西方プーカ領を求めて 〜ミスト・ミステリー〜



<オープニング>


 南方街道沿いに、奇妙な川岸がある。
 何が奇妙かと言えば、地形の関係なのか昼夜問わずそこには霧が良く発生するのだ。
 それだけならばまだ良かったのだが、数ヶ月前から異変が起きた。
「霧の中にモンスターが出るようになったのよ」
 暁紅の水月・シスカ(a29761)が仲間達に、噂の内容を告げる。

 このモンスターに関して、多くはわかっていない。
 何故なら、出現する時は必ず霧の中だからだ。気づかずに攻撃されてしまうことも少なくないし、霧の中からいきなり刃が飛んでくることもある。
 また、霧の中にしか出現しないので、姿に関しても曖昧だ。一番多い話は、普通の人間より一回り大きな人型のモンスターとの事だが、これすらも確実な話ではない。
 だが、何であろうと、この界隈に害を与える者ならば、もはや駆逐するべき対象でしかないのだ。
「行きましょう」
 シスカは仲間達にそう告げ、彼女達は早速問題の場所に向かった。

 歩みを進めていくと、彼女達を包むように、辺りに霧が立ちこめてくる。
 さらに歩を進めると、霧も次第に濃いものとなっていった。遠くに目を向けると、ほぼ何も見えない。近くにいる仲間達は判別できるが、10mも離れたら誰が誰かわからないだろう。
「……来たわ」
 そんな霧の中、シスカは前方を指した。
 そこには自分達のものとは明らかに違う、大きな影。霧のせいで姿形を正確につかむ事は出来ないが、これが例のモンスターで間違いないようだ。

 霧の中、視界も不安な状況で、一つの戦いが始まる。シスカ達は西方プーカ領を目指すべく、武器を手にした。

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参加者
思い出を紡ぐ者・ロスト(a18816)
愚者・アスタルテ(a28034)
暁紅の水月・シスカ(a29761)
武神装攻・ライミリア(a31615)
荒野を渡る口笛・キース(a37794)
不浄の巫女姫・マイ(a39067)
御手先・デン(a39408)
紫煙の医術士・ヴィヴィス(a52494)


<リプレイ>

 霧の中でモンスターと遭遇した暁紅の水月・シスカ(a29761)達。武器を構え、襲撃に備える。
(「少なくとも、その存在を放っておく訳にはいかない」)
 そんな中、失格者・アスタルテ(a28034)は素早く考えを巡らせた。そして、一つの作戦をはじき出し、シスカの方を見る。
「今回はアスタルテに任せる」
 シスカはそう頷いた。そこで、アスタルテは素早く指示を出し始めた。
「キースさんは、前へ」
 その指示に荒野を渡る口笛・キース(a37794)は前へ出た。
(「油断ならない相手だけど、やってみせるさ」)
「デンさんはキースさんの、後ろに」
 目明し・デン(a39408)は指示通り、キースの右後ろにつく。
(「さてと、腹括るかね」)
「ライミリアさんはキースさんの横、私の、前に」
 武神装攻・ライミリア(a31615)は剣を構え、アスタルテの前に立つ。
(「西方プーカへの道……何とか繋ぎたいですね」)
「ロストさんは右後方へ、展開」
 固有名称付き雑魚・ロスト(a18816)は頷き、デンの更に右後ろへとついた。
(「パワータイプの自分には、苦手な相手だけど……何はともあれ、やれる限りはやらせて頂きます!」)
「ロストさんの隣に、ヴィヴィスさん」
 紫煙の医術士・ヴィヴィス(a52494)は、ランタンを確認し、位置に着く。
(「民の為に、何よりモンスターと化した彼らの為に、このモンスターは倒す」)
「シスカさんとマイさんは、私の、隣に」
 不浄の巫女姫・マイ(a39067)は丁度他の冒険者達の真ん中に位置し、反対にシスカは左側へと展開する。これでキースを先頭とした楔形の陣形が整った。

