SINOBI



<オープニング>


 秋の味覚といえば、何を連想するだろう。
 柿、葡萄、栗、梨、きのこ……様々なものが浮かぶ。
 それらを楽しめる山があるとすれば、どうだろう。
「と、いうわけで今回の依頼は山で秋の味覚を倒す事です」
 いつもの事ではあるのだが、ミッドナーの台詞には肝心なところが抜けている。
 補足したところによると、秋の味覚を贅沢に楽しめる山に、モンスターが出たらしい。
「属にいう忍び風のモンスターらしいのですが……人に迷惑をかけるので、誰も山に近づけないらしいのです」
 つまり、今のところ死傷者が出ていないわけである。
 無論、相手はモンスターだ。これからもそうであるとは限らない。
「まあ、そのモンスターを叩きのめせば好きな秋の味覚を持って帰っても良いという話ですし。悪い依頼ではないでしょう?」
 そういうとミッドナーは、いつも通りに軽く一礼するのだった。

マスターからのコメントを見る

参加者
玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)
小さき淑女・クリムゾン(a28860)
アルラズワード・ナハル(a36935)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
紅宵燐・ルルイ(a42382)
紫麝・リヒト(a43717)
修行中の翔剣士・ニコラ(a46814)
銀月のストレプト・テイサ(a47791)
朱螺明蓮・ソウジュ(a50744)
物怪王女・マイハ(a56215)


<リプレイ>

●山の幸を目指して
 秋の山というものは、こんなに美しいものだったろうか。
 赤や黄色に色づいた山を見て彼方の銀月・テイサ(a47791)は、そんな事を考えていた。
 こんな山の中にモンスターが忍んでいるということが、とてももったいないように思える。
「もう秋なんだな……」
 紫羅欄花・リヒト(a43717)の言葉に含まれているものは感慨だろうか。
 何処か遠くを見ているような目を見る限り、それだけでは無さそうだが。
「山に棲む忍びの魔か……私も忍びで山育ち、負けるわけにはいかないな……。気合を入れて戦おう……山の幸、秋の味覚のためにも」
 辺りを警戒しながら歩く不散の花・ルルイ(a42382)の眼差しは、鋭く……引き締められた口元からは、ヨダレがたれている。
 山の幸に秋の味覚。その魅力に耐えうるのは……やはり、相当難しいということなのだろう。
 ザクザクと、落ち葉の落ちている山道を歩く。
「皆、気をつけて。何処から来るか分らないからね!」
 日向ぼっこ兄さん・ナハル(a36935)が、一際大きな声と音を立てて歩く。
 広い山の中では、忍んでいる敵を探すのは難しい。ならば相手から探してもらえばいいではないか、という寸法だ。
「サクッと倒して秋の味覚を早く楽しみたいものじゃ……」
 闇祓う黄金の刃・プラチナ(a41265)が、近くにあった栗の木を見上げる。
 どうも、この山の中には広場といった類のものがないらしい。視界の悪さは、そのまま敵に有利となりかねないだろう。
 果たして、先攻を取るのはどちらか。モンスターの本能と冒険者の知恵のどちらが勝つか。
 刻一刻と過ぎていく時の中、一瞬足りとて気を抜く事は出来なかった。

