<リプレイ>
●先行 「支援物資については皆の要望を聞いてやってくれ。あと貴殿の名と村長の名を聞こう、先行して説得するのに余計な手間は省きたい。手紙か何か証拠の品があれば貸して頂ければありがたい」 六風の・ソルトムーン(a00180)が行商人に声をかける。 急がしそうに支援物資を集めて周っていた彼も、実際に現場に行くほどの力はない。 それだけが悔しく、それだけに命をかけて向かってくれる冒険者に、改めて頭を下げる。 「私はレミアム、村長はモンドです……証拠代わりにはこれを……」 そう言って首飾りを外し、ソルトムーンに手渡したレミアムはそのまま彼の手をぎゅっと握り、力を篭める。 「どうか……どうか、村をお願いします、どうか……っ!」 心配と不安に押しつぶされそうになっている彼に、ソルトムーンは鷹揚に頷いて見せた。 「そのヒゲリンと投網は置いていく、物資の運搬に使ってくれ」 それだけ言い残すと、護身用のナイフに服、安全靴と、最低限の装備だけの軽装で彼は村へと急行する。 普段はちょ〜トロい術士・アユム(a14870)も今日ばかりは大慌てで行動をする。 ただし、間違いのないように。焦ることと慌てることはまったくの別のこと。
●後発 「土嚢の麻袋と結束用ロープ、それと……スコップ、ツルハシ、木の杭、木槌、斧、頑丈な命綱、防水マント、厚手のブーツ、保存食等を人数分。うん、ピッタリだナー」 前線用特殊強化医療服着用者・シュルツ(a02240)はレミアムに頼んでいたものをリストを身ながら確認する。 鮮やか、といって言いのだろう。 麻袋をもてるだけ持っていく。できれば、200枚以上集めておくと言っていた鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)のは流石に無理だったようだが。 それでもこちらの要望にはほぼ完璧に答えてくれていた。 「『なるべく早く駆けつけて』『東の森で堤防作ってから』『村に行って村人達のフォロー』って段取りで」 指折り数えるように、戦う商人・リフィ(a06275)が作戦を仲間達に最終確認。 ここから先は5日間の、荷物を背負っての強行軍。 冒険者でも堪える。 でも、疲労に沈む顔は村人達には見せられない。 「お願いします……お願いします、皆さん。私の村を、救ってください……」 一人一人の手を取り、頭を下げるミレアムに答える異邦人・コウイチ(a00462)と翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)。 「どんな事でも、死人を出したくはないからね」 「日頃救助団で鍛えている技と力を発揮するよ!」 「わたくし、雨は嫌いじゃありませんのよ。でも、人を困らせる雨は好きじゃありませんわ。私の演奏で、村人の不安を少しでも減らす事が出来るように、頑張りますわ」 夢魔の微笑み・メル(a49644)はマントと防水靴を仲間達に手渡しながら、意気込みを口にする。 全員に干し肉の生姜付けを配ろうと思っていた灰色の岩山・ワング(a48598)だったが準備する時間が無かった。 その分、有り余るパワーを生かすように、移動に邪魔にならないように気をつけながら、荷物を少しでも多く持ち、出発をする。
