【無人島開拓計画!】洞窟探索



<オープニング>


「前回は岩の除去、お疲れ様でした。何事もなく何よりです」
 ドリアッドの霊査士・シィル(a90170)は自分も無人島に行きたいなーとか呟いていたり。冒険者以外が立ち入れるようになるには、まだしばらくかかるだろう。
「今回は、前回に発見した洞窟の探索ですね。持ち帰っていただいた岩の破片から霊査しましたが、際立って強力なモンスターなどはいないようです。ただ、そこをねぐらとする大きめの獣のつがいがいるようで」
 シィルはちょっと寂しそうな顔になる。
「あちらが先住民ですから気が引けますが……人を呼べる島にするなら、排除するしかないと思います。もちろん他にいい方法があるかもしれませんので、考えてみてくれませんか?」
 モンスターならさておき、動物相手ではあまり容赦ない攻撃をするのは躊躇する。相手の態度にもよるが……冒険者たちは考え始めた。

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参加者
焦天回廊・アイラザート(a13992)
黒の猛き武神・マルシュ(a24882)
舞い狂う傘刀娘・シラハ(a27867)
うたかたのゆめ・ロン(a33766)
夢想歌の歌姫・ソレイユ(a33840)
珊瑚礁の歌姫・メルフェイス(a36190)
道楽娘・ガザミ(a42279)
灼熱日天・ラハイナ(a42568)
魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)
春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)
冷たく響く狂想曲・キュリオン(a49120)
黯然の眸・インサニア(a51494)


<リプレイ>


 清い海風が幾重にも重なって肌を心地よく撫でる。暑さごと洗い流すような潮騒は子守唄に似ている。村人の応援を受けて滞りなく無人島に到着した冒険者たちは、今すぐにでも遊んでしまいたい誘惑に駆られそうになるが、あくまで自分たちは任務で来ているのだと目的意識を今一度研ぎ澄ました。それにお楽しみは後のほうがいい。
「それじゃあみんな、さくさく行こうなぁ〜ん」
 轟天乱馬・アイラザート(a13992)が獣の仮面を装着し、堂々と先頭を歩いた。仲間たちも意気揚々と続いた。
 岩壁に挟まれた入口を抜け、そこそこに整備された歩道に入る。しばらく歩いてからまったく未整備の脇の森に逸れ、虫やら草やら木の枝やらを掻き分けて進む。
 ほどなくして、標高7、8メートルほどの岩山が姿を現した。いかにも何かがありそうな雰囲気と匂いが奥から漂ってくる。皆、興奮を抑えられない。無人島だけでも感激ものなのにさらに洞窟とくれば、一言では言い表せない歓喜があった。
 今回の第一目的は、この洞窟に生息する獣のつがいに退去してもらうこと。なるべく血は流したくないなと思いながら、常夏の太陽・ラハイナ(a42568)が獣達の歌で中に呼びかけた。
「この辺りを探索しに来た冒険者だなぁ〜ん。話がしたいからちょっと出てきてほしいなぁ〜ん」
 しかし返事はなかった。この歌は射程が10メートルなので、なるべく近づかないと効果がない。もっと奥にいるのだろう。仕方がないので自分たちから出向くことにした。
「説得第一だからなぁ〜ん」
 黒の猛き武神・マルシュ(a24882)は斧を入り口に置く。もちろん有事の際はウェポン・オーバーロードで呼び出すのである。


