キィルスの誕生日〜奏で響く音



<オープニング>


 ♪ポロン……ポロン……。

 酒場に奏でられるギターの音。弾き手は紅き柘榴の翼剣・キィルス(a90077)。
 その横にてストールに腰掛け、音色に合わせて静かにバラードを歌い上げるは翡翠の霊査士・レィズ(a90099)。
 夜の酒場にて杯を傾ける穏やかな休息の一時。そんな時間を彩るBGM。

 ピィィ――ン……!

 演奏が唐突に止まる。弦が切れた音。レィズは歌うのを止め、慌てて相棒を見やる。
 二人は立ち上がり、ささやかな演奏会は終了させてテーブル席に着くと2人分の飲み物を注文する。
 指を口に当てていたキィルス。軽く切ったみたいだが、大した切り傷でも無い。
「大丈夫?」
 演奏を聴いていた白光の癒杖・ルディリア(a90219)がやってきて、キィルスに問いかけた。彼はああ、と頷いて静かな笑みを浮かべる。
「ちょっと切っただけ……」
「貴方じゃなくて、そっち」
 彼女の無情なる指先はキィルスではなく、彼の抱えるギターを指していたのだった。
「随分使い込んでるのね、これ。他にも何本かギター持ってるって聞いたけど?」
「ああ、モノによって音の癖も違うしな」
 物珍しそうにキィルスのギターを抱えて見つめるルディ。ニスが僅かに剥がれかけ、弦が一本無惨に切れてしまっている。
「弦を張り直すだけじゃ可哀想ね」
「そや……オレの知り合いに……」
 思い出した様にレィズはキィルスに話を持ちかける――。

 レィズが語ったのはとあるドリアッドの音楽家の話。
 彼はレィズの音楽面における師の一人であり、音楽を、楽器を愛し、森に囲まれた村にで数人の楽器職人と共に住んでいるのだという。
「悠久の時を音楽と共に過ごして来はった人や。名はT。本当の名は時の彼方。で、その人は調律師でもあるんや。修復した楽器の音の調整なら信頼して任せられる」
「ほぉぉ……」
 キィルスは真剣に耳を傾けていた。腕の良い楽器職人、そして調律師。音楽好きには気になる話だ。
「それとな――その“T”から手紙貰ろてたんやけど――楽器の貰い手も探してるそうなんや。沢山色々作ってるさかい、誰かに奏でて貰う事望んでるらしゅうて」
「じゃ、誘いあって行ってみるかねぇ? 楽器欲しい奴や調整して欲しい奴って声かけて」
「私も行く行くー!」
「――あと」
「あと?」
「キィ、今度誕生日やろ?」
「――あ」
 忘れてた。キィルスは口をぽっかり開けて思い出した。そんな様子をレィズはクスクス笑って。
「皆で楽器貰ったり直したり調整したら、星空コンサートなんて面白いかもしれへんな。で、皆で盛大に祝ってやるさかい」
「キィルスおめでとー♪ ……で、いくつになるの?」
「…………あー、んー、そのー」
「三十」
「言うなぁぁぁぁっっっ!!!」

 と言う事で。
 晴れて三十路に到達してしまうキィルスを祝うパーティを夜に行おうと言う事で。
 欲しい楽器も見付かるかも知れないし、巡り会うかも知れない。
 キミだけの楽器、キミだけの音色を探しに行きませんか?

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参加者
NPC:紅き柘榴の翼剣・キィルス(a90077)



