虹色卵ゲット作戦



<オープニング>


 ワイルドサイクル平原にはまだまだ未知の場所がいっぱいだ。これから先、どれほどの人員でどれほどの時間をかければ全貌が把握できるやらさっぱりわからない。
 しかし地形や景観以上に皆が興味を寄せているものがあった。
「まさに他所とは一味違う、美味しいものがあるんだよ」
 ヒトの霊査士・キャロット(a90211)がニコニコ顔で言った。そう、食べ物である。このとてつもない動植物が生息する地には、想像を絶する食材が山のように眠っているのだと、いくらかの報告がすでにある。
「昨日に情報が入ったんだけど、虹色に輝く卵を産む怪鳥っていうのがいるんだ。その鳥はダチョウみたいに飛べないけどとても走るのが速くてね、キックはすごい威力を持っている。情報をくれたその冒険者は、怪鳥の抵抗にあって断念せざるをえなかったんだけど、皆ならきっとやれるよ」
 と、キャロットは地図を出して皆に指し示した。
「場所はこの草原。見晴らしがいいから、あっちもすぐに気づくだろうね。戦闘は避けられないよ」
 一個分けてくれと頼むのも無駄だろう。冒険者たちは戦いの決意を即座に固める。
「結構大きな卵だから、色々使い道があると思うよ。……そうだね、ワイルドサイクルの人たちはケーキとか知らないだろうから、振舞ったらきっと喜ばれると思うんだ」

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参加者
六風の・ソルトムーン(a00180)
しっぽ自慢の・リコ(a01735)
アフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)
虹兎・イーリス(a18922)
旅風・タチ(a22859)
月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)
龍殺し・ミュノア(a37080)
灰鱗の拳を握らず手を握る・デイト(a39069)
黒箱・ティターン(a39194)
奏光の白兎・リセルシア(a43963)
形無しの暗炎・サタナエル(a46088)
暁の武道家・カタルス(a57536)


<リプレイ>


 光る大空、光る大地。風がそよ吹けば秋花が揺れて、景色に可憐な動きを加える。ワイルドサイクル平原は今日もおおらかで平和だ。この地に初めて足を踏み入れる神曲術士・リセルシア(a43963)は、かつてない驚きと興奮を感じていた。
「こんなに広い平原があるなんて……」
 かように健康的で広大な大地で育つ卵がまずいわけはないと思うと、一同早くも小腹が空いてきてしまった。
「楽しみだな」
 灰鱗の拳を握らず手を握る・デイト(a39069)は落ち着いた表情は変えずとも内心ウキウキしている。爆裂能天気・ミュノア(a37080)もどうやって食べようかなぁ〜んと終始ニコニコ顔だ。
 目的の陸上疾走型怪鳥の巣は近い。自然と彼らの中から話し声が途絶えた。野生生物が嫌悪する金属的な音をなるべく立てないようにと、歩き方にも気を遣うようになる。六風の・ソルトムーン(a00180)などはわざわざ愛用の金属鎧とハルバードを止めて、今回は軽装である。他はアフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)のでっかいアフロが少々心配ではあった。
「む、いたぞ!」
 虹降る夜に祈る夢・イーリス(a18922)が遠眼鏡で見据えた先に、怪鳥はいた。都合よくあった岩の陰にとりあえず隠れる。
 草原にぽつねんと立つ樹木、その下で周囲を窺うように怪鳥は直立している。高さは話どおり5メートルほど。その3分の1を占める2本の脚は、さながら丸太のように長く太い。あれで蹴られたらひとたまりもなさそうだった。
 そして怪鳥の足元には――遠くからでもわかるほど不可思議に輝く卵があった。瞬間、皆の好奇心やら食欲やら興奮やらが一緒くたになって高まった。
 これより作戦発動。怪鳥を引きつける囮班、戦闘主体の足止め班、そしてもっとも重要な卵運搬班に分かれる。
「鳥は殺さないようにお願いできないでしょうか……」
 月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)が言うと、メンバーたちは首を縦に振る。同じ思いだった。卵が目的なのだから、必ずしも親の命を取る必要はない。
 怪鳥は相変わらずギョロついた目で周囲をチェックしている。生まれ出ようとする子を守る親はいかなる種であれ、こんな顔をするものだ――。


