≪南の翼ウィアトルノ≫緑林の護り



<オープニング>



「え? また大きい様に会いに行くの?」
 次回の業務を話していた時の事だ。ミニュイは集まった護衛士達に瞬いた。
「マティちゃん達の事、ちゃんとお話したいから……」
 プーカの同盟入りがどうこう、というよりは、ボクが話したいのは寧ろそっちかなぁ。銀槍のお気楽娘・シルファ(a00251) の言葉に、隅っこでこちらを窺っていたオプレイがすざざざ、と後ずさった。
「──やだからな!」
「レイ?」
 マティエが驚いて首を傾げる。
「ぜぇーーーーーーーーーーーったいに、まだ帰らないからな!」
 大声で叫んで、オプレイは裏口から駈けだして行ってしまった。残された白翼の騎士・レミル(a19960)達は呆気に取られて背を見守っただけである。
「待ちなサーイ!」
「あっかんべー!!」
 ロロテアが小さな手を振り上げて、オプレイの後を追いかけて行く。
「………えっと……」
「……いいんです」
 困った様子のミニュイにマティエはどこか弱々しく笑ってみせた。
「ここが好きだから、きっとおなかがすいたら帰ってくるです」
「そ、そうね」
 気を取り直して〜、とミニュイは前を向く。
「じゃ、洞を抜けて挨拶出来たら帰って来てね。大きい様に宜しく」
「一応報告はきちんとしておきたいしな」
 流星の元に光りし海王星・ラージス(a17381) の言葉に皆が頷くと、旅立つ者は準備を始めるのだった。

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参加者
銀槍のお気楽娘・シルファ(a00251)
灰眠虎・ロアン(a03190)
魔戒の疾風・ワスプ(a08884)
宵闇月虹・シス(a10844)
彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)
きらきら星の夢物語・サガ(a16027)
白翼の騎士・レミル(a19960)
岩鉄の刃・エリアン(a28689)
隠れ家ヘよーこその看板盗んだ・フォッグ(a33901)
世界を刻む者・クレスタ(a36169)
哉生明・シャオリィ(a39596)
倖せ空色・ハーシェル(a52972)


<リプレイ>


 出口に溢れる白い光で、青い苔の光が霞んで見える。危ないだろうなあ、と長身の放浪者・クレスタ(a36169)の動向を見守っていた追撃者・フォッグ(a33901)は、ご──、と小気味良い音が洞窟に響いた後で、そっと手を上げた。
「そこ、危ないぞ?」
「は、はい……」
 大丈夫ですか? と駆け寄ったマティエに、大丈夫です、とクレスタは笑ってみせた。

 トンネルを抜ければ森まではあと少し。哉生明・シャオリィ(a39596)は緑の野へ飛び出そうとするロロテアの手を引いて、宵闇月虹・シス(a10844)はどこか拗ねた様子のオプレイの動向に気をつけて、歩いていた。
 狭い道を抜けた開放感からか、魔戒の疾風・ワスプ(a08884)が両腕をぐっと伸ばす。
「さて、何か有益な情報が得られると良いんだけど」
「大きい様にお会いするのも久しぶりになりますね」
 そう言って、シスは頷いた。
 一方、その後ろ。こちらは満面の笑顔の夜明けの星・サガ(a16027)が歩いている。
「大きい様おおきいさまーっ 前の時会えなかったから……お会いできるのとっても楽しみなぁ〜ん♪」
「大きい様にお会いするのはじめてですなぁ〜んっ! すっごく楽しみですなぁ〜ん……♪」
 プリンは(傷むので)道中食べてしまったけれど、倖せ空色・ハーシェル(a52972)も大きく腕を振り乍ら歩く。そんな二人の様子に微笑みながら、クレスタは頷いた。
「今回はゆっくりとプーカ領を散策できたらいいですね」
「大きい様、ボクの事、覚えてくださってるかなあ?」
 銀槍のお気楽娘・シルファ(a00251)が首を傾げ乍ら呟くと、大丈夫ですよ、と白翼の騎士・レミル(a19960)が笑った。
「ここへ来るのは二度目ですね……折角ですし大きい様に色々聞いてみたいです」

 真っ直ぐ歩くマティエとは違って、オプレイの歩調はどこか落ち着かない。
 ととと、と駆け寄って灰眠虎・ロアン(a03190)はオプレイが頭から伸ばした尻尾髪をそっと掴んで「大きい様は恐くても大好きだよな?」と尋ねた。
 ロアンの言葉に、むむむむー、と不服そうな顔がゆっくりと下げられる。その様子に満足したのか、ロアンはにっこりと笑った。
「大切な人を心配させちゃダメだぞっ」
「分かってるよっ!」
 ぴょい、とロアンの手を振りほどくと、オプレイはシャオリィと一緒に歩くロロテアの位置迄駆け出してしまった。

