西方国境警戒令〜敵という名の絆〜



<オープニング>


 レルヴァ大遠征の結果として陥落したソルレオン王国首都:ディグガード。
 多くのソルレオンの冒険者達がグリモアの加護を失いモンスターと化した今……ここに命の種は殆ど失われてしまった。
 そして今……このソルレオン王国との国境には、多数の冒険者達が足を運んでいる。
 強敵との戦いを求める為……モンスターの被害を防ぐ為……それぞれに、心の中に思う思いは様々であるが、結果としてそれが同盟諸国を護る為となっている。
 シナト・ジオ(a25821)を初めとした冒険者達も、上の何かを求める冒険者達。
 彼らは……今、ソルレオン王国との国境へと辿り着き、周囲の警戒を行っていた。

 荒廃と化した大地……数ヶ月前までは、ここに確かにソルレオン達が暮らしていたのだろうに、今となっては見る影も無い。
 かすかに……街道の沿線にある、崩れかけた家々が、人々の住んでいた事を悲しく物語るのみ。
「……本当に、ここに住んでいたなんて、信じられない、なぁ〜ん……」
 そう、ジオは小さく呟きながら、歩みを進める。
 国境地帯……いつ敵が現れてもおかしくはない状況なのに、戦乱の爪痕を見ると……どこか心が寂寥感に苛まれる。
 しかし今その事を悔やんでも遅い。すでに時は……戻る事は無いのだから。
 ジオが更に道を歩く……再び荒廃した土地が目の前に広がり、どこか遠くからは魑魅魍魎達の声が響き渡ってくるような……そんな気がしてくる。
(「でも……僕達は進まないと。ソルレオン達への償い……という訳じゃないけど……」)
 そう静かに考えていると……通り掛かった道端の木が、不意にかさかさと揺れるのに気づく。
「……?」
 警戒をそちらの方に向けると……突然その木から現れたのは、ニ体のモンスター達。
 獅子の頭に魚の体を持った者と、獅子の頭に蛇の体を持った者。
 ソルレオン達の……モンスター化した馴れの果ての姿。
 その不意の攻撃に対し、その場を素早く飛び跳ねて回避するジオ。
 その回避行動を、自分達への挑発と受け取ったのだろうか……二体のモンスター達は、グルルという呻き声を立てて睨み付け……再び攻撃を仕掛けてくる。
 魚、そして蛇……互いの隙を見計らいながら、冒険者達へ。
 そんな二体のモンスター達は、特に相手に協力しようとする気配もない、自分の手柄をたてんとばかりに、先へ、一人でも多く……と。
「……一切、話し合う余地はなさそうだなぁん、やるしかない、なぁ〜ん!」
 武器を抜く冒険者達。
 異質なるモンスター達との戦いが始まった。

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参加者
陰陽満欠・キヨミツ(a12640)
戦場の黒き魔鳥・リサ(a16945)
焔蛍火・ヴァル(a17028)
麗滝の薬師・カレン(a17645)
黒焔の執行者・レグルス(a20725)
シナト・ジオ(a25821)
蒼の誓剣・セレネ(a35779)
暴禍・ドライジーネ(a39640)


<リプレイ>

●二人を分かつ為
 冒険者達の目の前……不意の一撃を交わされた二体のモンスターは、木の上でとぐろを巻きながら、冒険者達の動きを警戒している。
 突然の不意打ち攻撃で、一撃で沈むと思ったのだろうか……その二体のモンスターの間には、どこか……はっきりと判る険悪なる気配。
 寸前の所で交わしたシナト・ジオ(a25821)は、そんな二体のモンスターを指さしながら仲間達に叫ぶ。
「あ、危なかったなぁ〜ん! こんなにいきなり襲いかかってくるなんて思わなかったなぁ〜ん!」
 そんなジオの言葉に対し、剣を構えながら……それら異形のモンスターに対して、戦場の黒き魔鳥・リサ(a16945)が呟く。
「んー……獅子の頭の蛇と魚……ね。……見た目だけ見ればお間抜けだね」
 しかし、その言葉に油断した雰囲気はない。
 確から傍目から見れば、彼ら二人のモンスターの姿は滑稽であるかもしれない。
 ただ……その異形の者達から感じられる気配は、明らかに自分達一人一人の能力を上回っている。
 一対一で戦えば、勝つことは難しいだろう……と。
「……武人さん、ですねぇ……やっぱりソルレオンさんは。それに互いの手柄を取ろうと探り合っているように見えますし……異形になっても、そんなに……自分の手柄を取りたい物なのでしょうか」
 先ほどのジオへの攻撃手段を見て、焔蛍火・ヴァル(a17028)は静かにそう判断する。
 そして……その言葉に僅かに小首を傾げた暴禍・ドライジーネ(a39640)は。
「まぁ……そんなの俺達の知った事じゃないしな。まぁ、人間……いや、ソルレオンの時から余程仲が悪かったのかね。敵を得て活き活きするなんて……皮肉な事だな」
 と吐き捨てる。そしてその隣にいた蒼の貴剣・セレネ(a35779)も、ため息のように告げながら。
「戦の早駆け、一番槍は武人の誉れとでもおっしゃるつもりでしょうかしら。ならば、こちらは八人揃った仲間の強さという物を、見せて差し上げましょうですの」
「そうですね、より力を付けて彼らの敵を倒すためにも……彼らの胸を借りるとしましょうか」
 陰陽満欠・キヨミツ(a12640)の言葉に、一斉に武器を抜き戦闘態勢を整える冒険者達。
 対しての二体のモンスターは……というと、静かに、そして器用に木から降り立つと、静かに……その牙を剥く。
「望むところなぁ〜んね、みんな、いっくなぁ〜んよっ!」
 ジオの元気な声に、麗滝の薬師・カレン(a17645)と黒焔の執行者・レグルス(a20725)を中心へと敷いた、扇の陣形を取る冒険者達。
 ……一人、静かにカレンは二体のモンスターを、哀れみを持った瞳で。
(「……ソルレオン王国との国境に来るのは三度目……あの頭は、実は被り物で……取ったら呪いが解けて、元の獅子に戻らないだろうか……なんて、そんな御伽噺な展開はあり得ないのだけれど……でも、やっぱり切ないですね……」)
 そう、静かに……加護を失い、墜ちる所まで墜ち果てた二体のモンスターに、同情の言葉を心に呟くのであった。

