狂った果実



<オープニング>


●狂った果実
 チキンレッグ領の辺境にある村で、巨大なリンゴの化け物が暴れている。
 コイツは甘い息を吐いて相手を混乱させる力があり、混乱した者は殺戮衝動に駆られて痛みを忘れてしまうらしい。
 そのため、毒消しの風を使って迂闊に治療してしまうと、途端に痛みを思い出しショック死してしまうかも知れん。
 くれぐれも注意して戦ってくれ。

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参加者
玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)
円環の治癒師・アルティ(a08063)
三日月に寄り添う戦乙女・アイリッシュ(a12290)
銀の剣・ヨハン(a21564)
月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)
空言の紅・ヨル(a31238)
誓夜の騎士・レオンハルト(a32571)
依頼依存症・ノリス(a42975)
言いくるめのペ天使・ヨウリ(a45541)
流水円舞闘の使い手・オルガ(a49454)
彷徨う灰かぶり・フェイクスター(a51257)
風韻縹緲・ハーツェニール(a52509)
NPC:ガリーボーイ・トガリ(a90058)



<リプレイ>

●混乱した村人達
「……恵みを与えてくれるはずの果実が、このような悲劇を起こすとは……」
 信じられない様子で溜息をつきながら、銀の剣・ヨハン(a21564)が事件のあった村を目指す。
 魔物のせいで村人達が混乱しているため、最悪の場合は冒険者達を敵だと思い込み、攻撃を仕掛けてくるかも知れない。
「それにしても、ろくでもない林檎がいたものですね。混乱は吟遊詩人の十八番ですが、こちらがやられるとなると怖いもの。これは速やかに、確実にいかないと、ですっ!」
 少しでも早く村に行くため、空言の紅・ヨル(a31238)が徐々にスピードを上げていく。
 なるべく軽い防具を選んで着てきたが、辺りには草が生い茂っており、なかなか村まで近づけない。
「……厄介な魔物ですね。まあ、厄介じゃない魔物の方が珍しいのでしょうけど」
 苦笑いを浮かべながら、誓夜の騎士・レオンハルト(a32571)が村を目指す。
 魔物の襲撃に遭ってからしばらく時間が経っているため、早く村人達を助け出さなければ手遅れになってしまう。
「ちっ……、時間がないのか。建物の扉が壊される前に、何とかしなければ……」
 悔しそうな表情を浮かべながら、流水円舞闘の使い手・オルガ(a49454)がチィッと舌打ちした。
 ようやく村が見え始めてきたが、建物からは真っ黒な煙が上がっている。
「まだ間に合います。私達がここにいるのですから……」
 すぐさま鎧聖降臨を仲間達に施し、レオンハルトが長剣を抜く。
 それと同時に茂みの中に隠れていた村人達が姿を現し、唸り声を上げてレオンハルト達に攻撃を仕掛けてきた。
「クッ……、混乱しているせいで、手加減なしですね」
 村人達から攻撃を喰らって大量の血を腕から流し、ヨルが険しい表情を浮かべて眠りの歌を歌いだす。
 それでも村人達は狂ったように攻撃を仕掛けてきたが、ヨルは決して避ける事なく全ての攻撃を受け止めた。
「こ、こちらにもいますっ!」
 別の場所から村人達が不意打ちを仕掛けてきたため、ヨハンがダークネスクロークを使って攻撃を防ぐ。
「さあ! こっちにも新鮮な生贄がいるぞ!! かかってこい!」
 わざと大声を出して村人達を引きつけ、オルガがイリューションステップを使って攻撃をかわす。
 村人達は睡魔に襲われ頭をフラフラと揺らしているが、ギリギリのところで意識を保っているようだ。
「よほど強い術が掛けられているようですね。腕の骨が折れても気にしていないようですから……」
 険しい表情を浮かべながら、レオンハルトが村人達に当て身を放つ。
 混乱している村人達の大半は痛みの感覚がマヒしている。
「今しばしの眠りを! 夢から覚めた時、何もかも元に戻っていますから!」
 眠りの歌を使って村人達を眠らせ、ヨハンがホッとした様子で汗を流す。
 村人達は高々と農具を振り上げたまま、とろんとした表情を浮かべて横に転がった。
「もう大丈夫です。ちょっとの間だけ、おやすみなさいですっ!」
 眠りについた村人達にヒーリングウェーブを使った後、ヨルがフォーチュンフィールドを展開する。
 魔物が退治されるまでは安心する事が出来ないため、村人達を何処かに避難させておく必要があるそうだ。
「これがただの悪い夢だったと思えるように、少しでも痛みも怪我もなく終わらせなければ……」
 念のため辺りに転がっていた農具を回収し、ヨハンが疲れた様子で溜息をつく。
 他にも村人達が隠れている可能性があるため、農具をそのままにはしておけない。
「まだ混乱している村人がいるかも知れない。探すぞ!」
 そう言ってオルガが仲間達を連れて、混乱した村人達が隠れていないか捜しに行くのであった……。