ここから5日。どれだけ体力を温存できるかが一つ目の勝負。 ●避難 「村長のモンド殿は居られるか? 我は希望のグリモアの冒険者ソルトムーンと申す」 そう言って彼は預かってきた首飾りを取り出して見せる。 夜間に何事かと訝しがっていたモンド村長も、冒険者が村の行商の所持品を持って現れたことに、何か大変な事態なのだろうと着る物もそのままに応対に出る。 ソルトムーンは注げた。 レミアムの依頼の霊査から、川の氾濫の結果が出た事、冒険者と行商人が向っている事。 そして、村長が飲み込み頷くのを待ち、先を続ける。 「事態は急を告げている。皆懸命に動いて居るが最悪の事態も想定せねばならん。村人に貴重品だけもって村長卓や南の食料庫に避難の指示を。家畜もなるべく建物に入れてくれ」 強烈な風雨の中で、村の若い衆が呼び集められ、各家に向かうまでにはそれほど時間を要しなかった。 良く村長を信頼しているものだ、そう感心をしながらソルトムーンは村長宅と食料庫の隙間を戸板で塞ぐ作業に移った。
●不安に包まれた村 ヒドイ雨の中、足元は泥濘歩くのも困難になっていた。 既に村一面にたまった水は踝の上までが浸かるほどの水量となっている。 見れば向うに、よく通る声を張り指示を飛ばしているソルトムーンがいる。雨で濡れるのも構わずに、食料庫と村長宅への村人の振り分けを行っているようだ。 冒険者達は顔から疲れを追い出し、村に足を踏み入れた。 気付いた村人達が足を止め、その中の1人が「せっかく村に着てくれた旅人さんに申し訳ないが、ここは危ない、あの冒険者さんの指示に従って避難してくれ」と声をかけてくる。 「俺たちは冒険者だ」 ストライダーの忍び・サースカス(a55290)が助けにきたと答える。 「伊達にデカイんじゃねぇぜ。楽しみにしてな」 「水害の爪あとは俺が取り払う。ぬれてしまったら掃除をしよう。泥が押し寄せたら、最後の人掬いまでとり省く。当然水門も直す。だから、そんなくらい顔をしないでくれ」 困惑し不安顔の村人達にワングとノリスが言う。 でも、簡単なことじゃない。ここに移動する間に村人達が見たものだけでも被害はずっとヒドイ。 だからいまだに不安顔な村人達へと、ナタクがバンっと胸を張って、村中に響けと声を張る。 「この村を救う為には、皆の村を護りたいって情熱と団結が何より必要なんだ! ボク達もお手伝いするから頑張ろう?」 「確かに自然の力は強大です。でも、私達冒険者とこの村を愛する村人の皆さんが協力し合えば、必ず困難を乗り越える事が出来ますわ」 メルも後に続ける。 それを聞いて、父親に抱きかかえられて移動しながらこちらを向いた男の子。 気付いたコウイチは親指を立てて答えた。 「大丈夫、任せて」 「……ほんとう?」 「おねぇちゃん達がきたからには、絶対大丈夫☆」 同じように見上げて来る子供達にコンペイトウを渡しながら笑顔を見せるリフィ。 つられて微笑む子供達の頭を撫でて、彼らは森へと向かう。
「俺達はここで作業するから、水門に行って状況を見ててくれやばくなったら報告頼む」 「偵察や監視ハ忍びの本質ナー。でモ、無理はしないでナー?」 だーいじょうぶ、任せてっ! 走り出すクィンスにこれを持って行って、とナタクは笛を投げて渡した。 その後ろをサースカスが追っていく。 彼も、水門近くの監視に向かったのだ。
●それいけハイパーレスキュー! 水門の周囲に防水柵を作るために、まずは補強するための木材と土嚢を作るためノリスは乾いた土を探す。 だが。1週間近く降り続いた雨で乾いた土は何処にも無かった。 「泥土デやるしかないナー」 シュルツは中身が泥土で脆いために、積んだ後に投網を掛けて木の杭を打ち、少しでも強度をあげようと考えていることを話すと、仲間達はそれなら林の木を切って枠組みを作り、その中に土嚢を詰める形で強度を増すのはどうかと提案。 作戦は概ねそれで決定した。 「村の方に水がいかないよう、しっかりと組まないとね」 「被害は最小限にしてぇもんだな」 む〜、と唸りながらアユムが水の流れを見つめる。北東方向からの水量が極端に多く、少し勢いを減じて東から。 ここ数日で雨を吸いきったせいか、森の中は村よりもさらにコンディションが悪かった。脛の辺りまで水位が上がっている。 しかも元が乾いていた村の地面と違い、泥と腐葉が水を吸い、一歩一歩を確実に進まなければ足を取られそうになる。 田舎の村にとっては、林というのもけっこう財産だったりするからねぇ。 極力ロスのないように、経済的な意味でも林を『壊して』しまわないよう気をつけよう。 リフィの言葉に、ナタクとコウイチが頷く。今だけじゃない。これからもある。 「全てヲ助けル為にモ、俺達に出来る事ハ全部やらなきゃネー」