●絆と敵の狭間
『グゥゥ……』
 二体のモンスターのどう猛なるうめき声が、武器を抜いた冒険者達を威嚇する。
 そんな威嚇に阻まれる事無く、キヨミツとセレネ、ドライジーネの三人は、一斉に鎧聖降臨を掛け、その防御を引き上げる。
 臨戦態勢……そう判断した二体のモンスターは、次の瞬間……我先へと冒険者達への間合いを詰める。
「来ましたわ!」
 セレネの言葉に、一斉に前に出るのはキヨミツ、セレネ、ジオの三人。
「攻撃させないぜ……行くなら俺を倒してから行けっ!」
 ウェポンオーバーロードを発動させるキヨミツ。そして次の瞬間、初手を出してきた敵……魚の体躯を持つ物と対峙する。
 魚は……まずは激しい水流の刃をキヨミツら前衛に対して放った。
 しかし、その水流攻撃を切り裂き突撃を掛けるキヨミツ……そしてセレネとジオの二人が続く。
 前、左、右……三方向より一体の敵を囲むように動き、残るリサとドライジーネの二人も、僅かにその後方より支援と共に、もう一体……僅かに遅い動きの敵に気を配る。
「大丈夫、支援攻撃と回復は私に任せて下さい」
「判ったなぁ〜ん!、全力で行くなぁ〜ん!」
 セレネの行動から、ジオ、キヨミツ、ドライジーネへとその攻撃が次々と移っていく。
「付け焼き刃のコンビネーションでどうにかなるなと思うなよ、怪物野郎……!」
 ドライジーネの言うとおり、モンスター達は……コンビネーションとは言えない無差別な攻撃を仕掛けようとしていた。
 そう……決して仲間を助けようとはしない、自分の手柄を一番に考えたような、そんな動き。
 しかしそれぞれの動きの間はとても早く、その攻撃の手を決めることは中々叶わない。ただがむしゃらに……自分の手柄を取るために、彼らモンスター二体は動いている。
「……仲間の事なんてしらねえ……って事か。まぁ、その方が都合が良い……よし、動きを止めるぜ。麻痺したら宜しくな、嬢ちゃん」
 そうレグルスは告げると、もう一体……向かってきている蛇の者目がけて、暗黒縛鎖の発動体勢に入る。
 僅かに冷ややかな視線を配るカレンは、レグルスの言葉にたった一言。
「……どうでも良いですが、「嬢ちゃん」はよしてください。やるべき事は言われなくても心得てますから」
「そうか……ま、宜しく頼むぜ……それじゃいくぜ」
 レグルスはそう告げ瞳を閉じる。同じくカレンも瞳を閉じて。
「暗き闇の底に藻掻き蠢く物……我が声に答えよ」
「静謐な水よ、呪縛の鎖を断ち切りたまえ」
 レグルスの暗黒縛鎖と、カレンの静謐の祈りが同時に発動……更に続けてヴァルが蛇へと近付くと……キルドレッドブルーと共に、そのモンスターを組み敷いて。
「……あっちへ、いって下さいっ!」
 暗黒縛鎖によって動きが僅かに阻まれた蛇の者は、ヴァルのデンジャラススイングによって遠く離れた所へと吹っ飛ばされる。
「よっし……今の内に、一気に魚をたたみかけましょう!」
 ヴァルの言葉に、ジオが頷いて。
「わかったなぁ〜んっ、皆連携して、確実に叩くなぁ〜んよ!」
 ジオの言葉に呼応し、それぞれが自分の動きを始める。
 キヨミツは前線を抜かれないよう、きっちりと魚をマークし、ジオ、ドライジーネ、セレネの三人が左右と後方より次々と、アビリティにて防御の暇を与えずに攻撃を仕掛ける。
 声を掛け合いながら行うその攻撃は、自然と冒険者達の士気も高揚させ、いつも以上に軽やかな身のこなしをもって、敵の翻弄……追い詰める手段となった。
 更にその攻撃の手とは別に、リサがスキュラフレイムをその頭上から降り注がせると……攻撃する手段は彼には残されていなかった。
「弱いな……本当にそれがおまえの実力か? もっと本気を出してみろよ」
 敵の状況に、哀れみのような言葉をかけるドライジーネ。
 しかし……やはり付け焼き刃のコンビネーション、そしてその道もたたれてしまったこの状況では、魚の者が再起する事は不可能。
「……とどめだ、往生しろよっ!」
 キヨミツの電刃衝が……モンスターの体躯を二つに分かった。
「よし……後はあいつだけだね? 一気に追い詰めるんだ!」
 ヴァルの言葉に、カレンはヴァルにディバインチャージを放ち、そして……レグルスはスキュラフレイムの炎を放つ。
 デンジャラススイング、暗黒縛鎖……そして仲間がいなくなり、偽りのコンビネーションが失われた蛇の者。
「……灼熱の地の流れを我が手に 姿表せ」
 レグルスのスキュラフレイムの詠唱の言葉は、蛇の者の……永遠の眠りへの子守歌となったのである。

