【新米冒険者プニカ】冒険とは



<オープニング>


「依頼が来ている」
 彼女はそう話を切り出す。
「少々行った所にある村で、グドンが現れる様に成ったらしい」
 高い位置で纏められた青銀髪が揺れるのも僅か、淡々と言を進める。
 豚のグドンである事。其の豚グドンが畑荒らしている事。そんなに数は多く無い事。主に昼に現れて夕方には何処かへ行ってしまう事。
 一つ一つ、『視え』た事を話していく。
「昼に堂々と現れて目の前で荒らして行くのは、村人達にとって之程悔しい事は無い。力に劣り払う事も出来ないのだからな。だが、冒険者となれば話しは別だ。然程難しい事ではあるまい。確りと、退治してやれ」
 最後にそう言うと、一旦彼女はは、口を閉ざす。説明は、以上の様だ。

「では。行って来い」
 青銀髪の霊査士は淡々と、私達を見送る。
 私達は、冒険へ出掛けて行く。

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参加者
エンジェルの医術士・セリオ(a41115)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
ガリシアのブラッディローズ・クリス(a50005)
被害妄想天使・フレア(a53497)
エルフの邪竜導士・ビャク(a53909)
闇に魅入られし白雪・ラキュエル(a55077)
NPC:エンジェルの重騎士・プニカ(a90307)



<リプレイ>

●Punica
「――来たッ! 今度は畑を荒らさせないわよ、二人とも前に!」
 ガサガサッ、と森の境から子供くらいの人影が飛び出して来る。
 潰れた鼻をし、餓えているのか口から涎を垂らす……之がグドン。
「グドンめが、匂いに釣られおったな!」
 二本の大剣を引き抜く。みんなが構えを取る。
 メイスを握り直した時には既に矢が飛び交い、黒い焔も空を奔る。
 怒号が飛び交う。剣戟の響き、空気が変わった様に感じられた。
 之が、戦い……

「……グドンの来る方向ぅ? オラ達ゃぁグドンさおっかねぇからあんま近寄れ無ぇだども、ん〜……確かぁあっこの方へ帰ってた気ぃはすんだけんどなぁ……」
 朝、村に着いて一番に私達がした事は、グドンがどの方角から来るかの聞き込み。畑を護らないといけないのだから、来る方向が判っていれば少しは荒らされるのを抑えられるかも知れない。
「私達も、勿論全力は尽くさせて頂くつもりですが……最悪いくらか畑に被害が及んでしまうかも知れません。それは、ご承知下さい」
 エンジェルの医術士・セリオ(a41115)さんが村人に申し訳無さそうに告げる。其れに付いては幾らかは仕方無いと村人さんも言ってくれた。
「一見した所……、この村には囲いの類が殆ど無いようだが。やはり、グドンの害を減らす為にか囲いを作ってはどうだろうか……?」
「ですね、私もそれは作りたいと思ってました。いいと思いますよ」
杖を突きながらエンジェルの邪竜導士・ラキュエル(a55077)さんが軽く周りを見渡し、そう提案した。セリオさんも其れに頷く。
「じゃあ囲いを作れば楽に成るんですね」
 確かに、柵を作って囲ってしまえばグドンが畑に入れない様に出来る筈……
「そうねぇ、作るなら畑と森の境かしら? 柵でグドンが完璧に防げる訳じゃないけど、迂回させられたなら入ってくる方向特定しやすくなるわ。けどまぁ……昼までに作れるかと言うと、少し厳しいわね」
「あっ、そうですね。そんな簡単にはいきませんよね……」
 被害妄想天使・フレア(a53497)さんの言う事は尤もだった。柵だけでグドンの被害を無くせたらきっともっとこんなくグドン退治の依頼は少なく成っている事だろう。
「まぁ……、今後の為だ。俺達だけでは手が足りないし……村人に手伝ってもらったとしても、もし間に合わずグドンと鉢合わせしてしまっては村人を危険に晒してしまうからな」
 ラキュエルさんも、元々今後の為にだと言う。
「今回囲いは無しの方向ね。ピクニックは計画を立てた段階で始まっているものよ」
「皆、確かに村人の言う方向で間違いは無さそうじゃ」
 其処に村人から話を聞いて直ぐに外へ出ていた、エルフの邪竜導士・ビャク(a53909)さんが戻って来た。
「言われた方を見に行ったんじゃが、畑から森へ消えるような足跡がくっきり付いておったわ」
 どうやら裏付けを取っていた様だ。之で来る方向が大体は判った事になる。随分と遣り易く成る筈だ。
「良し、計画の次は行動じゃ。先の話の柵は時間的に難しくとも、鳴子を結えた縄を巡らすだけならば十分じゃし、どの様に畑に通路が走っておるかも見ておかねばなるまいて」
「私も手伝います、先ずはビャクさんが見付けた足跡のある辺りでしょうか?」
 持参した縄の束を持ち、光牙咆震閃烈の双刃・プラチナ(a41265)さんが腰を上げ、私も続く。
 みんなも立ち上がり、各々グドンが来るまでの準備を始めた。

