ミッドナーと月見大作戦



<オープニング>


●秋の夜長に
「イベント、ですか」
 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)の言葉に、酒樽亭の店主は頷いた。
「ええ、うちもすっかり持ち直しましたしね。ここらで、そろそろイベントなんかやってみようかと」
 そろそろ秋も近づいてきた事だし、イベントで客を呼びたいというのも分らないでもない。
「そうか……もう秋なんですね」
 感慨深げに呟いたミッドナーは、何かを思いついたようにペンを取り出した。

●月見に行こう
「お月見をしましょう」
 翌日ミッドナーが言ったのは、そんな言葉だった。
 月見ヶ丘。そう呼ばれる場所で、月が綺麗に見えるのだという。
「もう秋ですしね。月を見ながら一杯……というのもオツなものかと」
 ミッドナーはそう言うと、微かな笑みを浮かべるのだった。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

●満月の夜に
「いい月夜だね」
 太陽王子は尻尾まで美味しい・キリアル(a42282)が空を見上げて呟く。
 一行が月見ヶ丘まで向かう前は夕方だったが、すでに日はどっぷりと暮れ、月が頭上に輝いていた。
 鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)が廃屋を修理する音が響き道具収集家・トリン(a55783)の月見団子作りを手伝う者、簡単な料理を作り始める者……皆が忙しく歩き回る。
「やっ、初めましてミッドナーさん。お月見のお誘いありがとう」
 そんな中いつも通りにサボっている夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)に、ストライダーの翔剣士・ジオグローブ(a56292)が声をかけていく。
「ええ、どうも」
 ジオグローブの後ろをヒトの翔剣士・セルマ(a56298)が木材を抱えて走っていきながら、軽く会釈する。
 恐らく廃屋の修理を手伝っているのだろう……何とも働き者だ。
 まだ栓を開けていない瓶のラベルを撫ぜながら、溜息を漏らす。
 さすがに、今から飲んでいるというわけにもいかない。
「お初にお目にかかります。わたくしマイハと申します。こちらは義弟のセンカ。どうぞよしなに」
「まだ色々と不慣れな新米冒険者ですが、どうぞよろしくお願します」
 エルフの武道家・マイハ(a56215)とエンジェルの忍び・センカ(a56216)の2人に、軽く挨拶を返す。
「不慣れというのは、まだ染まらぬ貴重な時期です。経験の積み方がすなわち、将来の資質に繋がります……良き経験に恵まれん事を」
 パーティ会場から少しだけ離れた場所では、ストライダーの忍び・クリス(a56132)が植物を見比べていた。
「月に供えられる植物ってのはどれだろうな……?」
 草むらを掻き分けて探していると、小動物狩りをしていたヒトの邪竜導士・ジェイク(a56365)と目が合う。
「あー……こんばんは?」
「あ、ああ。こんばんは」
 突如の遭遇に、ぎこちなく挨拶を交わす2人。こんなことも、たまにはあるものだ。

●パーティナイト
「お月様も綺麗だぎゃ! そして、ちょっと肌寒いこの季節! 飲みすぎて風邪引いちゃだめよ? ……で! 久々だし、人も居るので、出血大量大サービス!!」
 スピードラッシュのようにまくし立てる赤い風・セナ(a07132)が、いつも通りのポーズの準備を始める。
「名づけて! 月の光をキッカリ浴びるポージン」
 グコケキャッ……と。ストライダーの関節が立てたにしては、恐ろしくコミカルな音を立ててセナがのた打ち回る。
「わーっ! 医術士、お客様の中に医術士はいらっしゃいませんかー!?」
「こ、此処にいるぎゃ……」
 ヒトの翔剣士・セルマ(a56298)の言葉に、視線が何処か遠くのほうにいきながらも答えるセナ。まさに芸人根性である。
 だが、痛いものは痛いわけで。激痛にのた打ち回りながら、駆けつけてきた日向ぼっこ兄さん・ナハル(a36935)に衝突する。
「うわーっ、あいたたた! 轢かれる! 潰れる!」
「まずは押さえつけないといけませんわ! 力自慢の方はいらっしゃいますか!?」
 紅色の剣術士・アムール(a47706)の声に答え、ヒーロー大好き熱血女王・バームクーヘン(a48502)やヒトノソリンの紋章術士・シェルト(a52822)達が集まってくる。
「必殺! ヒーリングパンチなぁん!」
 シェルトの癒しの拳を使う声や、何故かギャー、とかいう声が響く。
「何だか、凄く騒がしいんだよ」
 キノコをもふもふと食べるトレジャーハンター・アルカナ(a90042)の近くを通りがかった漢・アナボリック(a00210)が、ふと思い出したように声をかける。
「そういえば、アルカナも飲める歳になったんだな。最初に見かけた頃はこんなに小さかったけど」
 指で2cmくらいを示したアナボリックに、アルカナが無言で蹴りを入れる。
 クリーンヒットして転がっていくアナボリックが先程の一団に突っ込み、「ぎゃー」とか「だぎゃー」とかいう声が聞こえてくる。
 パーティーとは、かくも騒がしいものなのである。

