深緑の貴婦人



<オープニング>


「依頼です。かつて……『森の令夫人』と呼ばれ、その美しさを湛えられた古城へと赴いて、たむろする無数のアンデッドを討っていただきたいのです」
 凛とした印象の眉へと指先で触れ、その線に沿って前髪を耳元へと撫でつけると、薄明の霊査士・ベベウは言葉を続けた。
「白は台形を象っています。北の森に面した壁面が短く、南の谷に面した壁面は長い。西の城壁は高くそびえるもので、東側には倒れた塔があります。侵入経路は三箇所が考えられるでしょう」
 第一には、南の奈落にかかる石橋である。崩れかけており、欄干などはなく、幅は二メートルにも満たない。だが、その長さは三〇メートルを越えている。ベベウは言った。
「この橋には、多くの死者が……そうですね、獲物にまとわりつく蟻のようにひしめきあっているようです」
 第二には、城から森を北西へ、とある朽ちかけた堂の地下から通じる暗渠が存在する。暗闇を進めば、城の中心部に残された古井戸から地上に出られるはずだ。霊査士は言葉を添えた。
「暗渠にも這う者たちは存在すると見て……間違いはないでしょうね。城の中央に辿り着いてから、どの方位へと進んだものか、きちんと定めておく必要があるでしょう。危急の際には、退路も得ておかねばなりません。群れたアンデッドに囲まれてしまっては、上位の冒険者といえども、ただでは済まされないでしょうから」
 第三には、城壁の東側で崩落する塔である。この建造物は、まるで巨大な階段もさながらの様子で倒れており、筒状の胴体を辿ることで、人々は城の内部への侵入が可能となる。
「こちらにも、多くのアンデッドが空虚な空間に戯れていることでしょう。塔の高さは……いえ、横たわる長さは五〇メートルほどにもなる。陽を遮る暗がりが、それだけ続いているのです」
 城の内部へと到る道程について述べた後、ベベウは『森の令夫人』に存在するアンデッドのうち、その半数が集うという地点について、このように伝えた。
「城の北端には、かつてこの城で暮らした人間や、彼らに使えた者たちなどが眠る、大規模な地下墓地があるのです。その入り口は、城壁の内側にのみ存在しており、北限のいずれか、城壁の真下にあるものと思われます。発見は容易でしょう。おそらくはそこから、溢れるようにして死者が、今も現れ続けているでしょうから」
 侵入経路が三箇所であるからといって、隊を三手に分けねばならぬという道理はない。アンデッドがひしめきあう密度に差があるからだ。それぞれが得意とする戦場を選択するべきだろう――そう告げると、ベベウは最後に言った。
「一体たりとも、アンデッドを残したままにしておいてはなりません。その点にはご注意を。皆にグリモアの加護がありますように」

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参加者
荒野の黒鷹・グリット(a00160)
剣難女難・シリュウ(a01390)
蜂蜜騎士・エグザス(a01545)
ドリアッドの重騎士・ベルエル(a10064)
赫焉・ラズリ(a11494)
蒼静の奏風・アルス(a16170)
燈導・ソエル(a16489)
金色の世界の中で踊る・ヤタ(a22254)
白の戦鬼・ブラス(a23561)
極悪ナ魔術師・ジュラ(a26478)
ランドー・ルシュド(a28710)
宵闇を歩く者・ギィ(a30700)
仮面収集家・カムロ(a33272)
怨嗟の黒狐・シイナ(a37130)
泡沫の眠り姫・フィーリ(a37243)
チョコレートルバドール・パク(a39784)
謳う癒しの調べは荘園の宴・ハーティア(a44260)
大草原の小さな・ラマナ(a47586)
戦場の鍛冶屋・ザウフェン(a50117)
星喰らう蒼き闇・ラス(a52420)


