【PARADISE LOST】戦火の幻影



<オープニング>


●襲来、ピルグリム略奪部隊!
 冒険者の酒場にて、冒険者が思い思いにくつろいでいると、エンジェルの霊査士・エリアードが顔を出すなり口を開く。
「……冒険者の皆さん、依頼です。急ぎ、とある村に向かってください」
 何事かと集まってくる冒険者を前にして、エリアードは事の詳細を説明し始めていた。
「エンジェルの村が、ピルグリムの略奪部隊に襲撃されようとしています」
 その言葉に、冒険者の間に僅かに緊張が広がる。
 とりあえず、彼等が落ち着くのを待ってから、エリアードは言葉を続けていた。
「……エンジェルの村を襲撃しようとしているのは、30匹前後のピルグリムの群れです。それを率いるのは、炎を操る融合型ピルグリム。皆さんが辿り着く頃には、村は戦火に包まれていることでしょう」
 どうやら、非常に切羽詰まった状況らしく、一刻の猶予もないらしい。
 エンジェルの村を襲撃し、忌まわしき『天使狩り』を続けるピルグリムの群れ。彼等の目的は未だに明らかにはなっていないが、善良なエンジェル達が連れ去られるのを、黙って指をくわえて見ているわけにも行かないだろう。
「ピルグリムの略奪部隊を撃退し、一人でも多くのエンジェルを救出するために、皆さんの力をお貸し下さい。
 同胞をよろしくお願いします……」
 そう言って、エリアードは冒険者に向かって静かに頭を下げると、依頼に赴く彼等を送り出すのだった。

マスターからのコメントを見る

参加者
赤烏・ソルティーク(a10158)
運命の担い手・ロック(a11077)
金色の闇・シャア(a12391)
鉄壁の無色ペリカン・トウマ(a16023)
白華の結風・ナツキ(a18199)
蒼輝神翼・ユウリ(a18708)
光と風のセンリツ・ウィンダム(a19114)
白と銀の幸せの医術士・リィルアリア(a34182)
日燐陽車・アレイア(a41247)
絶えぬ波音・アニス(a50019)


<リプレイ>

●燃え盛る村
 冒険者一行がエンジェルの村に辿り着いた時、小さな村は30匹のピルグリムの群れによって蹂躙されていた。
 所々から火の手が上がり、焼け出されたエンジェル達が次々と囚われている。
 そこに、一片の躊躇も慈悲もない。
「ふん、好き放題やってくれますねピルグリム風情が……」
 吐き捨てるように呟きながら、赤烏・ソルティーク(a10158)は仲間と共に駆け出していた。状況は刻一刻と移り変わっている。その中から、一人でも多くのエンジェルを助け出すためには、時間があまりにも足りない。
 彼等は救出活動に取り掛かるため、手分けして村の中へと駆け出していく。
「ゴキブリじゃあるまいし、どこからこんなにわいて出て来やがったんだッ」
 ウェポン・オーバーロードで強化した得物を手に、美しき茄子色ペガサス・トウマ(a16023)は目の前に飛び出してきたピルグリムに攻撃を仕掛けていた。
 キルドレッドブルーの力と同化した氷炎の一撃が、ピルグリムの皮膚を深々と貫いていく。
 炎と氷に覆われ身動き出来なくなるピルグリムに、絶えぬ波音・アニス(a50019)の斬鉄蹴が繰り出され、鉄すら両断する蹴りの一撃は傷付いたピルグリムに止めを刺していた。
「可能な限りなんて、中途半端なことを言うつもりはないわ。あたしが見ている前で、一人の犠牲も出すつもりはない!」
 決意を胸に、彼女達はエンジェルの姿を求めて動き出す。
 彼等が見据える先、まだ健在な建物を襲撃するピルグリムの姿を確認し、彼等はその場に駆け付けていく。
「縛鎖毒蛇の牙宿し、汝が動きを封ず!」
 咄嗟にソルティークの解き放った暗黒縛鎖が、ペインヴァイパーの力と同化して建物の周囲に群れ集うピルグリムを絡め取っていた。
 彼等は邪魔なピルグリムを排除すると、建物の様子を確認する。
「ピルグリムが襲撃していたと言うことは……」
 まだ、建物の中にはエンジェルがいるはず。
 仲間達が周囲の警戒を続ける中、蒼悲天翼・ユウリ(a18708)は壊された扉の奥にいるであろう同胞の姿を探し求めていた。
「私達は同盟の冒険者ですなぁん。皆さんを助けに来ましたなぁん」
 優しき銀白の医術士・リィルアリア(a34182)も必死になって呼び掛けていると、即席のバリケードの奥からエンジェルの一家が顔を出す。
 彼等は同胞であるユウリの姿を確認すると、安心したような表情を浮かべていたが、
「ここは危険よ、私達と一緒に来て!」
 ユウリの放った言葉に応じるように、慌てて避難を開始していた。
 救出した4人のエンジェルを引き連れて、彼等は襲い掛かるピルグリムを蹴散らしながら次なる建物を探し求める。
「近くに人の住んでいる建物は……?」
「えっと……あっちです!」
 アニスの言葉にエンジェルの男性が応じると、冒険者は彼が指し示した建物へ向かう。
 しかし、そこにもピルグリムの姿はあった。
「ここにも、先客か……」
 火の手は恐ろしいスピードで村を呑み込んでいる。迷っている余裕はない。
 トウマは焦る気持ちを抑えながら、一人でも多くのエンジェルを助け出すため、忌まわしきピルグリムに立ち向かっていた。