<リプレイ>

「毎年恒例になってきた様な気がする。キィルスさんとフェイルを一緒にお祝いするの……」
 楽器職人の集う村に着くなりシトラはそう呟いた。フェイルティヒの誕生日はキィルスと同じ、9月14日。ナマモノに好かれた固い絆の二人は今年も同時に年を食う。
「しかしまぁ、三十路の壁とはこうも分厚い物なのですねぇ……キィルスさんが別人の様に見え――」
「どこがだ、どこが」
 キィルスの反論。一見、このヴィジュアル系は30歳には見えない。
「むしろ実年齢知って驚いたけどな。10代後半位と思っていたし」
「それはサバ読み過ぎだと思うわよ」
 カルアの言葉にルディリアの冷たい一言。
「でも別に年齢なんて良いんじゃないかな? 楽器が年月を経て使う程、音に深みを増す様に」
「――良い事言うね。人も同じと言いたいんだろ?」
 突然投げかけられた声。レィズに伴われ現れたローブ姿の男は外見40歳前後の壮年ドリアッド。彼は皆を見渡し、優雅にお辞儀して挨拶一つ。
「遠路はるばる良く来てくれたね。僕はT――この村の代表、って所かな。ゆっくりしてってくれ」
 次にレィズの目配せで彼はキィルスの持つ包みを見、受け取る。布を外すと件のギター。
「使い込まれてるね。この子も幸せだ。他にも修繕希望者は? 新しい楽器達も君達をお待ちかねだよ」
 そしてTは村を案内する。多くの楽器が待つ工房へと。

「うむ、楽器工房を訪れるのは初めてだ」
 アレクサンドラは並ぶ様々な楽器をうっとり見つめる。丁寧に作られた楽器はその姿すら芸術品と言えよう。
「あるじよ、どの笛が扱いやすいだろうか?」
 初心者でも扱える物を。そう問うたアレクにTは微笑み、縦笛を手に取る。
「ブロックフレーテはどうかな? シンプルで難しい技術は不要だけど実に奥深い」
「ねぇ、オイラでも音が出せそうなモンあるかな……?」
 ジャムがTの服の裾握って問う。彼は一瞬考えて棚を指差した。
「おぉ? コレ簡単そうなのっ!」
 ピィゥウ〜〜ィッ♪
 マヌケな音に場にいた全員脱力。スライドホイッスルの変化する音は落下時の効果音の如く。
「この部屋は管楽器が多いですかねぃ? あ、綺麗〜」
 レノリアが見つけたのは木製のフルート。キイ部分が蒼おびた銀。触れると手に馴染み、吹くと澄んだ音が響く。
「習ってた事でも? 相性も良さそうだ。大事にしておくれ」
 微笑むT。楽器に主が巡り会うのが実に嬉しそう。
「このペット……名前あるのかい?」
 そう尋ねたのはジン。蒼銀で作られたトランペットを手にし、吹くと自然な音を奏でた。Tは満足げに頷き答えた。
「君が名付けると良い。音と心が通じた時点でそれは君の物だ」
 木管楽器に金管楽器と空気が音奏でる楽器は種類が多い。事にこの工房には木製楽器が多く見受けられた。
「ドリアッドの手に成る楽器故か?」
 イザークはそう呟き横笛を手に取る。東方じみた作りの竹笛。ルディは横に立ち彼に問う。
「決めたの?」
「ん、俺は琵琶が好きなんだが嵩張るしな。この龍笛を……と、ルディは何か楽器やるのか?」
「んー、ピアノやってたけど違うの欲しいかも。この小さい笛、気になるかなぁ」
 彼に頭撫でられご機嫌のルディが手に取ったのも竹の笛。紅紐の装飾が美しい。
「それは篳篥だね。空翔る龍の声、地に在りし人の声、絡み合うと素敵な音となるだろう」
 Tは楽しみだ、と告げる。ただし両方とも練習必須だと意地悪な一言も添えて。