<リプレイ>

 手にした焼き物の壺は、小さなコルクの蓋で閉じられており、引き抜かれる度に、響きの良い音をたてた。紅い染料の残りを、壺を振って確かめる。荒野の黒鷹・グリット(a00160)は暗渠を支える円形の柱に、赤い孤が描いた。
 自らが冠した、夏の陽射しにも似た強い白光を広げる輪の助けを借りて、謳う癒しの調べは荘園の宴・ハーティア(a44260)が羊皮紙の綴じられた帳面に、図形の続きを記してゆく。それは暗渠の経路図だった。
 背後からコルクの蓋が閉められる音、少女の頭上から発せられた輝きが傾くのを感じながら、蜂蜜騎士・エグザス(a01545)は暗渠の先を見つめていた。彼は身震いをしたかに見えたが、実際はそうではなかった。蛮刀を掲げ、振り返りもせずに、「出たぜ」とだけ仲間たちに告げると、低い天井のすれすれに浮遊させた白い羽根の塊を従え、彼は重厚な斬撃を敵に叩きこんだ。
 整え、反らせた指先に、体内を流れる気を収束させ、口元に優雅な微笑みを浮かべたまま、死者の体幹へと一本の指を突きたてる。グリットの目前で、人影は小さな骨の山に変わった。
「さて……」
 ささやかな呟きを漏らし、ヒトの少年は狼魔手袋に護られる右手をかかげた。暗闇の一点へと触れ、その感触を確かめるように円を描くと、静なる奏風・アルス(a16170)は次の瞬間、黄金の輝きに構成される紋章を描きあげていた。脈打つように瞬くと、その紋章は黄金の穂先を垂れる無数の光条を飛びたたせた。
「失礼するよ」
 声に気づいたハーティアが振り返った頃には、もう言葉を発した青年の姿は、そこになかった。漆黒の幌をはためかせるダークネスクロークを従え、瞬秒の跳躍によって前に出ると、宵闇を歩く者・ギィ(a30700)は左腕で空を掻ききっていた。彼の指先から発せられた念の刃は、闇を裂き、骸骨を穿ち、敵影を粉のように散らした。
 光のない地下通路での戦いにも、いずれ終わりは訪れる。視界の先に、朧な光の膜が張られたかのような、半円形に窪んだ壁面を見いだすと、戦場の鍛冶屋・ザウフェン(a50117)は仲間たちにこう伝えた。
「さあ早々に地上に戻るとしよう、あそこが古井戸と見て間違いないだろうからな」
 光の翼を象る外装を与えられた彼の槌『シュミートハマー』は、中空に鮮やかな波状の線を描きあげ、同時に、複数の死者をよく乾いた板を砕きでもするかのように粉砕した。
 視界の先に振る輝きは、まるで帳のように思える。白の戦鬼・ブラス(a23561)は陽の光に神聖を感じていたが、それを口にすることはなかった。医術士ながらも隊列の前に出ることを好む彼は、右手に銀の輝きによって生成した槍を掲げている。投擲された聖なる槍は、亡者の透けた胴を貫き、邪悪な意志に突き動かされる身体に、静謐なる眠りをもたらした。
 仲間たちを癒しの光によって包みこむと、ハーティアは手にしていた帳面を閉じた。地図を記す作業はこれでもう終いだった。
 