 まず向かったのは囮班。囮なのだから、必要以上にコソコソすることはない。正面から樹木へと歩んでいく。
「HAHAー。とにかく、ヤツを倒せばミーの優勝ってわけネー」
「冗談もほどほどに、ベンジャミンさん。私たちの目的は、あくまで時間を稼ぐことですからね」
 そう言いながら、黒箱・ティターン(a39194)がリセルシアに鎧聖降臨を施す。同様にイーリスも自身の鎧を強化した。
 ――怪鳥はすでに冒険者側に気づいている。威嚇するように高い鳴き声を発した。卵から離れるわけにはいかないのだから、この方法しかとれない。
 10メートルまで近づくと、ベンジャミンがどの野生生物にもない、独特かつスピーディーな動きを開始した。あまりの得体の知れなさに、さしもの怪鳥も冷や汗混じりにならざるを得なかった。
「Foo−! ソウルに響けよダンサフル!」
 炸裂(?)するフールダンス♪に、怪鳥は目を見開いた。なんなんだこれはと思っているうちにつられて踊ってしまう。
 続けてイーリスは黒炎覚醒でさらなる強化。そしてティターンは気合一閃スーパースポットライトを照射した。まばゆい光が怪鳥の網膜に入り込む。
 と、運良く踊りから解放された怪鳥は一直線にティターンに向かった。凄まじいダッシュ力にティターンは回避が遅れ、前蹴りで飛ばされた。鎧の上からでもジンジンと痛みが響いてくる。
 予想通り速い。まずは動きを止めなければと、リセルシアは素早く印を結んで緑の束縛を撃つ。吹きすさぶ木の葉に怪鳥は再び拘束された。
 これでいい。迂回して移動していた卵運搬班は、すでに卵に辿り着いている。作戦の第二段階、発動。
「大自然のなんと厳しきことよ」
 ソルトムーンは眉間に小皺を寄せ、怪鳥と卵の運命を少なからず哀れに思った。
「こうして生まれることなく食料にされるとは……なれどこれも自然の摂理……許せ」
「そっちは持ったか?」
 卵はデイトの持参したマントに包み、さらにロープで棒に固定し、上手く担ぎ上げられるようにした。これでそれなりのスピードが出せる。
「こっちは大丈夫だ。よし、撤収しよう!」
 神風童子・タチ(a22859)もリザードマンの武道家・カタルス(a57536)も頷き、戦場の反対方向へ移動を開始した。
 この時、怪鳥は卵を奪われたことに気づいた。顔を真っ赤にして怒り狂うが、飛び出てきた足止め班に邪魔されて追えないでいる。
「……私は戦いませんから」
 エルスは高らかな凱歌でキックを食らったメンバーを癒す。怪鳥はこの侵入者の不可思議な能力の数々に、次第に焦燥感が募ってきた。
 そしてさらなる猛襲は不思議っ子・サタナエル(a46088)の最強奥義である暗黒縛鎖。彼女の体から現れた黒い鎖が怪鳥をがんじがらめに縛る。きつねしっぽのれーさし・リコ(a01735)も粘り蜘蛛糸を容赦なく巻きつかせる。拘束に次ぐ拘束に、怪鳥は身だけでなく心も押しつぶされそうになった。
「これでだいじょぶなぁ〜ん」
 ミュノアは鎧聖降臨で衣服をスポーツウェア風に変形強化してから、卵班を追跡されないよう通せんぼする。
 卵班はすでに50メートル以上離れている。人ならば、もはや追いつけない距離だ。しかし――。
「キシャアアア!」
 怪鳥は動いた。運、あるいは執念で。
「なんと?」
 凱歌の効果で反動から解放されたサタナエルがスキュラフレイムを発射した。異形の炎は脚を焼く。リコは再び蜘蛛糸をかけようとするが、届かない。ミュノアのデストロイブレードは脚に命中し、血を降らせた。
 それでも怪鳥は自慢の脚力で足止め班を飛び越え、卵を追いかけてゆく。傷ついても人よりは数倍も速い。
 考えてみれば、拘束ではほとんど体力を奪えない。動く力があるうちは、怪鳥は決して諦めない。封じるのでは甘かったか――囮班も足止め班もにわかに後悔した。
「むっ、迫ってきたぞ。足止め班は突破されたか!」
 卵班、手鏡で後方確認していたソルトムーンが叫ぶ。鬼気迫る顔の怪鳥が、風のごとき速さで走ってくる。
 彼らは仕方なく卵を置き、迎撃体勢に入った。結局は傷つけるのか。歯軋りしながら腕に力をこめる。
 先手は怪鳥。鼓膜を刺すような鳴き声を発しながら、2本の脚でデイトとタチを同時に蹴り飛ばす。だがソルトムーンが努めて冷静に紅蓮の咆哮を放つと、怪鳥はまたしても止まった。
「ッキシアアァォオゥッッ!」
 血の混じった唾液を吐き出して、デイトが反撃の斬鉄蹴を胴体に見舞った。初めてまともに受けた打撃に、怪鳥はよろける。
「あんたに怨みはないが……今日の飯にありつくためだ、おとなしく強者の肉となってもらうぜ!」
 タチは邪な笑いを覗かせ、剣の切っ先をゆらゆらと揺らした。そして無造作に間合いへと踏み込む……!
「いっくぜ! 秘剣――瞬風の太刀!」
 刃が脚を苦もなく裂き、怪鳥は甲高い悲鳴をあげる。息も絶え絶えだ。
「これで……最後」
 カタルスが跳躍し、首に破鎧掌を叩き込んだ。怪鳥の目が白くなりかける。
 ようやく囮班、足止め班も駆けつけてきた。だがもうこれ以上は――そう思った時、怪鳥はよろよろと卵とは違う方向へ走ろうとする。
 ついに諦めたのだ。卵ばかりか命まで奪うこともない。冒険者たちはほっとして武器を収めた。