 さて、次は打楽器と弦楽器の工房。
「何かいいものあるかなぁ」
 メルクゥリオは棚に並ぶ楽器を眺め、何かに目を留め、ぱぁっと顔を綻ばせた。
「この子ピンク色でかわいいですなのぉ♪ めるくぅこの子がほしいですなのぉ♪」
 ピンク色のタンバリンを手にして微笑むメルクゥ。シャランと可愛い音が鳴る。
「少し弾いてみて良いだろうか?」
 そう問うたのはセラ。新しいヴァイオリンを手にし、弓にて弾くと緩やかな音色が響く。
「今の私に弾ける音を聴いて欲しい人が居るんだ――」
「その音色が守護の力となる様、僕からも祈ってあげるよ」
 楽器に刻まれた銘を示しながらTは笑む。
 多々の竪琴が並ぶ棚を眺めるキィルス。彼に近づき一礼するはシルフィード。
「キィルスさん、誕生日おめでとうございます」
「ありがとさよ。シルフィードも楽器を求めに?」
「ええ、姉にあげようと思っているのですよ」
 ハープを手にとって眺めながら彼はそう答えた。
 知人の為にと来ているのは彼だけではなく。シズハもその一人。思い寄せる女性への贈り物。慎重に選んだリュートに装飾を依頼する。彼女の手に馴染めば良いのだが。
 その横で竪琴を手に取るはエルノアーレ。
「わたくし、吟遊詩人が語る英雄譚を聞いて冒険者になろうと決意致しましたの。あの時に見た様な竪琴を側に置いて、初心を忘れない様にしたいのですわ」
「……置くだけ?」
「いえ。楽器は奏でてこそ。これを機にレッスンを始めるつもりですわ」
 セリアは小さな竪琴を知人に贈る為と楽器職人のエルフに彫刻を頼み込んでおり、スルジェは大事にリュートを爪弾き、真剣に相性の良い物を探す。共に来たテティスもじっくりと吟味して手に馴染むリュートを選んでいた。
 ネリューシアはグラムのアドバイスを受けながら竪琴を求めていた。
「楽器は選ぶんじゃなくて、出会うんだ……その方が愛着をもてるだろう?」
 グラムの台詞にネリューシアは小さく頷く。当の彼はウッドベースを頂戴済み。
 Tに手伝って貰い、見付かったのは小さな銀の竪琴。装飾も快諾して貰い、彼女の顔は自然と綻んだ。
 さて。そもそも今日訪れたのはキィルスのギターが切っ掛け。ギターの並ぶスペースに集う者も多い。
「このギター……カッコイイのだ!」
 ソルは目に付いたギターを手にとって叫ぶ。職人にギターの話を聞いて、大事に爪弾き始める。
 コッコは前もってギターの特訓してきたらしく。格好良い憧れの先輩、キィルスみたいになりたいと思いながらギターを選ぶ。そして彼が選んだのはダブルネックギター。
「カッコいいからこのギターに決定♪ イエーイ!」
 弾くの難しいけど大丈夫かとキィルスが眺めてた所にかけられた声。オリエだ。
「キィルス、晴れて三十路だね♪」
「言うな」
 彼女もギターの見立てを願って一緒に選び。
 さて、そろそろキィルスのギターの修繕は済んだ頃か。

 シエンはTがギターの弦の調整をしているのを興味津々に見つめていた。
 何度か音を鳴らし、一息ついて楽器をキィルスに渡す。
「完了。大事に使ってあげておくれよ」
 ニスが塗り直され、新しい弦が張られて修繕されたギター。音を鳴らすと元の音。自然と笑みが零れた。
「わたし、ハーモニカのちゃんとしたお手入れを知りません。教えてくれませんか?」
「良いよ。美しい音が鳴る様にメンテは大切だ」
 Tは快諾してそれを受け取り、職人に手渡す。シーアスも特殊な形状の竪琴を手に問う。
「これも調律可能でしょうか?」
「サウン、か。ある地方の民族楽器だね。珍しい。勿論喜んでやるよ」
 次に楽器を持参したのはマイト、そしてノーマ。サックスとトランペットである。
 前者はあまり使わずにいて、後者は我流で使った挙げ句調子が狂ってるとTは楽器を見て呟く。
「たまには使ってやらないとと思って……」
「本当だよ。この子も悲しんでいじけたんだね」
「差し支えなければ演奏の仕方を教えて頂けませんか? 長く使いたいので」
「ああ、構わない。けど、余り苛めすぎない様にね」
 二人に答える調律師。楽器を子供の様に愛おしく思い、比喩めいた言葉が紡がれる。
 次にカルアが見せたのはヴァイオリン。家出した時に持ち出したもの。古いけど手に馴染むもの。
「楽器も人も、大切に年を重ねなければ朽ちて駄目になってしまう」
「……気に入った。素晴らしく仕上げてみせると約そう」
 微笑み、職人と共に作業部屋に入ったTを見送り。
「キィルスはギター弾くんだよな?」
「何を今更」
 アンゲリカの問いに答えるキィルス。すると唐突に差し出されたは装飾付の小さな音叉。
「いつでも調律出来る様に。キィルスのギター、好きだし」
「え?」
 受け取り問い返したキィルスにアンゲは慌てて目を逸らす。
「な、何でもない! そうだ。結構昔だけどサックスなら弄った事があるぞ」
「お? じゃ後でセッションするか」
「まだ一緒に演奏出来る程じゃないけど、な」
 そう言って彼女は隅っこで練習開始。音が上手く出ないのはご愛敬。

