<リプレイ>
●空は高く 青く澄み渡る空高くを、大きな影が横切る。 その影を追って、視線を移すと段々と視界が青から紫色に変わり始める。 あの鳥は何処に行くのだろう……凜味恵風のましまろ・スフル(a35791)は、ほんの少しの間だけ物思いに耽ると、ゆっくりと目を閉じて……何時の間にか止まっていた歩みを再び始めた。
紫の森を右手に見やり、穏やかな草原を一行は進む。 「なぁんなぁ〜ん♪ なぁなぁ〜ん♪」 炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)が変身した緑色のノソリンがご機嫌な様子でノソノソと歩いてゆく。 水や食料を運ぶ為にノソリンに変身しているらしいが……そんなリュリュの様子をノンビリと眺めて一緒に歩いていた、ブラストエンプレス・フィオリナ(a19921)はふと気付く。 (「何かに襲われたら如何するのかしら……?」) 何かに襲われて時変身がとけたら荷物はどうなるんだろう? それに変身がとけたら全裸なんじゃ……と少し考えたりもしたが……まぁ、良いかと気にしない事にした。幸いこの小隊に参加しているのは女性のみだし、変身がとけても問題無いのである。 「ふむ……少し手伝ってやるかね」 「なぁ〜ん♪」 フィオリナと同じような感想の持ったのか、黄砂の女兵士・ガーベラ(a20332)はリュリュの背中の荷物を少し取ると自分の肩にかけた。 有難なぁ〜んと円らな瞳を向けてくる緑ノソリンのリュリュに軽くてを上げ、ガーベラは足早に歩き始める……何となく気恥ずかしかったのかもしれない。
「ワイルドファイア大陸に来るのも初めてですし、慣れるためにも頑張りますなぁ〜んっ」 「え? なぁ〜ん?」 頑張るなぁ〜ん! とこぶしをグッ! っと握り締めた、澪標星・フラワ(a32086)に、赤い実の・ペルシャナ(a90148)が小首を傾げた。 「如何かしたのですかなぁ〜ん?」 そんなペルシャナの態度の方こそ解せないと言った様子で、今度はフラワが小首を傾げる。 「フラワちゃんはヒトノソリンなぁ〜ん?」 「そうですなぁ〜ん」 ペルシャナの問いに当然ですなぁ〜ん、当たり前ですなぁ〜んと言わんばかりにフラワは即答する。 「え? なぁ〜ん?」 そしてまたペルシャナは小首を傾げ、 「如何したのですかなぁ〜ん?」 その様子にフラワが小首を傾げる……ヒトノソリン二人は何時までもなぁ〜ん? なぁ〜ん? と、小首を傾げあうのだった。
「アラハースでの初仕事じゃ。頑張って美味いモノを見つけねばの」 真面目ぶった口調で、番紅花の姫巫女・ファムト(a16709)は言う……微妙に目的がずれているような気がするのは気のせいだろう。 「初護衛士依頼、頑張るぞぉーなぁ〜ん」 気合充分! と言った様子で、紅紫黒・チェリ(a43838)がやる気を示し。 「うん、頑張って霊査に必要な物を取ってこよう」 銀花小花・リン(a50852)もチェリに頷くように同意を示した。 「あれやこれや美味しい物が、意外といけ……くくく……ぶーふふふふふー!」 「ファ、ファムト……なぁ〜ん?」 「……」 唐突に笑い出したファムトの方を見ると、毒々しい色のキノコを両手に持って大爆笑していた。あれは多分、食べると笑いが止まらなくなる類のキノコである、もうファムトは駄目かも知れない。 「な……なぁ〜ん……兎に角なぁ〜ん。カラフルな森、外周調査隊しゅっぱつ進行〜なぁ〜ん!」 そんなファムトを見なかった事にし、チェリは高々と拳を空に突き上げるのだった。
●嗚呼、幸せな 昼、太陽は真上に到達しジリジリと肌を焼く……そんな中冒険者一行は木陰で休憩していた。 「大丈夫ですかなぁ〜ん?」 「けふっ……はぁはぁ……だ、大丈夫なのじゃ……」 美しく魅力的な聖女を呼び出してから、背中をさすって心配そうに覗き込むフラワに、額に冷や汗を滲ませたファムトが応える……なに、ほんのちょっと綺麗なお花畑が見えただけ……ほんのちょっとフリフリドレスな一本毛で爽やかな笑顔のマッチョが見え……、 「やっぱり駄目かもしれぬのう……」 「なぁ〜ん!? ファムトちゃん、帰ってきてなぁ〜ん!」 アハハ、ウフフと遠い目で笑い始めたファムトの肩をペルシャナが揺する。ガックンガックン揺すられて更にファムトが遠くに行ってしまいそうだったけれど。 「こうして見ると、この森は円形なのかしらね?」 手に持った地図に旅立つファムトの姿を記載しつつ、フィオリナが頬に人差し指をあてて考え込む。 「目立つ木や、山も無いですから正確な形は解りませんが、だいたい丸い形をしていると思いますなぁ〜ん」 そんなフィオリナが持つ地図をフラワが覗き込みつつ、大爆笑しているキノコの絵を追加した。 「十分休んだし……そろそろ行こう」 段々とメルヘンな感じになって行く地図から視線をそらし、リンが立ち上がると一行は準備を始めた。