「わぁ〜、綺麗ですね〜」
「卵ゲットなのじゃ〜。綺麗な虹色なのじゃ〜」
 うっとりするリセルシアに、頬ずりしながら喜ぶイーリス。どんと真ん前に置かれた虹色卵は、まるで生きているかのように7つの色がゆらゆらと揺れ動いて、絶えず異なる輝きを放っている。まことに不思議、この世の神秘である。
 さて再び卵をマントで包み、数人がかりでえっちらおっちら運搬することに。来る途中に小さな集落を見かけたので、住民と共に卵料理を楽しもうと彼らは計画していた。これを機に親交が深められれば万々歳である。
 その集落に到着する。人々は目をパチクリさせながら、冒険者たちの抱える虹色卵に見入り、あるいは指差し、あるいは歓声を上げた。
 間もなく集落の長であろう老婆がやってくる。一部始終を説明すると、
「すごい、すごい」
 カタコトでそう言った。あの怪鳥の卵を取ってこられたとはなんという勇者か、と言いたいらしい。冒険者たちの頬が緩んだ。
 ひとまずはこの巨大卵の中身を入れる容器が必要だ。若い衆が集落で一番大きいという深鉢を持ってくる。卵のてっぺんを切り開いて傾けると、トロリと中身が流れ込んだ。さすがに虹色ということはなく、普通の黄身と白身だった。
「早く食べたいなぁ〜ん。何でもいいから誰か料理お願いなぁ〜ん」
 食事係(?)のミュノアはさっそく食器を持って堂々と座り込む。
「すっげーでかい目玉焼きができるな」
 と、タチ。しかしそれでは芸がないので、一歩進んで玉子焼きにしようと考える。
 中身はさらに白身と黄身とで別々の器に分けられてから、ようやく長棒を使ってせっせとかき混ぜられる。どろりどろり。これだけ大きいとずいぶん力仕事だ。ソルトムーンをはじめ、男性冒険者たちは代わる代わる作業に没頭する。
 両方とも完全に攪拌されると、料理をする者はそれぞれ欲しい分だけ小さめの容器に取った。サタナエルは白身も黄身も大量に取って、今回のメイン、ケーキにとりかかっている。デイト、ティターン、カタルスもサポートに加わっている。何しろこれだけの人数分を作らねばならないので、大量のスポンジが必要だ。

 ――30分後には様々な卵料理が出来上がってきた。ベンジャミンのダンスに夢中になっていた子供たちが、わいわいと騒がしくなる。
「アフロを触った手で食べてはいけませんよ、アフロが感染する恐れがありますから」
 さりげなくひどいことを言うティターンだった。
 皆、思い思いの品を食べ始める。エルスはイーリスとリセルシアの作ったオムレツをそれぞれ一口。
「……お、美味しい」
 ソースもケチャップもいらないくらい濃厚だが、口当たりが爽やか! 可哀想だなと思っていた彼女も、この味にはやられてしまった。タチの玉子焼きも大好評のようで、老人たちがホクホクしている。
 ケーキ用の生クリームもスタンバイOK。それを焼きあがったスポンジに塗り、住民に取ってきてもらったフルーツをトッピングする。
 そうして、小さな城のようなケーキが完成した。切り分けられたケーキは子供優先で渡していく。
「自分では上出来だと思うのじゃけど……どうじゃろう?」
 サタナエルが聞くと、誰もが笑顔になった。住民たちはもとより、冒険者たちもこんなケーキは味わったことがないと口を揃えた。特にスポンジはどこまでもやわらかく、まるで羽毛のようだ。なんと優しい味なのだと感嘆する。
 まさに命の味。ひとつの命を犠牲にしたのだから、美味しいのはなるほど当然かもしれない。そんなことを思った。
「まだ材料が余ってるな……では、わたしも作るとするか」
 皆、ケーキだけでは満足しないだろう。そう考えたデイトはドーナツを作ろうとふたたび腕をまくった。一方でリコは卵の殻をしげしげと眺めている。
「これはいい土産になりそうです」
 割れても虹色の輝きは失われていない。暗闇でも光るのだろうか? つくづく不思議な卵だった。
 ワイルドサイクル平原にはもっともっと不思議な食材があるのだろう。興味は尽きず、また冒険への欲求が高まっていった。


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作成日:2006/10/19
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