【我が身、石に例えるならば】コバルトグリーン



<オープニング>


 宝石、化石、鉱石。様々な呼び名があるが全て『石』と言えよう。
 その石をもってして、自らを例えるならばそれはどんな物であろうか。石をもって、意思と通ず。石と関わる事件を前に、あなたはどう、されるであろうか?

 今日もやっぱり霊査士の手元に、依頼書と言うべき手紙がある。いつもの事になりつつある、石商のフォグからの手紙だ。恐らくは今回も、当人か当人が逗留した村でなんらかの厄介ごとが持ち上がったのだろう。

「今回もやっぱり、この前のお礼が書かれているわ。で、やっぱり仕事を頼みたいそうよ」
 霊査士はそう言って、厳粛なる石と白髭・ゲラン(a90189)を含めた冒険者たちへ声をかけた。
「クリソプレーズって、明るく綺麗な緑色の石があってね。良質なその石を手に入れて欲しいって頼まれて、フォグさんは鉱山に行ったみたいなのよね。ところが、その石が採れる鉱山に巨大なコオロギが住み着いていたそうなの。5mサイズのコオロギが2匹、坑道を巣に仕立てちゃったって事みたいね」
 霊査士はフォグからの手紙を確認しながら、冒険者たちに話し始める。

「村としては鉱山は生活を支える大事な収入源だから、なんとかコオロギに立ち退いて欲しいわけなのよ。ところが困った事にね。この巨大なコオロギ、人が近づくとすぐに気がついて、とんでもなく大きな音で鳴くのよ。その鳴き声を聞いた村人はかなり長い事、動けなくなっちゃったりしたみたい。その上ジャンプ力もあるし、移動も素早いのよね。坑道は少し曲がりくねってるけど、1本道で抜け道なんかはないわ」
 霊査士はフォグからの手紙の情報を元に、少々ため息をつきながら冒険者たちへ説明する。
「コオロギ2匹は巣……つまり坑道に近づけば、敵だと判断して攻撃してきたり、大きな音で鳴いたりするみたい。この2匹のコオロギを倒して、鉱山と坑道を取り戻すのが今回の仕事よ。大暴れすれば鉱山や坑道が崩れかねないから、その点には注意してちょうだいね」
 霊査士はそこまで説明し、よろしく頼むわねと冒険者たちへ、頭をさげた。

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参加者
剛剣士・アンギルス(a01540)
深緑の森の守り手・イツキ(a10040)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
趣味追及者・セルマ(a14936)
白月雫・マーガレット(a14944)
深淵の微睡・リュフィリクト(a17971)
歩揺の桜・リラ(a27466)
男の娘を超えた存在・シシャモ(a31183)
碧洋の翔剣士・レイナ(a37725)
不浄の巫女姫・マイ(a39067)
NPC:厳粛なる石と白髭・ゲラン(a90189)



<リプレイ>

●鉱山へ
「綺麗な緑色の石って……エメラルドや翡翠と、どんな風に違うのかな?」
 ワクワクした様子で、軽く首を傾げて呟く、深淵の微睡・リュフィリクト(a17971)。コオロギを倒した後、フォグに教えてもらえるかなと期待混じりに考えている様子。歩揺の桜・リラ(a27466)もリュフィリクトと同じく、クリソプレーズとはどんな石でだろうかと考えているようだ。ドリアッドであるリラは、自身の髪と同じ色だろうかとも考えていた。
「石……いわゆる宝石かのう」
 後世に伝えし語り手・シシャモ(a31183)はそう呟く。色々と思うところがあるようだ。落盤の危機や重労働に耐え、採取する村人の苦労もあわせて石は価値を持つ物だと言うのに、石の価値をわからぬ者が坑道や鉱山を占拠するとは迷惑な話だとシシャモはそう考えていた。
「言っても聞かぬようじゃから、早々に『この世から』ご退去願おうかのう……」
 目を細め、シシャモはそう呟く。そもそも相手はコオロギなわけで、さすがに言葉は通じない。ゆえに言って通じると言う事があるわけもなく。実力で退去させるしか方法がないのは明白な事実と言えた。