 やがて平原の向こうに並んでいた緑の森が段々迫ってくる。
「俺には初の護衛士依頼だから、シッカリ成功させ……って、明確な目的は無しか」
 初めての護衛士の仕事は挨拶──こういう依頼は意外と落ち着かねぇもんだな、と続けた朽ち果てた刃・エリアン(a28689)に、全方位猟兵・ザルフィン(a12274)が笑う。
「俺もここの聖域にこういう形で行くのは初めてだな、興味深い。異種族の聖域に行けるってことはこっちが平和な証拠なんだろうが」
 プーカの森。
 ザルフィンが伸ばされた枝を、さ、と片手で軽く弾くと、木漏れ日が落ちて来た。


「プーカさんの聖域ってこんな感じなんですね、なぁん」
 ハーシェルはキョロキョロと辺りを見上げる。プーカの森の奥深くに、聖域は位置していた。今回は、途中ドングリや何かが降って来たくらいで、大きな悪戯は受けずに済んだ。ちょっとは顔が知られたようである。
「武器を預かってもらっても構わないか?」
 話し合いに武器は必要無いってね──ワスプは言うと、聖域の外で待つというマティエへと外したアームブレイドを預けた。シスやハーシェル達も皆、武器を外す。
「使う予定ないですし礼儀かなと思うです、なぁん」
「いざとなりゃウェポン・オーバーロードで呼び寄せりゃ良いんだし」
 ……だから間違っても固定するなよ? エリアンが何所かわくわくして見えるロロテアに言葉を添えるとクレスタが笑う。
「粗相の無い様、礼儀正しく参りましょう」

 大きい様が待つのはプーカの森よりもずっとずっと深い森の中。マティエの言葉と記憶を辿って前を進むシスの前に、やがて毛皮の巨体が現れた。
「わー、おっきいですなぁ〜ん、感激ですなぁ〜ん……」
 ぱたぱたとハーシェルが尻尾を揺らす中、ロアンが護衛士を代表して、ランドアースのお土産や果物を大きい様の前に置いた。大きい様はゆっくりと目を細めると、フォッグ達へと顔を向けた。
「はじめまして大きい様ー! ボクはサガっていいますなぁ〜ん。お会いできてとっても嬉しいですなぁ〜ん」
 サガと一緒に皆がまず挨拶をする。大きい様はゆったりと頷くと口を開いた。
「良く来たな。今日はどういう用だ?」
 尋ねられ、ワスプが先ず先の大大怪獣に関しての情報提供、それから助力を感謝する旨を告げる。クレスタも運動会が無事に済んだ事と、彼らの協力に礼を言った。
「御苦労だった」と告げた大きい様に、サガが首を傾げる。
「でも大大怪獣さんってどうして起きちゃったのかなー……たまには賑やかに遊びたかったのかなぁ〜ん? 大きい様は知ってるなぁ〜ん?」
「うむ。恐らく──ワイルドファイアに住む者の心が、穏やかでおおらかでは無くなったという事なのだろう。ワイルドファイアに住む者は、ワイルドファイアの心に沿わなくてはならない」
 なぁ〜ん? サガは何故穏やかでなくなったのかを考えようとしてもう一度、首を傾げた。
「その後、大怪獣ワイルドファイアがどうなったのだろうか?」
 何か大陸やその他に影響が出ているのかどうか。シャオリィは鎮まった後の大大怪獣について、疑問を投げる。
「そなたらの働きで大怪獣も眠りにつこうとしているようだ」
 大きい様は頷き、影響についてはまだ良く分からない、と続けた。大きい様の言葉に、今は大地のまんなかで微睡んでいる大大怪獣を想像して、レミルが微笑む隣、心配そうにハーシェルが尋ねた。
「いつかまた目が覚めるとかありそうですかなぁ〜ん??」
「それは、大大怪獣の心次第。いや、ワイルドファイアに住む人々の心がけ次第だな」
 心がけ。その言葉を心の中で繰り返し、レミルは頷いた。
「そうですか……ですが、実は、大大怪獣が再び眠りについた事で7体の大怪獣が独自に動き出してしまったのです」
「──大怪獣?」
 大きい様の声はあくまでも静かだった。レミルは大怪獣の一体である銀の女王アラハースやその討伐部隊について、簡単に説明を始めた。
「何か、大きい様の方でご存知の事があれば、是非教えて頂きたいのですが」
「所在や言い伝えや姿等、お聞かせ願いたく思います」
 レミルとクレスタがそう続けると、大きい様は目を閉じた。

