秋の頌歌(オード)



<オープニング>


 君の歌待ち侘びて、この秋も野辺は紅。
 愛し調べ早や戻り来よと、高天に望む――

「盗賊の捕縛、そして盗品奪還の依頼です」
 祈らない霊査士・エリソンはグラスを置いて語る。
 曰く、強奪された品は一綴りの楽譜。旅の音楽家・セィムという名の青年が、故郷・エイセル村を思って書いた曲だ。
 齢十五でリュート一つを手荷物に故郷を発ち、調べを供に旅を巡り五年。漸く自らの演奏に確信を得たセィムは、その曲を手土産にエイセルへの道を戻り始めた。
「ですが彼はその帰路、エイセル手前の森で盗賊に襲われてしまいました」
 森からエイセルまで、残す道程は僅か半日。彼は故郷を目前に楽譜を奪われ、全身をひどく傷め付けられてしまった。
「結果は同じ悪行、認める訳にはいきませんが……盗賊達も最初からそこまで青年を負傷させる気はありませんでした。彼が楽譜を取り返そうと余りに必死でしがみ付いて来るので、何度も振り解く内に傷め付けてしまった様です」
 件の楽譜は、エイセルで採れた楓の木を美しく彫刻した二枚の飾り板に挟んである。それは彼の祖父が彫り上げた品で、一見高価な飾り盆にも見える。その為、盗賊達の目を惹いてしまったのだろう。セィム自身は森道で昏倒している所を発見され、森に程近い隣村に運び戻されて休んでいる。だが故郷の人々は、紅葉が散る前に今年こそと、彼の帰りを待ち続けている。
「森道の中程に、樹木に埋もれた脇道があります。そこから多少坂を昇った先の小屋に、盗賊達はいます。……ですがまぁ『お宝』に目がない連中ですし、誘き出す手段もあるでしょう」
 併しどの様に捕えるにしても、盗賊達は所詮一般人。多少懲らしめればすぐに大人しくなるので、度を越して罰するべきではないと霊査士は釘刺す。

「じゃあ依頼は、森の盗賊から楽譜を取り返して、隣村のセィムさんをエイセル村へ連れて行って上げる……て事?」
 口を拭って尋ねる、ヨハナ・ユディトに頷き、霊査士は冒険者達に地図を手渡す。
「えぇ。ですが、それだけじゃないですよ」
 彼は自らの曲を村人達により楽しんで聴いて貰う為、冒険者に『自分と共に合奏して欲しい』と望んでいる。
 遠い旅路、彼が作った曲の題は『秋の頌歌』。それは物悲しい秋風の様な旋律から始まり、やがて故郷の美しい紅葉の元、再会の喜びを表す華やかな調べに変わる。彼は冒険者達を信じ、歌唱や舞踏――編曲等も自由にしてくれて構わないと、自らの曲を託している。
「その心に答え、エイセルで彼の曲を一緒に演奏して上げて下さい。宜しくお願いします」
 そう言って霊査士は頭を下げた。

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参加者
ブラッディ・ジョーカー(a30860)
奇爵・レーニッシュ(a35906)
月舞酔鳥・ルゥライラ(a37497)
円舞曲・マロンクリーム(a41006)
辻楽師・ユーニス(a42404)
暁の雨・ユングヴェ(a45920)
有漏秘めし阿古屋・シュラーフェン(a46637)
夢堕雫・シユウ(a49895)


