≪硝子の社≫潮吹き岩から跳べ!



<オープニング>


●とある海辺の潮吹き岩
 淡い黄を帯びた乳脂色の細かな砂が広がる海辺では、すっかり風の涼しくなったこの時期にでもまだ海水浴が楽しめるのだという。その恩恵を齎しているのは、入り江の真ん中に塔の如く聳え立つ岩だった。
 ほのかに緑味を帯びた淡い青に透きとおる澄んだ海に、鈍色の無骨な姿を晒す細長い岩。だが何とこの岩、天辺から温かな海水を噴き出すのだ。つまりは間欠泉である。岩から噴出した温泉が周りの海水や大気を暖めているため、今の時期でも寒い思いをせずに海水浴を楽しむことができるらしい。ちなみに岩の天辺には常に温かな湯が湛えられているから、普通に入浴することも可能なのだとか。何とも有難い岩である。
 夕刻ともなれば、朱金に燃え立つ夕陽が入江から望む水平線に沈み、紅に染まる空と金にさざめく海が見られるというし、聳え立つ岩の天辺で湯に浸かり美しい風景を堪能するのも良いだろう。
 しかも、浜辺の村人達が沖合いで採って来る海の幸がとてつもなく美味なのだとか。

 そこまで話を聞いた硝子の社の面々は、何となく押し黙ってしまう。
 何だか話が上手すぎる気がするんだが――そう言ってみれば、潮吹き岩の話を持ってきたハニーハンター・ボギー(a90182)が、バレましたか〜と照れたように頬を掻いた。

●潮吹き岩から跳べ!
「実はその浜辺の村には、間欠泉の岩……潮吹き岩を使ったお祭りがあるそうなのですよ〜」
 ボギーがようやく口を割った。何でもその祭、村の人々が岩に登り、噴き出すお湯に乗って如何に格好よく海に飛び込むかを競うものらしいのだか……。
「何か今年に限って、こーんなおっきなフナムシが潮吹き岩にびっしり取りついちゃって岩に登れなくなったらしいのです」
 そう言いつつ広げられた両手はボギーの顔くらいの大きさを示している。何だか凄くイヤだ。
「噛まれれば痛いし、滅茶苦茶痒いらしいんですよ〜。そんなおっきなフナムシがうぞうぞうぞうぞ」
 最悪だ。
「で、たとえば冒険者さんが来てくれて、フナムシをものともせずに岩に登って、冒険者さんならではの素晴らしい跳びっぷりを見せてくれたらいいな〜……なんて村人さん達が仰ってるわけですよ」
 素敵な跳びっぷりを見せれば、とびっきり新鮮な海鮮をたっぷり食べさせてくれるそうなのです!
 開き直ったボギーが最後にそう言って胸を張った。
 だがまぁ、フナムシさえなければ悪い話ではないような気がしてきた。
 塔のような岩の天辺から噴き出す湯に乗り透きとおる海の中へと飛び込んで、美味しい海鮮料理に舌鼓を打つ。そして岩の天辺の温泉から水平線に沈みゆく夕陽を眺めるのだ。

 ……うん、決して悪い話ではない。
 とにかくフナムシにさえ目を瞑れば。

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参加者
黒翼に抱かれる魂・コクセイ(a16410)
混沌の哀天使・セーラ(a20667)
漆黒の竜巻・グレイン(a22658)
蒼天を旅する花雲・ニノン(a27120)
狂獣・クルワ(a29566)
突撃おばさん牙狩人・ケイト(a30037)
黒猫魔術師・ルーニャ(a37367)
夢限行路・レンジ(a40344)
青にして紺瑠璃・オズフォル(a45575)
穏かに流れ往く・マシェル(a45669)
オレンジ・ガレット(a47424)
バッドマウス不良巫女・シオン(a47682)
NPC:ハニーハンター・ボギー(a90182)



