珍奇飲料市



<オープニング>


 珍奇飲料市。
 そういうイベントがある事をご存知だろうか?
 珍奇とつく以上、まともなもので無い事は想像がつくだろう。
 色々な場所から選りすぐりの珍奇な新作飲料が集まる市である事までは思いつくかもしれない。
 しかし。店によっては「店主の気まぐれ調合」なるカオスな飲料を扱う場所もある。
 肝心の味だが。
 とあるものは、コーヒーとは名ばかりの溶かしたキャンディのような甘さだったり。
 キャベツを煮込んで砂糖を加えたような味だったり。
 ともかく、まともな味は1つたりとてない。
 成年用のお酒のコーナーでも、それは同様だ。
 匂いだけで悪酔いしそうなものが所狭しと並んでいる。
 けれど、不思議な事に。この市に一度たりとて苦情が出たことはない。
 元々マイナーなイベントだということもあるだろう。
 しかし、何より大きいのは。
 世の中には、こういうものを喜ぶ人も結構いるという事だったりするのだ。
 そして、今日この日。とある村で今年の珍奇飲料市が始まろうとしていたのだった。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

●珍奇飲料市
 秋空の下、村で一番高い屋根の上に青銅像に扮した漢・アナボリック(a00210)がラットスプレッドをしている。
「まぁぁずぅぅいぃぃぞぉぉ!」
 マジカルキャビンアテンダント・ドラゴ(a02388)の絶叫が響く此処は、珍奇飲料市。
 世に集まる珍奇な飲料の2割くらいが集まると噂される市である。
「さあさあ、いらっしゃい! 特製の桃汁飲んでってくれよ!」
 無論、桃の汁ではなくて、桃色の汁である。
「まあ、本日のお薦めなのですか」
「おう、そうともよ! 味は……あー……いい感じだぜ!」
 大樹を守護せし戦乙女・モニカ(a37774)に薦める言葉を捜そうとして、すぐに諦める店主。
 恐らくは店主自身にも味が分からないのだろう。この市には、そういったものが多数ある。
 青さを重視して身体に悪そうなモノに仕上がってしまった体力が回復しそうなドリンクとか。
 コーヒーという名の溶かしたキャラメルみたいなドリンクとか。
「ミッドナーさ! やほー!」
 そういった店の1つで、赤い風・セナ(a07132)が夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)を呼んでいる。
「ここのコーヒー美味しいんよー? 激甘だけどねー?」
 屋台を見てみると、確かに人がそれなりに居る。
 鱗はお茶の味・オルフェ(a32786)も飲んでいるところを見ると、飲めない事は無いのだろう。
「まぁぁずぅぅいぃぃぞぉぉ!」
 そう叫んだ白髪にグラサンの誰かが他の客の皆さんに蹴られるが、とりあえず気にしない。
「アックスコーヒー……ですか」
 何故か戦闘執事・サキト(a38399)が製作を手伝っている辺り、どうもまともな気がしない。
「……どうですか? あれ」
 一緒に歩いていた光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)に話しかけると、プラチナは明らかに引いた感じを見せる。
「き、危険な匂いがするのじゃ……」
 確かに。物凄く甘い匂いがする。看板には「寝ぼけた頭を叩き割るスゴいヤツ。この味はまさに斧の一撃だ!」とか書いてある。
 普通に考えれば、それ程感動的な味ということなのだろうが。
「ふっふっふー、やはりアックスコーヒーは基本ですわよねー」
 何処で売っていたのか、天秤の淑女・アリシア(a38400)がカタログを持って現れる。
 サキトの姿を見て少し驚いたようではあるが、当のサキトは忙しすぎて気づいていない。
「ぷはー、やっぱりコレですわよねー!」
 満足そうなアリシアをミッドナーが指し示すと、プラチナは恐る恐る屋台に近づいていく。
「し、信じてるのじゃよ?」
「大丈夫ですよ。ねえ、セナさん」
「いや、本当に美味しいんよー?」
 2人に諭されて、コーヒーを口に含むプラチナ。
 後に語った所によると。甘さがバッドステータスになり得るとは思わなかったとか。
「……恐るべし、アックスコーヒーですね」
 うなされているプラチナをパタパタと仰いでいるとセナはアックスコーヒーを行商すべく、樽を担いで走っていく。
「ねえミッドナー。あからさまじゃなくてさ、そこはかとなく危険っぽいのってなんだろうね」
 夢色ロリポップ・セリア(a16819)の言葉に、ミッドナーは少し思案する。
 アリシアから借りたカタログを見ると、「見た目はまともっぽいもの」というコーナーとかがあるらしい。
「……これとかどうでしょうね」
 その1ページを指で指し示すと、セリアは満足そうに頷いて走っていく。
 近くの屋台で凄惨な殺人事件みたいな状況になっている紅炎の紋商術士・クィンクラウド(a04748)を見ながら、思う。
 この光景もまた、珍奇飲料市の名物なのだ。

