≪百門の大商都バーレル≫フライドの誕生日



<オープニング>


●繁栄のグリモア
 9月9日はフライドの誕生日。
 今年はバーレルの護衛士達も呼んで行うことになったらしい。
 しかも、その場所で繁栄のグリモアが公開される事になっている。
 繁栄のグリモアはフライドの城の地下。
 これはレッグランブランドの普及に貢献したバーレル護衛士を信頼しての事だ。
 今まではノスフェラトゥの問題で、フライドの誕生会さえ行われていなかったからな。
 気合を入れて頑張ろう!

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参加者
笑劇の伝道師・オメガ(a00366)
貧乳様の巫女・イチカ(a04121)
黒の闘士・デュラン(a04878)
蒼首輪の猫・ルバルク(a10582)
緑の記憶・リョク(a21145)
バーレルっ娘・ユミ(a30003)
蒼天の守護者・ツカサ(a30890)
赤心紅翼協奏曲・ハルヒ(a31994)
円環の吟遊詩人・ロッズ(a34074)
白刃の影騎士・ブレイズ(a34294)
衝撃の弾幕少女・ユーロ(a39593)
美白の歌姫・シュチ(a42569)


<リプレイ>

●城下町
「今日は……フライドさんの誕生日……なのですね……。去年の今頃は……そんな気配すら無かったような……気もしますが……、それほど戦乱の爪跡が……深くなっていたのですね。……ある意味、不幸な国王のフライドさんなのです……」
 しみじみとした表情を浮かべながら、貧乳様の巫女・イチカ(a04121)がほろりと涙を流す。
 以前までノスフェラトゥなどの暗躍があったため、フライドの誕生パーティはもちろん、グリモアの公開すら行われていなかったので、イチカ達にとっては多少なりとも違和感がある。
 その反面、チキンレッグの商人達は久しぶりの誕生パーティに金の匂いを感じたのか、張り合うようにして城下町に店を出しているようだ。
「しかも今回のパーティには北方セイレーンの人達も来ているんですよね? 何だかドキドキしてくるなぁ……」
 緊張した様子で辺りを見回しながら、円環の吟遊詩人・ロッズ(a34074)が城下町を歩いていく。
 バーレルGGがグロリオサGGと友情を育んできたおかげで、北方セイレーンとチキンレッグ達の間でトラブルはほとんどない。
 もちろん、チキンレッグ達の中には北方セイレーンに対してあまり良くない印象を持っている者もいるようだが、無用なトラブルを避けて彼らとの接触を控えている。
「さてと……、どんな商品が売れるかな?」
 ノソリン『赤い彗星』に乗せた荷物を降ろしながら、笑劇の伝道師・オメガ(a00366)が溜息をつく。
 バーレルGGで城下町に店を出す事になったのだが、予想以上に抽選倍率が高かったため、ひとつのスペースしか借りる事が出来なかった。
 ちなみにオメガ達が売りに出したのはレッグランブランドの商品で、耽美本やアフロヘアー、ブルマなどが紛れ込んでいる。
「北方セイレーンさん達も……来ているようですし……、このお祭りに便乗する事が出来れば……、レッグランブランドの更なる発展も夢では無いでしょう……。ところで……、これは何ですか?」
 オメガの持ってきた商品をマジマジと見つめ、イチカがクールな表情を浮かべてブルマを手に取った。
「い、いや……、どれも北方セイレーンが興味を持ちそうなものばかりだと思うんだが……。特にこのブルマなどは、厳選された布地と職人が縫製した物だ。北方セイレーンが欲しがるもの……かも知れないだろ?」
 イチカの冷たい視線に耐えられなくなったため、オメガが気まずい様子で視線を逸らす。
「す、すまん。これは本の出来心なんだ。別に悪気があったわけじゃない」
 このままだと過酷なノルマを課せられそうな雰囲気すら漂っているため、滝のような汗を流して自らの負けを認めて土下座をする。
「ボクらだって本気でオメガさんを非難しているわけじゃありませんよ。まったく需要がないというわけじゃありませんし、何とかなるんじゃないんですかね?」
 苦笑いを浮かべながら、ロッズがオメガをフォローした。
「そう言ってもらえると助かるぜ。……心の友よ!」
 感動した様子でロッズを抱きしめ、オメガがボロボロと涙を流す。
 この後、オメガは偽レッグランブランドを販売した容疑で、ヒナイ達に捕まってしまうのだが、その時もロッズが身元引受人として関わる事になる。
「まぁ……、北方セイレーンの人達も……色々な趣向を持った……人達がいるようですからね……。何でも試してみる必要が……あるかも知れませんね……」
 納得した様子でブルマを戻し、イチカがアホ毛をぷらんと揺らす。
 その間に北方セイレーンの観光客がレッグランブランドを手に取って、自分に合うか試している。
「とってもお似合いだと思いますよ。もし宜しければサイズ直しも致しましょうか?」
 爽やかな笑みを浮かべながら、ロッズがレッグランブランドを売り込んでいく。
 そのため、北方セイレーンの観光客はロッズに宝石を手渡し、真っ白な歯をキラリと輝かせる。
「どちらの意味にも……取れますね……。まぁ、これも運命……というものでしょう……」
 そう言ってイチカがなむなむと両手を合わすのだった。