リフィ、ナタク、コウイチが斬鉄蹴りで、ノリスとワングが大地斬で木を伐採していく。 後々のことも考え、育ちの悪いものから選んでいく。 その横では、アカネやリュウも加わって土嚢が作られていく。 泥土を詰めた土嚢に効果があるかはわからない。 それでも懸命にスコップで袋に詰めていく。
杭を直接地面に打ち込み、切り出した木を、木の間に通して作った柵に網を渡していく。 ……なんとか、形が出来上がった。 その時、水門の近くで笛の音が響いていたのは、距離と雨の音に掻き消され届かなかった。
●水門 柵を作った冒険者達は、二手に分かれる。 村へ戻る者たちと、水門へ向かう者たちだ。
水が流れ込みそうな所を観察し、ワングは土嚢で堤を作る。 止めるより流れを誘導するつもりで作った土嚢は、なんとも不安が大きいが何もしないではいられない。 羊の避難に当たっているのはリフィとメル。 獣達の歌で落ち着かせ、ゆっくりとなるべく川から離れるように誘導していく。
村に戻ったノリスは、呼び出したフワリンに土嚢を乗せて移動を開始する。 それほど多くは乗せられないが、水に足を取られながら歩いていくよりもずっと楽だ。 それでも、進まぬ歩みにやきもきする心を沈めるように深呼吸を繰り返し、じっと到着の瞬間を待っていた。 水門に向かったもの達は、その異変に気付いた。 水が溢れている。それも、膝よりも高く、流れも急で一歩進むのにも力がいる。 シュルツが呼び出したフワリンも怖がりまっすぐに中々進んでくれないのをなんとか宥めながら、水門へ向かい進んでいく。 ようやく到着をすると、木の上のクィンスとサースカスが手で水門を指し示す。 そこでは小さな渦が出来上がるほど、引っ切り無しに流れ出る水流。 大きく波打つその奔流は、近づけば簡単に押し流されてしまうだろう。 フワリンにロープを持ってもらおう、最初にシュルツはそう提案をするがクィンスに「近くで力を使っちゃったらフワリンは消えちゃうよ」と止められ、代わりに全員に命綱にとロープを渡し、その一端をくくりつけた大木の幹でその保持に努める。 救命胴衣とヘルメットを身につけたナタク、コウイチ、それにリュウが水門へと向かう。 一歩一歩が、ともすれば流れに飲まれそうになる危険を抱えた冒険。 それでも、一歩一歩水門へ向かい進んでいく。 暗い夜闇が染め上げる漆黒の水面は、まさに奈落の底に繋がっているかのような不安を沸き立たせていた。
だが、その水面に淡い光が燈る。いや、水の底、地面が輝いているのだろう。 不安定に水面に反射しているそれは、幸運の領域。水底に沈んだ遠い月のように、それは漣の中で彼らをほんの少し勇気付ける。 腰までの水位で重くなる足取りでも一歩一歩確実に。 立って居られないような強烈な水流の中でまさに水を掴むような感覚で、水門に拳をぶつける。 ゴボゴボと足元の不安定さと水の流れが威力を削るが、それでも何度も何度も打ち付ける。 「何度でも、壊れるまで!」「はぁぁぁぁ!」
何度も打ち付け、拳に血が滲むほど打ち付け。 やがて、ピシッ……と乾いた音が、確かに耳に届いた。
ピシ……ッ……ビキッ……バキバキ……ッ
水門に生まれたヒビが広がっていく。ヒビは亀裂となり、やがて、蜘蛛の巣を広げたように水門全体に一瞬だけその範囲を延ばし…… 溢れ出た水流が跡形も無くなるほど水門を内側から壊し開けながら押し寄せる。
