地中に潜む怪異



<オープニング>


 とある村で採れた作物を町へと運ぶ荷車が街道を進んでいた。
 ノソリンが引く車にはたくさんの作物が積まれ、もう少しで町に到着しようとしたその時、突然異変が生じた。
 何と、今まで車を引っ張ってきたノソリンの地面がゆるくなり、いきなり土の中に引き込まれ始めたのだ。
 慌ててノソリンを引き戻そうとする農夫であったが、ノソリンと車を引きずりこむ力は思いの他強く、止め立てすることはできなかった。
 そして、ノソリンの体が土の中に飲まれようとした時、地中から大きな鋏が飛び出してノソリンの体を捕らえると荷車ごと地中に飲み込まれてしまったという。
 その街道では、近日同じような事件が多発しており、突然道を通っていると、地中が緩くなっている場所が存在して、歩いている人々やノソリンなどの動物を地中に引き込むのである。
 この事件に悩まされた人々は、事件を解決してもらうため、冒険者たちに解決をゆだねることにした。

「……事件に巻き込まれた方の物を拝見させていただいたところ、どうもあり地獄のような姿が見えました……。それも相当巨大な……」
 冒険者たちに事件の概要を語る黒衣の霊査士イスラフェルは、これが地中を自在に移動する化け物の仕業であると彼らに告げた。
「……この敵が出現するのは、街道のどこか、そう、多少地面の土が軟らかくて、掘りやすい場所に出やすいようです……。ただ、この化け物は何匹も存在しているようで、しかも自分のいるところに訪れてない限り、地中から姿を現す事は無いでしょう……。獲物が自分の近くに訪れた事を知ると、この敵は上の地面を掘り始めて頭上の獲物を穴の中に引き込み、そして、鋏で捕らえて地中に引きずり込むのです……。地中から引きずり出さなければ、皆さんでも勝ち目は無いでしょう……。……何か良い手があるといいのですが……」

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参加者
邪竜術士・ガイラ(a00438)
終焉を謳う最後の龍皇・ソラ(a00441)
無垢なる超死神さま愛好家・ガム(a01017)
クリムゾンカラミティ・ファレリア(a01041)
氷の魔狼・ハヤテ(a01075)
星刻の牙狩人・セイナ(a01373)
鋼鉄の護り手・バルト(a01466)
狼独・ロルフ(a01777)
白いカラス・カイ(a02188)
薔薇の狂戦士・ライナー(a02455)


<リプレイ>

●土に潜む脅威
 街道に巣をつくり、獲物がかかるのを待つという化け物退治の依頼を受けた冒険者たち。
 その中で、ヒトの狂戦士・ライナー(a02455)は霊査士からの敵の情報を聞いて、眉を顰めた。
「地中に複数の敵か。厄介じゃのう」
「あり地獄さんですか……。そういえば、あり地獄さんって幼虫ですよね?そんな大きなあり地獄さんが成虫になったらどうなるんでしょう?はわわわ……、考えなかった事にしましょう」
 人間と同じくらいか、それ以上も巨大なアリ地獄が成虫になった姿を思い浮かべて、エルフの牙狩人・セイナ(a01373)は慌てて首を横に振る。
 しかし、地中に潜っているため、その正体が見つけにくいというのは確かに厄介なもので、ヒトの狂戦士・ガム(a01017)はその対処に悩んだ。
「有効な手段があればいいのですが、そう簡単には見つかりませんわね。殺虫剤のようなものが効果を発揮すればいいのですが……」
 しかし、この事は農民から殺虫剤について尋ねたヒトの重騎士・バルト(a01466)が、不可能であることを伝える。
「どうやらそんなものが効くような相手じゃなさそうだ。大体、アリ地獄用の殺虫剤など無いようだしな」
 むしろ、アリ地獄は畑に害を及ぼすアリを食べてくれることから益虫に扱われることもあり、わざわざ駆除することは無いという。
 それに体長が何百倍もある今回の敵に、殺虫剤が効果を及ぼすなどということは考えにくい。
 やはり、この敵を倒すには直接巣穴を見つけ出して地中から引きずり出して攻撃を行うしかないということで、冒険者たちの意見は一致した。
 準備を整えた終焉に流れる漆黒の龍・ソラ(a00441)も、まだ見ぬ敵を前に気合を入れた。
「俺のいた国では見た事の無い怪物だな……。だが、やってやるさ」

