芋を焼け、まずはそれからだ



<オープニング>


●焼き芋
 落葉をガサガサと掻き集め、掃除を終えた人々はふぅと息をついた。そしてその中の一人が取り出した数個の芋に歓声が上がる。落葉の中に芋が埋められ、火が点けられ煙が上がり……芋の焼ける香ばしい香りが漂い始めた。
 ギギーッ!
「うわぁぁぁっ!?」
 突如現れた猿グドンの群に、人々は慌てて逃げ出した。そして見事に焼き上がった芋は……残念ながら奪われてしまっただろう。

「今回は、村を猿グドンから奪還していただきます」
 冒険者の酒場で真実求む霊査士・ゼロ(a90250)は告げる。何でも山中の小さな村が、猿グドンの群に制圧されてしまったのだという。
「猿グドンの群は50ほど、剣や爪、弓で武装しており……村を拠点にして食料を集めることもしているようですが、主に村に貯蔵されている食料を消費しています。最近収穫されたばかりのお芋も次々に食べられているようですので、村人達の落胆も大きいでしょう」
 村人達が収穫した芋を、猿グドンたちは焼いて食べているらしい。このままでは折角の蓄えも近いうちに尽きてしまうだろう。
「ピルグリムグドンの存在は感じ取られませんが、相手の数も多いので注意してくださいね。それでは猿グドンたちを排し、村を取り戻せるよう……よろしくお願いします」
 ゼロはそう言って、冒険者たちに一礼を送るのだった。

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参加者
白陽の剣士・セラフィード(a00935)
しっぽ自慢の・リコ(a01735)
白暁の武人・シャオルン(a20829)
突貫爆砕・ウィルダント(a26840)
睡獅子・バルア(a31559)
水の邪竜巫女・チドリ(a38140)
真紅の風の自由戦士・ラムナ(a41962)
灰被り・シンデレラ(a43439)
蒼炎華・ルヴェンダ(a45027)
平穏に鳴り響く鐘・ナーシャ(a52673)


<リプレイ>

●速やかに奪還せよ!
「さぁて、お仕事お仕事……と」
 白暁の武人・シャオルン(a20829)は呟くと同時に、手に生み出した白い糸を放っていた。粘り蜘蛛糸に絡め取られ、一匹のグドンがもがく。
「させませんの!」
 猿グドンが叫ぶより先に異形の炎が包んで燃え上がった。水葬曲青之楽章・チドリ(a38140)のスキュラフレイムでグドンが倒れたことを確認し、冒険者たちはざっと辺りを見回した。今の攻防を他のグドンに見られて居ないかどうか……、同行している真紅の風の自由戦士・ラムナ(a41962)や平穏に鳴り響く鐘・ナーシャ(a52673)が村の方向を確認し、さっと手を挙げる。
「村の人たちの食料を奪うなんて許せないね」
 進むナーシャに頷いて、冒険者たちも村への進行を急いだ。今回の依頼はグドンに占拠された村の奪還となる。冒険者たちは数の多いグドンに気付かれぬように注意しながら身を潜め、村へと侵入してゆく。
「油断無く、がっつりかっちり行こうか」
 シャオルンは一同に視線を一度だけ巡らせ、ウェポン・オーバーロードを発動させるのだった。

「合図だ、準備はいいか?」
 手元で消えるシャオルンの武器を確認し、銀灰の守護刃・バルア(a31559)は共に村へと潜入した仲間達へと小さく告げていた。冒険者たちは二手に分かれ、バルアとシャオルンの使用するウェポン・オーバーロードによって襲撃のタイミングを合わせるつもりだったのである。
「丹精込めて作ったものが蹂躙されるなど許されることではない。グドンたちには覚悟してもらおう」
 小さく返す蒼炎華・ルヴェンダ(a45027)や、
「取られたモンを取り返す。それだけだな!」
 ぐっと拳をにぎる突貫爆砕の雄・ウィルダント(a26840)の返事を受けて、バルアもウェポン・オーバーロードを発動させる。
「グドンども……覚悟しやがれ! 変身!」
 バルアの元にブーメランが召喚されるのをちらりと確認し、ウィルダントは鎧進化を発動させつつ飛び出して行った。
「好き勝手に芋を食べ放題……もとい、村人たちの大切な蓄えを貪るなんて、絶対に許せないわね」
 白陽の剣士・セラフィード(a00935)も儀礼用長剣『ソルレイザー』にウェポン・オーバロードの力を込めてウィルダントの後を追う。冒険者たちの襲撃に気付いたか猿グドンたちも騒ぎ出し、一番近くに居た一匹がセラフィードに爪を振り下ろした。それをセラフィードはガキンと盾で受け止める。
 じゃっ!
 その猿グドンにルヴェンダが杖を突き出し、気高き銀狼を解き放って組み伏せていた。