●破壊の傷跡
 一方、運命の担い手・ロック(a11077)達は、焼け落ちた建物の合間を縫いながら無事なエンジェルを探し求めている。
「……酷いですね」
 おそらくは、融合型ピルグリムの仕業だろう。
 無惨に焼き払われた建物を見渡しながら、彼等は考える。どうやら、融合型ピルグリムは無差別に火を放ち、焼け出されたエンジェルを次々と捕まえているらしい。
 合理的な方法ではあるが、手段を選ばぬ強引なやり方に、彼等は怒りを隠せないでいた。
「……エンジェルの命を何だと思っているのでしょう」
 光と風のセンリツ・ウィンダム(a19114)も震える声で怒りを露わにしている。
 ピルグリムの目的は未だに分かってはいない。だが、連中にとってエンジェルという存在は物でしかないのだろう。
 ただ、刈り取るだけの存在。
 ならば、民を守る冒険者として、奴等の行動を阻止しなければならないだろう。
「いましたわ!」
 闇の灯・シャア(a12391)の声に仲間が振り向くと、彼女の見詰める先、そこに、複数のピルグリムの姿があった。
 彼等は焼け出されてボロボロになったエンジェル達を、無造作に抱え運んでいる。
 傷付き、必死に助けを求めるエンジェルの姿を確認し、彼等は怒りのままに駆け出していた。
「やらせませんわっ!」
 シャアの放った粘り蜘蛛糸が、逃げ出そうとするピルグリムの身体を絡め取る。
 だが、全てを捕まえることは出来ない。
 覆い被さる蜘蛛の網を避けかわし、エンジェルを抱えたまま逃げ出そうとするピルグリムに、白華の結風・ナツキ(a18199)が駆け寄りざまに達人の一撃を放つ。
「逃がしません、逃がすわけにはいきません!」
 研ぎ澄まされた一撃が、正確に叩き込まれていた。
 ウェポン・オーバーロードに裏打ちされた刃は、エンジェルに当たることなく、ピルグリムの身体だけを捉える。
 だが、一撃はピルグリムの戦意を奪い取りながらも、それだけでは逃走を阻止するまでには至らない。
 必死に追いすがるナツキ。
「前回のようなヘマはしませんよ……」
 そこに、何時の間に回り込んでいたのか、ロックがピルグリムの退路を塞ぎ、斬鉄蹴を繰り出していた。
 襲い掛かる必殺の一撃に、ピルグリムは半身を切り裂かれ大地に倒れ込む。
 その手から、ナツキはエンジェルの子供を奪い取っていた。
「大丈夫です、もう、大丈夫ですから……」
 泣き叫ぶ子供を宥めながら、ナツキは仲間の元へと後退する。
 そこでは、赫灼朱雀・アレイア(a41247)達が身動き出来ないピルグリムを殲滅し、あるいは、自由を取り戻し逃げ出そうとするピルグリムの逃亡を阻止していた。
 シャアは薔薇の剣戟にて逃走しようとするピルグリムの息の根を止め、戦況を確認する。
「こちらは、片付きましたわ」
「こっちも、何とか倒したぜ」
 その場にいたピルグリムを倒しきり、彼等は5人のエンジェルを確保していた。
 多少傷付いてはいるが、ウィンダムの奏でる高らかな凱歌がエンジェル達の傷を癒し、恐慌状態の彼等を落ち着かせる。
 だが、油断は出来ない。
「……何か来ます」
 ナツキの言葉に目を向けると、瓦礫の向こうから邪魔な障害物を吹き飛ばすような勢いで、白い大きなピルグリムが駆けてくる。
 立派な角を生やしたそれは、角の先端や背中にある器官から炎を噴き出し、2匹のピルグリムを引き連れながら冒険者の前に立ち塞がっていた。
「早速、本命のお出ましですね……」
 姿を現した融合型ピルグリムに、シャアは不敵な笑みを洩らす。
 手強い相手だろうが、負けるわけにはいかない。
「貴方達の相手はこちらですよ?」
 救出したエンジェル達を狙われまいと、立ち塞がるロックに……融合型ピルグリムは燃え盛る炎を撃ち出し、戦いの火蓋は切って落とされていた。