<リプレイ>

●潮吹き岩を登れ!
 澄んだ水に露草の雫を落としたような色の空は、しっかりと秋の風情を纏っている。
 けれど水着姿でも寒さを感じないほどに辺りは暖かく、足元を洗っていく透きとおる波も心地よい程度の冷たさでしかない。
 それもこれも、穏やかな入り江の真ん中に塔の如く聳える鈍色の岩が齎す恩恵だった。
 硝子の社一行が到着した途端、まるで歓迎するが如く岩の天辺から温かな湯が噴出した。盛大に噴き出された湯は淡く白い湯気を纏い、秋の陽射しにきらきらと飛沫を煌かせながら透きとおる海へと落ちていく。これが辺りの大気と海水を程よい暖かさに保っているのだ。
「まだ泳げるような所があるとは嬉しいもんだぜ」
 豪快な間欠泉と足に感じる波の感触に満足気に頷いて、虎をも屠る荒くれ極道巫女・シオン(a47682)が真っ先に海へと飛び込んだ。頼みましたぞ冒険者様〜とかかる浜辺の村人達の声には「派手にぶっ飛んでやるぜ!」と手を振って応える。そう、一行には『岩の天辺から間欠泉に乗って華麗に海へダイブ』という使命があった。浜辺の村に伝わる祭なのだそうだが、今年に限って冒険者でなければこの祭に挑めないような事態が発生してしまったのだ。それというのも――
「まぁちっとばっかし目障りか? っつーわけで、フナムシぶっ潰して祭に洒落込みますかねっと」
 波間に漂いながら夢限行路・レンジ(a40344)が霊扇 〜夢想〜を振れば、撃ち出された漆黒の炎が岩にへばりついていた大きなフナムシを弾き飛ばす。――そう、全てはコレのせいだった。
 人の顔程もあるフナムシが岩に大量発生し、村人達は岩に近づくことができなくなってしまったのだ。
「フナムシはあんまり好きじゃないなぁ〜ん」
 好きだという人間も少数派だと思うが、とにかく突撃おばさん牙狩人・ケイト(a30037)も景気よく焔の矢を放ち爆裂で何匹ものフナムシを岩から落としていく。ぼとぼととフナムシが降る中豪快に水を掻きつつ青にして紺瑠璃・オズフォル(a45575)が岩に泳ぎ着き、頭上を仰いで猛るような咆哮を叩きつけた。麻痺のため岩にしがみつけなくなったフナムシ達がやっぱりぼとぼとと落ちてくる。
 フナムシまみれのその光景に呻きを洩らしつつ、穏かに流れ往く・マシェル(a45669)が針の雨を降らせ更にフナムシを落としていく。怖気が走る光景だったが、マシェルはふと思ってしまった。
 ――確かこういうイキモノ大好き、って人がいなかったっけ……?