「ええっと、以前の依頼で偽装カップルっぽくしてたルルイと……なんだかんだでくっついた。あんとき居たハデスは戦死したそうだが、ミッドナーにも一応因縁はあるしちゃんと伝えておかないといけないかなと思って」
「そうですか。おめでとうございます」
 無造作紳士・ヒースクリフ(a05907)に、そんな返事を返すミッドナーはヒースクリフを見送ってから、軽く溜息をつく。
 黄金の月を眺めていると、何だか暗い感情が湧き上がってきて……頭にポン、と手が乗せられる。
 とっさの事に驚いて振り向くと、其処には悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)が立っている。
「月が綺麗だなぁ」
「ミッドナー殿、マントを持ってきたのじゃー」
 やってくる闇祓う黄金の刃・プラチナ(a41265)や黒の少女・ルノア(a42211)。
 1人ではない。そんな事さえ忘れてしまいそうだった事に苦笑する。
「……本当に、綺麗な月ですね」
「月を見るのに理屈はいらないね、飽きないし。ほらミッドナー、未成年に付き合うのにお酒ばかりでなくお茶も行きなさいな。団子にもよく合うよ」
「お茶割りとかにしたらダメですかね」
「お酒のお供に季節のフルーツはいかかですか?」
 やがてやってきた彩雲追月・ユーセシル(a38825)や大樹の寵愛を授かる者・モニカ(a37774)、紫煙の医術士・ヴィヴィス(a52494)も加わり、小さな一団が出来上がる。
「私はあれだ……昔ある事情で知り合った女の子が酒の味も知らずに……」
「ふむふむ……」
 小さな幸せに満ちた空間を、少し離れた場所で緑の影・デスト(a90337)が見守る。
「……お前も見てるか、特盛り馬鹿。アイツの事はどうやら、心配なさそうだぜ?」
 誰に向けた言葉かは分らない。けれどデストはそう言うと一度だけ優しげな笑みを向け、豪快に肉に齧り付いた。
 彼が喧騒に加わる事はない。背負った称号は影。影は明るい場所では消え去るのみ。