 いざ一行は真っ暗な空間へと足を踏み出した。説得班が前、説得が失敗した際の戦闘班は離れてついていく。
 魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)がホーリーライトで道を照らす。足場はゴツゴツしており、あちこちの壁面から岩の突起が出ている。もし一般開放するなら、ある程度の整備は必要と思われた。
 獣のつがいはどこに潜んでいるのだろうか。いきなりの襲撃に備えて緊張感を張り巡らせる。
 間もなく通路が広くなって、寝泊りするには充分すぎるくらいのスペースが眼前に現れた。
 そこに、全長3メートルはあろうかという野獣がいた。たてがみがあるのとないのが2匹。前者がオス、後者がメスだろう。低姿勢で牙をむき出しにして唸っている。侵入者に対して怒っているのが明白だった。
「いきなりの訪問ですみません。ちょっとお話を聞いてもらえないやろうか?」
 夢を唄う吟遊詩人・ソレイユ(a33840)が話しかけるが、返事は吼え声だった。何を言ってるんだオマエラ、さっさと失せろ、と。
 今からここを探検したい、そしてこの島に人が入ることになったので認めてもらえないか――そこまで言ったところで、2匹は飛びかかってきた。鋭利な爪持つ4本の腕が強烈に振り下ろされ、反応の遅れたソレイユが肌を傷つけられた。
 まだ手は出さない。黯然の眸・インサニア(a51494)が誠意を持って言葉を紡ぐ。
「……ここから移動してもらいたいのだ。勝手なことだとはわかっている。だが」
 言い終える間もなく、2匹は再度地面を蹴った。今度は大口開けて牙を突き刺そうとする。
「――!」
 うたかたのゆめ・ロン(a33766)がスーパースポットライトを放射して注意をひきつける。矛先の変わった攻撃はわずかに肌に食い込んだ。リザードマンの硬い皮膚だから大怪我にはならなかったが、そう何度も食らうわけにはいかない。
 ――無理だ、これを説得するのは。早くもそう思ってしまったほど、この2匹は果てしなく怒り狂っていた。これでは強制的にどこかに移動させたとして、人を見れば見境なく襲うほど根に持つかもしれない。
「……やるしか……ないようだな……悪く思うなよ。容赦はせん」
 冷たく響く狂想曲・キュリオン(a49120)が眼鏡を上げ、瞳を光らせた。
 次の瞬間、アイラザートが一撃で楽にしようと指殺に行く。額を穿とうとした人差し指は、オスのたてがみを一房ちぎるに留まった。横っ飛びで回避したオスは、メスと背中合わせの格好になる。
 自分たちのほうが強い――レシュノはそう呼びかけようとしたが、おそらく無意味だろうと判断した。歌うのは眠りの歌。優しいメロディがメスを包む。同時にラハイナが両腕を矢継ぎ早に繰り出し、ひたすら殴った。
 オスが唯一無防備なマルシュに飛び掛ろうとするが、マルシュはタイミングを見計らって武器を呼び出し、構えた。オスの脚が止まる。そこへ後衛の珊瑚礁の舞姫・メルフェイス(a36190)がニードルスピアで、インサニアが矢で牽制する。
「じっとしてて!」
 春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)が紅蓮の咆哮を飛ばした。反撃すらさせぬと、圧倒的実力差を見せつける。これで心変わりがあればと期待したが、相手はうんともすんとも言わない。
 ソレイユは凱歌を高らかに歌って、先刻の傷を癒した。こちらには回復手段もあるのだと、さらに優位を示す。舞い狂う傘刀娘・シラハ(a27867)は動けないメスの脇腹に斬鉄蹴をヒットさせた。
「グアア……!」
 ざっくりと肉が抉れ、メスはよろけた。荒々しく息をついている。オスはさらに怒り心頭、洞窟が崩れるのではないかというほどに絶叫した。
(「仮に説得できたとしても、後になって問題勃発の可能性も高いしなあ。結局倒すのが一番なんや」)
 道楽娘・ガザミ(a42279)は最初から自然との共存は無理だろうと思っていた。だからさほど動揺しない。鎧進化でさらに甲殻的になり、防御を高めた。
 戦いは非情に続く。キュリオンの発した華麗なる衝撃はメスの頭にクリーンヒットする。ファンファーレの鳴り響く中、メスはいっそうふらついて、今にも倒れそうになる。
「ウチらが強いってことはわかってくれたかな? ココ以外で過ごせる場所があるんならそこに移動してもらいたいのと、これから来る人たちを襲わないって約束してくれれば命の保障はするで?」
「そうだよ、さっきの言うことを聞いてくれたら、命までは取らないから。……お願いだから、言うことを聞いてよ!」
「こっちが悪いのはわかってるけど、もっと酷いことしたくねぇし……何とか譲歩してくれねぇかなぁん……?」
 ソレイユ、アンジェリカ、ラハイナが最後の説得にかかった。だが今度も間髪いれず、オスが反撃で答えた。前脚が尋常でない速度で伸び、アイラザートの尻尾を切り裂く。レシュノが慌てて治療にかかった。
「……残念だなぁ〜ん」
 アイラザートは痛みではなく相容れなかったことに泣きたくなった。だがこれが運命。高く跳躍しながら再び繰り出された指殺奥義は、メスの背中に強く食い込んだ。それでメスは絶命した。
 ロンが粘り蜘蛛糸を広げる。動きを封じられたオスは、マルシュの電刃衝、インサニアの鮫牙の矢の連続攻撃を受ける。おびただしい出血。
「気持ちが伝わらぬことは大層寂しいことどすなぁ……まぁ、仕方ありまへん」
「さ、これ以上苦しませんようにしよ」
 シラハが拳で、ガザミが大上段から武器を振り下ろし頭部を殴打する。
 沈黙。オスは二、三度痙攣して、動かなくなった。