「今度は……コオロギですか……。秋は近いですけど……大変ですね」
「今度はコオロギか。秋じゃなあ……。前回に比べれば、気分は楽かのお?」
 リラが呟くのとほぼ同時に、月無き夜の白光・スルク(a11408)はそう言いながら、首を傾げた。前回はモモンガ型のモンスターに加え、盗賊も相手にしなければならず。更に時間も差し迫った状況だった為、色々と手段を講じる必要があったからだろう。
「いや、ぬかりはせんが」
 手を抜く気はもちろん全くないが、前回の色々と対応しなければならない状況と比べれば、今回の方が気持ち的には楽だと、確かにそう言えそうだ。
「おっきなコオロギが2匹……うん、黒いのじゃないから大丈夫。足もいっぱいあるわけじゃないし」
 白月雫・マーガレット(a14944)はそう呟きながら、きゅっと手を握りしめる。逃がさないように倒そうと、気合を入れているようだ。人が近づくだけで気づくと言う話を聞いていた為、マーガレットはなるべくうるさく音がしないような装備を選んで身に着けてきた様子。
「昔、誰だったかが、黒いアレもコオロギや鈴虫のように鳴けば、嫌われないとか言ってたのですけど……」
 誰に聞いた話だかすっかり忘れているのだが、マーガレットの言葉でふと思い出し、趣味追及者・セルマ(a14936)は呟いた。だが、鳴けばいいと言う物でもないと、考えを改めざるを得ないようだ。鳴くとは言っても聞いた限りの巨大なサイズでは当然、その音も大きすぎるわけで、そうなれば嫌われるのはある意味必然。
「嫌われるのは同じですのね」
 セルマはそう呟いて、息を吐いた。
「巨大コオロギ……ですの?」
 碧洋の翔剣士・レイナ(a37725)がそう呟きながら、軽く首を傾げる。
「小さければ風流かと存じますが……」
 そう呟いてレイナは苦笑した。巨大と聞いては風流とも言いがたい。そもそも、音も大きいらしいわけで、そんなものが鉱山に住み着いては、ずいぶんな痛手となろう。
「5mサイズのコオロギさんとは……」
 困ったような曖昧な笑顔を浮かべ、深緑の森の守り手・イツキ(a10040)はため息混じりに呟く。
「また随分と大きくなられたものですねぇ」
 困ったような笑みを浮かべ続け、なおかつ少々嫌な汗をかきながら、イツキはそう続ける。
 冒険者たちは思い思いに鉱山にいる巨大コオロギや石の事を考えながら、村人の案内で鉱山のそばまで移動した。

●坑道
「巨大生物が2匹」
 そう呟いた後、不浄の巫女姫・マイ(a39067)は嫌そうな顔を鉱山へ向けた。どうやら嫌な予感がしてならないようだ。
 剛剣士・アンギルス(a01540)は他の冒険者たちの様子を見ながら、巨大生物退治を引き受ける事が多い自らについて、しみじみと考えていた。
「……まさか夫婦じゃないわよね」
 ランドアースで巨大化した生物に生殖能力はないとされている。だが、2体いると聞けば、不安はどうしても付きまとう。例外が出る可能性が全くないとは言い切れないと、マイは考えていた。つまり一刻も早く巨大コオロギ2体を倒さなければとそう、マイは考えているのだ。
 人が坑道に近づくだけで気がつく巨大コオロギの事。戦闘は坑道内での事になるだろうかと、リュフィリクトは考える。坑道内はともかく、鉱山での戦いとなればコオロギはそのジャンプ力を活かして攻撃してくるだろう。最も坑道に抜け道はない為、冒険者たちがうまく坑道内へ入り込みさえすれば、少なくとも巨大コオロギのジャンプ力はほぼ確認せずにすむ。
 コオロギの音を防ぐ有効な手立てはほとんどないが、少なくとも巨大過ぎる音に気をとられて行動に支障をきたす事は避けようと、殆どの冒険者たちは耳栓を用意してきた。声を掛け合い連携を組む事は出来なくなるが、その分、彼らは動きで次に行う行動や合図を伝えるつもりでいる。巨大コオロギに気づかれにくいよう、坑道へ近づく前から自らが出す音に注意を払う者もいたようだ。
 そうして、準備を整えた冒険者たちは坑道へ足を踏み入れるべく、耳栓を身に着けカンテラを灯す。最後尾に着いたマイがホーリーライトを灯し、それを合図に最前列にいたアンギルスやマーガレット、それにレイナがまず坑道へ足を踏み入れた。