●忍んでました
「んー……これはクルミでしょうか?」
「あ、ダメです。その木の実を食べて、傭兵時代の先輩が亡くなった事があるんですよ」
 新米の翔剣士・ニコラ(a46814)の拾った木の実に、小さき淑女・クリムゾン(a28860)が忠告を加える。
 どうやら、クルミに良く似た違う木の実であるらしい。
「うむ、この柿は美味いのう」
 柿を丸かじりしながら歩く玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)も、一応警戒は怠らない。
「……これで酒もあればいう事なしなのじゃが。あーいや、ゴホン」
 プラチナやニコラ達の視線を感じて咳払いをしている所を見ると、今のは失言だったらしい。
「中々出てこないものですね……」
「ああ、モンスターとはいえSINOBIってことかもな」
 朱螺明蓮・ソウジュ(a50744)と言葉を交わしながら、テイサが近くの木に手をつく。
 奴を見つけたら、麻痺してしまうならば。こうやって声を交わしていれば異常に誰かが気づくはず。
 そう考えながら、木の根元を見る。ひょっとしたら、この木の根元にいるかもしれない。
「……ん?」
 そこで、手の感触が何か変だということに気がつく。
 恐る恐る見上げてみて、気づく。
 目の前にある木の幹だと思っていたものこそが、SINOBIだということに。
 胸に当たるテイサの手の感触を感じたか、SINOBIがポッと顔を赤らめる。
 無論、胸板の厚さからして男性型モンスターであろう事は疑う余地もないのではあるが。
 テイサの言葉で気がついたソウジュも、運悪くSINOBIの隠れている場所を見つけてしまっていた。
 麻痺した2人をそのままに、SINOBIは木の上方へと素早く飛び上がっていく。
 ……仮定の話ではあるのだが。
 もし、無策のまま挑んでいれば、この場はSINOBIに圧倒的に有利であったに違いない。
 だが、彼等の策は二重三重であった。
 突然黙った2人を、今まで樽に山の幸を入れていたエルフの武道家・マイハ(a56215)が怪しみ、ルルイが僅かにたった音を聞き逃さなかった。
「……来たぞ!」
 ルルイの声に全員が武器を取り、リヒトの翹揺に新たな外装が加わっていく。
「さぁ、何処から来る……?」
 バジヤベルの静謐の祈りで回復したソウジュがグレートボウを構え、SINOBIの位置を把握しようとする。
 少なくとも、見える範囲には……居ない、ように見える。
 いや、次の瞬間には誰もが気がついた。
 視覚外に隠れていたSINOBIが、闇の闘気を込めた刃でルルイを切り裂いたのだから。
「この……っ!」
 リヒトの達人の一撃を受けつつも、SINOBIは攻撃の意思に満ちた瞳で冒険者達を見る。
 黒い装束に包まれてこそいるが、その瞳の輝きは彼が人外のものである事を明確に感じさせる。
 テイサのヒーリングウェーブがルルイの傷を癒していくが、それでもかなり傷は深い。
 思わぬ一撃ではあった。だが、こうなればもはや、冒険者達の目を盗んでSINOBIが姿を隠すことは不可能だろう。
 つまり、今の一撃でルルイを仕留めそこなったのはSINOBIにとっては最大の好機を逃した事になる。
「いきます!」
 ニコラの薔薇の剣戟が打ち込まれるが、ただの1度の連撃すら打ち込む事が出来ない。
 素早く後退したニコラを援護するかのように、ソウジュのホーミングアローが撃ち込まれる。
「……何だ?」
 ホーミングアローを撃ち込んだソウジュは、SINOBIの手が妙な動きをしている事に気付く。
 それから間もないうちに生み出されたものは、一つの奇妙な形をした刃。
 それは祈り続けるバジヤベルに向かって回転しながら突き進み、切り裂いていく。
「必殺!刺さる魔球!」
 思わずマイヤがイガグリを投げつけるが、的を外れて飛んでいってしまう。
「させるかっ!」
 回復したルルイが再び回転しながらの飛翔を始めたシュリケソを粘り蜘蛛糸で拘束する。
「逃がしませんっ! たあぁぁっ!」
 ソウジュの突撃槍が、あっさりとシュリケソを打ち砕く。
 だが、SINOBIは健在だ。気付けば、手で何かの印らしきものを作っている。
「な、なんだ……?」
 ナハルはSINOBIの行動の意味を一瞬図りかねる……が、すぐに理解する事になる。
 何故なら、SINOBIの手から大量の水が吹き出してきたのだから。
 確か、「水遁」とかいった技だったろうか。
 びしょ濡れになった服は、後で乾かせばいい。
 それは分っているのだが。びしょ濡れになると、嫌でも体型が分るようになる。場合によっては、透ける。
 思春期な男性諸氏がこの場に居なかったのは、ある種の不幸であり幸運である。
 何故なら、そんな目で見れば間違いなく殴られてハブられて不幸になる。
 しかし、見る事が出来たという事自体は、思春期な男性諸氏にとっては幸運であったに違いない。
 女性にとって今回そういう人物が居なかった幸運を合わせれば、2対1で今回は運が良かったと言わざるを得まい。

