くらげをジェノサイド!



<オープニング>


 此処は透き通るような青い海と、魚の干物や貝の干物が自慢の村。
「今日も良い天気だっぺ〜」
 純朴を絵に描いたようなような青年が、浜辺を歩いていた。
「さぁ、いっちょ海に出て、家で待ってるおっかぁのために美味い魚をとっちゃらんねぇ!」
 コキッコキッと腕の筋を伸ばしながら青年は言う……やたら説明口調だが、純朴な青年である。思ったことをいちいち口に出して解説したとしてもなんら不思議は無い。
「な……なんだべあれは?」
 だが、青年が海の近くまで近寄ると海面にぷかぷかと浮かぶ無数の物体が見えたのだ。何だか気持ち悪いなぁと思いつつも、海に出れなければ美味しい魚は捕まえられない。
 青年は恐る恐るその物体に近づくと……、
「くらげ……?」
 近づくとそれらが柔らかそうな半透明の物体だと判る、そして青年の知識の中でそれに一致するものは水母しか無かった。
 青年は確かな証拠を得るべく、さらに水母と思わしき物体に近づくと――ザッパーン! と海を割って巨大な半透明の物体が――


「アムネリアちゃんアムネリアちゃん♪ ペルシャナ、干しアワビって言う食べ物が食べたいなぁ〜ん♪」
 一体何処でそのような食べ物の情報を仕入れてきたのか、赤い実の・ペルシャナ(a90148)が眼を輝かせながら、上目遣いに、ストライダーの霊査士・アムネリア(a90272)を見上げた。
「む? なら丁度良い依頼があるぞ?」
 聞きたいか? と視線を向けるアムネリアにペルシャナはこくこくと頷く。
「海の食べ物が美味しいある村で、巨大水母が現れてな……村人達が困っているんだ」
「くらげちゃんなぁ〜ん?」
「うむ、水母。巨大水母は他の小さい水母を引き連れて海岸を占拠しているもんだから、村人は漁に出れない……結果お魚が食べられないんだ……解るか? 美味しいお魚が食べられないんだぞ?」
 やたら魚の部分を主張するアムネリアだが、それは多分に彼女の好みの問題である。
「はわっ、かわいそうなぁ〜ん!」
「そう、可愛そうなんだ。だからきっちりと巨大水母及び、子水母達を殲滅し、村に平和を取り戻してやってくれ」
 美味しい食べ物が食べられないなんてかわいそうなぁ〜ん! と、同意を示したペルシャナにアムネリアはうんうんと頷き、
「巨大水母の能力だが……まずはふよふよした体で相手の攻撃の威力を削る、次に触手で相手を捕まえてその口に子水母を詰め込む何とも恐ろしい攻撃をしてくる、この攻撃を受けた村の青年は暫くの間、唇が腫れてとんでもない面白顔になったらしい」
 両肩を抱えて、さも恐ろしげにアムネリアは言う……何が恐ろしいのかは受けてみれば解るだろう。
「ふに? わかったなぁ〜ん。巨大くらげちゃんと子分ちゃんを倒してくるなぁ〜ん」
「宜しくな。あと、終わったらちゃんと干しアワビを手に入れて来るんだぞ?」
 お土産待ってるから! と紫の猫尻尾が雄弁に語るアムネリアに手を振って、ペルシャナは一緒に冒険に出てくれそうな仲間を探し始めた。

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参加者
空色の風・トウキ(a00029)
うみねこサルベージのオーナー・ユフキ(a00342)
猪突妄進・スズ(a02822)
アフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)
若葉の射手・フィンフ(a19327)
幸せを呼ぶ黒猫・ニャコ(a31704)
夢猫・リュミナ(a52430)
ヒトノソリンの重騎士・マルベル(a52860)
NPC:赤い実の・ペルシャナ(a90148)



<リプレイ>

●白い雲
 空に太陽が輝く。
 正に夏! これぞ夏! まぁ、取り合えず全員脱げ! みたいなそんな暑さで太陽が輝いている。
 そんな輝く太陽の光の全てを跳ね返すように青く輝く海に冒険者達は来ていた。

