≪気まぐれ喫茶≫祝一周年! ドーナツパーティー



<オープニング>


 気まぐれ喫茶は8月28日で一周年を迎えた。
 そして、一周年を迎える少し前に店員寮の建設も終え、終焉の白・エスティア(a33574)はある事を考えていた。それは
『気まぐれ喫茶店員寮の建設&一周年おめでとうドーナツパーティー』
 の開催である。
 気まぐれ喫茶の店員寮食堂でたくさんのドーナツを作って、皆で楽しんでそれから……と楽しい想像は膨らむ。膨らんだらやはりそれは実現させなければ!
 と言う訳で、気まぐれ喫茶おめでとうドーナツパーティーが開かれる事となった。

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参加者
理の探求者・エアハート(a32454)
溝鼠に値する・サルミナ(a32936)
同盟の白い悪魔・エスティア(a33574)
角殴の蒼き風・サードムーン(a33583)
清廉潔白天使・ジェイダイト(a33722)
幻想舞踏・フィニス(a33737)
剣聖の一振り・ウォルス(a34139)
守護闘神・カイト(a34175)
護猫・ルシファ(a34653)
忘れた頃にやってくる・アゲート(a35416)
黒猫同盟幹部会員・ファイ(a37110)
歌って踊れる武道家・フィフィ(a37159)
太陽と月の円舞曲・セツナ(a47656)

NPC:金見鶏・トゥイ(a90217)