●Adventurers
「ふぅ……、まぁこんなものじゃろうか」
 縄の最後の一本を幹に縛りつけ、プラチナが手をパンパンと払う。木と木の間に渡された縄は非常に低い位置であり、警戒の為の鳴子だけでは無く足を掬う罠の役割も付している。縄は足跡の在った辺りを念入りに、ぐるりと張っておいた。
「さて次は……」
 持参した袋から取り出すのは香辛料と生肉。皆の準備が整い次第肉を焼き、畑へ行かせない様匂いで引き寄せる積りだ。
 確実に終らせよう。早く解決し、村人達を安心させねば。プラチナがそう意気込みを新たにする。
「……何だか、だんだん緊張してきますね」
 大概の準備も整い後は待ち構えるだけといった頃、セリオが少し硬い表情で呟いた。
「ん〜、そうかしら? まぁ今回は依頼初めて、って新米さんも多いようだけど」
 難しい依頼では無いと、自然体で欠片も緊張している様子を見せないフレアに少しの羨望を覚える。弱音を吐く積もりは無いし、出来る限り頑張ろうと思うが……セリオは生き物へ力を振るう事は、自分が初めてだと言う事を除いても余り慣れそうに無かった。……他の者がどの様な想い、覚悟で今この場に臨んでいるのか。
「そう言えば……プニカさんも、初めてでしたよね?」
 エンジェルの重騎士・プニカならば同じエンジェルで年の頃も同じ、自分に最も近いと言える。
「えッ? あ、ハイそうですね。困っている村人さん達の為に頑張ろうと思っているのですが……」
 やはり顔には不安の色が見えている。浮かべる苦笑いも少しぎこちなかった。
「困って、苦しんでる人を助けるのが冒険者の遣るべき事……なのですが、初めてだし上手く出来るかどうか……」
「別に、初めてだからって気にする事はないわよ。冒険者の価値は経験じゃない、結果よ? 結果がちゃんと出せるなら、新米もベテランも何も変わらないわ」
 弱気のプニカをフレアが笑う。
「幾ら経験があったって、何もしないんじゃ無意味でしょ?」
「……そう、ですね。皆さんの役に立つには、何かしら行動を起さない事には始まらない、ですもんね」
「グドンとは食欲ばかりだと聞くが……村人が丹精込めて育てた作物を掠め取るとは全く以って不届き千万。業の深さをあの世で後悔させねばな」
 グドンへの怒りを顕にするビャクも、今回が初めての依頼。些かの緊張と不安は拭い切れ無い。ただ同じ初めての者へ不安を徒に煽らない様、努めて其れを顔に出しはしないが。
「そうそうこれ見よがしに荒らしていくなんて……私たちがしっかり何とかしなくちゃいけないわね」
 ビャクの言葉に、ガリシアのブラッディローズ・クリス(a50005)も頷く。
「今回特に、集まったメンバーには後衛が多い……逆を言えば前に立つのが重騎士の二人しか居ない訳だけれど」
 そう話しを続け、プラチナとプニカを見る。
「この場合は、層の厚い後衛を主力として戦うのがセオリーね。そういう時の前衛に期待する仕事があるのだけど……重騎士だなんてお誂え向きよね?」
「何、承知しておる。グドンめにこれ以上畑に立ち入らせる訳にもいかぬしな、皆の前に出て押し止める楯の役じゃ」
 得心しているとプラチナが応えた。
「成る程、皆さんの楯に成れば良いのですね」
「お願いね、なるべく手早くいきましょ。身体を張って止める……自分が多少の傷を負う事は気にしちゃ駄目よ?」
「ハイ……、解りました」
 身体に不釣合いな楯を改めて握るプニカの頭を、クリスがわしゃわしゃと撫でた。
「日も高くなってきたし、そろそろかしらね……。気を引き締めて行くわよ」
 フレア言葉に皆が頷く。後は、現れるのを待つばかり。