●パーティ
「陛下お誕生日おめでとうございますっす。フライド様、俺を七色鶏冠に戻して欲しいっす。黄色でも緑でも赤でも構わないっす。セイレーン外交の為に、急速な戦力の増強が無理なのであれば、俺の力を七色鶏冠として使っていきたいんす。俺なら、チキンレッグっすし、元の鞘に収まる形なるっすから、セイレーンさんもそんなに警戒はしないはずっす」
 チキンレッグ王国の軍服に身を包み、緑の記憶・リョク(a21145)が必死になって頼み込む。
 以前からリョクは七色鶏冠に復帰する事を考えていたため、生半可な気持ちでフライドに頼んでいるわけではない。
「……駄目だ」
 険しい表情を浮かべながら、フライドがキッパリと答えを返す。
 この事に関してはガイと同意見なのか、必要以上の事は口にしない。
「な、何故っすか!? 俺は各鶏冠の隊長にも、ひけを取らない力も手に入れたつもりっす。俺の力で救いになるのであれば……お願いするっす」
 納得の行かない様子を浮かべ、リョクが深々と頭を下げる。
 しかし、フライドは決して首を縦に振らず、却下にした理由を説明し始めた。
「七色鶏冠章は飾りじゃない。七色鶏冠に戻るという事は、今より制限を受ける事になるんだぞ? 俺にはそれが正しいとは思えない。それだけこの証には力が秘められているのだからな。その前に、やるべき事があるはずだ。お前にしか出来ない事が……」
 七色鶏冠章を手に取り、フライドが優しく肩を叩く。
「……差し出がましいようですが、リョクさんの意見も間違っていないと思います。現状では七色鶏冠全体が弱体化している事も否めません。いまのうちに対策を練っておく必要があると思うんですが……」
 リョクの気持ちも分かるため、エンドレスガーディアン・ツカサ(a30890)がフォローを入れる。
「……確かにな。その事については俺も否定するつもりはない。リョクの意見も取り入れて、今後の七色会議で話し合っていこうと思っている。だが、今がその時期じゃない事も分かってくれ」
 様々な問題が山積みになっているため、フライドもすぐに結論を出すつもりはないようだ。
「フライド王もリョクさんの実力を評価しているからこそ、七色鶏冠に戻る事を却下したのですから、私達が出来る事からしていきましょう」
 落ち込むリョクを慰めながら、バーレルっ娘・ユミ(a30003)がフライドを見つめて頭を下げる。
 リョクも頭では分かっているため、七色鶏冠章を握り締めて一礼したあと警備にむかう。
「ひょっとして、お取り込み中でしたか?」
 気まずい様子でフライドを見つめ、蒼き空の翼と夢・ブレイズ(a34294)がボソリと呟いた。
「いや、気にしないでくれ。それよりも何か用か?」
 リョクの背中を見送った後、フライドがコホンと咳をする。
「パーティの準備が整いました。どれもシェフの自信作ばかりです」
 爽やかな笑みを浮かべながら、ブレイズがフライドお抱えのシェフを部屋に招きいれた。
