≪銀の女王アラハース≫蜘蛛の道 紫の眷属



<オープニング>


 カラフルな森の外周調査で得たものを霊査したアムネリアが見たものは、アラハースの紫の眷属の姿だった。
(「さて……このままぶつかっても問題は無いと思うが……」)
 眷属の中でも最弱の部類に入るだろうこの紫の眷属だが、得体の知れないものを相手にするのに若干の不安が残るのもまた事実だ。
 さりとて、ぶつかって見なければ解らない事もまた多い……如何するか?
 暫く考えた後、アムネリアはふっと笑う。
 自分一人で考える必要も無い。そう、悩んだら意見を求めれば良い。その為の護衛士団なのだから。
 アムネリアは護衛士達を集めると、大雑把な現状とこれから取れる選択肢を説明する。
「次の手を決めようかと思うので、各自最善だと思う所に投票してくれ」
 そして、何をしたいのかと言う意思と意見を募った。

 結果は……調査を先に行おうと言う意見も出たが、戦って見て相手の情報を得ようと言う意見が多数を占めた。
「ふむ、それでは紫の眷属を倒しに行ってもらおう」
 護衛士たちの結論は紫の眷属を倒す……その選択に満足そうに頷くと、アムネリアは紫の眷属について得た情報を説明する。
「眷属の姿はでっかい蜘蛛の形をしている……当然、能力も蜘蛛と良く似ているぞ。まず、口から糸を吐く、この糸は粘着性が高く受けてしまうと身動きが取れなくなってしまう。更に、この糸には毒が含まれていると思っておいた方が良いだろうな」
 手に紫色の鰐から入手した牙を持ち、予測できるよな? と護衛士達を見回す。
「後は長い足を利用した薙ぎ払いや噛み付きなどの攻撃もしてくる……でだ、一番問題なのがこの蜘蛛の居る場所だ」
 一呼吸置いて、アムネリアは続ける。
「この蜘蛛は巣からは出て来ない、よって必然的に此方から突っ込むしかないのだが……糸が体に絡みつく巣の中でまともに動くには糸を振り切れるだけの腕力が必要だろうし、何時襲ってくるか解らないからちゃんと警戒して置かないと危ないだろうな」
 振り切れなければ糸から逃れる為に無用な時間を使うこともありえると彼女は言う。
「それじゃ、気をつけて行って来て……あんまり無理はしないようにな?」
 相手には未知数な部分も多い……少し心配そうな顔で、アムネリアは護衛士達を見送るのだった。

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参加者
そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)
炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)
デタラメフォーチュンテラー・メルフィ(a13979)
番紅花の葬送姫・ファムト(a16709)
暴れノソリン・タニア(a19371)
愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)
エルフの主婦・セレア(a33556)
天蒼の探索者・ユミル(a35959)


<リプレイ>

●毒色の糸
 細い糸が折り重なり、昼間の空が紫色の膜に包まれ、薄暗い世界を作り出している。
 森の奥へと続く蜘蛛糸の道は、その先に在るものを隠すように……或いは護るように最果て無く続いているかのようだ。
 その糸の中を、円陣を組むように冒険者達は進んでいた。

「眷族を退治して、ワイルドファイアを平和に一歩近づけるなぁ〜ん!」
 ブンブンとワイルド・インパクト・ボーンを力任せに振り回し、紫の蜘蛛糸を引き千切りまくりながら、炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)は進む。ちなみにリュリュはやる気満々で無駄な動きをしている訳ではなく、退路を確保する為に糸を切っているのだ。
「ここは重要な局面ですので……頑張らないとですぅ!」
 リュリュとは逆側の位置を取る、愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)もまた頑張る! のポーズでやる気満々だ……その様子にそこはかとなく不安を覚えるのは気のせいだろう。気のせいだと思いたい。
「今回の討伐で今後に役立つ情報が手に入ればいいんですけど」
 森の一番外に居るとは言えアラハースの眷属の一体である。それなりの情報が得られればよいのだが……少し微妙な笑顔でアリスを見つめつつ、天蒼の探索者・ユミル(a35959)は思う。
「敵の脅威は未知数じゃ。慎重かつ拙速で撃破したいのぅ……むぅ」
 蜘蛛糸などまるで何も無いかのように進むリュリュやアリスと違い、番紅花の姫巫女・ファムト(a16709)は偶に蜘蛛糸に絡まれる。油を塗って蜘蛛糸が絡まないように工夫をしていたが、それも効果が無かった。
 前を進むユミルや、そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)が糸を切り払ってくれているので進行に支障をきたす事は無いのだが。
「蜘蛛はチョコレートの味がするらしいなぁ〜ん。本当なぁ〜ん?」
 情報? と後方で首を傾げ、暴れノソリン・タニア(a19371)はそんな事を言う。確かにそんなフォークロアはあったりもするが、事実は不明である。
「糸に触れないで通るのは無理そうなぁ〜ん」
 糸に触れると眷属に気付かれるから触らないようにしようと思っていたタニアだが、どう考えても無理なくらいに張り巡らされた糸を前に諦めるしかなかった。
「眷族退治。アラハース退治の大きな一歩なぁ〜ん!」
「気を引き締めていきましょう」
 なぁ〜ん! と気合いの入った拳を突き上げる、どこでもヒトノソリン・メルフィ(a13979)にカヅチが相槌を打っている。
「毒々しい色なぁ〜んね……うちの団長の髪の色も……紫なぁ〜ん……」
「紫は毒ですか」
 そして紫色の糸を見て、ふと紫色な猫尻尾霊査士を思い出し慌てて口を噤むメルフィに、紫猫尻尾を思い出したカヅチは、再び相槌を打ったものである。