「襲撃の合図だ」
 手元の武器が消え去ったことを確認してシャオルンは声を上げていた。その言葉に答えるように、チドリがニードルスピアを放つ!
 がががっ、とばら撒かれる無数の針を追って飛び出すラムナは「村人達の平穏を奪った報いは受けて貰わないとな」と言いながら剣を振るい、矢返しの剣風をその身に纏った。イリュージョンステップのリズムを刻みながら駆け行く灰被り・シンデレラ(a43439)は反応した猿グドンへと詰め寄り、ガキンと剣を合わせて牽制している。
「これで少しは大丈夫だよ」
 ナーシャはチドリへと鎧聖降臨を施して、グドンとの戦闘が始まった前線へと視線を向けた。ぎぃぎぃと浮き足立つ猿グドンたちだが、何匹かは手に武器を持ち、後方からも次々に矢が飛んでくる。ナーシャは向かい来る一本の矢を蛮刀『旭』で叩き落した。

 ……ざっ
 響いたのはただ、肉が裂けて血が噴き出す音のみ。闇色の闘気を纏う刃は猿グドンの背を切り裂き、がくりと膝を付かせていた。きつねしっぽのれーさし・リコ(a01735)は仲間達とは共に行動せず、食料庫を見張るグドンの退治に当たっていた。ハイドインシャドウを使用しながら接近し、一匹の猿グドンにシャドウスラッシュを浴びせかけたものの……。
『ぎぎぃっ!』
 この行動でハイドインシャドウの効果は解け、もう一匹いた見張りの猿グドンが雄叫びを上げながら剣を振り上げ飛び掛かってきた! リコは双頭剣を構え、バックステップで後退る。
 がっ、と飛び掛かって来たグドンを爪が薙ぎ払った。シャドウスラッシュを死角から受けた猿グドンが混乱して攻撃を仕掛けたのである。リコはバランスを崩した猿グドンに一撃を加えて打ち倒し、混乱しているグドンもカラミティエッジでトドメを刺す。
 そこで顔を上げれば、何事かと数匹のグドンがこちらに近づいてくるのがリコ見えていた。リコは急いで食料庫の陰に身を滑らせ、再びハイドインシャドウを発動させる。

「ちっ」
 飛来する矢を盾で受け弾くバルア。村に入る前に矢返しの剣風を纏っていたのだが、隠れたり合図を待つ間に効果が切れてしまったらしい。再びブーメランを振るってバルアは風を纏い直す。
「ファイナル・クラーッシュ!」
 雄叫びを上げながらウィルダントはグドンに掴みかかり、デンジャラススイングで豪快に投げ飛ばした! 吹っ飛んで倒れる猿グドンだが、別の一体が爪を繰り出してくる。ウィルダントは鎧進化で強化された革鎧で受け止め、その一撃を防御した。
「其は炎を纏う者……力を貸せ、蒼炎華!」
 両手杖『蒼炎華』を振り抜き、ルヴェンダは鋭く紋章を描き出した! そこから幾筋もの光が放たれ、猿グドンたちを次々と貫いてゆく。しかし相手も数が多く、運良く避けた者や直撃を免れた者がルヴェンダへと迫る!
「まだまだ……ってね!」
 セラフィードのミレナリィドールが七色の光へと変わり、儀礼用長剣で描く紋章と融合した。そして迫り来るグドンたちに向けて、光は戦場を駆け抜けてゆく。

