全ての人に愛の手を 〜伝説の杜氏を呼べ〜



<オープニング>


●銘酒を求めて
 ちょっとした酒蔵のある村で、良質な銘酒が作られているとの噂を小耳に挟んだ海援艶女隊・ヴィルヴェル(a45822)たちはその村へと足を運んだのだが、どうも村の様子がおかしかった。辺りの木々は薙ぎ倒され、家屋の屋根や壁に幾つもの亀裂や破損が見られるのだ。
 村人に尋ねてみた所……先日運悪くこの村は嵐の被害に遭い、今はその復旧支援の真っ最中なのだという。
「お前さんがた……冒険者さんか?」
 話を聞いている最中にヴィルヴェルたちに声が掛けられる。話しかけてきたのは中年の男性で、右腕と左足に包帯を巻き、杖をついていた。
 その男性は酒蔵で杜氏(とうじ)という酒作りのリーダー的な職を担っているらしいのだが、どうも嵐の際に怪我をしてしまったとのこと。これでは酒作りが滞ってしまうので、助っ人として山の奥に住んでいる先代の杜氏を呼んで来て欲しいということだった。
「先代は少し気難しいお人だが、困っている事情を話せばきっと協力してくれるだろう」
 今の杜氏さんに役目を譲ってからは、一切口出しも手出しもしないと決めているようだと先代について語る杜氏さん。
「しかし隠居している先代が住む山小屋までの道に最近グドンが出てしまって……冒険者さんにも依頼を出したかったのだが、この嵐の復旧に人手も資源も乏しくての……十分な謝礼を出すこともできんと困っておったのだ」
 気まずげに言う杜氏さんに、ヴィルヴェルはぽんと胸を叩いて引き受けた。
 ただお礼に、ちょっとだけお酒を分けてくれれば……と付け加えて。

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参加者
ツッコミ系酒乱ナース・パルフェ(a06229)
ローズ・マリー(a20057)
高級軍鶏の紋章槍士・オスカー(a21912)
華酔護法剣士・クイ(a43440)
無垢なる刃・ソニア(a44218)
青にして紺瑠璃・オズフォル(a45575)
海援艶女隊・ヴィルヴェル(a45822)
白き妖精・ミズキ(a50370)
NPC:無双華・リョウコ(a90264)



<リプレイ>

●酔いどれロード
 山道を進むのは何人かの冒険者たちだった。嵐の被害で怪我を負ってしまった村の杜氏の願いにより、先代の杜氏に手伝いを要請しに行く途中なのだ。
「しかし折角の酒飲むチャンスが自然災害で潰されるとは……」
 不運に見舞われた村の人々のことを思いながらそれは伝説と言う名の・マリー(a20057)がこぼす。
「みんなヤル気満々のようだけど、お酒ってそんなに美味しいの?」
 村では美味しい酒が作られているのだという、メンバーの中で唯一の未成年である無垢なる刃・ソニア(a44218)はお酒を楽しみにしている仲間達の様子を眺めつつ、ちょっとだけ首を傾げていた。
「兎に角、先代の杜氏がどう出るかやね……なんせ気ぃ入れて説得するぜよ」
 先代の杜氏は名をマサムネと言うらしいのだが、少々気難しいお方らしい。そのマサムネ氏の心をどうやって動かすか思案しながら、海援艶女隊・ヴィルヴェル(a45822)はぺろりと唇を一舐めする。
「ですがその前に、立ち塞がる障害をなぎ倒さなくては」
 そこに高価な軍鶏の紋章槍士・オスカー(a21912)が声を上げて一同の動きを制する。周囲を警戒していたオスカーはいち早くグドンの接近に気が付いたのだ。
「猿グドンか……ちゃっちゃと片付けて、猿酒にしたるわ♪」
 現れた数匹の猿グドンを見据え、ツッコミ系心療ナース・パルフェ(a06229)は不敵に笑うのだった。