 フライドお抱えのシェフは極度の恥かしがり屋なのか、ナゲットのマスクを常に被っている。
「そういえばフライド様って、いくつになったんですの? ガイ団長に聞いても分からなかったようなので……」
 新調したパーティ用のドレスを身に纏い、美白の歌姫・シュチ(a42569)が大きな花束を手渡した。
 しかし、フライドは顔を真っ赤にしたまま、『王族に年齢を聞くものじゃないぞ』と答えを返す。
「フライドさんの年齢は弟さんと、ラルフさんの年齢を考えれば分かると思いますよ」
 フライドの顔色を窺いながら、ユミがクスクスと笑う。
 本人が年齢を答えたくないようだったため、少しからかってみたくなったらしい。
「こ、こら! そんな事を言ったら、俺のトシがバレるじゃないか!」
 ハッとした表情を浮かべ、フライドが慌てた様子で立ち上がる。
 年齢に関しては神秘のヴェールに包みたかったのか、ユミの行動に驚いているようだ。
「まぁ……、年齢が分かったところで問題は無いと思いますが……。とにかくパーティ会場にむかいましょう。皆さんが待ってますよ」
 苦笑いを浮かべながら、ツカサがフライドを連れてパーティ会場にむかう。
 パーティ会場には七色鶏冠の団長も来ており、フライドに気づくと盛大な拍手で出迎えた。
「それじゃ、フライド王はパーティを楽しんでくださいね。私達は城の警備をしておきますので……」
 安心してパーティを楽しむ事が出来るようにするため、ブレイズがフライドに一礼したあと警備にむかう。
 パーティ会場には北方セイレーンの姿もあり、セレンがチキンレッグの女性を口説いている。
「あらあら、誰かと思えばセレンさん。こんな場所でナンパですか?」
 含みのある笑みを浮かべ、シュチがセレンの肩を叩く。
 次の瞬間、セレンが情けない声を上げ、慌てた様子で土下座をする。
「な、なんだ。ローズじゃないのか。驚かさないでくれ。こっちも命懸けなんだから……」
 辺りをキョロキョロと見回したあと、セレンがホッとした様子で汗を拭う。
 どうやらセレンはローズから逃れ、本能に赴くままナンパをしていたらしい。
「この事はふたりだけの秘密ですわね。これでも口は堅い方なんですのよ、……多分」
 セレンの動揺する様を楽しみながら、シュチがクスクスと笑う。
「や、約束だからな。お、俺も出来るだけの事はするから……」
 祈るような表情を浮かべ、セレンがシュチを見つめて両手を合わす。
 ローズに何か警告されていたのか、いつものセレンと雰囲気が違う。
「それじゃ、本国との交渉を進めておいてくださいね。ナンパばかりしていて仕事をしていないようですから……」
 セレンの背後から声を掛け、ユミがニコリと微笑んだ。
 その声に驚いて飛び上がり、セレンが反射的に返事をする。
 この様子では本国との交渉をサボッてナンパに耽っていたらしい。
「それじゃ、よろしくお願いしますね」
 そう言ってツカサがセレンの肩をぽふりと叩くのだった。