<リプレイ>

●一周年記念ドーナツパーティー!
 気まぐれ喫茶は一周年。
 ここ、気まぐれ喫茶の店員寮の食堂でパーティーの準備が行なわれていた。
 パーティーのメインはドーナツ。という事で、まずはドーナツ作りが厨房で行なわれていた。
「まず主役のドーナツを作りましょうですぅ! デスリングと〜ヘルスリングとぉ〜♪」
 嬉しそうに頬を朱に染めながら言った未来の白地図を手にして・ファイ(a37110)の頭を終焉の白・エスティア(a33574)は撫でると笑みを浮べた。
「流石、ファイさん。イイコですよ。一緒にたくさんつくりましょう」
「一応これ持って来たんですけど……ドーナツに使えますかね?」 
 そう言い、理の探求者・エアハート(a32454)が調理台の上に置いたのは、瓶詰めにしたフルーツ。それとバスケットも一緒に置く。
「使わなければそれでもいいですし。あ、一応出来合いのドーナツ持ってきましたフルーツ入りドーナツです」
 バスケットの中には美味しそうな葡萄と桃と蜜柑がそれぞれ入ったドーナツが並んでいる。
「これはおいしそうですね。流石エアハートさん。用意がいいですね」
 天藍色に輝く刃・フィニス(a33737)はバスケットの中身を覗き込み柔らかな笑みを浮べる。
「じゃあ、僕はエアハートさんのフルーツを使わせて頂きますね」
 と、身支度を整えフィニスは早速包丁を握る。彼はドーナツだけでなくスープやサンドイッチなども作るつもり。
 その様子を戦帥の蒼き風・サードムーン(a33583)は少し安堵の表情を浮かべ心の中で呟く。
(「とりあえず、食べられるものはあるか」)
 兎に角エスティアと清らかなる天使・ジェイダイト(a33722)の動向がサードムーンは気になるのだ。
 サードムーンに注意人物指定されている一人ジェイダイトは食堂の真ん中に人形を飾る。
「この方を忘れちゃ駄目ですね、店長を真ん中に置いてっと」
 どうやら、人形はユタカちゃん人形というものらしい。そのユタカちゃん人形に賽銭を添えて手を合わせた白山千鳥・サルミナ(a32936)は、さて、と調理場へと入った。
「俺も手伝うぜ。何すればいい?」
「あ、俺も。俺も」
 星に守護されし者・アゲート(a35416)と守護闘神・カイト(a34175)
の言葉にフィニスが喜んで彼らを呼んだ。
 ドーナツ作りを始めた者達を歌って踊れる武道家・フィフィ(a37159)は眺めていた。
「……私も作れるかなぁ〜ん?」
「大丈夫ですよ。一緒につくりましょう♪」
 手招くエスティアの側へと歩くフィフィの尻尾は小さく揺らいでいて、嬉しそうに見える。ちゃんと、普通のドーナツの作り方を宜しくと言う事をフィフィは忘れない。だって、普通に食べれるものの方がいいんです。
 ドーナツ生地を作り、食堂内を飾りつけ、飲み物を用意し、作るのに飽きて隅っこで居眠りする人もいれば、ドーナツに確実に変なものを混ぜる者とわいわい楽しみながら作っていた。
 材料が足りなければ地下室へ取りに行かなければならない。それは年長者のサードムーンさんが立派に務めを果たしました。えぇ、まるでDGのような迷路のようなスリリングな地下室を潜り抜けたとかナントカ。
 そんな事もありつつも、食堂内には油の爆ぜる音と美味しい香りが満ちていく。
 そうなると、パーティー開始を待っている残りの者達は待ちきれず、食堂へと顔を覗かせた。
「美味しそうな匂いですね」
 華麗な寡黙剣士・ウォルス(a34139)が言えば、エスティアが手招きをする。
「ナイスタイミングです。丁度、呼びに行こうと思っていたんですよ。そろそろ始めましょう」
 テーブルの上にはたくさんのドーナツと飲み物、スープやサンドイッチなどが並べられていく。更に、美味しそうなケーキにたくさんのクリームパイも。
「……これ、なんですか?」
 テーブルの端に並べられているたくさんのクリームパイに不思議そうに首を傾げた護猫・ルシファ(a34653)に作った当人であるフィニスは
「……食べる為のものですよ?」
 とさも当然といった風に言った。
「ん〜おいしそうだね〜」
 くんかくんかと胸を膨らませ匂いを吸い込んだトゥイの隣でその姿舞い散る華の如く・セツナ(a47656)も笑みを浮かべていた。
「トゥイさん、飲み物何がいい? ボク、ストレートティーだけど」
 自分の飲み物を用意する為、淹れ立てのティーポットへ手を伸ばしたセツナにトゥイは鶏冠を揺らし喜んだ。
「砂糖た〜っぷりでよろしく〜」
「はーい♪」
「オレンジジュースも用意してます……」