「ん〜! 冷たくて気持ち良いにゃ♪」
 押しては引き返す波に踝まで漬かる様な位置に立ち、幸せを呼ぶ黒猫・ニャコ(a31704)は海水をパシャパシャと足で弾く。
「わー、本当♪」
 うみねこサルベージのオーナー・ユフキ(a00342)も、ニャコに並ぶと一緒にはしゃぐ。
 キラキラと透き通る海水は空気よりも本の少しだけ冷たくとても気持ちが良い、そしてこんな綺麗な海なのだ、さぞ美味しい魚や貝などが取れるだろう。
「早く巨大くらげちゃんと子分ちゃんを倒して美味しい干しアワビを入手するにゃ」
 ニャコはグッ! と握りこぶしを作ると、本日最大の目的である干しアワビの入手に意欲を示し、
「クラゲを口の中にほうりこまれるのはヤだケド、みんなのためにがんばりましょ♪」
 ユフキはそんなニャコの様子に微笑むと、頑張ろうねと頷いた。
「干しアワビ……魚…………」
 猫隠・スズ(a02822)も干しアワビと聞いては黙っていられない口なのだろう、だらしなく垂れた涎を、んあっ!? と慌てて拭き取る。
「ふぅ……えーっと、クラゲって成長してでっかくなった奴はヒトの子供を浚ったり、頭からバリバリ食べたりするんだろ?」
 そして何事も無かったかのように冷静さを取り繕うと、『うみのいきもの』と書かれた謎の本を手にして妙なことを口走り始めた。
「えっ!? クラゲってそんな恐ろしいナマモノだったんだ!?」
 そんなスズの戯言を、パシャパシャと水を弾いて戯れる女の子達を見つめ、嗚呼良いなぁ……でも何でボクはこんな格好しているんだろ? と、やたらヒラヒラがフリフリでラブリーな魔女っ子すーつなるものを着てきた、触手の森の・フィンフ(a19327)が真に受けてしまったようだ。
「うん、そんな危険生物を放置しておくわけにはいかないからな。おいしい干しアワビと魚……困っている村人達のためにも、きっちりと駆除させてもらうぜ」
 本気にしたフィンフに対し、スズは大真面目に頷くと頑張ろうぜ! と親指を立てる。
「キクラゲとは大違いだね、やっぱり海は怖いや!」
 フィンフもスズに親指を立て返す……クラゲを駆逐する事の大切さを改めて確認したようだ。
「はわっ! フィンフちゃん可愛いお洋服なぁ〜ん♪ でも、何でそんな格好なのなぁ〜ん?」
 何でなぁ〜ん? と、興味深そうに、かつ不思議そうな顔で見つめる、赤い実の・ペルシャナ(a90148)の澄んだ瞳から逃れるように、口の端を歪めながら、虚ろな眼で何処か遠くを見ながらだったけど。

●青い海
 暫く進むと、辺り一面に半透明な物体が浮かんでいた……そして中央辺りにでっかい半透明がある、アレが巨大クラゲなのだろう。
「くらげはトモダチではあるけど、悪いくらげは退治しなきゃな」
 その様子を見た、空色の風・トウキ(a00029)はニヤリと笑う……くらげを退治してあわよくば旅団名物の饅頭と酒の原材料をゲットして帰ると言う別の目的が彼にはあるのだ。倒した動物は食材にしてやるのが彼の優しさ……なのかも知れない。
「ほえ、くらげちゃんはプニプニして可愛いんだよっ♪」
 一方、夢見る乙女の表情で、夢猫・リュミナ(a52430)は語ったものである。確かにぷにぷにぷりぷりはしているが、あれが可愛いかどうかは個人の感性に拠るところが大きいと思われる。
「くらげ退治なぁ〜ん。くらげはいろいろな食べ方があっておいしいらしいなぁ〜ん」
 大きいのが居るからきっと食べでがあるなぁ〜ん。と、ヒトノソリンの重騎士・マルベル(a52860)がウンウンと頷く……その言葉に誘導されるようにリュミナはふらふら〜っと誘われるように小さいクラゲに近づき、両手に持ってじっと見つめる……見つめる。
 そしておもむろにカプ! と噛み付いた!
「でも、調理してない水母は美味しくないのにゃ……ってリュミナちゃん?」
 調理していないクラゲはただの塩分である……ニャコが言ったが時既に遅し、リュミナはむにむにとクラゲを租借していたものである。
「それじゃ、そろそろ行きますか」
 クラゲの着グルミを着てクラゲと指と指で意思の疎通を図るトウキや、しょっぱい〜と涙目になってるリュミナを無視して、スズは構える……浮き輪を。
「スズちゃんなんで浮き輪持ってるなぁ〜ん?」
「ふ、ペルシャナ……良く聞くが良い。もし俺が本気になったらな……」
 なぁ〜ん? と聞くペルシャナにスズは良い笑顔で振り返り、
「たとえ膝までの深さだろうと、溺 れ る 自 信があるんだぜ?」
 やたら自信満々に言た。どうだ! 凄いだろう! こんな真似中々常人には出来ないぜ! 見たいな。
「はわ! 凄いなぁ〜ん♪ かっこいいなぁ〜ん♪」
 と何だか良く解っていないペルシャナに素直に湛えられて居た堪れなくなって来たけれど。
「始めるよ?」
 色んなダメージによってガックリ膝を折ったスズに代わり、触手(強化型)と名付けたぬらぬらした鞭に新たなぬらぬらを加えてパワーアップさせながらフィンフが海に入ると――