●狂った果実
「……林檎ねェ。お姫様を眠らせるぐらいにしてれば可愛いもンだけど、人間を食べるってのは流石にダメだな」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、風韻縹緲・ハーツェニール(a52509)が溜息をつく。
 村人達はみんな建物の中に立て篭もっているため、昼間だというのに辺りは静まり返っている。
「リンゴの化け物……、突然変異かのぅ? いずれにせよ村人を狂乱状態にするとは、また厄介な。当然、放置など出来ん。迅速に討伐じゃっ!」
 リザードマンである事を隠すためローブを深めに被り、玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)が建物の扉を叩く。
 しかし、どの建物からも反応はなく、焼け落ちている建物まであるようだ。
「えーっと、どうしましょうか? このままじゃ、日が暮れてしまいそうですし……」
 気まずい様子で汗を流し、ガリーボーイ・トガリ(a90058)が頬を掻く。
 村人達は色々な意味で警戒しているため、トガリ達が声を掛けたくらいで返事はしない。
「食料庫じゃ! あそこなら立て篭もるにはピッタリじゃろ?」
 食料庫の様子を確認するため、言いくるめのペ天使・ヨウリ(a45541)が遠眼鏡を覗き込む。
 いまのところ村人達の気配はないが、扉には混乱した村人達が体当たりをした痕跡が残っている。
「と、とにかく食料庫を調べてみましょうか」
 ゴクリと唾を飲み込みながら、トガリが食料庫の扉を叩く。
 しかし、建物の中から反応はなく、扉には鍵が掛かっている。
「依頼を受けて、助けに来た冒険者だ。……此処、開けてくれ」
 このままでは埒が明かないため、ハーツェニールが仕方なく扉を蹴破った。
「い、命だけは助けてくれ! た、頼む!」
 青ざめた表情を浮かべながら、村人達が両手を合わす。
 扉の前には机や戸棚などが置かれていたが、ハーツェニールの蹴りですべて倒されている。
「落ち着け! わしらは味方じゃ! 別にとって食おうと思っているわけじゃない!」
 呆れた様子で溜息をつきながら、ヨウリが村人達を説得しようとした。
 それと同時に食料庫の壁が壊れ、魔物が大きく口を開けて咆哮を上げる。
「どうやら落ち着いているわけにもいかないようだな」
 村人達が混乱する前に避難させる必要が出てきたため、バジヤベルがフォーチュンフィールドを展開して魔物を睨む。
 魔物は甘い息を吐いて村人達を混乱させようとしていたが、バジヤベルに行く手を阻まれ思うように行動する事が出来ない。
「これじゃ、説得している暇も無さそうだな。とりあえず眠っていてもらうか」
 眠りの歌を使って村人達を眠りにつかせ、ハーツェニールが安全な場所まで避難する。
「早く! こっちじゃ。のんびりしていたら、頭からパックリ食われるぞ!」
 そう言ってヨウリが土塊の下僕を召喚し、眠っている村人達を食料庫から連れ出した。