●パーティーナイト2
「そういえば…貴方と初めて出会った時は、こんなに静かな夜ではなかったね……。煌びやかで華やかで……あの時も月は、出ていたのだろうか?」
 不散の花・ルルイ(a42382)がヒースクリフに寄り添うようにして声をかける。
 少し喧騒から離れた場所で、2人は静かに月を見上げる。
 互いに手を重ねあいながらもルルイのほうが、やや積極的に見える。
 ヒースクリフもルルイの雰囲気に気圧されるかのように、気の利いた言葉1つ出てこない。
 それは月明かりがルルイを普段よりも美しく見せているせいだろうか?
 重ね合わせた手から、そんな心を読み取られないかどうか。それだけが心配だった。
 そんな彼等とは、また別の場所。修繕された廃屋のほうでもまた、1つの光景があった。
「これ以上……幸せな時間はありませんね……」
「ん?」
 淡き緑の協奏者・カイジ(a50823)の言葉に、会場から失敬してきた重箱弁当をパクついていた花楓・ルラ(a27865)が視線を向ける。
 すっかり修繕された廃屋の2階から月を見ていた2人は、何となくのんびりを過ごしていた。
 意外にも廃屋に来ようという人は少なかったらしく、心地よい静寂が辺りを包んでいる。
 再び重箱弁当をパクつき始めたルラの横顔を眺め、理由の無い心地よさを感じる。
 それはきっと、秋に近づき始めた気候のせいだけではない。
 ルラが側にいるからに違いない。何となくではあるが、彼女が自分にとって大切な存在である事を感じている。
 こうして、側にいられる幸せ。この気持ちを今は何と呼ぶのかは分らないけれど。
 願わくば。この穏やかな時間が、これからも続きますように。
 そう願うカイジの下のほう、丘の上では未だパーティーが最高潮へと向けて突き進んでいる。
「一緒にどぶだ?」
「ドブなぁ〜ん?」
 しまった、思いっきり噛んだ。
 冥界の禁呪導士・デスペル(a28255)は自分の痛恨のミスを感じる。
 良い具合に1人でいるシェルトを見つけたのに、肝心のところで噛んでしまった。
「あ、いや。一緒にどうだ?」
「いいですなぁ〜ん」
 承諾の返事を得て、シェルトの隣に座るデスペル。
 月を見上げるシェルトと、月見団子を食べるシェルト。
 喉を詰まらせたシェルトにデスペルがお茶を差し出して。
 何となく、一緒に月を見上げる。
 そう、何とはない、ただ、それだけの光景。
「ああっ、またセナさんがぁ!」
「そう言うこともあぐごっ」
「ス、スクランブルですなぁん!」
「う、うおっ、速いって!」
「スクランブルダッシュですなぁん!」
 そして走っていくシェルトに手を引かれるようにして走っていくデスペル。
 ただそれだけの光景が。とてもデスペルには楽しかった。
「はい、どうぞ」
 走っていく2人を楽しそうに眺めながら、月蝶宝華・レイン(a35749)に注がれたジュースをおとぼけモノノケ狐狗狸さん・ミズキ(a36086)が飲む。
「義兄様やレイン様とお酒の席を囲めますとは、わたくしめは幸せでございますね♪」
 そんな言葉にクスクス笑いながら、想天憐獣・ビャクヤ(a36262)は月見団子をつまんでみる。
 小さい頃から、月を見るが大好きだった。今も良く月光浴をしている。
 けれど、今日は大切な「家族」と一緒。
 いつもより幸せなのは……その所為に違いない。
 ならば……僕に愛を教えてくれる二人と、このささやかな幸せに感謝を。
「僕の大好きな二人の家族に……乾杯!」
 そう言ってグラスを高く上げると、レインとビャクヤもそれにならう。
 月を綺麗と思える事の幸せ。ゆったりとした時間を、3人は静かに楽しんでいた。
「……何だ、ゾロゾロと」
「いや、その、なあ?」
「なのじゃ」
「……そういう事よ」
 3人からも、ルルイ達からも離れた場所。そこで1人、肉を焼いていたデストの所にルノア達が現れる。
「良く分らんが。とりあえず食うか?」
 そう言ってデストが肉を差し出す。
「……お節介かしらね」
 そう言って肉を受け取ったルノアに、デストは肩をすくめて。
「事情はサッパリ掴めんが。お節介焼ける相手がいるってのは幸せだろうさ、互いにとってな」
 そんな事を言って、突然増えた客達の為のキノコを焼き始めるのだった。
 そして、セナやアナボリックが無事に沈黙した頃。先程ヴィヴィスやユーセシル達が居た場所には、ミッドナーと武侠・タダシ(a06685)の姿があった。
「いい月といい酒といい女か」
 そんな事を言うタダシに、ミッドナーが視線を向ける。
「実にいい趣向だ。言わんでもわかると思うが「いい女」とは、俺にとってはお前のことな、ミッドナー」
 分りやすく動揺を見せたミッドナーは、すぐにいつも通りの表情を取り繕う。
「……よく聞こえなかったので、もう1回言っていただけますか?」
「いい月と」
「その後です」
「言わんでもわかると思うが「いい女」とは、俺にとってはお前のことな、ミッドナー」
「……もう1回。あと1回だけ、お願いします」
 そう言って、悪戯っぽく笑う。それは彼女なりの、不器用な好意の示し方。
 やがて宴も少しずつ終わりの雰囲気を見せていき。吟遊詩人達の静かな歌が流れ始める。
「月の姿は変わりゆく……それは人の心にも似て……」
 セイレーンの吟遊詩人・ミスティ(a55895)の歌が静かに響き。
「今日この場を作ってくださったミッドナーさんに感謝して……そしてこの静寂に光を求めて」
 ドリアッドの忍び・カヤ(a56239)の歌も、それに続くように響き始める。
 静かに。ただ静かに、夜は過ぎ行く。
 この平穏な時が永遠であれば良いと、誰もがそう願いつつ。
 静かに。ただ静かに、月見の夜の宴は、幕を閉じた。


マスター:じぇい 紹介ページ
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参加者:32人
作成日:2006/09/13
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