 ザッパーン! と巨大な半透明のクラゲが海からその姿を現したのだった。

●クラゲを倒せ
「ぜりーみたいでぷるるんる〜ん♪」
 クラゲのしょっぱさから立ち直ったリュミナが両手を広げ、精神と肉体を破壊する美しい歌を歌うと海に浮かんでいた子クラゲ達が次々にパンパンパン! と破裂していく!
「みーんなまとめて、ぶっとばすよ!」
 そしてユフキが赤く透き通った矢を浮かんでいる子クラゲに放ち、ズバーン! と水柱が巻き上がりゼリー状に砕かれた子クラゲが辺りに飛び散った。
「俺が本当の親くらげだ……なんて……ぇ!?」
 そんな中で、子クラゲに網をかけて捕獲しようとしていたトウキを巨大クラゲは捕まえる! ガッつり掴まれるトウキ……このままではいけない! 面白顔になってしまう! もう既に、巨大クラゲの触手には子クラゲが掴まれているのだし!
「トウキちゃん、今助けるにゃ。ふよふよした体でも鉄をも切り裂くニャコちゃんの蹴りなら問題ないにゃ」
 そこへ走りこんだニャコが、トウキを捕まえている触手を蹴り上げる……ニャコの蹴りは海水を巻き上げて水飛沫と綺麗な光の弧を描くが、クラゲの触手はポヨンポヨンするだけで切れることは無かった。
「うにゃぁ。鉄は切れても水母は切れないなんておかしいのにゃ」
 何か腑に落ちない様子のニャコだが……いやいやと首を振るトウキの口に巨大クラゲは子クラゲを詰め込む。焦らず、ゆっくりと、じわりじわりと確実に! いっそいっぺんに詰め込まれたほうが楽だろうに……。
「トウキ! くそぅ、待っていろ今助けるぞ!」
 とか言いながら、スズは殺気を捨て去った無防備な構えを取る……助ける気は皆無のようだ。
 その間にも次々とトウキの口に詰め込まれる子クラゲ達……そしてもうこれ以上入らないよ、鼻からだけじゃ無くて耳からもクラゲがあふれ出してるよ! と言わんばかりにクラゲを詰め込まれている!
 スズは役に立たない……ならば、せめて回復を……誰かヘルプミーな視線をトウキはリュミナに送るが、
「え、えっと〜、えっと〜? こういうときは……あ、そうだこうだよね♪」
 リュミナは散々視線を宙に泳がせた挙句、一点の曇りも無い満面の笑顔で親指を地面に向けてゴットゥーヘルなジェスチャーをするのだった……その時トウキは腹をくくったものである、もう逝くしかないのだと。

 プッカー……とトウキが波に流されてくる……。
「ほふぇほ」
 トウキは言った、膨れ上がる頬と鱈子の様な唇で何を言っているのか解らなかったけれど……だけど! 気持ちは伝わった! 痛いほどに!
「トウキさんが生きて」
 そんなトウキの姿を見送って、ユフキは両の目から溢れる何かの液体を止めることが出来なかったものである。

「HAHAHA−! トウキはフラグの立て方がまだまだ甘いネー」
 トウキが完全に何処かへ流れていったころ、アフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)が海の中から唐突に現れた!
「なぁん!? ベンジャミンちゃん、何処から出てきたなぁ〜ん?」
 突然現れたベンジャミンに吃驚したペルシャナが問うと、
「これについては――」
「くらっげちゃんっはおいっしっかな〜♪」
 ズガーン!
 何か言い始めたベンジャミンの台詞にかぶらせるように、リュミナが美しい声色を披露し、呆然としながらも何か危険なものを感じたユフキが赤い矢に巻き込まれ、ベンジャミンは何処かへ消えていった。