 だが、アスタルテ達は肝心なことを1つ忘れていた。そう。彼女達の前には、形ははっきりとしないものの、既にモンスターがいたのだ。幸いに、陣形を整えている間にいきなり刃が飛んでくることはなかったが、陣形が整うまで行動を起こさない程、相手は間抜けでもなかった。
「……おい。逃げるぜ!」
 そう。ここは霧の中。ほんの少し後ろに下がるだけで、目標を見失うこともある。幾ら注意を払っていても、これは避けることの出来ないこと。敵はまんまと逃げだしていた。
 ただ、冒険者達はこうなる事も予想に入れていた。アスタルテは早速『土塊の下僕』を数体召喚し、指示を出す。
「まっすぐ進みなさい。川にぶつかったら停止してゆっくり鈴を振りなさい。私達以外の姿を見つけたら、停止して鈴を早く振りなさい」
 これは決して簡単な命令ではなかった。そこで、下僕達は自分達の理解できる範囲でその指示に従う。
 下僕達はそれぞれ別の方向へ、一心不乱に進んだ。その動きに注意を向けつつ、冒険者達は陣形を崩さないように気をつけて待機した。
 その次の瞬間。
――ちりん……
 鈴が一度、音を立てる。だが、これは下僕が能動的に鳴らした音ではない。
「一撃で……下僕が消えた」
 そう。敵が放った刃で下僕が消えた時に、鈴が地面に落ちて立てた音だ。
――ちりん……
――ちりん……
――ちりん……
 鈴は次々に音を立て、地面に転がる。相手は霧の中なのか、姿は見えない。
――ちりん……
 最後の1個が地面に落ちた。後に残ったのは、重苦しい空気と静寂のみ……。
「話に聞いていたけど、想像以上だな。こりゃ……」
 キースは素直にそう感想を述べるしかなかった。