「明日は我が身の気もしないではないけど三十路盛大におめでとー♪」
「鬼かお前は」
 シュウの言葉にキィルス、ジト目で反論。
「大丈夫ですなのぉ! キィルス様は素敵な外見してらっしゃいますし、まだ20代前半ぐらいで通せますなのぉ♪」
 メルクゥの力説。しかし、ショウが運んできた蝋燭30本のケーキが現実を語る訳で。ケーキの作者はシトラとアンゲらしい。
「ほら、フェイルだって四捨五入すれば30になっちゃうんだし?」
「でも自分はまだ26歳ですし」
 同じ誕生日ケーキでも蝋燭の数が違う訳で。ほくそ笑むフェイルにシュウから渡されたのは毛はえ薬。……あ、泣いてる。
「キィルスさん、お誕生日おめでとうございます。私はもう一年、粘らせていただきますがね」
 シュウ共々三十路一歩手前のグレイが言う。手にはギターケース。
「ギター貰ったのか?」
「……ギターに決まっているでしょう?」
 謎めいた笑み。本当は何が入っているのだろうか。妙に軽そうだけど。
「さて、プレゼントを。お気に召すと良いのですが」
 シルフィードがキィルスに渡したのは羽広げた紅い鳥のアクセサリ。
「あまり気の利いたものでなくて済まないが……」
 ザウフェンが渡したのは竜胆の花束。クローディアは投げキス一つと共に三種の葡萄のタルトを持参した。
「囲む仲間と過ごせる時間が素敵よね♪」
 三度目の祝いの三種の葡萄。口に入れると甘酸っぱくて美味しかった。

 ターニャがテーブルに肉を運んでくる。七輪で炭火でじっくり焼く羊肉はレアなくらいが美味らしく。
「キィルスさんは今回は主役ですから、こっちでどんどん焼いていきますですよ〜」
 ルミエールは焼けた肉を皿に乗せていく。オリエも取り分けてくれるから、もう食べる方が追いつかない。
「羊肉って思ったよりあっさり食べれて美味しいですね♪ 麦酒が進んでしまいます」
 顔紅くして言うはニューラ。そしてキィルスには良い音出せる様にとサムピックをプレゼント。
「キィルス! 誕生日おめでとー!」
 一旦給仕の手を止めてターニャが彼の肩をバシバシ叩いて祝いの言葉かける。
「男は30から渋みが出てきてもっと格好よくなるのよ! あの人と結婚したあたしが言ってるんだから信用しなさい♪」
 30歳越えの旦那を持つ彼女の台詞には妙な説得力。
「三十路の領域入ってもヴィジュアル系貫くその姿勢!」
「そこに痺れるー! 憧れるぅー!」
 ダフネの台詞にルディが続き、キィルスは酒を吹いた。
 笑いながら彼女が持参した海産物を火に掛けると磯の香りが美味しそうに漂い、食卓に彩りが加わった。
 ノリスが祝いにと持参した若返りの酒は皆にそのまま振る舞われ、改めて乾杯の声が挙がった。
『誕生日おめでとうーーっ!』