 そんな事をしている場合でも無いかと、見えない太陽を求めるように上方移した視線の端に何かが映り……、
「さて……お出でになったようです」
 グルリと上下を反転させて向けた八つの赤い円に冒険者達は各々の武器を握り直した。

●襲撃
 ブツン! と支えていたものが切れたように、紫の眷属は落下し……その途中で紫の糸を辺りに撒き散らす!
「な、なぁ〜ん!?」
 紫の糸に絡み取られたリュリュ、メルフィとファムトを余所に、アリスは巧みな脚捌きでさっと横に避け蜘蛛糸をやり過ごし、緑風のエルフ・セレア(a33556)は後ろに避けてred falconと名付けたチャクラムを構えると、先端に炎の付いた矢を乗せ……未だに空中に居る紫の眷属の着地点に向けて放つ!
 ズドン! と紫の眷属が地面に落ちる音と爆発の音が重なり辺りを揺らす……爆発で蜘蛛糸の拘束から逃れられれば恩の字だと考えていたが、
「やっぱり駄目か」
 手元に戻ったチャクラムを回収しながら、爛々と輝く赤い瞳を自分に向ける紫の眷属に吐き捨てるように言った。
「……いきなりですね」
 アトミックガードを薙ぎ払い絡み付いていた糸を振りほどくと、ユミルは心地良い風を呼び出す。
「取り合えず、一体だけですか」
 ユミルの風によって自由になった手に持つ大降りの曲刀に新たな外装を追加し、カヅチは回りを確認する……複数の眷属が存在する事も考えていた一行だったが、どうやら紫の眷属は一体だけのようだ。
「すまぬのう、助かったのじゃ」
 ユミルに一言礼を述べると、ファムトは清らかな祈りを捧げ未だに動けないで居た仲間達を回復させ、何とか身動きの取れるようになったリュリュは怪獣の骨から削りだしたと言う棍棒に外装を追加する。
「ほわいとすねーくかもんなぁーん!」
 やる気を削ぐような勢いでもって叫ぶと、メルフィは小さな白ノソリン型の可愛い角笛を吹く……と、これまたやる気を削がれるようなホノボノした音が鳴り響く。
 だが、そこから放たれた異形の悪魔のような頭部を持つ黒い炎は確実な威力を持って紫の眷属の顔を焼く!
 頭部を仰け反らせ、ギシ! と嫌な音を立てて鳴く紫の眷属の頭の下に踏み込みタニアは力任せに拳を突き上げる! だが、鉄板を叩いたような衝撃が拳に走り手応えは薄かった。
 懐に飛び込んできたタニアに赤い眼を向けると、紫の眷属は巨大な丸太のような前足を大きく斜めに振り上げ……慌ててバックステップを踏んだタニアごと前衛に立っていたカヅチ達を薙ぎ払う!
 衝撃を受け止める為に構えた盾もろとも吹き飛ばされそうになる程の衝撃を何とか堪え、カヅチは派手に吹き飛ばされ地を転がるタニアに手を貸すと、ファムトが放つ七色の光が彼らの傷を癒した。

●眷属
 ユミルとセレアがそれぞれ後衛と前衛の鎧の形状を大きく変化させ、その防御力を大きく向上させる。
 眷属が放つ紫の糸は、ファムトの祈りが相殺し、ファムトが動けない時にはメルフィの歌とユミルの風で補助して上手く連繋を取る。
「一息に畳み掛けるなぁ〜ん!」
 と息巻いていたリュリュや短期決戦を目指していたメンバーと防御を固めることに全力を尽くしていた仲間の意思の疎通に問題があったように見えたが、この場では然したる問題にもならなかったようだ。
 万全の回復体制を整え、全てのメンバーの鎧の形状を変化させる頃には戦局は決定的になっていた。