●酔剣
「速攻で蹴散らすきに!」
 ヴィルヴェルがチキンスピードを発動させる横を抜け、マリーが前に出る。そのままマリーはスーパースポットライトの光を輝かせた。これで集まってきたグドンを一網打尽にしようというのだが……。
「こっちからも来てるわね」
 無双華・リョウコ(a90264)の一言にちらりと振り返れば、山道の反対側からも猿グドンたちが近づいてきていた。どうやらグドンたちは二手に分かれていたらしい。
「こっちはお任せ下さい」
 言ってオスカーは両手杖『聖槍メテオール』を振るう。描き出された紋章から光がばら撒かれてグドンたちを牽制し、ヴィルヴェルと青にして紺瑠璃・オズフォル(a45575)がそちらへ向かう。
「ならばこっちだな」
 華宵酔咲ク運び手・クイ(a43440)はリョウコと共にマリーに集まり始めるグドンの方へと向かう。突っ込んできた猿グドンの爪を剣で受け弾き、そのままもう一方の剣で腹を薙ぎ払うクイ。
「我は無垢なる刃、魔を断つ剣なり!」
 ソニアはウェポン・オーバーロードで巨大剣『Demonbane』を手元へと喚び出し、しっかりと両手で握り締めて大地を蹴る。
「回復の役目はお任せ下さい」
 しっかりと戦況を見守りながら言う白き妖精・ミズキ(a50370)、陣形的には二手に分かれたグドンに挟撃される形になっているものの、ミズキとパルフェを中心に片側をマリー、ソニア、クイ、リョウコが、反対側をヴィルヴェルとオスカー、オズフォルが担当するように素早く対応していた。
「さっさとぶちのめすで!」
 パルフェがヴィルヴェルの太刀『虎乱』へとディバインチャージを掛ける。乱れる虎が神々しく、牙を剥くように輝いた。
「きぇぇっ!」
 ヴィルヴェルはその輝きを叩きつけるように、グドンに向けてナパームアローの力を込めた一撃を振り下ろした! 爆炎が華咲き、周囲に居た猿グドンたちを飲み込み吹き飛ばしてゆく。
「のぇぇ〜!?」
 偶然すぐ近くに居たオスカーも炎に巻き込まれたような気がするが、それはきっと気のせいだろう。その証拠にミズキが癒しの水滴をオスカーに施し、何事も無かったかのように復活している。
 ナパームアローから逃れたグドンはオズフォルが巨大剣で撃ち砕く。ちょっとふら付く足取りでオスカーはエンブレムシャワーを放ち、そのまま下がるように移動していた。間違ってもヴィルヴェルには近づかないように。
「久々のグドン退治どすな、血が騒ぐ……」
 反対側ではマリーがナパームアローで群がってきたグドンを蹴散らしていた。まさかオスカーが移動した先がそのマリーの爆炎の中だったとかそんなことは決して無く、ぷすぷすと丸焦げになりながらもパルフェからヒーリングウェーブを受けて何とか耐えているのも気のせいだろう。たぶん。
「雑魚は任せてもらおう」
 ききんっ!
 木から飛び降りて来るグドンを揃えた二刀で叩き斬り、クイはざっと後退る。入れ替わるように前に出たのはソニア!
「流れる水の如く、舞い踊れ刃!」
 流水撃が駆け抜けて、猿グドンたちを斬り払ってゆく。
「あれは……」
 ソニアの一撃でこちら側のグドンはほとんど片付いた。その奥からゆらりっ、と現れる一匹の猿グドンの姿。その手には『とっくり』が握られていた。
 がっ、と叩きつけられるように『とっくり』が振り下ろされる。流水撃を振り抜いた体勢だったソニアは辛うじてその一撃を受け止めると、体勢を立て直すべくバックステップで後ろに跳んだ。
「それは……グドンには勿体無い品です」
 エンブレムシャワーを放つオスカーだが、とっくりを持ったグドンは丁度ジャンプしてその一撃は外されてしまう。
「ちょこまかとっ……」
 反対側の猿グドンも大体片付き、後をオズフォルに任せてヴィルヴェルが駆け込んできた。着地した猿グドンに向けて薔薇の剣戟を繰り出してゆく!
 花弁を散らしながら剣戟は猿グドンの腕を掠め、とっくりを手から落とさせる。「おっと」と大地に落ちる前にクイがそれをキャッチした。
「そうは問屋が卸しまへんで!」
 体勢の崩れかかる猿グドンにマリーが詰め寄る。その手に携える太刀『夢幻ノ光』へと、パルフェからディバインチャージの光が付加された。
 ざざっ、と叩きこまれる薔薇の剣戟が大輪の花を咲かせ……戦闘に終止符を打つのだった。