<リプレイ>

●誘引
 熱のない風に、夏と秋の隔たりを知る十月。仰ぎ見た空を一筋の雲が流れ往く。

 囮を立てて賊を誘き出す算段に従い、一同は森道の入口で二手に分かれた。
 故郷を目前に痛め付けられ、侭ならぬ体で床に伏せていたセィムも、有漏秘めし阿古屋・シュラーフェン(a46637)に傷を癒され、今は賊を待伏せる待機班の冒険者達と共にエイセルへの道を歩んでいる。併し、一刻も早く楽譜を取り戻そうと足取りは知らず逸り、シュラーフェンはその度青年に、あんまり無茶しちゃ、ダメだよ? と念を押す。
「歌も、ケースも、セィムにとって大事な物……返して貰わなきゃ、ね」
「悪気が無かったと言っても、人に危害を加えるのはダメですからね」
 シュラーフェンに頷いてそう言い、水面の黒曜雫・シユウ(a49895)は姿を周囲に溶け込ませていく。月舞酔鳥・ルゥライラ(a37497)も、奇爵・レーニッシュ(a35906)と顔を見合わせて姿を忍ばせた。隠遁の術を持たない、円舞曲・マロンクリーム(a41006)は、大きな栗鼠の尾をはみ出させまいと懸命に草下へと押さえ込んで隠れ、シュラーフェンもリュックとストールで翼を隠して木陰に潜む。青年も見様見真似で倣い、倒木の虚へと身を寄せた。
「お兄ちゃんからはなれて1人でなにかするのは、はじめてのことです。ちょっときんちょうしますが、がんばります」
 何とか尾を叢に押し込め終え、マロンクリームは息を吐く。

 一方、囮として先行する者は三名。手には日中にも見栄え良い幻月灯篭、身には黄珠紅珠を纏い、暁天の水鏡・ユングヴェ(a45920)は先頭を行く。
「皆で秋の演奏会……って、楽しそうだねえ」
 彼女の思考は早くも仕事後の宴へと向かっている。賊達が当初青年を痛めるつもりでなかったと聞けば随分良心的に思え、ブラッディ・ジョーカー(a30860)も気が抜けた表情で首を捻っていたが、
「でもまぁ、結局盗っちまってる訳だしナ」
 と頬を掻くと、ユングヴェも思い改めて頷く。
 ジョーカーは、服こそ平時と変わらぬ一張羅の黒いレザーコートだが、翠珠紫珠の宝飾で煌びやかに彩っている。辻楽師・ユーニス(a42404)も、光る程磨き上げた真っ赤なコンサーティナを肩に、耳元に金の髪飾りを輝かせる。森の外迄後どれ位だろうな? と軽い口調で誰にともなく尋ね、ユングヴェが鼻歌を口ずさむと、その歌に鍵盤の音が乗る。楽を道連れにゆるり歩む姿はさながら楽団の一員の如く、三者三様に華やかだった。

「親分。お宝持ってそうなのが三人通るス」
 高みの小屋で、森道を見張る賊が頭領を呼ぶ。呼ばれた大男は遠眼鏡を覗き込み――
「莫迦野郎!」
 途端、見張りの横面を殴り抜いた。
「な、何し」
「他に真っ先に言うべき事があるだろッ!」
 何事に激昂かと、盗品を磨いていた三人の賊も窓際へ押し寄せて遠眼鏡を奪い合う。
「あ!」
「み、皆女の子じゃないか!」
「畜生! 何で五人じゃないんだ!」
 『こっちは五人なのに』『余るのはお前だ』等と口々に言い争って小屋を飛び出し、賊達は我先に走り出す。

●捕縛
「そこの野郎! ……否『野郎』じゃねぇな。えぇと」
「兎に角止まりやがれ!!」
 坂道を転げ落ちる様に、四人の賊が現れた。ユングヴェは嬉々として彼らを指差し、『森の熊さん発見!』と息巻く。
「熊つーかナ……ん? 四人?」
 事前に聞くに、賊達の総勢は五人。ジョーカーは首を巡らす。
「あぁ」
 残る一人の賊は、坂上で木の根が裾に絡まったままもがいていた。単に転んだだけらしい。逃げる気配もなさそうなので、そのまま木の根に捕えさせておく事にした。
「ふへへ、怯えてますぜ」
「大人しくしな……」
(可愛いじゃねぇかーっ!)
 坂上からも何かが聞こえた。当然彼女達は賊の腑抜け振りに間延びしていただけなのだが、どうも『怯えて声も出ない様だな』という類の勘違いをしているらしい。
「はぁ」
 実害はなさそうなので、そのまま勘違いさせておく事にした。ユーニスは溜息を隠してじりじりと後退る。当然演技だ。
「おっと待ちな……」
 賊達もにじり寄るが、ジョーカーとユングヴェはユーニスの手を引き、待伏せる仲間の元へと走り出す。両側から二人の女性にぶら下げられ、ぷらぷらと揺れながら遠ざかる小さな少女の姿。賊達は一瞬和みかけ――すぐに追いかけ始める。
(待て、この野郎ー! 否えぇと)
 再び坂上から何かが聞こえた。