●焼き尽くすもの
 融合型ピルグリムとの戦いは、熾烈を極めていた。
 何しろ、冒険者側はエンジェルを庇いながらの戦闘である。必然的にエンジェルを守るために戦力を割かれ、苦戦を余儀なくされていた。
 燃え盛る炎がシャア達の頭上に降り注ぎ、彼等が体勢を立て直す隙に、融合型ピルグリムは配下のピルグリムを向かわせる。
 狙いは当然、エンジェルだろう。
 だが、襲い掛かるピルグリムの前に、ナツキが立ちはだかっていた。
「私が居る限り、彼等には指一本触れさせません!」
 達人の一撃にてピルグリムを押し返しながら、ナツキは背後のエンジェルを必死に庇い続ける。
 だが、もう一匹のピルグリムを相手にするアレイアには、彼女ほどの余裕はない。
「……ッ、させるか!」
 アレイアの放った紅蓮の咆哮が、大気をビリビリと揺らす。
 だが、眼前のピルグリムの身動きを封じることは出来ない。
 ピルグリムの振り下ろした爪が彼女の身体を引き裂き、その体力を容赦なく奪い取っていく。
 だが、それでも、倒れるわけにはいかない。
「私はもっともっと強くなる! だから、ここで倒れるわけにはいかないんだっ!」
 深い闇の奥底に落ちようとする意識を、彼女は肉体を凌駕する魂の力で戦場に繋ぎ止めていた。しかし、傷付いた身体は悲鳴を上げ、彼女を後戻りの出来ない領域に誘う。
 そんな彼女に、ピルグリムは容赦なく不気味な爪を振り下ろそうとしていた。
 そこに、自分の相手を排除したナツキが駆け寄り、繰り出した達人の一撃が横手からピルグリムに突き刺さる。
「今です!」
「……すまない!」
 洗練された一撃に戦意を失い、不気味な爪を振り上げたまま振り下ろせないピルグリムに、アレイアの一撃が叩き込まれていた。
 ゆっくりと崩れ落ちるピルグリム。
 だが、戦いはそれで終わりではない。
 前方では、融合型ピルグリムと冒険者の戦いが繰り広げられている。
 融合型ピルグリムの撃ち出した炎がシャアの身体を焼き払い、ロックの放った癒しの波動が彼女の体力を回復させていく。
 だが、見る限り戦況は芳しくない。
「ここは、おまかせします」
 その様子を確認し、ナツキはダメージの抜けきらないアレイアにエンジェルを任せると、前方で戦う仲間の元へと飛び出していた。
 ピルグリム略奪部隊の中核である融合型ピルグリムを何とかしないと、戦況は有利にならないだろう。
 ならば、迷っている時ではない。
「助太刀します!」
 駆け寄りながら繰り出した達人の一撃が、融合型ピルグリムの装甲を穿った。ウェポン・オーバーロードの裏打ちもあり、刃は融合型ピルグリムの身体に深々と突き刺さる。
 しかし、融合型ピルグリムは構うことなく、全身から炎を噴き出していた。
「ナツキさん!?」
 炎に巻き込まれ、慌てて後退するナツキにウィンダムの高らかな凱歌が放たれる。
 それでも、尚もナツキを追い詰めようとする融合型ピルグリムに、シャアの薔薇の剣戟が繰り出されていた。
 だが、一撃で倒すには至らない。
「頭……潰させて頂きますね?」
 そこに、ロックの斬鉄蹴が叩き込まれ、強烈な一撃が融合型ピルグリムの装甲を引き裂いていく。
 それを確認し、ナツキが駆けた。
「……あなたに掛ける時間が惜しい、一気に決めます!」
 彼女の手にした祈謡ノ奏・結風が膨大な雷光を身に纏う。
 融合型ピルグリムの懐に飛び込み、裂帛の気合いと共に繰り出された必殺の一撃は、融合型ピルグリムの残された体力を確実に削り取っていた。