 そして、その化け物が良く襲撃してくるという場所に訪れたストライダーの忍び・ハヤテ(a01075)は、長い木の棒で地面をつついて調べる。
 すると、しばらくして踏み固められているはずの道が、妙にもろくなっている場所を見つけることができた。
「……ここだな。円を描くように脆くなっている場所がある。恐らくここに奴がいるんだろう」
「……それでは、誘き寄せを開始するとしましょうか……。バルトさん、お願いします……」
 ストライダーの忍び・ロルフ(a01777)は腰にロープを巻きつけ、その端を近くの太い木の方に結びつけた後に、仲間に持ってもらった。
 もう一人の囮であるハヤテの方は、ヒトの重騎士・ファレリア(a01041)がロープを持つ。
「任せておいて。アリ地獄の穴に落ちすぎないようにしっかりと引き上げるから」
「さて、つまんねぇ仕事でつまんねぇ死に方しないようにきちっとやっか。どうせ奴は鳴きも喚きもしねぇんだろうよ。ああつまらねぇ」
 さもいたぶりがいがないと、大げさに落胆するヒトの武道家・カイ(a02188)も、姿を現したアリ地獄に突き刺し、地上に引き上げるための鎖がついた銛のようなものを手にして準備は万端整っているようだ。
 そして、冒険者たちは囮作戦を実行するのだった。

●あり地獄の罠
 恐らくはアリ地獄が潜んでいると思われる場所に足を踏み入れるハヤテとロルフ。
 二人の足元の土が徐々に崩れ始めて、体が下に引きずりこまれていく姿をヒトの邪竜導士・ガイラ(a00438)は少し離れた場所から見つめていた。
「さて、と……、作戦も開始された訳だし、後はのんびりと動きがあるのを俺は待たせてもらおうか。……おっと、そうこういっている間に、早速動きがあったみたいだな」
 どうやら、膝の半ばまで土に侵食された二人の足元から巨大な鋏のようなものが現れ、ハヤテは自分の腰につけているロープを握っているファレリアに声をかけた。
「……どうやら食いついてきたようだ。引き上げてくれ!」
「分かったわ! 今引き上げるわね」
 ここまで出てきた以上、後は上手くアリ地獄を引き上げるだけである。
 ハヤテの方が仲間に引き上げられているのを見て、ロルフも自分のロープを握っているバルトに引き上げるように声をかけた。
「……こっちも引き上げてください。もう少しで敵の姿がはっきり出てきます」
「よし、任せて……!! な、何だ!?」
 だが、その時、ロルフを引き上げようと踏ん張ったバルトの足が、突然緩くなった地面に入り込む。
 何と、彼の足元の地面までもが囮の冒険者たちと同じように崩れ始めたのだ。
 そして、やがてそちらでも巨大な鋏が現れ、アリ地獄が姿を現したことを示していた。
 この思わぬ敵の襲撃に、ガイラはブラックフレイムの業火をもって応える。
「おいおい、二匹目が同時にでるだなんて反則だぞ……。まぁ、仕方ないか。これでも喰らえ!」
 漆黒の焔が鋏を直撃し、この突然の攻撃に驚いたアリ地獄は慌てて地面の中に鋏を引っ込めようとする。
 しかし、この光景を現場近くの木の上から見ていたセイナは、そうはさせまいと矢を番えた。
「ああ、あり地獄さんが逃げようとしています〜。そうはさせませんよ!」
 彼女の番えた矢がアリ地獄に命中すると、そのアリ地獄はびくりと反応して動きを止める。
 影縫いの矢が効果を発揮したのだ。
 動きを止まったのを幸いにと、マッスルチャージをかけたライナーがそれの引き上げにかかった。
「さーて、化け物供の一本釣りだ」
 口調のガラリと変わって、不敵な笑みを浮かべながら銛を打ち込み、鎖を引っ張り上げる。
 その打撃に、呪縛を解放されたアリ地獄は暴れたが、その時には既に傍に寄っていたカイが、剛鬼投げによって豪快に地上に放り投げた。
「そんなに嫌がるなよ。これから俺たちが思いっきり相手をしてやるぜ。そらよ!」
 もう一方のアリ地獄の方は、既に獲物を喰らおうと頭までを出していたため、ソラが一気に駆け込んで、拳による一撃を叩きつけ、敵が打撃で動きを鈍らせると同時に引き上げにかかっている。
「貴様と力比べをする気は無い……。大人しく出て来い!!」
 武道家は武器を用いてよりも、素手での攻撃に進化を発揮する。
 ソラに体を掴まれて動きが取れないアリ地獄に対して、マッスルチャージをかけたガムも協力して引き上げにかかった。
「これで何とかなりそうね……。一気に引き上げるわよ!」