 各人が一つの通路に一人と言う隊形で待ち続けて暫し。太陽が真上に来て少し経った頃。
「――来たッ! 今度は畑を荒らさせないわよ、二人とも前に!」
 カラカラと鳴子の音が響いた。クリスが叫び、既に弓を引いていた。
 場所は読み通り足跡の在った辺り。直ぐにガサガサッ、と森との境から子供くらいの人影が飛び出して来る。
 どうやら背が低い分、縄に気付き易かったのかも知れない。縄は鳴子とは気付かず跨いだ様だ。
「グドンめが、匂いに釣られおったな!」
 プラチナが肉を焼く手を止め、二本の大剣を引き抜く。皆が構えを取る。
「来たか……!」
 ラキュエルが突いていた杖を高く掲げると杖に絡み付く蛇のレリーフの周りに黒い焔が生じ、塊と成って一直線にグドンへ向け空を奔った。
「――ボブゥゥゥッ!?」
 焔の一撃を受けたグドンが悲鳴を上げる。手に番えられていた矢が明後日の方へ飛んでいった。
「むっ、弓を持った者もおるようじゃ、後ろの皆、気を付けいッ!」
「グドンの癖に生意気ね、……先ずは足止めッ、と!」
 クリスの手の中に作られた暗く透き通る矢が、風を切りグドンの影を射抜いた。びくり、と一瞬身体を振るわせたかと思うと縛られた様に動かなく成る。
「プニカ殿、無いより有った方が良いじゃろう! ほれ!」
「あっ、プラチナさん済みませんッ」
 肉を焼く匂いの誘導も功を奏したか畑の最外円、森との境のぎりぎりの所でグドンと相対する事が出来た。畑の外周を走って来たプニカや自分、そして皆の鎧に気を送り込みプラチナが強化して行く。
「容赦は無用よ、早く倒した分だけ畑が被害が減るわ!」
 其れに合わせる様にフレアもプニカのメイスに力を注ぐ。
「ハイッ!」
 一回り大きく成り力を帯びて輝く其れを振るった。
「うむ、このまま押される事さえ無ければグドンを畑に入れずに済みそうじゃな」
「ああ、ニードルスピアは使わなくて良さそうだな。あれは畑を傷付け兼ねない……」
 先ずは一安心か、と状況を見つつビャクとラキュエルが畑に近付くグドンを的確に黒焔で打ち抜いて行く。
 わらわらと出て来たグドンに対し、前衛は二人だけではあるがこの様な攻撃で対処が出来ている。森と畑の境は余り広く無い為、後衛は畑の通路から出られず少々身動きは取り辛い。
「皆さんけ、怪我をしたら直ぐ治しますから、言って下さいねッ……ひゃぅッ!?」
 グドンが放った矢が、セリオの目の前を掠めて近くの農作物に突き刺さった。
 思わず刺さった矢を見てしまう。原始的な作りで、御世辞にも『確りした』とは言えないが、当りさえすればこの通り。其処には明確な殺意が在った。当然と言えば当然かも知れないが……此方だって同じ事をしているのだ。
「やっぱり、ちょっと無理かな……」
 日が高くなるに連れて強く成って行った身体の震え、戦いが始まれば忙しさに忘れられるかと思ったが……戦闘中だからこそ、自分達のしている事を強く意識してしまう。
 ……終るまで、忘れた振りをするしか、無さそうだ。