●潮吹き岩から跳べ!
 一方蒼天を旅する花雲・ニノン(a27120)は、フナムシ達よりも波間から見上げた岩の高さに怯えていた。とある出来事以来高所が苦手になってしまったのだが、今回はその高所から海に飛び込めと来た。だがニノンはぶるぶると頭を振り猛烈な勢いで岩を登っていく。フナムシなんか気にしない!
「この機会に苦手を克服してみせるのなぁ〜ん!」
「踏んづけちゃったらごめんなさいなぁ〜ん」
 大きい方がまだ気持ち悪くないなぁ〜んと面白がってフナムシを観察していたオレンジ・ガレット(a47424)も、ニノンに続いて猛然と岩を登りだした。楽しげなガレットの声に勇気づけられつつ、ニノンは岩の頂上を目指す。
 辿りついた頂上から見る景色は壮観だった。
 浜を見遣れば村の様子が一目で見渡せて、彼方には紅に色づき始めた山々が。振り返れば淡い碧から紺青へと色を変えていく海と、その果ての水平線。
 だがニノンにとっては恐怖そのものの眺めだった。手を握って貰いたいなぁ〜ん、とガレットを振り返ってみれば――彼女は既に岩の縁に立って浜辺の村人達に手を振っている。
「ガレット、行きますなぁ〜ん!」
「待っ……!」
 ニノンの声と伸ばした手は、弾けるように噴き出した間欠泉に遮られた。
 天へ向かって噴く水流に乗って、ガレットが空に舞う。
「フワリンってこんな感覚ですかなぁ〜ん?」
 間欠泉によって天高く放り投げられたガレットは、体を包み込む浮遊感にうっとりしつつ――のびやかな体勢で海面に飛び込んだ。海面からは水柱が上がり、細かな飛沫が光を弾いて宙に踊る。
 ぷはっとガレットが波間から顔を出せば、浜辺の村人達から歓声が上がった。彼女の楽しそうな跳びっぷりはなかなかの評判だったようだ。
 ちなみにその頃頂上では、遥か遠い海面を見下ろしたニノンがへたりこみそうになっていた。
 そこに現れた救世主は――
「ククク……蟲見学後に飛び込み大会とは、何ともエキサイティングですニャ」
「ルーニャちゃ……なななぁ〜んっ!?」
 黒猫魔術師・ルーニャ(a37367)の声に嬉々として振り返ったニノンは……思わず一歩後退った。
 可愛らしく悪っぽい(悪っぽいは本人談)花柄の水着を纏ったルーニャは、何故かわらわらと十数匹のフナムシを従えていたのだ。
「フナムシは何とも不可思議なのニャ……デモニックで退治しても一向に数が減りませんのニャ」
 それはデモニックフレイムのクローンなぁ〜んと突っ込もうとしたニノンは、またもや間欠泉に遮られてしまう。レミング現象なのニャと嬉しげに呟き、ルーニャは間欠泉に乗って天高く舞い上がった。フナムシクローン達もルーニャに続いて天へと上る。丁度そこに登ってきたマシェルは「わぁ、ルーニャさん楽しそう」と瞳を細め、私も楽しまなきゃと身に着けている服を鎧進化で水着に変えた。
「ニノンさんも楽しみましょう、せーの!」
 マシェルがニノンの手を引き、噴き上がる間欠泉の中に飛び込んでいく。ニノンもついに勇気を振り絞り、「なぁ〜ん!」と大きく叫びながら勢いよく跳んだ。
 次々と海に飛び込んでいく彼女らを見遣ったシオンは「やるじゃねぇか」と不敵に笑い、一気に岩を登り辿りついた頂上で腕が鳴ると言わんばかりに拳を鳴らす。これをパラシュート代わりにしてみるなぁ〜んとピンクの日傘を開くケイトと笑みを交わして間欠泉を待ち、再び噴き上がった水流に乗って思い切り岩を蹴った。
「行くぜ!」
「ケイト行くなぁ〜ん!」
 天高く放り上げられたところで大の字になったシオンが、その勢いのまま一直線に降下していく。日傘を広げたケイトは間欠泉の勢いに煽られた日傘に引きずられるようにして宙を舞い、体勢を整えきれないままに落下していった。