「物事はスマートにッ!」
 前方から走り来る者達を認め、レーニッシュは木葉でカモフラージュした遠眼鏡を懐にすと仕舞う。音もなく飛び出すルゥライラに、続くシユウとシュラーフェン。マロンクリームも走り出で、賊達は一呼吸の内に行く手を塞がれる。常人離れした素早い包囲に怯み、目を泳がせて退路を探る者が二名。行っちゃダメですよ、あくまで笑顔のシユウがそれを阻む。
「……行ったらダメだと、言ったでしょう?」
 尚逃走を計る者もいたが、シユウがごわっと音が聞こえる程の勢いで黒い炎を纏って見せると、最早立ち竦むしかなかった。彼が笑顔のままなので余計怖かったらしい。
「おいたしちゃ、メ。だよー」
 シュラーフェンは囁き、賊達の周りに惑わしの胡蝶を舞わす。そして足元でぎゅうぎゅうと押し競饅頭を始める物体は、マロンクリームが喚んだ土塊の下僕。立所に混乱に包まれた賊達は、圧し合いながら逃れようと試みる。
「音楽を甘く見ると、こうなるのですよ」
 『お命ばかりは』『最期の一服を』と賊達は口々に命を乞うが、ルゥライラの軽やかな踊りに釣られ、慄きながらも大胆で蟲惑的な舞踏を続けさせられる。
「お前ら、年貢の納め時だ!!」
 ユングヴェが声を張り上げた。それは唯でも四肢を痺れさせる裂帛の叫びであるが、混乱状態で聞けば更に恐ろしい恫喝と覚え、気弱な賊の一人は既に涙すら流していた。踊ったままの姿勢で固まりながら。
「眠っとけ、眠りの子守唄……」
 ジョーカーが呟いてユーニスと共に眠りの調べを口ずさむと、漸く賊達は覚めての悪夢から開放されて深い眠りへと落ちた。

「よぅ。逃げ足が早ぇな、野……嬢ちゃん達(ぜぇぜぇ)」
 やっとの思いで木の根を解き、坂上で独りもがいていた賊が今頃現れた。だが脅すつもりで凄んだ所で、折り重なって倒れる四人の仲間が見え、文字通り目が点になる。
「何ぁーーっ?!」
 何がどうしてそうなったかは、解らない。唯形勢の拙さばかりは歴然で、賊は途端に踵を返そうとする。が、一人前に出でたレーニッシュが頭上に眩い光を灯すと、その視線は彼に釘付けになった。痺れた様に目が離せず、その場から一歩も動けない。
「フッ……我輩を見ておる! 我輩の滲み出る叡智と渋みがそうさせるのであるかな!」
 ――光の効果により、事実痺れて動けないのだが、当然賊がそれを知る由はない。よって、そんなレーニッシュの戯れも真に受けられる事となる。
「ハッハッハァー! ……もっと見てー!!」
 些かの悶えを含むエキセントリックな笑声を耳に、賊は『こいつには勝てねぇ』と悟るのであった。
「読めもしない盗賊風情の元に、楽譜を置いておく訳にはいかないのです」
 ルゥライラは両手に縄を張り、冷ややかに告げた。