 一方でウェポン・オーバーロードを発動させるラムナにグドンが剣を振り下ろすが……ダークネスクロークがバサリと振り払い、ラムナは完全に回避してたんっと構え直す。
「甘いな」
 ラムナは小さく呟いて、輝く剣を携え地を蹴った。
 シンデレラは突っ込んで来た無謀なグドンをひらりと半歩分だけ避け、至近距離からミラージュアタックを叩き込む。残像と共にそのグドンの胸を斬り裂き、倒した。
「皆で頑張らないとね」
 ナーシャはシンデレラへと向かい鎧聖降臨を放つ。輝きを増す硬革鎧に包まれながら、シンデレラは次のグドンへ駆け出していた。思わず怯むグドンたちに向けて、逃がしはしないとシャオルンは粘り蜘蛛糸を放ってゆく。浴びせ掛けられる白い糸に数匹のグドンが巻き込まれて動きを縛られるが、それぞれの位置が散らばっているので一網打尽とまでは行かない。
「十分っ!」
 ざざんっ! と刃が流れ閃く。ラムナの流水撃が蜘蛛糸で動けぬグドンを、その周囲に居たグドンを巻き込んで薙ぎ払ったのだ。直撃を受けた者やダメージを受けていた者はそれがトドメとなってバタバタと倒れてゆくが……剣で直撃を避けたグドンが刃を突き出してラムナの腕を浅く傷付けた。ぴっと赤い血飛沫が飛ぶ。
「大丈夫……これでっ!」
 ナーシャの鎧聖降臨がラムナへと施され、革鎧が進化してゆく。その間にシンデレラは動ける者・ダメージの浅い者に狙いを絞って踏み出していた。そうはさせじとグドンたちの後方から何本もの矢が射掛けられるが……イリュージョンステップの巧みな足裁きが、その身に纏うダークネスクロークが直撃を許さない。
「癒しの光よ、その輝きを我らに刻みたまえ……」
 チドリは疲労やダメージが蓄積せぬように、ヒーリングウェーブで仲間達の回復を行うのだった。

「癒しの力……皆に力を」
 一方でもルヴェンダがヒーリングウェーブで癒しの光を放っていた。その柔らかな光を浴びながら、バルアは向かい来る矢をブーメランで叩き落とした。矢返しの剣風に巻かれ、矢は来た方向へと鋭く返ってゆく。
(「グドンのくせに焼き芋なんて食ってんじゃねー!」)
 心の中で叫びながら、バルアは矢返しを受けて怯んだグドンを中心に流水撃で薙ぎ払ってゆく。ブーメラン『餓虎』に打ち払われてグドンたちは倒れ、あるいは怯んで膝をつく。しかし一匹が両手の爪を交差させて何とか防御し、そのままバルアへと襲い掛かる!
「ファイナル・クラーッシュ!」
 雄叫びは何度目か、横から割り込んだウィルダントがその一撃を受けながら相手を掴み、デンジャラススイングで思い切り投げ飛ばす!
「これもオマケよっ」
 吹き飛び倒れるグドンに向けて、セラフィードからエンブレムシャワーが撃ち放たれた! 辺りのグドンに雨のように光が降り注ぎ、貫き倒してゆく。光が収まった頃に戦場を見渡せば、あれだけ居たグドンたちもようやく底が見えてきたようだ。遠目に別班の戦う姿もちらりと視界に入るが、今はまだ安心するにはやや早い。
「1匹たりとも逃がさない」
 冒険者の力に恐れを成したか、僅かに残るグドンたちは逃走を開始していたのだ。ルヴェンダはペインヴァイパーのガスを纏う気高き銀狼で、一匹を大地に組み伏せる。しかしそれでは一度に止められるのは一匹のみだ。
「後は任せる……!」
 仲間達にそう告げて、バルアはぐっと武器に闘気を込める。そして放たれる烈風の竜巻――レイジングサイクロン!
 ごっ!
 荒れ狂う闘気の風は、こちら側に逃げていたグドンたちを一気に薙ぎ払うのだった。

「……う……」
 つぅっ……と口元から血が流れ落ちる。それを手で拭い、リコはその場に座り込んでいた。
 一人で食料庫を見張るグドンと戦っていたリコ、一対一ではグドンなどに遅れを取るわけも無いのだが、見張りの叫びで何匹かを一度に相手にする羽目になってしまったのだ。
(「あとは、仲間を信じて……」)
 しかしこの場に居たグドンたちは確かに倒した。自分の役目は果たしたと胸中で呟き、リコは未だに戦闘が続く方向へ視線を向けるのだった。

 シンデレラはスーパースポットライトを輝かせ、生き残りの注意を集めていた。
「絶対に逃がさないよ!」
 ナーシャは自身に鎧聖降臨を施して、シンデレラに注目するグドンたちへと向かってゆく。
 じゃぃぃぃんっ!
 その脇を抜けてラムナのチェインシュートが放たれた! 射出された長剣は一匹の猿グドンの胸を貫いて大地に倒し、素早くラムナの手へと戻ってゆく。ぱしっとそれを受け取りながら、ラムナ自身も逃げるグドンの背を追って走っていた。
「観念してもらおうか」
 シャオルンの粘り蜘蛛糸が、最後のグドンまで絡め取って逃走を阻む。――後は全てにトドメを刺すのみ!
「仲間と一致団結して、全部倒しますの!」
 チドリの両手杖『静音』が掲げられ、虚空に無数の針が生まれる。ばら撒かれるように解き放たれたニードルスピアが蜘蛛糸に絡まるグドンを、シンデレラに注目するグドンを貫いてゆく。
「これで最後かな……あれ?」
 シャオルンに鎧聖降臨を施して、これで仲間達全員にかけ終わった……とナーシャが見回せど、そこには既に動くグドンの姿は無かった。