 それほど長い時間ではなかったが、大きい様のひげがぴくぴくと動き、再び目を開く迄、護衛士達は黙って待っていた。
「──それは知らない事だ」
 大きい様が声を出すと、シャオリィは驚いた。大きい様にも知らない事があるのだ。
「口伝に何かあるのかもしれないがな。──大大怪獣ワイルドファイアを大いなる眠りに導いたお前達ならば、大丈夫だろう」
 大きい様の言葉に、くでん? とフォッグが首を傾げる。
「口伝で伝わる物があるのだ」
 大きい様の言葉に、あっ、とロアンは顔を上げた。
「それってプーカに伝わる伝承?」
 それならば、ロアンの知りたかったものである。
「口伝は、長く美しい歌になっているが、その歌が何を意味しているかは、ほとんど判っていない」
 だから、お前達の助けにはならないだろう。大きい様はそう告げて少し考える。
「また、歌を全て歌いきるには数年掛かるだろう。だがもし、お前達の中でプーカの口伝を学びたい物がおれば、何十年か、この聖域で修業するのを許可しても良いだろう」
「え?」
 何十年? と聞き返しそうになって、ワスプは両手で口を抑えた。大きい様は冗談を言うようなひとではない。きっと、本当に何十年修行しなければならないのだろう。一先ず、帰ってから考える、と答えておく事にする。
「そいえば……広場のとこにグレスターの槍、あったなぁ〜ん」
 サガが口を開いた。
「あれは何だったのかなぁ〜ん? いつからあるのかーとか何であるのかーとか何に使うのかーとかとか……」
「ふむ。あれはこの森が、この場所に作られた理由だと伝えられているが、詳しいことは判らない」
 大きい様は首を振った。

「そういえば、ランドアースにもプーカが居て、今度同盟に加わったんだが……」
 ザルフィンが続けると、大きい様は目を開く。
「ふむ、そうか」
「聖獣達も無事だったみたいだし……教えて貰うばかりじゃなく、大きい様が知りたいと思う事はお話するよ」
 ロアンが言うと、大きい様は「それは、よく考えてみなければな」と、ゆっくり頷いた。
「さて、他に話はあるか?」
「──……『神』に関する事を何か知らねぇか?」
 声を上げたのはエリアンだった。先のトロウルとの戦いで、神話が果たして現実なのかどうなのか。聖獣ならば知っているかもと、思ったのだ。
「神は我々にグリモアを残し去っていった。それが神だ。」
 大きい様はきっぱりとそう告げた。レミルが顔を上げる。
「リザードマンの国で崇められている水神様や、はるか古代の存在に関する伝承などは……」
「伝承は全て歌の中だな。……水神についてはさて、聞いた事はないが」
 口伝の歌。ザルフィンが知りたかった神の時代の伝承も歌の中にあるのかもしれない。そこまで考えて、ふと口を開く。
「今、ウィアトルノで調査してる遺跡に関しては何か知らないだろうか?」
 山岳の南、大陸の中央に位置する砂中の遺跡の事を話すザルフィンに、大きい様は微かに額に皺を寄せた。
「中央は──大大怪獣が目覚めた時に全てが破壊尽くされた場所と聞いている。遺跡が残っているとは驚きだが……」
 大きい様はそこまで話すと目を閉じた。