●魔物
 ……数分前。
「人を襲う林檎……か。よほど喰われるのが嫌だったのかも知れないな」
 臆病者の勘を使って嫌な予感のする方向を選び、彷徨う灰かぶり・フェイクスター(a51257)が遠眼鏡を覗き込む。
 魔物は食料庫の裏に潜んでおり、スヤスヤと寝息を立てている。
「人を食べるりんごって、まだりんごであるんですか? 見た目は美味しいかも知れないけど……、私達も『美味しそう』ですよね? そんなの、嫌」
 警戒した様子で魔物を睨み、月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)が口を開く。
 魔物は幸せそうな表情を浮かべ、ヨダレを垂らして眠っている。
「食べて寝て……、次は運動をかねた食事をする夢でも見ているのだろうか。どちらにしても、早めに何とかしないとな」
 険しい表情を浮かべながら、鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)が溜息をつく。
 魔物の身体からはほんのりと甘い香りが漂っており、油断していると頭がおかしくなりそうだ。
「気をつけた方がいいわよ。……混乱したくなかったら」
 フレーバーマスクを使って口元を覆い、三日月に寄り添う戦乙女・アイリッシュ(a12290)がノリスの腕を掴む。
 ノリスはハッとした表情を浮かべて口元を多い、アイリッシュを見つめてコクコクと頷いた。
「それじゃ、行くわよ。……闇は同胞、影は友……。我が足音は風の其也……」
 チキンスピードを使って魔物の傍まで近づき、アイリッシュがハイドインシャドウを使う。
 それと同時に魔物がゆっくりと目を開け、辺りをギョロリと見回した。
「……マズイ事になりましたね。魔物が目を覚ましました……」
 偶然、目覚めた魔物と目が合ってしまい、円環の治癒師・アルティ(a08063)がダラリと汗を流す。
 それと同時に魔物が唸り声を上げ、体当たりを仕掛けてきた。
「う、嘘!? 確かに気配は消したはずなのに……」
 信じられない様子で声を上げ、アイリッシュがソニックブームを放つ。
 しかし、魔物は食料庫の壁を壊し、アイリッシュの攻撃を避ける。
「……どうやら寝たフリをしていたようだな。来るぞ! 退けっ!」
 再び魔物が攻撃を仕掛けてきたため、フェイクスターが鮫牙の矢を放つ。
 魔物は大量の血を流し、涎をダラダラと垂らす。
「……紛らわしい真似を!」
 すぐさま慈悲の聖槍を放ち、アルティが村人達の逃げる時間を稼ぐ。
 村人達は眠りの歌によって眠りにつき、仲間達によって次々と外に連れ出されていった。
「随分とまわりで騒いでいたものな。俺達だけが黙っていても、やっぱり駄目か」
 体当たりをしてきた魔物の攻撃をかわし、ノリスがエンブレムノヴァを放つ。
 魔物はノリスの攻撃を喰らって吹っ飛び、辺りに甘い匂いを漂わせる。
「なんですのよ……食べ物なら大人しく食べられるべきなのに……」
 不機嫌な表情を浮かべながら、エルスがデモニックフレイムを叩き込む。
 魔物は口からドロドロとした液体を吐き出したが、エルスに反撃するほどの気力はない。
「よっしゃ、種が見えてきた! ……あれが本体なんだろ? 早く叩き潰しちまおうぜ!」
 嬉しそうに指をパチンと鳴らし、ノリスがエンブレムノヴァを炸裂させた。
 それと同時に魔物が甘い息を吐き、ノリスを混乱させようとする。
「大丈夫ですか? すぐに治療します」
 ノリスの目つきが怪しくなってきたため、アルティが静謐の祈りを発動させた。
「……んあ? ここは……?」
 キョトンとした表情を浮かべ、ノリスが不思議そうに首を傾げる。
 一瞬、何が起こったのか分からなくなったのか、自分の置かれている状況を理解する事が出来ない。
「説明は後だ。下がっていろ。……食い破れ、鮫牙の矢」
 ノリスを押しのけるようにして前に立ち、フェイクスターがホーミングアローを撃ち込んだ。
「さぁ、眠りなさい。……今度は永遠にね」
 一気に間合いを詰めて魔物の種を狙い、アイリッシュがソニックウェーブを放つ。
 魔物は唸り声を上げながら大量の血を流し、そのままべチャッと潰れて動かなくなる。
「うっ……、魔物の返り血でベチョベチョ……。早くお風呂に入りたいですね」
 そう言ってエルスが青ざめた表情を浮かべるのであった。


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