●夕陽の下
 そして……二体のモンスターは地に伏せる。
 どこか……諦めたような、それでいてすがすがしいような……微妙な雰囲気に包まれる。
 そんな二体のモンスターを見下ろすレグルス……その横で、周りの仲間達の傷の程度を確認するカレン。
「皆さん、怪我はありませんか?」
 カレンのそんな言葉に、ジオはすたっと立って、にかっと微笑みながら。
「僕は大丈夫なぁ〜ん、みんなも大丈夫みたいなぁ〜んね? 本当にみんなお疲れ様なぁ〜ん!」
 そんなジオの元気な立ち振る舞いに、多少……疲れは癒されたような気がする。
 それはさておき、レグルスは既に動かない骸となったモンスターを見下ろしながら……静かに、仲間達に告げる。
「……元はこいつらも、俺たちと同じ冒険者だった奴らかもしれねえんだよな……」
「……そうですわね。もっとも……それを確かめる手段は無いのですけれど」
 セレネが魚の体を持ったモンスターを見おろす。武器、防具……既にモンスターと化した彼に、その痕跡を残す物はない……ただ一つ言える事は、彼も一人の、無名の冒険者であった……という事。
「……なぁ、こいつらの為にも、時間が許すんなら、墓でも作ってやらないか?」
 そんなレグルスの提案に、キヨミツが強く頷く。
「そうですね……元はと言えば、遠因は私達冒険者の不手際にあるのでしょうから……せめてもの、弔いを挙げるのは当然ですよね……」
「そうだね……最後位、冒険者らしく弔ってあげるのが、彼らにとっては幸せかもしれないね」
 キヨミツ、レグルス、リサ……三人の言葉に頷く冒険者達。
 柔らかいその地に深い穴を掘り、そして……二人のモンスターの体を別々に埋める。
 その体へと土を掛けながら……リサは静かに。
「……ごめんね。でも、許して欲しいとは思っていないよ……今は、もうお休み……」
 そしてジオとセレネも、蛇の体のモンスターを埋めながら。
「争っていた二体なぁ〜んけど、でも前はきっとそれだけだった訳じゃないなぁ〜んよね……一緒にこの地で、お休みなぁ〜ん……」
「列強種族の運命とはいえ……このような関係ではなく、共に同じグリモアを……希望のグリモアを奉じたかったですわね。二人とも……雄々しき戦死でしたの。そう……ここで安らかに、眠りなさいですわ……」
 それぞれの弔いの言葉を横に……静かに地平線を眺めるレグルス。
「……どっかのグリモアガード……ディグガードで何かやらかすらしいしな。……黒旗の連中が、ここら辺を彷徨っていねえと良いんだがな……」
「……そうですね。この国境には、後どれ位……今も尚彷徨う魔物達がいるのでしょう。そして後何度、僕たちは……獅子の成れの果てと戦わねばならないのでしょう。八月は……彼岸に旅立った人達が帰ってくるというのなら、どうか……あなたたちに、グリモアと森の恵みがあらん事を……」
 ……そして、冒険者達の弔いが全て終わると共に、ドライジーネは……去りゆくその地に言葉を紡ぐ。
「こいつらも、この間までは普通に「人間」やってたっつー事を考えると……苦い気分にならんわけでもないがね。国も、手前も……護りきれなかったのは手前の領分の内だろうよ。まぁ……責める訳でも無ぇがな。それに、どっちみちこうなっちまったんなら……俺らは俺に出来る事をやる以外はあるまいよ。だから手前らは、せめていい夢を見て……永遠に眠れや」
 ……グリモアを護る戦争。
 いつ終わるとも知れない……勝つか負けるか判らない……そんな戦争。
 その終焉は……まだ遙か先の未来の事なのかもしれない……。


マスター:幾夜緋琉 紹介ページ
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