「俺たちの来た方向の反対側──ここから北はどんな地域なのだろうか?」
 フォッグが尋ねると、シスも頷いた。
「危険がある等、気をつけた方がよい土地・生物についてありましたら、お教え願えますでしょうか…?」
「それが、お前達の目的ではないのか?」
 大きい様はゆっくりと首を回す。
「言う事は何も無い。自分たちの目で確かめて来るが良い。己の足でその地を踏んでこそのものだろう?」
 それに、1000年もたてば地形も変わる。私達の知識は役に立たないだろう。大きい様はそう続けると、大きな瞳で護衛士達を見渡した。
「まだ、何かあるか?」
「あっ──と、ディルのお父さん……シハーブの手がかり、話や何か残した物が無いかな?」
「シハーブがここを発つ時、何処を目指しているとか言わなかったか?」
 ロアンの言葉を、ワスプが補う。大きい様が微かに頷くのが分かった。
「彼か。彼はここでずっと口伝を学んでいたが──」
 非常に熱心にな、と付け加えると大きい様は後を続ける。
「ある日突然北へ旅立った。真実を確かめると言っていたが、おそらく10年もしないうちに、この地に戻ってくるだろう。恐らくここで待っていれば会えるだろう」
 ワスプはロアンと顔を見合わせた。彼は口伝を学んで、何を確かめに北へ向かったのだろう。残念乍ら、遺されていた手掛りはそれだけだった。
「さて……最後はプーカ三人の同行許可かな?」
 ザルフィンが言うと、ワスプの隣、シルファが大きく頷き、前へ出た。
「ブーカの皆、今居る3人の事なんだけど……ボクたちがちゃんと守るから。一緒に冒険を続けてもいいかなぁ?」
 ……そんな立派な事言っても、ボクはそんなに強くないけど、ウィアトルノの皆は頼りになるし──シルファが真摯に続けるとワスプも頷く。
「あの3人の事、大人しくプーカの森に戻るとも思えないし、誰の目も届かない所に行かれるよりは、俺達が一緒に居て面倒見てた方が安心出来るんじゃないか?」
 レミルやクレスタも後押ししてくれた。
「冒険を求める心は誰にも束縛出来ないもの…あの子達のためを想うなら、私達との同行を許してやってはいただけないでしょうか?」
「彼等は勇者と呼ばれる程必死であの聖域を守っていたそうですね? そんな彼等が故郷の森を忘れるとは思えないのです」
 私も、故郷であるホワイトガーデンを忘れた事は一日たりともありません……故郷とは…そう言う物だと思います。レミルの言葉に大きい様は頷いた。
「──3人が望むのならば良いだろう。この難事をなしとげた子らならば、外の危険の中でも生き抜き楽しむ事ができるだろうからな」
 大きい様の言葉に、顔を上げたはシルファは、早く、聖域の外で待っているオプレイ達へ聞かせてやりたかった。
「俺もあの3人は気に入ってるしな……なんか棘の道を選択した様な気がしなくもないが」
 ワスプの言葉に、フォッグは笑ってみせた。

「情報と深い智慧に感謝致します」
 シスが面会の礼を告げると、皆が後に倣う。旅を続ければ、またきっと訪れる事になるだろう。シルファが感謝を込めて頭を下げたとなりで、何やらもじもじしていたサガが、大きく声を上げた。
「あ、あの、最後にひとつにお願いがー…っ」
 皆が一斉に振り返る。
「言ってみよ」
「も……もし、大きい様がいやじゃなかったら──…もふもふさせてほしいのなぁ〜ん!」
 その瞬間、ぴーんと張りつめた空気が広がった。
 どうなるか、とシャオリィ達が見つめる中、大きい様が顔を上げた。

「それは構わない」
 ぴしっと凍り付く空気。
 サガが思う存分もふもふする様子を、エリアン達はどこか羨ましそうに眺めていた。


「悪戯するんなら、お仕置きされる覚悟をしとけよ!」
 マティエ達と合流して歩く森の道。エリアンが笑顔でそう声を上げた。
「それでも悪戯をしたら、容赦無く耳をムニムニだな……つかプーカの耳って、どんな風に硬ぇんだ?」
 エリアンの疑問に、レミルが鹿の角みたいだそうですよ、とそっと告げる。
「まあ、悪戯も迷惑にならない程度でね」
 森へ向かい、シャオリィも呼びかける。
「わたしもイタズラされないように頑張りますなぁ〜ん」
 その後ろ、ぐっと真剣に拳を握ったハーシェルに暖かな笑いが起こった。
 クレスタが森を行く鳥に声をかけ、北に広がる草原の話を聞く隣、シスは、フォッグのこんぺいとうに集まったプーカ子達へ声をかけ、フォッグも一緒にこちらの踊りを習ってみたり。
 美味しい物を尋ねるシルファとハーシェルに、プーカ子達がおいでおいでをした。何やら木の実があるらしい。ザルフィンが一緒に歩き出すと腕をまくる。
「どれ、手伝うか」
「俺も。どんなのか興味あるしな」
 ワスプは言うとマティエ達を手招きした。サガはぽっけを確かめている。
「でも3人一緒で本当に良かったんだよぅ」
「許可が下りたら3人はもうオレ達の仲間だな♪ ずっとそうだったけど、正式にだ!」
 まだここはプーカの森だけど。拠点に帰っても、ずっと。
 シルファと、ロアンの声に頷いた3人の顔にはずっと大きな笑顔が浮かんでいた。


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参加者:12人
作成日:2006/10/23
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