「さて、敵さんとご対面だな」
 指先に収斂させた気を、細く長い糸のように練りあげて、宙に拡散させる。仮面収集家・カムロ(a33272)の目前で、歪んだ姿勢のまま複数のアンデッドが身体の自由を奪われた。
 しなやかに伸ばされた女性の指先を思わせる石橋に、無数の、まるで甲虫の亡骸に蔓延る蟻のような亡者の群がひしめいている。
 清澄な光を湛える輝石が、対となった剣の根本に耀う。蒼の十字に誓う双剣士・ラス(a52420)は空を切り裂き、怒気を含んで光を強めた黒檀の双眸で、堆く積もれる死者を睨め付けた。
「一体たりとも逃がさない」
 双剣士のまとう銀鎖の防具が、聖なる守りの力を得て、精悍な姿へと変貌する。
「令夫人も老いには逆らえず……って感じ? なんてね。死人は眠る、それが当たり前だから……全力でいくよ」
 わずかな反動で沈みこんだ彼の顔には、淡い光彩によって縁取られる明るい髪と、楽しげな灯りが踊るかのような榛色の瞳とがあった。手狭な石橋の上にあって、金色の光の中で踊る・ヤタ(a22254)は音もない跳躍を行い、また、音もない着地を行った。橋の縁から放たれたのは、宙をたゆたう絹綾の術扇から紡ぎだされる、青の衝撃だった。
 葡萄酒色をした紐でその白亜の髪を結いあげ、こめかみの生え際からヒトノソリンの黒耳を垂らす少女は、死者の山を見あげるようにしながら、口をもごもごとさせていた。チョコは世界を救うと思ってる・パク(a39784)は咀嚼に忙しい。口元から滲みでそうになるものを手の甲で内部へと押し返し、『チョコレートスィートメロディ』なる愛らしい名前を与えられた竪琴を構える。
「いきなりぱわーあっぷなぁん!」
 少女の足元から、なんとも不吉な黒で燃える火焔が噴出した。
「うぅ、それに下も本当に深いなぁ〜ん」
 戦乙女の勇敢さを想起させる真紅の甲冑に身を包み、また同色のアイマスクに隠された双眸も紅玉を思わせる深みという少女は、視線を奈落から前方の堆い敵影へと移し、さらに、後方の術士へ律儀にも会釈をした。大草原の小さな・ラマナ(a47586)は巨大な刀剣を旋回させながら、声をあげた。
「なぁんなぁんなんなぁ〜ん……なぁ〜ん、なん!!」
 巨人の指先を思わせる無慈悲な膂力は、橋の上に蔓延る死者の体躯を玩び、枯葉のように散らした。奈落へと墜ちる人の形を、冷たい紫の瞳をした少年は、ただ色を失ったかのような面持ちのまま見つめていたが、やおら『屍竜』なる名の杖を掲げると、周囲を不穏な響きで包みこんだ。
 怨嗟の黒狐・シイナ(a37130)の足元から立ちあがった黒い靄のような何かは、その実、無数の小さな穂先からなる集合体であった。無数の針で埋め尽くされた空間で、乾いた体躯の人影たちは、次々と穿たれてゆく。
「地獄のアンデッドよりも味気ないなぁ〜ん! こんな所で迷ってないで在るべき所に帰るなぁ〜ん!」
 大きな紅色の瞳で見つめるラマナが、巨大な刃で紡ぎあげた渦巻く風は、橋の袂に残されていたアンデッドを粉々に引き裂き、一掃した。パクは戦場にあってもけっして忘れることのない演奏や歌の楽しさを発揮した。そうして仲間から強張りを消し去り、その傷をも癒した。
 その後の戦闘は断続的なものだった。気によって形作られた戦輪を四方に配して、また、漆黒のダークネスクロークをも引き従えた姿で、ラスは廃墟の合間を駆け抜けた。石の剥片が崩れ落ち、現れた黒い痩身らへと、双剣士は戦輪を向かわせ、自らは一体へと狙いを定め瞬秒の跳躍を行った。夢幻の薔薇をちりばめた空間を飛翔したラスは、青い十字の軌跡を描きあげ、死者を弔った。
 瑠璃色の薔薇と『ブルー・クロス』の痕跡が消え入らぬうちに、ヤタはその鍛え抜かれた身体を、まるで歌舞でも踊るかのようにして躍動させた。天藍色の光を宿した彼の爪先は、地を這うようにしていた死者の胴を通過し、人の形を斜に切断した。
 その直後、鳥籠の中で眠る甘苺姫・ヤツキが二人に追いつき、高らかな歌声を響かせた。
 北の壁面が近づいてくる。小さき狐面を頭部の後方へと滑らせ、カムロはあたりの気配を確かめるような摺り足で歩んでいた。刺の生えた鏃は足元へと下げられているが、ボウの蔓は極限に近いまで張りつめている。城壁に現れた影へと、カムロは鮫牙の一矢を射た。ドレスの名残なのだろうか黒い布きれをはためかせ、死者は壁の向こう側に消えた。
 あたりには無数の亡骸が残されていた。暗闇を湛えた暗渠の口からは、数体の死者が這うようにして姿を現したが、猛々しい舌先をちらつかせる炎によって身を封じられ、邪竜の力を得たシイナが顕した黒い針の雨によって、それらは即座に闇へと戻された。
 建物の名残である瓦礫の上や、わずかに顔をのぞかせる石畳へと散開して、シイナたちはあたりの警戒にあたった。退路の確保もまた重要な戦いであることを、パクたちはよく理解していた。
 