「今日はキィルス殿の為に祝いの歌を作ってきた……聞いてくれ!」
 簡易ステージでシャウトする鎧。ディスティンである。

『三十路の唄』
作詞・作曲:ディスティン・ウォルフォード

 壁がある 壁がある
 二十九と三十の間には
 越えるに越えれぬ壁がある
 遂に来ました大台突破
 今日から貴方も「仲間入り」

「さぁ皆もご一緒に! 三・十・路! そぅれ、三・十・路!」
「やかましあぁっ!!」
 キィルスの放った衝撃波が鎧の中の人に打撃を食らわした。
 さて、気を取り直してライヴ開始。
 コッコのホーリーライトでライトアップ。キィルスはギターを手に演奏開始。
 オリエのギターも重なり、レノリアのフルートが奏でられ、レィズが歌い、シュウがハモる。
 音は力強く、声が高らかに響く。間奏部分ではショウがサックスソロを披露。曲が最高潮に盛り上がる。
 キィルスとレィズが背中を合わせて最後歌い上げ、曲を締める。巻き起こる歓声、そして満足感。
 でもって。
 ピィゥウ〜ィッ♪
 ジャムの思い出した様な笛の音。
「……なンか落ちた?」
 見ると、決めた筈の2人が脱力してステージから転落した姿があった。
 気を取り直し、次々と演奏される曲。マイトの華麗なサックスによるジャズ演奏。アレクを中心とした管楽器による『誕生日の歌』の演奏には流石のキィルスも顔を赤らめた。
『あなたが生まれたこの日に感謝を 出会えたこの地に感謝を』
 明るい曲の合間にシーアスも落ち着いた曲を歌い上げる。
 その間。シュリはレィズにそっと思いを呟いた。
「わたしずっとこっそりキィルスさんに憧れてました」
 恋や愛と違うけど、本当に大好きで。だから仲良くして貰う事も、彼が生まれたこの日も嬉しい、と。
「察してはおったけどな。心籠めて歌いや。オレも付き合うさかい」
「はいっ!」
 お誕生日おめでとう、と感謝と祝福を籠めた歌声が高らかに美しく響いた。

 ライヴの余韻残る中、クローディアが踊り鈴が響く。
「年重ねる度に音色や想いが味わい深く染み入ってるといいね♪」
 そう彼女の言。年を取る事で得る事もあるのだろう。
「それにね、キィルスさん、わたし男は三十からだと思うの!」
 シュリが力強く主張した。シエンもこくと頷き言う。
「歳月とは何者にも代え難い……うん、素敵だね♪」
「ま、三十路になった所で俺ら自身の何が変わるって訳でもねぇけどよ……」
 盃を傾けながらイザークが言う。酌をしながらルディがクスと笑い。
「到達者が言うと説得力あるわね」
「……言うな。ああ、けどあれだな。二日酔いが抜けなくなった」
「そう言いながら飲むんだな」
 シュウは笑いながら杯を合わせると、キィルスに煙草の箱を差し出した。
「吸うかは解らないけど」
「ん、嗜み程度には」
 火を点け、紫煙を吐き出すと香るは何か記憶にある香り。
「シュウ、これって――」
「アイツと馬鹿やってた傭兵団で流行ってた奴でね……」
 亡き戦友の形見の様な物。またバカ騒ぎしたかったな、と呟いた。
 ♪ポロン……キィルスのギターが鳴った。見るとアンゲリカが弦を弾いたらしい。
「えーとその、上手くなったらアタシと一緒に演奏してくれるよな?」
 約束しろよ、と告げる彼女にキィルスは頷いた。
「ああ、待ってる」

 生きてるからこそ年を取る――キィルスはぼんやりと思った。
 経験や思い出、楽しい日々。生きているからこそ得られる事。
 こうして誕生日を迎える事は喜ばしい尊い事。

 亡き戦友やこの日を命日とする少女の分も。
 一歩一歩生を全うせねば。
 祝ってくれた皆に感謝して。
 彼はそう誓いながら再び弦を奏でたのだった。


マスター:天宮朱那 紹介ページ
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参加者:38人
作成日:2006/10/02
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