 リリリリ!

 足を踏み入れた途端に、巨大なコオロギの鳴き声が坑道内に響く。最も冒険者たちのほとんどは耳栓をしていたし、予めコオロギの声による麻痺に対応しやすいよう、わざわざ3列縦隊を取って坑道へ足を踏み入れていた。コオロギの鳴き声によるマヒを受けない位置に、回復出来る者が常に待機しているよう隊列を組んだのである。その為、コオロギの鳴き声によるマヒで最前列の冒険者たちと2列目にいた冒険者たちが動けずにいる時間は、それほど長くなくてすむ。イツキが静謐の祈りを使いそれにより少しずつ冒険者たちはマヒから回復して行く。冒険者たちがマヒしている間にコオロギから受けた傷はマイがヒーリングウェーブを使い、癒す。
 コオロギはやはり坑道の広さ的に、2体並んで移動したり攻撃をかけたりはしてこられないようだ。
 鳴き声は2体分の声が届き、立つ位置によってはマヒする事もあるようだが、直接攻撃については目の前にいる巨大コオロギから受けるのみ。もちろん冒険者たちとて攻撃やマヒを受けるばかりではない。
「参ります……」
 レイナは気合を込めてそう呟き、イリュージョンステップを使う。マーガレットはウェポン・オーバーロードを使い、持参した長剣の攻撃力を引き上げた。アンギルスは両手に1本ずつ持った斧を構え、ファイアブレードを使った攻撃を行う。当然ながら、その反動でアンギルスはマヒし、動けなくなる。
「……おぬしらに捧ぐ、葬送の舞じゃ」
 シシャモはそう言いながら、ブレードダンス♪ を使う。目に映る姿はともかく、実際のところは54歳の男性がハイヒールやらひらひらした装飾華美なドレスやらを身に着けて両手にそれぞれサーベルを持ち、踊る姿はある意味シュールかもしれなかった。

●退治
 スルクが粘り蜘蛛糸を放ち、巨大コオロギの動きを押さえ込む。巨大コオロギの鳴き声を耳にし、この鳴き声では情緒もあったものではないと、攻撃しつつも思わず苦笑を浮かべた様子。
「ごめんなさい。ここを巣になさると……困る方々がいるんです」
 誰の耳にも届かない謝罪の言葉を呟きながら、リラは緑の束縛を使い、前にいる巨大コオロギを拘束する。リュフィリクトは緑の業火を使い、手近な巨大コオロギを攻撃した。
 マーガレットはウェポン・オーバーロードの効果が続く長剣を使い、巨大コオロギを斬る。マヒした状態のアンギルスに対してはセルマが高らかな凱歌を使い、マヒからの回復を試みていた。
 レイナは薔薇の剣戟を使い、鋼糸である飛花を使って攻撃を仕掛ける。イツキは回復行動を取りつつも巨大コオロギの動きや坑道内の状況を確認し、音や衝撃による落盤の危険に備えている様子。シシャモは先ほどと変わらず、踊りながら巨大コオロギへの攻撃を続けている。
 スルクはバッドラックシュートを使ってカードを作り出し、巨大コオロギへカードを放つ。もともと黒いコオロギの身体ではあるが、それでもカードがあたった部分は見てわかる程度により黒く変色した。続けてリラとリュフィリクトが、巨大コオロギに対して緑の業火を放つ。繰り返し攻撃を受けた事で、冒険者たちの目の前にいた巨大コオロギは倒される。とは言え、巨大コオロギはもう1体いるのだ。休む間もなく、次の巨大コオロギへ冒険者たちは攻撃を開始した。
 マヒから回復したアンギルスは再び、ファイアブレードを使った攻撃を仕掛ける。当然再びマヒする事になり、後方から回復の為に控えている冒険者たちはアンギルスがマヒから回復するようにと、アビリティの使用を開始した。
 レイナも再度、薔薇の剣戟を使った攻撃を放つ。マーガレットも長剣を構え、巨大コオロギを斬りつけた。シシャモは新たな巨大コオロギに対し、再びブレードダンス♪を使って踊りだす。
 スルクがこちらの巨大コオロギが動き出さない内にと、やはりバッドラックシュートを使って作り出したカードを、巨大コオロギに対して放つ。だが、タイミング悪く巨大コオロギは動き出す。攻撃自体はスルクの狙いたがわず、巨大コオロギに命中し、巨大コオロギの身体は一部が見てわかる程度に黒く変色した。

