く寂しそうで。
 いつの間にか日も落ちて行き、あやしもの市の終わりの時間が近づく。
 冒険者達の顔は、満足した表情の者、打ち砕かれた表情の者と多種多様。
 楽しかったかもしれないし、不満だったかもしれない。
 でも、ひょっとしたら全部あわせて満足だったかもしれない。
 そんなモノが全て詰まった「あやしもの市」は、そういう自分の感情すら「あやしい」市であったのだろう。
 何となく、全員の頭にそんな考えが浮かんでいたのだ。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2006/08/06
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