●盃交わすは戦友の歌
「杜氏様や他の方が気分を害されないように、きちんと葬っておきましょう」
 ミズキの提案に、一同は退治した猿グドンたちの亡骸を山道の脇に埋葬していった。それから進んでゆけば程なく、先代の杜氏であるマサムネ氏が住んでいるらしい山小屋が見えてきた。
 トントンと扉をノックすれば、白髪の老人が一人姿を現した。
「……何じゃ、お前さんがたは」
 老人――マサムネは不機嫌そうに呟く。冒険者たちは村が嵐の被害に遭ったこと、現職の杜氏が怪我をしたことなどをマサムネに説明する。
「是非お力をお借りしたいのです。このままではお酒作りが滞ってしまいます。どうか……お願いいたします」
 そう言って頭を下げるミズキだが、マサムネは瞑目して少し沈黙し――ゆっくりと口を開いた。
「話は分かったが……儂は既に隠居の身。酒作りが滞るのも今の杜氏の責任であろう」
 自分が手を出せば、今の杜氏のためにならないと。「いざとなれば助けてもらえる」という甘さが生まれてしまうだろうとマサムネは呟いた。
「その杜氏は怪我してもうて動かれへんのや、アンタが来んかったら村の酒の評判が悪くなるかも知れへんのやで?」
 息巻くパルフェだが、それでも事実なら仕方の無いことだと、自分は居ないものと考えて欲しいとマサムネはゆっくりと語った。事故は気の毒だが、その度に誰かに頼るなら……本当に自分が居なくなった時、結果は同じとなるだろうと付け加えて。
「しかし今は、貴方は健在でいらっしゃいます」
 家に引っ込もうとするマサムネを止めたのはソニアだ。
「杜氏さんの手助け以外にも、村人達皆さんの為にお力を貸していただけないでしょうか? 先代として、では無く唯の一人として。貴方にはその力があるはずです」
 ソニアの言葉にマサムネは動きを止めた。何かを考えるような老人の前に、クイがずぃっと一歩踏み出す。
「めんどうだな……ごちゃごちゃと」
 呟いた一言に全員の視線がクイに集まった。
「確かに村の窮状も重要かもしれないが……それよりも、ただ単に酒を作って欲しいだけなんだよ、私達は」
 驚いた様子の仲間達、マサムネに構わずにクイは続ける。
「先代がどうとか今がどうとかは一先ず置いといて、私達は旨い酒が欲しいから、あんたに作って欲しい。それにイエスと答えるかノーと答えるか、簡単だろ?」
「……で、この辺でお酒を作れそうな場所といえば、村しかないどすが」
 言い放つクイに、こっそりとマリーが付け加える。沈黙を続けていたマサムネは冒険者たちを見回し……。
「血の匂いがするな」
 静かにそう言った。グドンを退治してきたのだと言うリョウコに、小さく頷くマサムネ。
「そうか、確かにあいつらには儂も困っておった。ならば礼をせねばならんな……一人の男として」
 ニヤリと笑みを浮かべるマサムネに、「それじゃあ!?」と身を乗り出すミズキ。
「まぁ、武器を清める神酒くらいなら……な」
 やれやれ敵わないと息を付きながら、マサムネは不敵に笑うのであった。