村人の収容が完了し、ソルトムーンが有事に備え村の様子を眺めていると村長が隣へ立つ。 「……顔には出されぬが、心配そうですな……」 「万事上手く行けばそれでOK。年を取ると心配性になるものでな、無駄な労力になれば良いのだが……」 遥か向う。視線も届かぬ場所で戦う年若い仲間達を思い浮かべる。 「若いのは両手一杯に荷物を持とうとするからなぁ、こぼれ落ちる時がある。年を取ると自分の手が全てを抱えれる程長くは無いのを知るよ」 「ぜ〜んぜんだいじょ〜ぶなぁ〜ん、壊すんが得意な人たちが〜ぎょ〜さんいってるから〜、水門は〜すぐ開くんやなぁ〜ん。川の水も〜ちゃ〜んと流れていくんやなぁ〜ん」 炊き出しや治療の合間に、子供達を抱きしめながら優しく声をかけているアユム。 水門へ向かった者達。 全てを救いきれなくても、挫けることがないように、と祈らずには居られない。 全てを救えると、傲慢でもなく信じられるのは、年若いからこそであり、とても素晴らしいことなのだから。
「さて、水が来たな畑は守って見せるぜ!」 水流。いや、濁流を前に、ワングは幾つもの鈎爪を持つ形に変化させた鎧に、ロープを引っ掛け、流れの前に立ち地面に穴を空けて行く。 その強烈な流れが穴の一つや二つで留められるわけもない。 そう理解は出来ても……飲まれそうになる意識を奮い立たせながら彼は剣を振り上げる。
水流で堅い何かに叩きつけられ、一瞬意識が飛んでいた。 だが、体は流れてなかった。 大樹にしがみつくようにしながら、懸命にロープを引くシュルツと、クィンスの手から伸びる蜘蛛糸がコウイチとナタクを捉えている。 頭を振って朦朧とする意識を取り戻すと、ナタクがロープを伝って濁流の中、大樹に向かって進み始めているのが見えた。 「こんな所で、死ぬ訳にはいかないな」 コウイチも同じくロープを手に、仲間の元へと懸命に進み始めた。
流れていったリュウは水泳が得意らしいし、サースカスが飛び込んで助けにいったから大丈夫だろう。 多分。
●雨上がり 「モンスター相手なら腕の奮い様もあるが自然のなんと雄大な事よ」 ソルトムーンは空に浮かぶ太陽を見上げた。 雲の切れ間から覗くそいつはいつもどおりに地上を照らし、たまった水に陽光が照り返し一面は光の柱が立っているようにさえ見える。 雨が止めば、あとは水が引くのを待つだけだ。元々、水はけはそれほど悪い土地でもない。 数日もすれば大丈夫だろう。そう村長と話していた彼の目に、肩を貸しあいながらこちらへ向かって歩いてくる人影が見えた。
アユムはタオルと暖かい食事を差し出しながら皆の帰りを迎えた。 「お帰りなさいやなぁ〜ん」 ただいま、と戻った仲間達に笑顔を向ける。 「ん〜、この辺だったら芋かな〜。今から植えても時期に間に合うし、高値つきそうだし……」 柵が崩れたことで、流された作物たち。 「雨ガ晴れたラー、村の周囲も確認だネ。修繕なラ手伝うかラー頑張って直そうナー☆」 羊小屋も見事に原型を留めていない。 守り切れなかったものが幾つもあった。
それでも、生きている。 村も人も森も。
だから、きっと大丈夫。
人々の笑顔のため、がんばれ冒険者達! それいけハイパーレスキュー!
〜END〜

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参加者:10人
作成日:2006/09/15
得票数:冒険活劇11
ほのぼの2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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