●雷遁
 ルルイの粘り蜘蛛糸で中々拘束されないどころか、隙あらばSINOBIも粘り蜘蛛糸を放ってくる。
 バジヤベルの静謐の祈りがなければ、彼等は本当にピンチに陥っていただろう。
「せいやっ!」
 マイハの剛鬼投げを交わしつつ、SINOBIは距離を取って周囲に火を放出する。
 素早く、隙がない。「忍び」を名乗るだけはある。隠れていなくとも、相当の実力を持っていた。
「これでも……くらうのじゃ!」
 コンビネーションで放たれたプラチナとニコラの攻撃が、SINOBIを貫く。
 リヒトの達人の一撃、ルルイの粘り蜘蛛糸、テイサの緑の束縛。
 数々のバッドステータスを逃れつつも、ダメージは溜まりゆく。
 そして、此処にきて。SINOBIはバックステップで距離を取り始める。
 無論、簡単にそうはさせない。
 ソウジュのナパームアローが撃ち込まれるのを見ると、SINOBIは其処で動きを止めて手で何かの印を形作る。
 その正体は、すぐに理解できた。
 雷の技、雷遁がソウジュを撃ち抜く。
「がっ……!?」
 火遁や水遁とは比べ物にならないダメージを受け、ソウジュは自分が麻痺したのを感じる。
 だが、そんな事は問題ではない。
 SINOBIを挟んだ向かい側にいるニコルの顔を見れば、自分がどんな状態なのか理解できる。
 それ即ち、アフロ。
 どんなに凄まじいアフロに自分の頭が見えているのかはソウジュには分らない。
 だが。
 皆の笑いとも哀れみとも見える顔を見ていると。何だか酷く、悲しくなって涙さえ浮かんでくる。
 嗚呼、俺は何故こんな目にあっているのか。
 そう思わずにはいられない。
「ぬおっ!?」
 やがて、バジヤベルも雷遁を受ける。
 麻痺はしなかった為、祈りは途切れなかった……のではあるが。
 バジヤベルもまた、アフロになっていた。ただし、眉毛が。
 さすがに頭に毛のないリザードマンに、視覚効果といえアフロによる増毛は無理だったようだ。
 それを見て、ソウジュは少し自分を恥じる。
 あの状態は、あまりにも哀し過ぎる。自分はまだ、恵まれていたのだと。
 バジヤベルの目に一瞬光ったものを、ソウジュが見逃す事は無かった。

●決着
 やがて、ターバンからアフロ溢れるナハルや、肩まで届く芸術的なアフロのテイサといった面々……というか全員が仲良くアフロになってはいたのだが。
 その頃には、すでにSINOBIを満身創痍の状態まで追い詰めていた。
 特に怒りに燃えていたバジヤベルのスキュラフレイムを受け、灰となって消えていくSINOBI。
 それと同時に全員の髪型が元に戻り、思わず安堵の溜息をつく。
 このまま元に戻らなかったらどうしよう、とも思ったりしたが。そんな事は無い。
「闇に消えるが忍びの定め……そんなこと、ない」
 せめてもの供養か、ルルイが残った灰を集めて埋葬する。
「さ、めでたく依頼達成したし山の味覚で皆で宴会をしようか!」
 マイハの明るい声で気分を転換した冒険者達は、中断した山の幸集めを再開する。
「栗ご飯にキノコご飯にバーベキュー……」
 ニコラの意見に賛同した全員が、それぞれ思い思いのものを集め始める。
「梨なら貰ってきたい、かも」
「お芋を掘っていきましょうかねえ……」
 今度こそ、フリでも警戒しながらでもなく。
 本当に自分の欲しいものを探し始める冒険者達。
 アフロのトラウマを残しつつ。こうして山の幸は人々に無事解放されたのであった。


マスター:じぇい 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2006/09/15
得票数:戦闘1  ほのぼの1  コメディ15 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。