●奪還
 眠りこけたまま、並べて拿捕された五人の賊達。中には倒れた際に痣を作った者や、押し潰されて擦り剥いた者もいた。僅かな怪我ではあったが、マロンクリームは光の波動で一応それらを癒す。
「起きて下さい。綺麗な彫刻のされた板は何処にありますか」
 治療を終えて尚眠る賊達を、ユーニスがゆさゆさと揺さぶり起こした。
「えぁ」
 賊の一人が空気の様な呻き声を上げて目覚め、傍らで半目状態の大男に、お頭涎が……と申し訳なさそうに小声で告げる。それを聞いたシュラーフェンは、『お頭』と呼ばれた男の頬をぺちぺちと叩く。
「彫り物細工の、飾り盆みたいなの、返して」
 はっと目覚め、頭領は首を左右に振る。賊達も皆、お宝を返せ等冗談じゃないと抗うが。
「それなら足腰が立たなくなる迄強制的に踊って頂きますが、宜しいですか」
 ユーニスの丁寧な問いに合わせ、ルゥライラは先刻と同じ動きで腕を広げて見せる。更にレーニッシュの強制自白装置――と言う名の装飾に凝った無意味に豪華な羽箒で脇腹を擽られ、程なく全員音を上げて自白するに至った。

 数名の者が盗品の奪還へ向かう一方、賊の見張りに残ったユーニスは頭領に向け、何故盗みを生業にしているのかと、一つ事を尋ねる。頭領は一瞬遠い目をして『最初は生きる為だった』と独り言の様に呟いた。手下達もその言葉に思う所があってか、繰言も俄かに止む。
「普通のお仕事をしていたって、お宝は見付けられると思うのですよ」
 路傍に視線を落として呟くと、頭領は拗ねた様な諦めた様な舌打ちを一つした。
「ありましたよー! これですよね?!」
 短い沈黙を割り、シユウの声が届く。見ればマロンクリームが諸手を上げて所在を示している。盗賊の隠れ家とは言え手荒に探せば盗品を傷めかねず、思いの外時間がかかったと、ユングヴェは頭を掻く。
「あぁっ!」
 シュラーフェンから受け取った飾り板を検め、セィムが悲鳴を上げた。よもや持ち主にしか解らない破損でもあったかと、ユングヴェは肝を冷やすが、
「……前より奇麗になってる」
 そう続く青年の言葉に胸を撫で下ろし、安堵の笑みを見せた。
「おう、手前はもうちっと磨き方ってものを覚えやがれ」
 縛られたまま真顔でセィムを説く賊の頭を、ジョーカーとユーニスが地面に擦り付けて土下座をさせた。

●秋の頌歌
 やがて景色はくすむ朽葉の枯色から、金色を経て懐かしい紅へと変わる。
 見渡し見上げた先の何処迄も、梢に宙に広がる、鮮やかな紅葉の色。
 陽は未だ高く空は青く、けれどエイセルの秋はそれすらも緋に染め上げる。
「――」
 青年の瞳が潤んだ。立ち尽くすその背を軽く押した者が誰であったかは解らないが、彼はその手の力を借りて再び歩み始める。
 心に刻もう、とルゥライラは思う。
 セィムの言葉を表情を。そして彼を出迎える村人達を。訪れる秋を受け入れる村の景色も一縷の風すら全て糧に、彼の曲を美しく踊る為に彼女は焼き付けた。

 刻は午睡を終える頃。
 一頻りの歓迎を区切り、村の広場には宴の舞台も整えられ始める。セィムは舞台脇でリュートを爪弾き、一同は広げられた『秋の頌歌』の楽譜を前に、其々の楽を踊を合わせゆく。元が『誰でも気軽に楽しめる事』を信条に作られた優しい曲だけあって、技巧に凝った節回しや難解な早弾き等もなく要領も得易い。一同の奏でる音を繰り返し聞けば、読譜が叶わぬシュラーフェンも程なく主旋律を覚えられた。
 シユウは借りる手筈を付けたピアノを村人達と運び、レーニッシュは村人が集まり来る広場を見渡す。その片隅に縛されたまま観客席に正座をさせられている賊へ向け、聞けよかしと咳払いをして説く。
「全ての逢瀬に意義があり、巡る時を越え人は逢うべき者と出逢う」
 無論頭の悪い賊達にその詩的な表現は理解出来なかったが、『今日の時が良き出逢いとなる様に』と言い直され、漸く成程と頷いた。正座した足が痺れてか、大分素直な反応だった。
「この季節……この時この場所でこそ、最も美しく奏でられる曲にしましょう」
 村人のざわめきを耳に、ルゥライラは目を伏せる。
「物語性のある旋律だし、ね。大事に歌わせて貰うよ」
 ユングヴェは立ち上がり、舞台の上へと歩み始めた。