 彼の発した靴音はよく響いた。石材で組み上げられた塔の胴は、根本から崩落したにも関わらず、その形状をよく維持している。所々の亀裂や、塔であった時分から存在していた灯りとりから、燦々と降る太陽の輝きが、その美しい指先をのぞかせていた。
 剣難女難・シリュウ(a01390)は長い腕を伸ばし、黒輝真剛鋼剣で目前の空間を切り裂いた。波間を思わせる線を描いた漆黒の刀身は、次々と乾いた皮膚を断ち、骨を砕いて、複数のアンデッドをただの欠片へと変えた。
 長い月日という抗いがたい力に手折られた塔は横たわり、その中途には生ある者と、それを奪おうとする影を、今は宿している。
「塔も倒れれバ橋ー、芳しい異臭漂うカンジネっ」
 妖艶な色香を漂わせ、なんとも華美な紅地牡丹金彩花魁衣裳に身を包みながらも、それでもやはり、極悪ナ・ジュラ(a26478)は自らの在り方をダンディと信じて疑わない。精緻な紋様が裡に封じ込められた硝子玉で、先端を装飾された杖で空を払うと、彼はあたりに、黄金で重たげな光条を拡散させ、次々と死者の体躯を打ち据えていった。
 城の内部へと通じる筒状の坂道を昇りながら、物憂げに赤茶の瞳を瞬かせる少年は、またばきをやめ、視界の先に現れた複数の影を貫きでもするかのように一瞥した。赫焉・ラズリ(a11494)は手首を締めつける緋色の篭手と、その掌中に按じる白銀の刀身に視線を落とし、坂を駆けあがった。シリュウの傍らを抜け、白光の一閃で死衣と骨の肉体を切り裂く。からから、と彼の足元を細い腕や足が転げ落ちていった。
 手折られた塔の根本へと辿り着くなり、空翼・ソエル(a16489)は廃墟の縁に踵を預けて、『深緑の貴婦人』と賛美された小城の内側を見渡した。その有様は、茫洋たる遠方に白い小島として浮かんだ眺めよりも、ずっと実際的に悲劇を伝えるものだった。手櫛で栗色の髪をかきあげ、舞い降りた前髪の先に紺碧の瞳を煌めかせると、少年は折れ曲がった塔から飛び降りた。しばらく遅れて着いてきた彼の尾が腰の裏側に落ち着く暇もなく、ソエルは鈍色の輝きに包まれた爪先で虚空に半円を描きあげた。鉄で砂が払われたかのような音をたてて、一体のアンデッドが切り裂かれ、上肢と下肢をそれぞれ前と後ろに転倒させた。
 アンデッドの密度は相当なものだった。地下墓地への入り口が近いせいなのだろう、まるで灰色の波がこちらへと、間断なく打ち寄せてくるように思われる。
 栗色の髪をした少年に続いて、折れ曲がった塔から飛び降りたのは、清澄な光を湛える、まるで流水のように変幻自在の輝きを含んだ髪の、セイレーン少女だった。どこか申し訳なさそうに、所在なげにソエルの傍らに舞い降りると、泡沫の眠り姫・フィーリ(a37243)は会釈をするようにして頭の位置をわずかに下げた。次の瞬間――彼女は死者の胴へと組みつき、骨だけの躯を軋ませながら抱えあげると、それをひしめきあう亡者の群に投げこんだ。
 これまでに繰り広げられた死者の戦いに既視感を抱きながら、慕狼玄牛・ルシュド(a28710)は二人の武道家の合間を駆け抜け、『宿禰』なる弧状の武具を振りあげた。二本の足で大地を捉え、腰を起点とし、うなりをあげんばかりの右手を振り抜くと、亡者の体躯は波にさらわれた砂上の楼閣のようにさらさらと砕かれた。
 青い兜からのぞく少女の口元は、まるで椿の蕾のようにすぼめられ、細い吐息を漏らしていた。ドリアッドの重騎士・ベルエル(a10064)は地上に降り立つなり同太貫の切っ先で天蓋を青ざめさせ、死者の波に対峙する仲間の元へ、防具を高める強大な力を注ぎこんだ。戦いは長引く――。戦局を見つめる少女の後方に佇んで、地響抱翼・エルが癒しの光波を拡散させる。癒しの翼を自らに任ずる少女に、ベルエルの側から離れる意志は欠片もなかった。
 