 冒険者達は歩みを止める。地形を測る手段が失われた今、下手に動くのは自殺行為だ。ただ、時間が出来たので、敵に備えて『鎧聖降臨』を全員に掛ける事が出来たのは幸いだった。
 デンは全員に『鎧聖降臨』を掛けた後、マイに『君を守ると誓う』を掛ける。そのマイはと言うと、目を閉じていた。
(「先が見えないって……怖いですね」)
 視界を封じ、耳に全神経を集中させるマイ。だが、その心には不安が渦巻いていた。
(「西方プーカへの道程は先が見えなくて、それが今の私達の現状に重なるようで……。あら?」)
 そんなマイの耳に、微かだが音が聞こえてくる。
――パサッ……パサッ……
 マイは目を開けると、小声で、しかし全員に聞こえるように告げた。
「右にいますね」
 次の瞬間。そのマイに刃が当たる。もしデンが誓っていなかったら、どうなっていたことか。だが、マイはまだ立っていた。ヴィヴィスがすぐに『癒しの聖女』でマイの怪我を回復する。
 マイのお陰で、冒険者達は右側の霧の中に再び敵の姿を見つけることが出来た。チャンスは今しかない。
「来いよ! 遠慮は要らない」
 すかさず、キースは『スーパースポットライト』を発動させる。そして、他の冒険者は陣形を崩さないように、キースを中心に左へと回り込んだ。
「そのまま包囲して、ください」
 アスタルテは更に左側へ展開しながら、魔炎と魔氷の乗った『ブラックフレイム』を放つ。黒き蛇は牙を突き立て、モンスターをその場に縛り付けた。ようやく、反撃の開始だ。
「届け! 雲耀の速さまで!!」
 ライミリアが左から展開して『電刃居合い斬り』の強烈な一撃で斬りつける。モンスターの動きは更に止まり、他の冒険者達もアスタルテの指示通りモンスターの周りを囲んだ。
「これが……敵の正体」
 冒険者達は驚きの声を上げる。それは、自分達より一回り大きい、ねずみ色の『物体』。かろうじて人型をしてはいるが、全身の凸凹はなくつるんとしている。強いて言うのなら、それはまるで地面に映る影に空気を吹き込み、膨らませたかの様だった。
 だが、正体さえわかれば、何も躊躇することはない。むしろ、躊躇して逃がしてしまっては、もうこのモンスターを倒すことは出来ないだろう。
「こいつを叩き込んでやる!」
 キースは『斬鉄蹴』でモンスターを蹴り上げた。衝撃で一瞬浮き上がるモンスター。
「活人剣を使えるほど達人じゃないんですが、ね!」
 モンスターの落ちてきたところに、ロストが渾身の『電刃居合い斬り』を閃かせる。さらに、デンが『ホーリースマッシュ』で捉え所のない相手の体を貫いた。
 流石に、貫いた場所から空気が漏れてしぼんだりはしなかったが、相手は苦しそうに手足をばたつかせている。確実に効いているのは確かだ。冒険者達は少しでも早く倒すべく、持てる攻撃全てを叩き込んでいく。
(「油断は大敵、です。状況が不利となれば逃げる可能性も、あります」)
 アスタルテは少しでも足止めになればと、『ブラックフレイム』を更に打ち出す。黒き蛇は己の役目を果たしたが、魔氷はいつまでもモンスターの動きを縛り続けているわけではなかった。
――バシッ!
 モンスターはその腕らしき部分に闇色の気を纏い、挑発に乗ってキースを殴りつける。だが、彼だって口先だけで挑発したわけではない。
「そらよっと!」
 キースは『無風の構え』を取っていた。相手の攻撃をしっかりと受け止め、衝撃波として相手に撃ち返す。そこへ、ライミリアが再び『電刃居合い斬り』を放った。
「我が一刀は、雷光の閃き!」
 再び縛られるモンスター。だが、次が上手く行くとは限らない。今の内に一気呵成に攻め立てたいところだ。
「私も攻撃に回ろう」
 回復が十分なのを確認し、ヴィヴィスが『慈悲の聖槍』を放つ。白く輝く槍は上方にあるモンスターの胸に突き刺さり、光と共に消えた。
 その後は、アビリティの出し惜しみもせず、冒険者達は全力でモンスターにダメージを与えていく。
「我が斬魔刀に断てぬもの無し!」
 最後はライミリアの『電刃衝』が、モンスターを打ち倒した。包囲を解き、倒れるモンスターに潰されない様にかわす冒険者達。
「……倒せたか」
 デンは横たわるモンスターに近づき、死亡を確認すると、煙管を取り出した。

 程なく、辺りの霧が晴れてくる。改めて辺りを見回してみると、あのまま前進していれば落ちていたかも知れないと言う所に川があった。
「ところで、このモンスターって先輩冒険者なんだよな?」
 キースが尋ねる。出自はどうあれモンスターというのは元冒険者であるのは、その通りである。
「飛んでくる刃と、不意を打つ攻撃……元々は忍びだったのでしょうか」
 マイは戦いを振り返り、そう推測を述べる。残念ながら実際の所はわからないが……
「彼は、この街道をトロウルから守っていたのかも知れませんね」
 マイはそうまとめた。
 冒険者達はモンスターに敬意を表し、丁重に埋葬する事にする。
「貴方も、誰かを守るために戦ったんだと思う。だから、それを誇りに、逝ってください。後は……継ぎます。私達が、同盟が……!」
 ロストがそう祈りを捧げた時、また辺りに霧が立ちこめてきた。この霧は、やはり地形のせいなのだろうか。
 最近、街道にてトロウルに遭遇したという噂もある。この霧の中で出会っては一溜まりもないだろうと判断し、一行は引き上げることにした。
 最後に、キースが振り返って、モンスターの眠る場所に言葉を掛ける。
「……霧の墓標ってのも悪くないだろ? ……オヤスミ……」


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