●酒が呑めるぞ
 村への道程でまたグドンが現れないかと警戒する冒険者たちだったが、どうやら行きで遭遇したのが全てだったらしく戦闘は起こらなかった。ほっと安心しながらマサムネ氏を酒蔵へと案内する。
「まったくだらしねぇ!」
 早速酒蔵の中で響き渡る怒声を心地よく聞きながら、ヴィルヴェルは期待を胸にくすっと笑う。そういえばと猿グドンが持っていた『とっくり』について村人に尋ねてみたが、どうやら持ち主は不明らしい。また後でマサムネに聞いてみようと首を傾げるヴィルヴェル。
「待っている間に何か手伝えることはありませんか、肉体労働は男の役目です」
 オスカーは嵐の爪跡が残る村の中を回り、倒れた木々の除去などを手伝っていた。一緒にソニアも瓦礫の撤去を進んで行った。
「ここは任せて、怪我人は療養してくださいね」
 多少の負傷を負いながらも作業していた村の若い衆はすまないと礼を述べている。傷の深い負傷者たちはミズキとパルフェが治療に回ってゆくのだった。

 そうして復興支援に力を注いでいた冒険者たちは、気付けば村で夜を迎えていた。
 宴の席に並ぶのは、今日飲めるだけのお酒全部だったりする。
「ほらよ、依頼の品だ」
 どっと瓶を置いて座るマサムネに、クイは盃へと酒を注いでゆく。
「かんぱーい!」
 瓶を片手に盃を片手に、声を上げるヴィルヴェルに一同は盃を交わしてキン……と音を鳴らした。くいっと飲み干せば豊かな香りが鼻腔をくすぐり、熱い流れが喉を潤してゆく。
「五臓六腑に染みわたる〜なんてな」
 楽しげに笑うパルフェに、「一仕事した後の一杯は格別ですね」とオスカーもぐいっと盃を進める。
(「皆と一緒に呑むというのも良いものです」)
 盛り上がる宴の席を前にして、オスカーは和やかに心の中で呟くのだった。
「この際どすし徹底的に飲み明かしますえ!」
 瓶を手に注いで回っているのはマリーだ。リョウコとヴィルヴェルはそれを受けてキン、と盃を鳴らした。
(「両手に花どすな〜……」)
 後でその間に入ろうとかイロイロ企みながら、マリーは人々に酒を注いでゆく。
「ヴィルヴェルさんも、皆さんも、美味しそうに飲みますね……。では私も」
 コッソリ飲もうとするソニアだが、こらこらとオズフォルが取り上げる。「そんな〜、私にも味見させて〜」と瓶を奪おうとするソニアだが、慌ててリョウコがそれをカットして逃げていった。
「ふぅ……」
 ミズキはそんな様子を眺めながら、ちょっとだけ口に含んで熱い息を吐く。少し酔ってしまったのだろうか。
「む? そのとっくりは……」
「知っとるやぃか?」
 リョウコが瓶を持ってソニアから逃げたので、ヴィルヴェルはマサムネと並んで飲んでいた。そこでマサムネがとっくりに気付いたらしい。
「ふむ……まぁ、あんたなら良かろう。持っていけ」
 何だか意味ありげな様子だったが、酒の席でも語らぬのなら真実を知ることは出来ないだろう。ヴィルヴェルは小さく微笑んで、マサムネと盃を交わしてくぃっとやる。

 そうして宴の夜は更けてゆく。何だか焼き鳥が出そうだったりセクハラが起こりそうだったり、利き酒が飲み比べになったりと……イロイロと盛り上がっていた様子だが、一同が何とか眠りに付いた頃……。

 月を浮かべた盃を手に、クイは一人で立っていた。そのままそれを口に含んで剣を抜き、思い切り刀身に吹き付ける。
 血の跡を残していた刃から、汚れが洗い流され落ちてゆく。マサムネから貰った神酒で武器を清めているのだ。取り出した紙で刃を拭けば、白銀色が月光を反射して輝く。
「この剣で、何をするのか……」
 誰にとも無く呟いて、クイはきん……と刃を収めるのだった。

 こうして村の危機を救った冒険者たちは一同に見送られながら帰路に着く。マサムネは現職の杜氏の傷が治るまでは村に残ってくれるのだそうだ。
 昨日の酒が残っているのか、何人かがフラフラと千鳥足を見せていたというのは、きっと気のせいなのだろう。

 (おわり)


マスター:零風堂 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/08/20
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