 ギィ! と軋む牙を大きく開き襲い掛かってくる眷属を、アリスは鮮やかなバックステップで回避し、
「銀の女王への足がかりの為に……倒させていただきます!」
 細く赤い弧を描くように真紅色の鋼糸を素早く振い衝撃波を作り出す! 放たれた衝撃波は眷属の頭に吸い込まれるように消え……次の瞬間スパン! とその顔面に亀裂を走らせた。
 赤い瞳の幾つかが光を失い……悶え苦しむように眷属は暴れまわる。
 暴れる眷属から距離を取る前衛を援護するように放たれたセレアのチャクラムが光の軌跡を描いて眷属の腹を切り裂く!
「そろそろ終わりにしましょう」
 眷属の脚を盾で防ぎ、ユミルは強力な護りの天使を頭上に召喚し、その力をエッテタンゲに上乗せして眷属の脚に叩き付けた!
「この程度で妾達を倒そうなどと片腹痛いわ!」
 言い放ち術扇から衝撃波を放つファムトと併せるように、カヅチは無造作に眷属の間合いに踏み込み、その胸を下から震小月像で切り裂く!
「紫の眷属! 覚悟するなぁ〜んよっ!」
「もう一回! ほわいとすねーくかもんなぁーん!」
 衝撃に耐えかね、ガクン……と脚を折った眷属の頭部に、リュリュは棍棒を大上段に構えると闘気を極限まで凝縮した一撃を叩き付け、メルフィの魔楽器から放たれた悪魔の頭部を持つ黒い炎と交わり大きな爆発を引き起こす!
 その威力に頭部の原形は既に解らないほどに破壊された眷属だが……それでも震える脚で立ち上がろうとし、僅かに一つだけ残った赤い瞳でセレア達を睨みつける。ここを通す訳にはいかぬのだと、倒れる訳にはいかぬのだと……そんな決意を持った眼……或いは、何かを待つものの眼……だが、
「もう、倒れるなぁ〜ん」
 震える眷属の正面に立ちタニアは拳を構えると、その拳から衝撃波を拳から放って――
 全ての瞳の光を失った眷属は静かに崩れ落ちた。

●現れるもの
「これで最弱ですか」
 はぅっと息をつくとカヅチは首を傾げる……霊査士の言う通り、確かに丁度良い相手ではあったように思えのだが……何かが引っ掛かる。
「この繭どうなってるなぁ〜ん? 割ってみるなぁ〜ん」
 そんなカヅチにはお構いなしに、リュリュは、えい! とそこらへんにあった紫の繭を割ってみた!
「なぁ〜ん!? ど、どろどろででろでろでぐちゃぐちゃなぁ〜ん!?」
 案の定、色々見ない方が良い物体がつまっていたらしい、リュリュはドロドロのグチャグチャになっていた。
「ねばねばを早く取りたいなぁーん……」
 リュリュが被った精神的ダメージが大きい物体から視線をそらし、髪の毛や耳に絡みついた蜘蛛糸をパタパタと払いながらメルフィが主張する。
「……まぁ、あちらの回収が終ったら早く帰りましょう」
 泣いてるリュリュとメルフィをボーっと見つめ、カヅチは紫の眷属から霊査の材料を拾っている仲間達へ視線を移した。

「手軽に持ち帰れる物が良いと思うですぅ」
 巨大な紫の眷属の骸を前に、アリスが主張する。
「牙とかどうなぁ〜ん」
 牙というタニアの意見に、ユミルも賛同するが、牙だけでも一抱えもあるのだ、あんまり手軽とは言えない。
「ならば、これが良いと思うのじゃ」
 と、ファムトが指差したのは人の頭ほどの丸く黒いもの……形状からして飛び散った蜘蛛の眼のようだ。
 材料に使えるのならば何でも良い、四人は頷くとそれを回収した。

「さて、帰るわよ」
 セレアが、回収から戻って来たユミル達に声をかけると、不意にズン! と辺りに衝撃が走る。
「……え?」
 何事か……? 視線を音の方に向けると――
「……緑の蜘蛛」
 倒れた紫の眷属を挟むように、二体の緑色の蜘蛛怪獣がそこに居た。そして二体の蜘蛛は今、当に冒険者達に飛びかかろうと言う体制だ!
「え〜っと……逃げましょう」
 今の状態での連戦は難しいだろう。冒険者達は素早く逃げを決めると、全力で走り出す……。

 ――紫の幕の向こうに光が見える。
 長い、長い洞窟を抜けた後のように、外の空気は光に満ちて温かさが溢れていた。


【END】


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参加者:8人
作成日:2006/10/02
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