 闇の先に灯りや仲間の息づかいを感じるなり、グリットは口元に柔らかな線を浮かべ、ほくそ笑んだ。拳を力強く固め、彼は声を発した。
「チャンスだ、派手なのを頼むよ!」
「朽ちた命……許せよ……」
 地下の手狭な領域を包みこむようにして、アルスが記述した紋章から黄金の線条が伸びてゆく。それらに風穴を穿たれた亡者へと、敢然と挑みかかったのはグリット、それに、大ぶりな盾を構えて身をねじこむようにしたエグザスだった。
 黒炎をくゆらせる姿となりブラスは、蜂蜜の重騎士には負けじと前衛に躍りでた。彼が術手套から発した黒炎は宙をのたうち、一体のアンデッドから頭部を失わせた。地下空間を支える柱に手をかけ、円を描くような運動で身を飛びたたせると、ギィは亡者らの側面に降り立った。そこで魔炎にまかれて飛んでくる骸骨を避けると、『風月』と銘打たれた鋼糸で闇を切り裂き、疾風の刃を飛翔させた。邪魔な柱は回りこんで、頭上に張り巡らされた木の根にも構うことなく、ザウフェンは槌を振りあげ、それを亡者らの身体に叩きつけた。肩をすくめるようにして瞳を閉じ、心の力を瞬秒の間に高めると、ハーティアはあたりに光の光波をたゆたわせた。その輝きは、彼女の連れるミレナリィドールと融合し、七色にきらめく。
 視界の端に捉えられた輝きは、術士が発した癒しの光だろう。それに、暗がりから聞こえてきた、枯葉が踏み潰されるような音は、アンデッドがその輪郭を失った際のものに相違ない――。同太貫を頭上から垂直に落として、ベルエルは目前の敵を両断した。
 白銀の刀身に指先をはべらせ、切っ先を足元に、視線の高さに掲げていた『緋旻』を一瞥すると、ラズリは刃に自身を周回させる軌道を描かせ、さらに身を一転させた。
 幾分かの躊躇いは感じながらも、ルシュドは骨を踏み砕いて前方へと身を躍らせた。白い塊を頭上に浮かべ、全身の重みを弧状の武具にかけ、歪な一つの影を粉砕する。
 フィーリはその時、数を勘定していた。仲間の数が足りない――はっと声をあげそうになった彼女だったがすぐに真実に思い当たった。足りない一人とは自分だったのだ。両の拳にそれぞれ魔炎と魔氷をまとわせ、少女はアンデッドの体躯に次々と衝撃を叩きこんだ。
 爪先を滑らせて相手の懐へ――といっても、シリュウは身体は大きく、痩せた死者を見下すような位置に彼の頭はある。黒輝真剛鋼剣は斜の軌道を描き、アンデッドを襤褸に包まれた何かに変える。
「もう此処に縛られることは無いよ。今、ちゃんと送ってあげるからね……在るべき場所へ」
 魔炎に包まれた右手で髑髏を打ち砕く――ソエルは細く息を吐いた。あたりは静まりかえりつつある。仲間たちが発する呼吸の音が、心地よいしらべのように感じられていた。
「コレッテ……浄化の炎っていうのヨネ?」
 そう囁いたジュラの、漆塗りに金の細工が施された杖は、魔炎燻る木葉によって包みこまれていた。暗渠の暗闇を、螺旋を描いて飛んだ風は、最後の死者を、再び永久の眠りへと誘ったのだった。


マスター:水原曜 紹介ページ
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作成日:2006/09/27
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