●見果てぬ未来
 ナツキの放った電刃居合い斬りをまともに食らい、融合型ピルグリムは体勢を崩す。
 だが――。
「……な!?」
 融合型ピルグリムは残された力を振り絞ると、炎が吐き出される勢いすら利用し、その場から飛び退いていた。
 燃え広がる炎に行く手を遮られ、ロック達は追撃出来ない。
「ここまで来て、逃がすわけには……」
 しかし、炎の勢いは凄まじく、周囲の建物すら呑み込もうとしている。
 躊躇する冒険者の様子を確認し、融合型ピルグリムは踵を返し……。
「……お願い、ルガ――」
 その場に駆け付けたユウリは、無意識に今は居ない人の名を呼ぼうとし……それでも、今だけは力を貸してと。
 想いを乗せて彼女が放ったライトニングアローは、光の尾を描きながら、融合型ピルグリムの身体に突き刺さる。
 一瞬、動きを止めた融合型ピルグリムに。
「キミが焼き尽くしてきたものの痛み、思い知ると良い!」
 炎を突き破り追い付いた、ウィンダムの放った緑の業火が叩き付けられると、燃え盛る炎が融合型ピルグリムを呑み込み、焼き尽くしていた。
 もはや、動かなくなった融合型ピルグリムを見下ろし。
 それでも、助けるべき命があることを思い出した冒険者は、残された脅威から一人でも多くのエンジェルを助け出そうと、必死に救助活動を続行するのだった。

 ピルグリムとの戦いの傷が癒えぬまま、冒険者は必死に村の中を駆け回る。
 それにより、助けられた命もあれば、失われた命もあり。
 彼等は血が滲むほどに唇を噛み締めながら、彼等の手の届く範囲のエンジェル達の命を助けていた。
 その甲斐もあり、被害は最小限に抑えられたものの。
「……5、6、27人ですなぁん」
「被害は0ではない、ですね……」
 救い出したエンジェルを前にしたリィルアリアの報告に、ソルティークが悔しそうに呟いていた。
 どれだけの力を尽くしても、助けられない命がそこにはある。いや、この閉ざされた浮き島では、今現在ももっと多くの命が失われているはずだ……その全てに手を差し伸べるには、彼等の力だけでは足りないのかも知れない。
「それでも……諦めたくないわね」
 諦めてしまえば、そこでお仕舞いだから。諦めなければ、救える命もあるはずだから。
 アニスの言葉に、トウマも大きく頷く。
「助けられる奴は全部助けねえとな」
 それが可能なのも、この場にいる冒険者だけだろう。
 いずれにせよ、村を失ったエンジェル達を放っておく訳にはいかない。
 彼等を安全な場所へと送り届けるため、冒険者は戦いの残り香の漂う村を後にする。
(「分からない……どうしていけばいいのか……何処を目指せばいいのか……」)
 探るように踏み出した迷い道の闇の中、ユウリは故郷のホワイトガーデンからピルグリムの脅威が去るのは何時だろうかと、見通しの利かない未来を見据えていた。
 果たして、彼等の進む道の先に、希望の灯火はあるのだろうか。
 答えも分からぬまま、冒険者は疲れた身体を引きずりながら、長い長い帰路へと就くのだった――。


マスター:内海直人 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2006/09/06
得票数:冒険活劇10  戦闘1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。