<リプレイ>
依頼を受けた冒険者達は、森を抜け問題の砦の前まで向かった。もちろん、すぐに砦の中に入るわけもなく、入り口が見える木陰に陣取り、まずは様子を見る。 入り口からは、セイラの言っていたように召喚された存在(以下、総称として召喚物と略す)が姿を見せていた。幸いにまだあふれては居ないようだが、それも時間の問題だろう。 そんな状況を見た今日も明日も風任せ・ヴィトー(a47156)は静かに驚く。 (「あの小さな砦に召喚物がうじゃうじゃいるのか。凄い光景だな」) ヴィトーは表情を変えず、ぽつりと呟いた。 「……この地で暮らす奴らのためにも、砦から溢れ出す前に片付けないとな」 「そうですね。そして、次の戦いへの足掛かりにするためにも」 焔纏風往・セルシオ(a29537)はヴィトーの言葉に続けながら、砦の中の様子を想像する。 (「召喚物が際限なく増えていく様を想像すると、本当に恐ろしいですね」)
今回の依頼に関しては、日常からの逃亡者・カッセル(a16822)が的確なまとめを行っている。 「この依頼の敵、無限召喚できる召喚存在さえ無ければ、大した敵ではありません。『集団攻撃アビで無数の召喚存在を粉砕して、新たな召喚存在を相手にしている間に、この3体のモンスターを倒せるか?』が鍵となるでしょう」 モンスターを倒すまでに集団攻撃を行うアビリティが保てば、こちらの勝ちは揺るがない。逆に、それまでにアビリティが尽きた場合は、押し切られて撤退も十分にあり得る。 そこで冒険者達が取った今回の作戦は…… 「強行突破。こういう作戦はわかりやすくて好きですね」 危険なお兄さん・クルド(a11701)の言葉通り、冒険者達は電撃作戦で召喚物を突破しつつひたすら敵モンスターの所まで前進すると言うシンプルなものだった。 (「今回はかなり敵が多いと聞くし、対軍戦の経験を積むにはもってこいだろう」) クルドは真剣な表情で、戦いへと臨む。 先陣は翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)が切ることになった。彼女を頂点にして楔形の陣形を組み、一点突破を行うのだ。 そうと決まれば、長居は無用。冒険者達は入り口に向かって走った。そこにたむろするのは、土塊の下僕達。 「さて、道を開けて貰おうか」 宵藍の夜空の星華・アルタイル(a37072)が『エンブレムシャワー』で下僕達を一掃する。
砦の中に入った冒険者達は、予想していた以上の召喚物の数に、少なからず驚いた。 「武器を振っただけで当たるね。これは」 セルシオが苦笑しながら言うが、決してその言葉は誇張ではない。 (「『塵も積もれば』……か。もっと良い意味において、聞きたい言葉だわ、ね」) 夜河の歌唄い・ステュクス(a46875)も、この様子に一瞬躊躇する。 (「蠢いているデコイ達……一つ一つは弱くとも、これだけ数が集まれば恐ろしいことになりますわよね」) 墨染めの桜花・リタ(a35760)は空中に浮遊している大量のリングスラッシャーやクリスタルインセクトを見て、分布状況を確認する。 (「こんな物が人里にやってきたら、大変なことになりますわ。その前に何としても阻止せねばなりませんね」) リタは周辺の敵の索敵を終える。重視するのは、やっかいな攻撃法が多いクリスタルインセクトの駆除。 (「殆どが緑ですわね。1体だけ、青い物が居るようですわ」) クリスタルインセクトの青は偵察形態。つまり、この1体を通して、相手はこちらを見ているのだ。 緑は雑音形態。動くことなくその場に留まり、常に雑音を出して相手を混乱させる。 (「他の皆さんは、混乱されてないでしょうか?」) リタは周りの仲間達を確認した。幸いなことに、インセクトの雑音で混乱している者は一人もいない。 そこまで確認して、リタは攻撃に転じた。『エンブレムシャワー』を放ち、インセクトに光の雨を降らせる。 次の瞬間。倒しきれなかったインセクトは赤く色を変え、一斉に攻めてきた。赤は攻撃形態。ひたすら攻撃して来るのみ。 そこへ、後方から針の雨が飛ぶ。襲ってきたインセクトは無数の針に体を貫かれ、姿を消した。 「……一撃とは行かぬじゃろうけど、二撃なら……」 それは黒炎を纏う調理人・サタナエル(a46088)の放った『ニードルスピア』。そこへ、ヴィトーが声を掛ける。 「邪魔な奴らは、どんどん片付けるか。エッちゃん」 サタナエルはその言葉に、こくりと頷いた。 「わかったのじゃ。ヴィーにぃ」 二人のやり取りを聞きつつ、リタは再び前を見る。そこには、わらわらと迫り来るリングや下僕の群れ。彼女は道を開くべく、再び光の雨を放った。 「もう一度、自然にお戻りなさい!」