「これで全部……? ちょっと少ないかしらね」
 立て続けに弓を射ながらも、油断無く辺りにクリスは目を走らせる。弓を持つグドンが森側に居る為ハッキリと見渡せる訳では無いが、どうやら之以上数が増えて行く事は無さそうである。
 一匹見かけたら二十匹は居るというグドンの法則(自説)を鑑みて油断はしない。実際、グドンは繁殖力も高く向かっていた途中で増えていたとしても可笑しくは無い。
「元々少ない、と言う話しだったからな……」
「こちらの被害もほぼ無きに等しい、問題はあるまいて」
 又一匹、ラキュエルの焔を受けグドンが崩れ落ちる。クリスを挟む様にしてラキュエルと対面にある通路に立つビャクも同意する。
「当然よ、私が居るのにそう簡単に怪我はさせないわ」
 フレアが得意げに言う。幾らかの矢が刺さりはしているものの、セリオと共に回復に専念し逐一回復させている為致命には程遠い。
「有難い、わしらが下手に動いて畑を踏み荒らしては意味が無いからなぁ」
 其の矢も着実に数が減って来ていた。
「あと少し、ですね。気を抜かずに……、頑張りましょう」
 セリオが包む様に手を掲げる。辺りは幾度目かの癒しの光に包まれた。

 硬質な音を立て、無骨な手斧が大剣に阻まれた。
「ふふん、甘いのぅ……それしきで妾は倒せんぞッ!!」
 一対の大剣で、時には其の己の身体で、グドンの力を受け止める。其れでも其の小さな身体は折れはしない。
 裂帛の気合と共に、続け様に二本の刃が大上段から振り下ろされ、グドンを裂いた。もう数は残り僅か。
「……んッ、んんッ!」
 プニカも構えた楯で必死にグドンの攻撃を耐えていた。絶対此処は通さない、楯と成る為に。
「プニカ殿ッ、もう少しじゃ頑張れッ!」
 自分の目の前のを倒したプラチナが、プニカの援護へ回りグドンを切り倒す。
「前衛の二人お疲れ様ッ! しっかり重騎士の仕事果たしてるわね、もう大丈夫よ、……そしてこれが私の仕事の仕上げ……ッ!」
 強く引き絞られたクリスの矢が、最後のグドンの眉間を貫いた。

 グドンが全て退治され、再び平穏を取り戻した村。
 今村では冒険者達の勧めもあって森との境に柵が作られていた。勿論冒険者達も手伝っている。
「柵があれば又来たとしてももう少しましに成るわね。後片付けもしっかりと……っと。みんな、帰るまでがピクニックだからね?」
 一応用意して来たけど居合い切り出すまでも無かったわね、等とフレアが魔導書を懐に仕舞う。
「作りもそれなりにしっかりした物にせねばなぁ。まぁ、材料は周りに幾らでもはえておるし、時間もあるからのぅ」
「いやぁ〜、さっすが冒険者の皆さんだども。こんなちっこい子もおったでにようやってくださった。ちょぉ野菜らに矢ぁささっただけだぁ全然被害に入らんでなぁ」
「ども……。まぁ、これでも冒険者だから、な……」
 木を切り倒すのを手伝うプラチナの傍らで、村人の感謝にラキュエルが顔を赤らめて照れていた。

「ふぅむ、何じゃ穴を掘るのを手伝ってくれとは……グドンを埋める為か。確かに死体は片付けねば成らん訳だがなぁ……」
「ここまでが、私達のやるべき事だと思うんです、私」
 此処は柵を作っている境から森へ少々奥に来た所。
「私達は畑を護ろうとして、グドンさん達と戦いました。命を奪いましたし、私達も奪われそうに成りました」
 一匹一匹を埋葬しながらセリオが手伝ってもらったビャクやプニカに語る。
「畑を護る事は村人さん達を護る事、でもグドンさん達も自分達が生きて行く為……どちらも、仕方が無かったのだと思います」
「ふむ……まぁ、そうじゃな。そう考えるのも良いだろうて。生きて行く為には例え草木だろうと何かしら、他者の命を貰わねば生きては行けん」
「私達は、何を護らなければ行け無いのか……其れを良く考えなくちゃ。私達は同盟諸国の冒険者ですけど、他国には他国の冒険者さんが居るんですものね」
 背に立つ二人の言葉を聞きながら、セリオは最後の一匹に土を被せ……
「私、初めての『冒険』を決して忘れないよう、心に……刻みます」


マスター:新井木絵流乃 紹介ページ
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参加者:6人
作成日:2006/08/31
得票数:冒険活劇10 
冒険結果:成功!
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