「獣道とか見つからないなぁ〜ん」 森へと続く獣道が無いかと紫の森を眺めていたリュリュだが、森へと続く道は無いようだ。 「……あ、そう言えば毒キノコ怪獣とかってアムネリアちゃんが言ってたなぁ〜ん」 そしてふと思い出したように、アムネリアの言葉を反芻し、 「キノコか、キノコは日の当たらない木の根元でじめじめとした木陰に生えているのさ」 それを聞いたガーベラがキノコについて解説する。ガーベラの趣味は採取なのだ。 「そうなのなぁ〜ん? 胞子にやられるとか何とかいってたなぁ〜……ん?」 むにゅっと何かを踏んだような気がして、リュリュが足元を確認しようとすると―― 唐突に巨大なキノコがニョキ! と地面から現れ、同時に紫色のガスのようなものを辺りに散布する! 「ど、毒キノコ怪獣なぁ〜ん!」 如何見ても、私毒持ってます、毒キノコです、と言う見た目のそのキノコを確認すると、毒ガスを吸い込まないようにするためにチェリは口元をマントで塞ぐが…… 「美味しそうな食べ物がいっぱいなぁ〜ん♪」 チェリはフラフラとキノコ怪獣の方へ向かっていく……全く意味が無かったようだ。そんなチェリの肩をリンが掴んでとめるが、 「なぁぁ〜ん!? すっごいなぁ〜ん♪ 可愛い男の子がいっぱいなぁ〜ん♪ お姉さんが手取りあ――」 チェリよりもキノコに近いところにいたリュリュは既に頭からバックリとキノコ怪獣に飲まれている。何処と無く危険な事を口走っていたような気もするが細かいことを気にしたら負けだ。 「でりゃ!」 リュリュを飲み込んだノコ怪獣に対しボディブローのように紋章の力を籠めた、ガーベラストレートを力の限り叩きつける! 「な、なぁぁぁぁぁぁん……み、耳は駄目っ! なぁぁぁ〜〜……ん」 ゲフォ……と何か嫌な感じのものを吐かれるように、出て来たリュリュの耳を掴み巨大怪獣がニョキニョキと現れ始めたこの場所をガーベラ達は走り去った。
●何が釣れた? 空を眺めると満天の星空が輝いていた。右手に見えるはずの紫の森も、闇に同化して今はただの影にしか見えない。 「ここには恐竜怪獣が居て、ここらへんには団子虫怪獣が居たわよね」 地図を広げて、それぞれに遭遇した怪獣の絵を書き込んでいく一行、この礎は将来役に立つだろう……全体的に丸いので緊張感が伝わらないのが難点だったりするが。 「それじゃそろそろご飯にしましょうか。この果物……うーん、見た目は怪しいけど大丈夫よね?」 異様に毒々しい果物や、よく見ると人の顔に見えるような果物を手にフィオリナが考え込んでいると、 「外見がイロモノでも食うてみれば案外美味いかもしれぬのでのぅ♪ 目指せ未知のグルメ!」 ファムトがやる気満々で応えた……既に一回向こう側へ旅立ちそうになっているのに、チャレンジャーである。 「それじゃ、あたいは何か作ろうかね」 「じゃ、火が目立たないようにテント張る」 「フラワ、ワイルドファイアの食べ物って詳しくないですからなぁ〜ん……」 他の者達はフィオリナとファムトとは視線を合わせないように、火を囲むのであった。
「この食べ物は危険……っと」 ――その後、二度目のお呼び出しを食らった癒しの聖女様は、何処と無く嫌な顔をなされていた……ような気がした。