●潮吹き岩から豪快に跳べ!
 海面から上がる二つの水柱を観た混沌の哀天使・セーラ(a20667)は、そのまま視線を岩へと戻し……硬直した。岩にはまだうぞうぞと幾多のフナムシが這いずりまわっていたのだ。
「フナムシなんて皆、不幸になってしまえばいいのですわ……」
 震える声でそう呟きながら、華奢な肢体に黒き炎を纏う。傍らの漆黒の竜巻・グレイン(a22658)の手を無意識のうちに握りつつ、セーラは不安を湛えた瞳で切なげにグレインを見上げた。
 彼女の纏う邪竜の炎もグレインの瞳には『フナムシに怯えるか弱い乙女の可憐なオーラ』と映るらしい。なかなか豪胆な男である。身を震わせるセーラを愛しく思ったらしく、グレインは彼女を安心させるように微笑んでみせた。
「いっそ『美しい女性を背負いながらフナムシだらけの岩を登っていくパフォーマンス』に仕立ててみることにするか」
「グレイン様……」
「なに、セーラの為ならば全ての障害など無に等しい」
 さらりと言ってのけたグレインは陶然と瞳を潤ませるセーラを颯爽と背負い、数多のフナムシを物ともせずに手早く岩を登っていく。うわぁと声を洩らした狂翼の銀蝙蝠・コクセイ(a16410)も「美味しいご飯のために頑張らないと」と拳を握りしめ、頭上に蠢くフナムシに気の刃を放った。不可視の刃に背を裂かれたフナムシが幾本もの足をもぞもぞさせつつ海へと落ちていく。
「……ボク、足の一杯在る生物ってアンデッドより嫌いなのに……」
 おぞましさにぎゅっと目を瞑ったが、それでもコクセイは美味しいご飯の為に岩を登り始めた。が。
「幾らなんでも多すぎだろこのフナムシ……お、やっと登り始めたか。そらっ!」
 皆の様子を眺めつつ海面を漂っていた狂獣・クルワ(a29566)が、懸命に岩を登っていくコクセイめがけピチピチしたフナムシを投擲した。背筋を走った寒気にふと振り返ったコクセイの顔からざっと音を立てて血の気が引いていく。幾本もの足をもぞもぞさせたフナムシの腹がコクセイの顔面にクリーンヒット――するかと思われた、その瞬間。
「あらよっと!」
 コクセイの斜め下から岩を登っていたレンジが黒蛇の炎を放ち、フナムシを叩き落した。
 小癪な真似しやがってと舌打ちしたクルワは、再びむんずとフナムシを掴んで軽く放り投げ、矛を振り切って吹っ飛ばす。さぁ誰に当たるかなと額に手を翳して打球ならぬ打フナムシの軌跡を追うが、こういう場合はハニーハンター・ボギー(a90182)にヒットするのが世の理であるらしい。
 うわああんという泣き声と共に岩から落下していったボギーが海に沈むのを見届けてから、クルワも岩を登り始めた。
 頂上に辿りついたコクセイが浜辺に背を向けた状態で間欠泉に噴き上げられ、しなやかに身を捻って華麗な回転技を披露しつつ波間に飛び込んでいく。水面に顔を出した彼女が浜辺へ向かったのを確認し、次の間欠泉に乗ったレンジは海面に向けてスキュラフレイムを放ち、炎を追うようにして盛大な水柱を上げて着水した。
 彼の水柱を見遣ったセーラは大きく息をついてグレインを振り返った。いっそ彼と共に堕ちて行きたい……と思わないでもなかったが、穏やかな彼の笑みに勇気を得て、噴出する間欠泉に身を任せる。
 美しい、と呟いたグレインは「相手がセーラであるからこそ全力を尽くす意義がある」と頷き、彼女から贈られた剣と何故かフナムシを構えて水流と共に天へ上った。
 勢いよく放り投げられ落下が始まった瞬間、グレインはフナムシを手放し鋭く瞳を眇めて刃を振るう。鮮やかな軌跡を描いて幾度も振るわれた刃は水飛沫の中に花弁を散らし、海面に触れる寸前に大輪の薔薇を咲かせて観客をどよめかせた。
「やるな……」
 海面に咲いた鮮やかな薔薇と村人達の歓声に軽く目を見開いて、オズフォルは持参した林檎火酒の封を切る。間欠泉の振動と音を感じ取った瞬間辺りに酒を振りまいて、噴き出した水流に体が持ち上げられた刹那、オズフォルは炎の闘気を込めた得物を叩きつけた。
 あたかも炎を纏うようにして落下していく彼に、村人達から惜しみない拍手が贈られる。
 反動で麻痺した彼をボギーが引き上げた際、豊かな髪にはものの見事にフナムシが絡まっていたが――誰もそれは気にしない。
 こうなってくると、期せずしてラストを飾ることになったクルワにも俄然闘志が湧いてきた。
 俺も演出してみるかとまずはマッスルチャージで見事な筋肉を村人達にアピールし、噴き上がった間欠泉に乗って放り投げられたところで体躯を捻り、勢いをつけて海面へ直滑降で落下していく。そして着水の寸前に振るわれた矛が巻き起こすのは――レイジングサイクロン!
 突如海面を震わせた強大な竜巻に観客は総立ちになり、やはり麻痺して沈んでいたところをボギーに引き上げられたクルワは、誰よりも盛大な歓声の中で浜辺へと迎えられた。