●グリモア
「……バーレル護衛士を信頼して、グリモアを公開してくれるなんて、感慨深いものが有るわね。信頼には信頼で答えられるように、これからも頑張ろうっと……」
 チキンレッグの象徴である繁栄のグリモアを警備するため、衝撃の弾幕少女・ユーロ(a39593)が地下へと降りていく。
 繁栄のグリモアはバーレルの城の地下にあり、普段は厳重な警備の下で管理されている。
「グリモアの見学か……。ややオープン過ぎる感じがするな。従属扱いのグリモアとはいえ、無用心だと思うが……」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、黒の闘士・デュラン(a04878)が溜息を漏らす。
 グリモアの管理は『ツイスター』と呼ばれる七色鶏冠のエリートが行っており、普段は物陰に隠れて不審者がいないか見張っている。
「だから護衛士以外は立ち入り禁止にしてもらったわ」
 一般的にはグリモアのある場所が秘密にされているため、ユーロが青色の鶏冠に協力してもらい立ち入り禁止の札を立てた。
 予想以上にグリモアの見学希望者が多かったため、監視が行き届かなくなってしまう事を恐れての事らしい。
「まぁ、何かあってからじゃ、手遅れになるからにゃ」
 苦笑いを浮かべながら、蒼首輪の猫・ルバルク(a10582)が階段を下りていく。
 繁栄のグリモアは鍾乳洞の奥にあり、ヒナイが厳しい表情を浮かべて立っている。
「これが繁栄のグリモアですか……。確かにヒナイさん達だけじゃ、大変かも知れませんね」
 グリモアをマジマジと見つめ、高く透る星空に響く組曲の様な・ハルヒ(a31994)がボソリと呟いた。
 繁栄のグリモアは卵の形をしており、頑丈な柵でまわりを囲まれている。
「……だから貴様らを呼んだのだ。まぁ……、それ以外の理由もあるかも……知れないが……」
 一瞬だけハルヒの顔を見た後、ヒナイがコホンと咳をする。
 何か言いたい事があるようだが、恥ずかしくて言葉には出せない
「一緒にお弁当を食べるって約束していましたものね」
 満面の笑みを浮かべながら、ハルヒが楽しそうに鼻歌を歌う。
 ヒナイと一緒に昼食を取るため、わざわざ用意してきたらしい。
「繁栄のグリモアって卵型をしているのね。てっきりドゥーリルの灯台地下にある水晶と同じ形だと思っていたけど……」
 不思議そうに首を傾げ、ユーロがボソリと呟いた。
 繁栄のグリモアはドゥーリルの水晶とは異なる形をしており、両方を見比べる事が出来たとしても関係があるとは思えない。
「ホワイトガーデンにあるグリモアに似てますね。私の故郷にあるグリモアは湖の中にあるんですが、羽の生えた卵の形をしているんですよ〜」
 暢気にお茶の用意をしながら、ハルヒがニコリと微笑んだ。
「それじゃ、結構よくある形なのかも知れないにゃね。それともチキンレッグとエンジェルで羽繋がりって事にゃろうか? どちらにしても、それほど深い意味は無さそうにゃね」
 マジマジとグリモアを見つめ、ルバルクが両手を合わす。
 色々な意味で加護がありそうに見えるため、とりあえず拝んでおく事にしたようだ。
 ちなみに繁栄のグリモアは既に希望のグリモアに組み込まれている。
「まぁ、形が似ているのは偶然だろう。何か繋がりがあるのなら、もっと早くに何か分かっているはずだからな」
 クールな表情を浮かべながら、デュランがグリモアを睨む。
 フライドがなかなか見せたがらないものだけあって、繁栄のグリモアはとても美しい。
「ヒナイちゃんは繁栄のグリモアについて何か知らないのかにゃ?」
 彼女なら何か知っていると思ったので、ルバルクが念のため話を聞く事にした。
「……さあな。詳しい事は……よく知らん……。だが、特別な謂れが無くとも……、我々にとっての宝である事に違いはない……」
 ハルヒの淹れた茶をすすり、ヒナイが眼鏡をキラリと輝かせる。
 そのため、ハルヒがハッとした表情を浮かべ、慌てた様子で彼女のお茶を淹れなおす。
「……しかし、ヒナイもだんだん奴に似てきたな。まぁ、そうでもないと鶏冠の長なんぞ、務まらんのかも知れないが……」
 そう言ってデュランがヒナイに、亡くなったアローカナの姿を重ね合わせるのであった……。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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作成日:2006/09/19
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