「私、オレンジジュースでお願いします♪」
「緑茶の方、います?」
「俺コーヒーの方がいいなー」
 わいのわいの。それぞれのグラスやカップにそれぞれが好きな飲み物を入れ、乾杯の準備が整うと乾杯か、と思ったがその前にとエスティアが会場の真ん中に設置されたユタカちゃん人形を見た。
「まずは……私たちがここに居ることをユタカちゃんに感謝しましょう♪」
 ユタカちゃん人形に祈りを捧げるエスティアに倣う。ジェイダイトとアゲートが2回手を叩いて一礼するのを見て、セツナも2回手を叩き礼をしお守りの小型ナイフを人形の側に置いた。
 そんな彼らをボヘーっと眺めていたトゥイは小さく首を傾げた。
「……ユタカちゃんって、だれ?」
「しっ、なぁん。とりあえず、真似するなぁん」
「……なぁ〜ん」
 何だか良く分からないけど、フィフィの真似をしてトゥイも手を合わせた。
 暫くの祈りの後、エスティアは目の端に熱く浮かんだものをそっと指先で拭い、笑顔で大好きな仲間達を振り返った。
「さて、しんみりするより楽しみましょう♪」
 ぱんっとエスティアの手が小気味良い音を鳴らし、一気に場は明るくなった。
「さぁ、皆さん乾杯しますよ♪ これよりドーナツパーティー、開催です〜!」 グラスを取り、エスティアが高く掲げると皆も元気にグラスを突き上げた。
『乾杯ー!』    
「一周年おめでとですよぉ〜♪」
 微笑みを浮かべ、ファイは自分で作ったドーナツを持って皆の所を回る。大好きな皆に食べてもらいたいのだ。
「うわー……おいしそう、だなー」
 何故か棒読み。カイトは満面の笑みで差し出された皿を見て、ごくりと唾を飲み込んだ。
「ファイ特製、黒ネコさんドーナツですぅ」
 多分ネコのシルエットにしたかったのだろう。ぐにょりと変形したやや紺色がかった黒いドーナツは明らかにヤバイ雰囲気を醸し出している。
「えーっと……」
「えへへ〜♪」
 悪意の無い無邪気な笑顔には勝てない。意を決したカイトは黒ネコさんドーナツを掴んだ。
 暫くの歓談と適当に物を口へ運んでいると、唐突にルシファが叫んだ。
「一周年おめでとうドーナッツロシアンルーレット〜!!」
 途端に場に緊張が走る。
「……やるのか?」
「やりますよー」
 冷や汗を流すサードムーンに楽しそうな口調で頷いたエスティアとルシファは一つの皿にどんどんいろいろなドーナツを載せていく。
「ロシアンルーレットってなぁに〜?」
 山盛りに盛られていくドーナツに目を輝かせるトゥイにサルミナは自分もそっと更に何かを加えながら言った。
「その名の通りです。恐るべし、ロシアンルーレット!」
 つまり、美味しく食べられるものばかりではないという事で。それでもへぇとまだ理解していないようでトゥイは眠そうな目で生返事を返した。
「まぁ、やってみたらわかりますよ。あ、そうそう。この中に一つチャクラム混ぜてますから」
『えぇ〜?!』
 湧き上がる非難の声も、副店長ですからーという訳のわからない一言で終わらせ、エスティアは仲間達の顔をぐるりと見た。
「さ、誰からいきます?」
「それでは僕からいきましょうか」
 一番名乗りを上げたのはフィニス。微笑みを浮かべゆっくり品定めをし、そして一つドーナツを手に取った。何の変哲も無い普通のドーナツ。それを食み咀嚼する。
「いや〜美味しいですね〜♪」
 おお、と声があがる。だが、これは当然の結果。所謂、作り手の強みと言うヤツで、自分の作った無害なドーナツを選んだのだ。
「……じゃあ、次は私が」
 エアハートが手を伸ばしたのはこれまた自分が作ったフルーツ入りドーナツ。ドーナツの表面にフルーツの陰が見え、簡単にクリアできた。
(「……それにしても、怪しいのが多い気がするんですが、気のせいでしょうか?」)
 もしゃもしゃと食しながら内心ちょっぴり冷や汗を流し、エアハートは様子を見守る事にした。
「トゥイ、行きま〜す」
 間延びした声ながらも、何時になく表情はしゃきっとしていた。基本的にこういうお遊びは好きなので、頭をフル回転させ選んだのはエアハートと同じフルーツ入り。
「ん〜おいし〜♪」
「私は……これ!」
 ちょっと揚げすぎた不恰好なドーナツをサルミナは余裕の表情で食べた。これもまた、自分で作ったものである。少しばかり脂っこいが食べられなくはない。
「お〜皆さん手強いですね〜じゃあ次は?」
「俺が行こう。いざ!」
 ウォルスが一歩歩み寄り、色とりどりのドーナツを睨む。
「これだっ! あむっ……むぐっ!?」
 口に入れた瞬間青ざめ、固まるウォルス。