●海鮮と温泉と
 擂りおろした蓮根を蒸し上げたほんのり透きとおる蓮根餅には、鮮やかな赤に色づいた蟹身の餡がかけられていた。濃緑の青紫蘇で飾られた大きな平皿には艶々とした平目の造りが花の如く広げられ、華やかな紅の尾頭を船皿の上で誇示する海老は雲丹を塗られて焼き上げられている。
 秋野菜と鮭の蒸し物には可愛らしい茸が興を添え、様々な海鮮を並べた卓の脇で出番を待つのはぷりりとした帆立を混ぜ込んだ御飯に鯛と湯葉の吸い物だ。
 とても贅沢な気分になりますわねと瞳を細めたセーラの酌を受けるグレインの前には、更に鯛しゃぶの鍋が据えられている。同じく鍋を供されたオズフォルは、薄ら透きとおる鯛の身を鍋の出汁に潜らせ満足気にそれを口に運んだ。髪には相変わらずフナムシがうごうごしていたが、まぁそれは些細なことだ。わたしも食べたかったなぁ〜んとケイトは物欲しげに鯛しゃぶを見つめていたが、マシェルやシオンは鯛しゃぶがなくともとても楽しそうな風情だった。
「海辺の村だけあって、さすがに何でも美味しいですね!」
「旅先で食う料理は何だって美味いんだよなぁ」
 ひっくり返した海老の腹部を虫眼鏡で観察していたルーニャは、ふと思い出したのかフナムシの研究成果を懇切丁寧に講義しボギーを泣かせ、そのリアルなフナムシ解説を聞きつつもガレットは心底幸せそうに蓮根餅の蟹餡かけを頬張っている。
「皆で食べる料理は美味しいですなぁ〜ん」
 その一言に尽きるかもしれない。
 鯛しゃぶのみならず鯛の頭を豪快に使った骨酒をも供されたクルワは酷く上機嫌で、コクセイにちょっかいを出すことも忘れてしまった様子。その向かいでレンジは平目の造りを箸で摘み「あ〜ん」とコクセイに差し出していたが、コクセイは「ボクには無理」と頬を染めていやいやをするように首を振る。その様がまた可愛らしいのか、レンジは嬉しげに瞳を細めた。

 海鮮料理を満喫して一息ついた頃には、輝く橙に熟れた大きな夕陽が彼方の水平線に沈みゆこうとしていた。一向はすっかり噴出の治まった潮吹き岩へ登り、天辺の湯にのんびりと身を浸す。
 眩い金色に染まる海原を見遣ったニノンは「帰ったらお土産話いっぱいしてあげるのなぁ〜ん」と今は傍に居ない恋人に想いを馳せ、タオルで顔を隠したルーニャはニノンにぴとりと身を寄せて、ニノンと彼女の恋人にならちょっとだけ顔を見せてもいいのニャと呟いた。
「あー、気持ちいいぜ。また来てぇよな」
 っかー、と夕陽を眺めるシオンが上げた声はまるでオヤジのようだったが、薄いバスタオルに包まれた身体が描く曲線はやはり艶かしい。こりゃいい眺めだなと口角を擡げたクルワは「呑むのに付き合え」とレンジを振り返ったが、レンジは恥ずかしげに身を寄せてくるコクセイと二人の世界を作り上げている。俺が付き合おうかとオズフォルが掲げた林檎火酒を見、クルワは瞳を細めて頷いた。
「やっぱり温泉はこれが一番なぁ〜ん」
 やはり酒を呑み始めているケイトの傍で、マシェルは鮮やかな夕陽を眺めてうっとりと息をつく。ガレットは素敵な場所に案内してくれて有難うなぁ〜んとクマのぬいぐるみに礼を述べ、ボギーを泣かせていた。
 塔の如き岩の天辺から眺める景色は雄大で、鮮やかな朱金の光に照らされ何もかもが輝いている。
 共に過ごせる全ての時間が幸福だとの想いが込められたグレインの視線を受け止め、セーラは己を至福が包んでいくのを感じつつ、そっと彼に寄り添って。

 家族とも思える大切な人々と笑い合える、幸福なひととき。
 誰一人欠けることなく、いつまでもこの幸せが続くよう――海の彼方に眠りゆく陽に願いをかけた。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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