●アリ地獄の最後
 それぞれの冒険者たちの活躍により、遂に地中に潜んでいたアリ地獄は、その姿を地上にさらした。
 全身に棘のある甲殻で覆われたその姿は、形だけを見ればアリ地獄そのものだが、人間と同じ暗いの大きさをもつそれは醜悪な生き物に他ならない。
 ライナーは、そんなに敵に対して猛然と切りかかっていった。
「永遠におねんねさせてやるぜ!!」
 しかし、体を覆った甲殻は意外なほどの硬さを発揮し、狂剣士の一撃と言えど、その一部を破壊するに留まる。
 それならばと、今度はバルトが大地斬によって、強烈な一撃を振りおろす。
「大した硬さだが、これを防ぎきれるか!?」
 この一撃は流石に答えたようで、甲殻が砕けたところから体液を噴出して、アリ地獄は苦しみのた打ち回る。
 そこにソラが掴みかかって、剛鬼投げでアリ地獄の体を放り投げた。
「これで……終わりだ!!」
 体が硬い甲殻で覆われている以上、下手に拳を叩きつけるより投げ技の方が全身に衝撃が回るので効果的だ。
 そして、ひっくり返って無防備な腹をさらけ出したアリ地獄の体に、ロルフはダガーを突き立てるのだった。
「……これで止めをささせてもらいます」
 もう一方のガムが引き上げたアリ地獄の方も、多少の抵抗は行なったものの、地表に出されてしまうと動きが鈍るのか、大した抵抗もできずにいる。
 それに対して、ファレリアは容赦なくメイスを振り下ろして、甲殻を打ち砕いていく。
「こんな奴、みんなでボコボコにしてやりましょう。でも、ところであり地獄っておいしいものかしら。ゲテモノだからあんまり食べる気にならないけど、海老みたいな生物だったら、食べられるかもとかね」
「さてね。そんなことより、こんな奴なんてさっさと倒してしまおうぜ。今まで散々獲物に牙を突きたて体液をすすってきたのだろう。死ぬ前に一度体を貫かれ血を失う感触がどんなものか味わうといい!アーッハッハッハッー!」
 拳を何度も叩きつけて甲殻に傷を入れるカイは、アリ地獄の体から体液が噴出すのを見て哄笑を上げた。
 こうして、冒険者に襲い掛かってきた二体のアリ地獄は無事に倒されたが、まだ、周りには残っているかもしれない。
 しばらく捜索して、他にもアリ地獄がいないかどうかをしばらくの間調べまわった冒険者たちは、どうやらもういないことを確認して調査を終了する事にした。
「どうやら、もうアリ地獄はいないようだな。そろそろ引き上げるとするか……」
 辺りを確認し終えたハヤテが帰途に付く頃、セイナは街道の傍に墓を作っていた。
 犠牲になったノソリンの墓に、アリ地獄の墓もである。
 アリ地獄も生きるために行なったことであるので、彼女としてはそれを妨害して殺したことに多少罪悪感を感じていたようだ。
(「ごめんね。でも、色んな人に迷惑がかかっちゃったから……。せめて安らかに」)


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無垢なる超死神さま愛好家・ガム(a01017)  2011年09月15日 22時  通報
中佐を餌にアリを釣るだなんて・・・もったいない・・・

マッスルチャージが好きなアビだったんですよね。
最後のほうだとあんまり効果的とは言えなかったけど、
最初のほうだと能力を上げられる数少ないアビってことで優秀。
マッスルチャージして○○っていうのが私の定番でした。