ファムトの踊りを見て、一応の空腹を満たした一行は暫しの休憩を満喫していた。 「な、なぁ〜ん♪」 チェリが途中で見つけた池にちゃぷんと、釣り糸を垂らす。昼の陽光を跳ね返し、水面がキラキラと波打っている……ワイルドファイアでもやはり、水辺は涼しいものだ。 そんなチェリの姿を後ろから眺めていたガーベラがチェリの横に移動して、 「どうだい? 釣れ――」 ほのぼのした様子でチェリに話かけるが、チェリを挟んで向こう側に妙に毒々しい色のにょろにょろした丸太ほどもある物体が這い出してきた……暫し見つめあうガーベラと蛇であったが―― 『シャー!』 案の定、襲ってきた! しかも次々と池の中から新たな蛇が這い出してくる! 「ど、毒蛇なぁ〜ん!」 とても倒せる数ではない、チェリは叫ぶと同時に全力で走り始めた。 その叫び声に、ノソ耳を立てたら音が良く聞こえたりしますかなぁ〜ん? と耳を持ち上げていたフラワの尻尾がビクゥ! と逆立っていたりもしたけれど……よく聞こえたかは不明である。 「逃げるが勝ちなぁ〜ん」 リュリュは一瞬迎撃しようとしたが、あまりの蛇の数の多さに即撤退を決め、クリスタルインセクトで時間稼ぎをしようとしたガーベラもまた同じ結論に至った。 フィオリナが両手から粘着性の高い糸を蛇の群れに投げ込んで――冒険者達は振り返る事無く走るのだった。
●紫の糸 太陽が沈みかけ、世界が朱に染まる頃。 リンは森の外側の木に、紫色の鳩が止まっているのを見つけると、歌を歌うように話しかける。 「怖い生き物、知ってるかな?」 『……皆怖い』 リンの質問に鳩はクルクルと首を回してから素っ気無く返した……この鳩にとっては回りに居る生物全てが怖いのだろう。 「危ない場所、有るかな?」 『蜘蛛が居る場所』 続けて質問したリンに今度は即答する。 「……森の奥には、どうやって行くの?」 『飛んで行けば良い』 こんな風にと鳩は羽ばたいて……そのまま何処かへ飛び去っていってしまった。その様子に何か釈然としない表情をするリンだが、質問の的をもっと絞れていれば結果は違っただろう。 「空を飛べたら良いのに……」 ふっ、と呟くリンだが……無理なものは無理なのである。
それから暫く、紫の森の近くを歩き続ける。 「それにしても紫の森って不思議よね……。記念に紫の草花を貰って帰りたいわ」 大人の頭ほどの大きさがある紫色の木苺のようなものをフィオリナが手に取り、 「なぁ〜ん? フィオリナさんの肩に何か付いてるなぁ〜ん」 そんなフィオリナの様子を眺めていたリュリュが、言うや否やフィオリナの肩からそれをとる……それは一見フィオリナの髪のようにも見えたのだが。 「蜘蛛の糸……ですかなぁ〜ん?」 リュリュの後ろから覗き込んでいたフラワが言うように、それは確かな粘り気を持つ蜘蛛の糸のように見える。 「……蜘蛛……のう」 ファムトは蜘蛛と言う言葉に何か思うところがあるのか、紫の森の奥に視線を移しながら考え事をするように呟いた。 辺りは既に暗くなり始め、森の中の様子は闇に隠されている……中に踏み込めば何か解るかも知れないのだが……。 「これは何かなぁ〜ん?」 と、チェリが拾ったのは一抱えもある紫色の繭のようなもの。 「繭……か?」 その繭のようなものをガーベラがプニプニと突付いてみると、ニチャニチャと指に引っ付く感じがした。 「蜘蛛は獲物を糸で包んで繭状にしたりするがのう」 「「……」」 「案外すぐ近くに居たりしてなぁ〜ん」 「に、逃げるなぁ〜ん!」 のほほ〜んと笑うペルシャナの手を掴み、チェリは全力で走り出す。 (「あれ……は?」) 走り際に振り返ったフィオリナは、薄暗い森の中に八つの赤い光を見たが……それが何であるのかまでは解らなかった。
「これで完成かしら」 「完成なぁ〜ん」 「ふふふ、なかなか良い地図になったのじゃ〜」 やたら食べ物の絵ばかりが描き込まれているような気がしなくも無い地図を高々と掲げ、フィオリナとファムトとフラワがお互いを労いあっている 「お土産もいっぱい」 リンは両手一杯の奇妙な物体を手に、犬の尻尾をフリフリと振っている。 「さて、早いところ帰ろうかね?」 護衛士達が待つ場所までは後少し、ガーベラは沢山のお土産を手にはしゃいでいる仲間達に声をかけて歩みを進めた。
【END】

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参加者:8人
作成日:2006/09/21
得票数:ミステリ1
ほのぼの32
コメディ2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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