●焼けた芋はどうするか
「こういった仕事は女性陣にやらせたくなかったんだが……」
 穴を掘りながら呟いていたのはラムナ。グドンたちを殲滅した冒険者達は一度合流し、村人が戻れるように片付けようということになった。
 グドンたちの亡骸を処理する担当はラムナ、リコ、セラフィードにシンデレラと、実にラムナ以外は全員女性というメンバーだった。まぁ、そこは冒険者なので人々の為に……そしてグドンとは言え失われた命を大地に還す為に、村から少し離れた場所に穴を掘って埋葬してゆく。
「……安らかに」
 ラムナとセラフィードが掘った穴に、リコとシンデレラが残らず運んできた亡骸を埋めて一同は小さく、祈りを捧げた。そして村の掃除を手伝うべく、その場を後にする。
 家屋の中や食料庫、村の近辺にグドンの討ち漏らしが無いかチェックしているのはルヴェンダだ。一匹でも逃せば何らかの被害が出るかもしれない、ルヴェンダは杖を油断無く構えながら慎重に捜索を続ける。
「まぁ、掃除しておくか……」
 グドンによって荒らされたり汚染されたりしている家屋や広場、井戸や倉庫などを順に掃除してゆくシャオルン。バルアは適当な材木を運び、破壊された施設の修繕を手伝う。
「よっ!」
 バキッと割られた木材は丁度手ごろな大きさで、バルアからウィルダントに手渡された。受け取ったウィルダントは折れ掛かった一本を柱をその木材で補強してゆく。
「アフターケアもナーシャたちの大事なお勤めだもんね」
 ナーシャとチドリも掃除をして回っていたが……ふと、ぶすぶすとくすぶっている広場の焚き火の跡に二人の視線が向いた。
「火事にならないように火を消しますの」
 ガサガサと枯れ葉の山を崩して砂を掛け、消火しようとする二人だが……ごろん、と何かが転がった。………それはすっかり見事に焼きあがった、芋。
 同時に良い感じの香りがふわ〜っと広がっていった。

「……秋だナ」
 空を仰ぐシャオルンの言葉の少し後に、誰かのお腹が鳴ったとか鳴らなかったとか。

 ともあれ村の食料に勝手に手をつけては不味かろうということで、避難している村人達が戻ってくるまで芋はキープされていた。
 やがて綺麗になった村に人々も戻り……食料庫にも十分な芋が残されていることが確認された。リコは胸中だけで安堵の息を吐く。
「でも、そんなに沢山焼いちゃったんだったら、村人さんたちだけで片付けるのは大変かなぁ〜……なぁ〜んてね……」
 そーっと呟くセラフィードの言葉を村人も聞いたか、「折角ですし、グドン退治のお礼も込めて如何ですか?」との声が上がる。
「うむ、折角の美味しい芋。捨て置くには勿体無い……」
 このままでは無駄になってしまうかもしれないだろうとウィルダントも頷いて一つ手に取る。ほこっと二つに割れた芋からふわふわと香りと湯気が立ち昇った。
「そうだな、食べたい人たちは食べてくれ」
 ラムナはそう言って、村人も含めて皆に芋を配ってゆく。
「まぁ、嫌いではない。うん。好きかも……な」
 一つ手にとって、頂こうとルヴェンダも口を開いた。そうして皆でワイワイと、焼き芋が『処理』されてゆく。
 そんな中で、やや顔を赤らめていたのはシンデレラだ。村の老人が一人「いかがですかな?」と芋を差し出している。
「……私は焼き芋が食べたくてグドン退治に来た訳じゃないの……でも、どうしても、どうしてもと言うのなら……」
 老人はシンデレラを優しく見つめながら「ほっほっほ」と笑い。「では、どうしても召し上がってくだされ」と付け加えて芋を差し出してくれた。
「し、仕様が無く受け取ることにするわ……」
 言いながらシンデレラは二つに割れた芋の断面にはむりっと口をつける。温かく、柔らかい甘さが広がってゆき……ほんの少しだけ、自然と笑みがこぼれる。
「皆さんで平穏な時を取り戻せて……嬉しいですの」
 チドリの言葉に一同は心から頷くのだった。

 こうして冒険者たちは無事にグドン退治を終え、村の平穏と焼き芋を取り戻すのだった。


マスター:零風堂 紹介ページ
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