 決して後味のよくない結果だったが、冒険者にはこうした局面を乗り越える心の強さが必要なのだ。切なさに身を焦がしつつも、獣の死骸を外に運び出し、丁重に弔った。
 一行はすぐに洞窟の中へ引き返した。本格的な探索の開始だ。いつまでも悲しんでいるわけにはいかない。
「何か……見つかればいいがな……」
 と、キュリオン。何の成果もなくては、あの獣の死が無駄になってしまう。
 マルシュが盾とカンテラを構えて先陣を切る。アンジェリカはその横で細々と動きながら様子を見る。人の手が入った跡があると面白いのにとレシュノは思ったが、どうやらここは100パーセント天然の洞窟のようだ。ロンとソレイユが大きな出っ張りなど怪しそうな箇所を棒で突っつくが、何が飛び出してくるわけでもない。
 時折分岐路があったが、片方はすぐ行き止まった。つまりほとんど一本道である。シラハが歩きながらマッピングをするが、地図板の制作は簡単そうだと思った。
「これといった危険は……ないのかもな」
 インサニアが呟く。もちろんないに越したことはないが、冒険者としてはもう少し刺激が欲しい気もした。宝物などがあると嬉しいのだが――。
 角を右に曲がると、前方に光が見えてきた。
 もしや出口かと思って近づいてみると、予想もしえない光景が待ち受けていた。
 ホールのように開かれた空洞だった。その天井には直径20メートルはあろうかという大穴が開いていて、青空が覗いていた。そして空洞の中央からは、ほわほわと煙が立ち上っているではないか。煙の出所は、乳白色をした水面である。
「ひょっとしてこれ、温泉かなぁ〜ん?」
 ラハイナがそっと触れてみた。人肌よりちょっと熱い程度――つまり風呂の湯として最適な温度だ。舐めてみると、あの温泉特有の苦味と匂いがある。温泉に間違いない。
 景色としても素晴らしい、とメルフェイスは思った。昼は青空、夜は月と星の降る天然の岩風呂。きっと人気を博すスポットになるだろう。もしかしたらあの獣も、この温泉を独り占めしたかったのかもしれない。
 空洞にはもうひとつ横穴があった。そちらへずんずん進んでいくと、すぐに外に行き当たった。鬱蒼と茂る密林の真っ只中だが、すぐ近くに妙なものがあった。
 どう見ても建物としか思えない、かなり大きな石造りで、まさに遺跡然としたもの。ずっと以前に人が住んでいたことを示す証拠かもしれないと皆直感した。
「どうやら次はここのようやね」
「この島の謎が解けるかもなぁ〜ん?」
 ガザミとアイラザートが次回の霊査用にと、遺跡の壁面のかけらを採取する。ただ大自然溢れるだけの島ではなさそうだ。ますます興奮が湧き上がってきた。

 さて本日の仕上げ。
 一行は温泉をたっぷりと堪能し、疲れを癒した。もちろん時間帯で男女分かれて。脱衣所や仕切りの設置が急務になりそうである。


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