「狩りはちゃっちゃと済ませて味見したいですなぁ〜ん」
 ソウルプレッシャーでマルベルが巨大クラゲを殴りつけると、ボコ! とその部分だけがへこむ。その痛みのためか、巨大クラゲはゆらゆらと触手を揺らし、手当たりしだいに掴もうとしだす!
「昔の偉い人は言いました。目には目を、歯には歯を、触手には触手を」
 フィンフはぬらぬらした鞭で、上手く巨大クラゲの触手を弾くが……巨大クラゲの触手の数はあまりにも多かった。さばき切れない触手がフィンフに伸びる!
「あ……」
 あの触手に捉まってしまう……でも、避ける手立ては無いし、ああ……ボクもトウキさんのようになっちゃうのかなぁ? とフィンフが覚悟を決めたその瞬間!
「女の子を護るのが男の仕事だろ!」
 スズがフィンフの前に立ち、身を呈して庇った! 無風の構えで弾き返す算段だったが、如何せんクラゲの方が強かった!
「あーれー?」
 案の定、そのままクラゲの触手に掴まれ、子クラゲを口に詰め込まれ始めるスズ……暫くして、飽きたおもちゃを捨てるように放り出されたスズにフィンフは駆け寄る。
「ふぃんふ……ふぁふぃふぁふふぁっふぁふぁ?」
 鱈子唇でもう何を言っているのか解らないが、『大丈夫だったか?』と言っているに違いなかった……スズの顔は晴れやかで、女の子を護った! 護ってやったぜ! そんな名誉の負傷を追った漢の笑顔だった。
 フィンフはそんなスズの手を握る、両頬を流れる熱いものが、心の襞をくすぐる何かが、とまらない。
「ふ……ふぃんふ……」
 俺の為に泣いてくれるのかい? とスズの視線は訴えてくる。
「違うんだ、スズさん……ボクは、ボクは!」
 フィンフは大きく頭を振ると、スズの手を強く、強く握り締める。
「ふぁふぁっふぇふふぁ」
 解っているさ、皆まで言わなくてもな……解っているさ……とやたらキラキラした笑顔で、そして震える手で親指を天に向け、最高の鱈子笑顔を見せる。
「スズさん!? スズさーん!? ぼ、ボクは……」
 女の子じゃないんだ……と最後までは言えなかった……。
「はわ? スズちゃん、フィンフちゃんは可愛いお洋服を着ているけど女の子じゃないなぁ〜ん。ちゃんとした男の子なぁ〜ん」
 後ろから見守っていた、ペルシャナが思いっきり真実を告げちゃったけれど。
「「……」」
 暫し、気まずい沈黙が流れ……ザッパーン! と一つ大きな波が来るとスズは凍りついたような良い笑顔のまま流されていった。
 ……フィンフはスズに一つ敬礼をすると、もう二度と振り返らなかった。それが優しさというものなのだ。

「にゃぁぁぁぁ」
 ニャコが泣きながら超巨大ぴこぴこはんま〜を力任せに振り回すと、ぴこぴこと可愛い音が鳴り響いて……へにょ〜んと巨大クラゲは倒れたのだった。
 そしてフィンフは流れていったスズの姿を青空に思い浮かべる。
「スズさん、敵討ちも取れなかったけど……別にいいよね?」
 そして疲れ切った顔で笑うのだった……青空のスズの口から何かも、白い煙のようなものが出ていたけれど。

●おもちかえり
「なんとか水母退治完了にゃぁ」
「「おお!」」
 にゃぁ♪ と報告したニャコ達に村人達は歓声を上げた。特に、後始末までしっかりとやったユフキには感謝の言葉も有りませんとご老体達が手を握って泣いていたものである。
 そして、ユフキが思い出したように、
「あ、ボクたち干しアワビが欲しいんだけど」
「どうぞどうぞ、もてるだけ持っていってください!」
 と言うと、袋に一杯の乾しアワビを渡された。
「わぁ、おいしそうな乾しアワビだね♪」
 袋を覗き込んだリュミナが人差し指を咥えて言うと、皆で分けようとユフキは笑い、
「これでペルシャナちゃんも美味しい干しあわびが食べれるにゃ」
「わ〜い、お土産なぁ〜ん♪」
 ニャコとペルシャナは喜び合っていた。

 海の向こうにでっかい夕日が沈む……。
「な、なぁ〜ん!」
 何故か海の中でクラゲを掴んでは口に運ぶヒトノソリンの少女を見守るように、クラゲの着グルミを着た男と浮き輪をつけた男が並んで座っていた。
 二人は、腫れ上がった唇から白い煙のよな物を吐き出しつつも、何かをやり遂げた顔で夕日を見つめ続けるのだった。


【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/08/21
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