「うわぁ……」
 当たりを引き、一向に動かないウォルスに苦笑を浮かべセツナも一つドーナツを取った。それはエアハートとトゥイが選んだ物に似て、薄っすらと表面に中の物が浮かんで見えているものだった。
 ぱくっと一口噛み
「……っ!?」
 セツナは声にならない悲鳴を上げ、これまた固まり立ち尽くしてしまった。
「セ、セツナ、これを飲むといいなぁん!」
 フィフィはセツナの背中を擦りフルーツジュースを渡してやるがウォルスにはしない。彼女の興味の対象が最も良く分かるというものだ。
「うう〜こわいですぅ〜」
「大丈夫よ、ファイ。お姉ちゃんを良く見てなさい」
 涙目のファイにそう言ったルシファはドーナツの山に向き直る。だが、いざ勝負! となると、途端に言い知れぬ恐怖が沸き上がって来る。
「……逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ!」
 自分に言い聞かせるように言ったルシファは、不恰好な濃紺色のドーナツを一つ手に取り勢い良く口に放り込み、顔を青くして引っくり返った。
「ルシちゃん〜〜それ、ファイの黒ネコさんドーナツーだよぉ。どうしたのぉ〜?!」
 ゆっさゆっさとルシファの体を揺さぶるファイ。カイトはそっと目頭を押さえた。
「いや〜いい感じに盛り上がってきましたし、一つ演奏しましょう」
 とおもむろにフィニスはトランペットで演奏を始める。場を盛り上げるテンポの良い音楽が食堂内に響く。
「さて、では次はサードムーンさんだね」
「万が一に備えて飲み物を持つといい」
 脇からジェイダイトが微笑みを浮かべ、更に反対側からアゲートが飲み物を差し出され、僅かに嫌なものを感じながらも礼を述べ飲み物を受取ったサードムーンは眉を寄せ、ドーナツの山から一つ、取った。
 意を決し口に入れたそれは甘く、美味でありサードムーンはホッと安堵した。しかし安堵は時に油断を生む。
 食後の乾いた喉を潤す為に飲んだ飲み物には、薬が混ざっていた。その薬とは……   
「あひゃ。あひゃひゃひゃ」
 突然、壊れたおもちゃのように笑い出したトゥイに何事かと皆の視線が集まる。
「あぁ、トゥイさん当たってたんだね♪ これで笑い声溢れるパーティーになるね」
 と、首謀者のジェイダイトは一人だけにこにこと笑む。薬とは笑い薬。そして、薬の効果はサードムーンにも。
「あーっはっはっは」
「さ、サードムーンまで! ええーっと、これは……笑えば、いいのか??」
 疑問符を飛ばしながら、とりあえず真似してカイトも笑ってみる。笑ってみるとこれはこれで面白い。むしろ、もっと面白くならないかと周囲を見るとテーブルの上にはクリームパイ。笑いのまま、カイトはそれを手に取った。
「あはははは……ぶっ!?」
「あははははは。エスティアさんクリームまみれー」
 エスティアの顔にクリームパイをぶつけた本人は腹を抱えて笑い転げている。
「副店長に何をするですか〜! えいっ!」
 エスティアの投げたパイはフィフィに当たり、フィフィのお返しはジェイダイトに。ついにはクリームパイだけでなくドーナツまで宙を舞い始めた。
「……あぁ、ドーナツ。余らないかなぁ……」
 食堂の隅にバリケードを作り、飛んでいるドーナツを物惜しそうに見つめサルミナは緑茶を啜る。ふっと、なんだか食堂内に不思議な香りと紫の煙に僅かにけぶっているように思えた。
 もしや、とある結論が思い浮かんだが、それを確かめる術も確かめる気もなかった。
(「……どうでもいいよね。ふぁっ」)
 小さく欠伸を噛み殺したサルミナは壁に凭れて、眠そうに目を閉じた。
「皆さん若いですよね〜」
 理性の箍が外れ、戦場と化した食堂を厨房から眺め、暢気に紅茶を啜るフィニスは自分のした『放蕩の宴』という悪戯にも悪びれた様子もなく、一緒に避難させた食べ物へ手を伸ばし、猫の顔を模したクッキーを口に放り込んだ。

「早く大人になりたいぞー!!」
 叫んだウォルスがデスリングを投げつける。
「きゃ〜きゃ〜♪」
 飛び交うものを楽しそうに叫び声をあげながら逃げ回るファイ。
「危ないなぁ〜ん!」
 と、言いながらセツナやエスティアに抱きつきご満悦のフィフィ。
「これからも、皆よろしくね〜!」
 エスティアの投げたパイは弧を描きルシファの上に落ちる。
 笑い声の耐えない食堂の真ん中のクリームにまみれたユタカちゃん人形が見守るように佇んでいた。


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