エンブレムシャワーやニードルスピア、それに『流水撃』を駆使し、冒険者達は先へ進む。 だが、実は冒険者達は肝心なことを聞かされていなかった。何かというと、「敵モンスターの位置」である。 そこで、先頭を行くナタクは、常に「敵の出現する方向」へと進んだ。当然だが、召喚物を召喚しているのが今回の敵モンスターなので、敵が来る方向に進むのは理に適っていると言える。 ただ、砦の中は一本道ではない。そして、砦の中には召喚物があふれている。そうなると、必然的に「分かれ道の両側から召喚物が来る」と言う状況も起こりえる。 だが、冒険者達は慌てず騒がず、迫り来る召喚物を観察する。ステュクスは説明した。 「召喚存在を生み出すモンスターの側には、当然それらが数多く居るんじゃないかと、思うの。だから、召喚存在達が集まる方向を見つければ、それがモンスターの居所に繋がる、はず」 先程リタが観察していた通り、インセクトの偵察形態を通じて、敵はこちらの様子を見ている。冒険者が迫ってくるとわかれば、敵モンスターは身を固めるために召喚物を使うだろう。つまり、敵が多い方に進む事で敵モンスターに近づけると言う理屈だ。 観察の結果進行方向は決まったので、ステュクスはナタクにそれを伝える。ナタクはその言葉に従い、更に先へと進んだ。 「よっと!」 ナタクがインセクトを掴み、『破鎧掌』で吹き飛ばす。その先には、数多の召喚物が守りを固める扉。 「……こいつらが片付けば、この砦もちょっとは広く感じるかな?」 そういって、ヴィトーが淡々と『流水撃』で道を開く。
ようやく召喚物の群れを突破した冒険者達は、結果的に一番奥にあった部屋で、問題のモンスターを発見した。 「……ここが正念場だな」 ヴィトーの言葉通り、このモンスターを倒すのが今回の肝だ。一刻も早く倒そうと、冒険者達は素早くモンスター達を囲んだ。 その輪の中で、漂う耀きの記憶・ロレンツァ(a48556)はぴょこぴょこ飛び跳ねるモンスターを見て、真顔で言う。 「……これは寝袋か……?」 彼がそう思うのも無理はない。相手は明らかに「赤い寝袋から顔だけ出して飛び跳ねている」様に見えるからだ。 冒険者達は攻撃に移った。セイラの霊査通り、モンスターは体当たりをしようとするが、その動きは遅いので逆に格好の的だ。 だが、相手も全く抵抗しないわけではない。どこからどう召喚しているのかは全くわからないが、彼等の前にインセクトやらリングやらが喚び出されていく。 さらに悪いことに、道中倒しきれなかった召喚物がその部屋へとなだれ込んできていた。それを見た冒険者達は、手分けして召喚物の対応に当たる事にする。 「私は召喚物の相手を致します」 「雑魚は僕らに任せてください。モンスターの相手は頼みましたよ」 次々と召喚物対応に回る仲間達を見て、ナタクもそちらに回ろうとした。 「じゃあ、モンスターの動きが封じられるまで、ボクも周りの敵を倒すね?」 だが、それはすぐに却下された。 「誰も、拘束の用意はしてないよ」 今回はカッセルが纏めた通り、集団攻撃アビリティの数が攻略の鍵となっていた。故に他のアビリティは持ってきていない者が殆どである。また、こう言う時に有効なキルドレッドブルーも、今回は誰も連れてきていなかったのだ。 状況を理解したナタクは、臨機応変に対モンスターへとシフトする。結局、モンスターの相手はロレンツァとアルタイル、そしてナタクで行うこととなった。 (「そう言えば……体当たりをしてくるのだったな。……向こうから寄ってくる可能性もあるのか……」) ロレンツァの考え通り、敵モンスター達は跳ねながらロレンツァの方へ寄ってきた。 (「跳ねて移動するだけあって……位置は掴みやすいな……」) 早速、彼は自分の方に寄ってきたモンスター目掛けて『慈悲の聖槍』を突き立てた。そこに続けて、アルタイルが紋章筆記で『エンブレムノヴァ』を放つ。 「燃え尽きろ!」 その言葉通りモンスターは炎に焼かれ、その場にどさりと倒れた。 「それじゃボクも!」 ナタクは『斬鉄蹴』を閃かせ、モンスターの頭上より蹴り落とす。その一撃で、モンスターは地に伏した。 残るは1体。しかも直接攻撃はしない。3対1で負けるはずもなく、あっという間に残りのモンスターも倒される。 クルドはモンスターが倒れたのを見て、辺りを確認する。召喚物が残っている可能性があったからだ。だが、主が死んで消えたのか、単純に全部倒したからか、召喚物の姿は見あたらなかった。 砦の開放を確認し、冒険者達は武器を下ろす。 (「決して忘れはしないから……安らかにお休み」) 剣を鞘に納めながら、セルシオはそう祈りを捧げた。 (「……せめて、その眠りが安らかであらんことを」) サタナエルも、モンスターに祈りを捧げる。
こうしてまた一つ、ソルレオンの残した遺産は同盟諸国へと受け継がれた。

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参加者:10人
作成日:2006/09/16
得票数:冒険活劇17
戦闘3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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