 ♪ 巡る季節を幾度越え ♪
 シユウは繊細な指先を白鍵の上に柔らかく滑らせた。静かな短調で前奏が奏でられる。寂しげな余韻の後にマロンクリームのアカペラが響くと、幼げな少年の声の高さと愛らしい和装の奏者に、観客から拍手が起こった。
 ♪ けれど忘れじの色 ♪
 ♪ 変わらぬ紅は今も褪せず ♪
 ルゥライラとシュラーフェンが、より高いハーモニーを添える。ジョーカーの手元には、悪魔と名付く蛇を模した手風琴。片やユーニスは楽園と名付く林檎を模した手風琴を手に、セィムのリュートに合わせて囁く声で和音を重ねた。
 ♪ 風鳴りに まぼろしの声重ね 抱く ♪

 葉擦れを思わせる物悲しげな高音のコーラスに、ユングヴェの力強い声が中音の伸びやかな艶を与える。
 ♪ 高鳴りに 胸は叫び始める ♪
 胸元に手を当て、一方の腕は観客席に延べ――芝居気に満ちた歌劇風の歌姿に中性的な容貌も相まって、一部の若い村娘達は『あんな格好良い人が男の訳ない』等と、多少屈折した乙女心と共に黄色い声援を送る。
 その声が一頻り止むと、レーニッシュが出でる。カスタネットを高く掲げ、自信満々に打ち鳴らすその姿は村人に大いに受け、たちまち飴やら花やらが『お捻り』として投げ込まれた。
 勢いに乗せ、曲もそのまま長調に転じる。同時に心に溜めた想いを一息に開放するかの如く、ルゥライラの身体が地から跳躍する。しなやかな舞踏に俄か強まる歓声と手拍子に乗せ、彼女は再び跳ねる。
 ♪ 旅路の果て やがて 辿り着く ♪
 音を外すまいと僅かに肩を強張らせるシュラーフェンの手を取って掲げれば緊張も解れ、天使の少女は二人晴れやかな笑みを浮かべ、エイセルの人々に願う。
 この一時を楽しんでくれます様に、と。

 ♪ 懐かしい場所 暖かな手の平 ♪
 故郷も帰るべき場所も、等しく掛け替えのない宝――思いを込め、ユーニスは歌う。広場に満ちる躍動のまま、シユウのピアノが軽快なアレンジに弾んで身体を揺らせば、ジョーカーも口笛を一つ吹いて歌唱に加わった。その様も中々に『男前』で、ユングヴェを応援し続けていた一派と声援を二分し始める。
 ♪ 独り寒さに擦り切れた冬さえ 愛しい程 ♪
 マロンクリームが歌いながら手を叩き、観客達にも手拍子を促す。ユングヴェは悪戯心を示し、歌ってみてはどうかと手振りでレーニッシュに示すが、彼は指先でそれをいなし、やはりカスタネットを鳴らしつつ白い歯を輝かせ続けていた。
 やがて鳴り響く手拍子と声援の中、秋の頌歌は最高潮を迎える。盗賊達も、身動きこそは出来ないが、圧倒されて唯々舞台の上の出来事に見入っていた。
 ♪ 暖かな追憶に 変わる日は―― ♪
 全ての歌い手が声を重ねて歌い上げると、演じ手は末音に余韻を含ませて長く伸ばす。
 束の間の静けさの後、セィムの弦が二つ音を連ねた。

 ♪ 旅路の果て やがて 辿り着く ♪

 そして全ての声と音が揃い、奏でられる最後の旋律。
 鳴り止まぬ拍手と歓声に溢れる、エイセルの秋。西へと傾き往く陽に琥珀の彩りを添えられて、幾年を寂し赤錆に落ち続けた紅葉の色々も、活きる熱を帯びた紅に映えていた。


マスター:神坂晶 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/10/03
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