 リリリリ!

 抗議の声を上げるかのように、巨大コオロギが鳴く。動きを押さえ込まれた冒険者たちを回復すべく、イツキとマイが高らかな凱歌や静謐の祈りを素早く使う。回復すると冒険者たちはそれぞれ、すぐに巨大コオロギへの攻撃を再開する。
 巨大コオロギの動きを押さえ込むべく、回復したリラは緑の束縛を使う。緑の束縛により、動けなくなった巨大コオロギに対し、スルクが再度バッドラックシュートを放った。再びしっかりと拘束された巨大コオロギへ、リラとリュフィリクトが緑の業火を使い、攻撃する。
 レイナは再びイリュージョンステップを使い、巨大コオロギの攻撃があった際、出来るだけ避けられるようにと構える。マーガレットはウェポン・オーバーロードの効果が続いている長剣で、巨大コオロギを斬りつけた。アンギルスは再びファイアブレードを使い、反動によるマヒで動けなくなる。ブレードダンス♪ を一度マヒにより止めざるを得なかったシシャモも再び、ブレードダンス♪ を使い直し、踊りながら攻撃を開始した。アンギルスの様子を確認し、セルマが高らかな凱歌を使い、回復を促す。
 スルクのバッドラックシュートとリラ、リュフィリクトの緑の業火が巨大コオロギに放たれる。レイナの薔薇の剣戟と、マーガレットの長剣による攻撃を受け、2体目の巨大コオロギもようやく倒された。

「やはり普通サイズの、普通の音がよい」
 倒された巨大コオロギを埋める為の準備を始めながら、スルクはしみじみ呟く。ごく普通サイズのコオロギの声を聞きながら、月見でも出来れば言う事はないとそんな事も考えていたようだ。イツキとリュフィリクトも巨大コオロギを埋める為、スルクを手伝い行動する。アンギルスは巨大コオロギの首を持ち帰った方がいいのではないかと提案し、実行しようとした。そこまでしなくともと言う声が上がったりもしていた模様。
 セルマとマイは2人、巣にされていた坑道内をしっかりと調べ、巨大コオロギの卵がないか確認している。卵が見つかる事はなく、2人はほっと胸をなでおろした。
 コオロギは倒し、埋葬をすませた冒険者たちは村へと報告に向かう。
「今後とも採掘に勤しむようにな」
 シシャモはそう村人へ声をかける。
 マーガレットにリラ、レイナの3人はクリソプレーズに興味を示し、石を見せてもらったりしている様子。
「キラキラ輝くと言うより……落ち着いた感じですね」
「破片を記念に持ち帰りたいと思いますけれど、よろしいでしょうか?」
 透明とは言いがたい、半透明な石を眺め、リラが呟く。レイナは遠慮がちに村人へそう声をかけた。マーガレットはクリソプレーズが使われたブレスレットを譲ってもらえないかと、村人に相談している。
 こうして冒険者たちはそれぞれ村で行動した後、帰路に着いた。


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参加者:10人
作成日:2006/09/06
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