●珍奇な光景
 ノソリンで土煙と埃を巻き上げて、愛餓手術男・ドクター(a04327)がやってくる。
「……飲物か。店主、麦茶を!」
 この屋台で言う麦茶とは、小麦で入れた麦茶であるが。
 一口飲んで、ドクターはクワッと表情を一変させる。
 ちなみに、此処でもクィンクラウドがビクンビクンと地面で痙攣していたりする。
「この麦茶を作ったのは誰だ! 出て来い!」
「そ、そりゃ俺ですが……」
 戸惑う店主に、ドクターは麦茶を投げつける。
「こんなものが麦茶と呼べるか! ええいっ! 貴様は破門だ! 帰るぞ! 中川!」
「え、拙者でござるか!?」
 その場で煎餅を齧っていた男の襟を引っ掴むと、ノソリンで走り去っていく。
「旨いと思うんだけどなあ……なあ、お客さん?」
「どうだろうのう。ところでおっちゃん、もっと和風なのはないかのう?」
 何故か今まで隠れていた真昼間のお天気雨・キスケ(a21848)の言葉に、店主は少し考えるような素振りを見せる。
「和風っちゅうか、醤油っちゅうか、煎餅っちゅうか。あ! 海苔とかゴマでもいいじゃよ〜」
「そういえばあった気もするなあ。待っとけ、今地図書いてやるから」
 そんな光景の後ろのほうでは、どろり濃厚ピーチ姫・ラピス(a00025)が笑顔でトレジャーハンター・アルカナ(a90042)を追いかけている。
「にゃははー、ついに「G」が完成したのじゃよー♪」
「Gって何なんだよう!」
「Gは何のGかは永遠の謎なのじゃー」
 何やら恐ろしく甘い匂いを放つそれをアルカナに飲ませたいらしいが。
 当のアルカナは身の危険を感じて逃げている。
 それをラピスが追いかける図は、ある種微笑ましい光景かもしれなかった。
「ふむ、良い物は高い金を出せば買えるが変な物は運がなければ巡り合えない。これが世の真理だ」
 剣振夢現・レイク(a00873)が、先程の桃汁を飲んでいる。
 確かに外見は綺麗なのだが、どうにも味がエグい。
 果物ジュースのような色と風味なのに、このエグさは何処から来るのだろうか?
 持っていた緑汁に目を落とす。
 これで連想できる人物も確か、この市にいたはずだが……。
「ア〜オジル〜♪ ア〜オジル♪ そこ行く皆さん、アオジルは如何っすか〜?」
 その本人……緑の記憶・リョク(a21145)は、売る側に回って屋台を引っ張っていたりした。
「うちの『アオジル』はそんじょそこらの『青汁』とは訳が違うっす! 健康面でも破壊力でも全てにおいて勝っているっす!」
 健康と破壊はどう考えても両立しないとは思うのだが、そういう類のものはよくある。
「ちょっとそこの称号が似てるデスト君、君も戦士ならこれを飲み干してみせるっす!」
 通りがかった緑の影・デスト(a90337)に薦めるが、いまいち反応が薄い。
 元々付き合いもノリも悪い男ではあるが、それが盛大に発揮されているようだ。
「試しに俺が飲んでみせるっす。俺は、マイジョッキがあるっす!」
 そう言って取り出した特大のジョッキにアオジルを注いでいく。
「おうデスト、久しぶりだな! お前も混ざんねーか?」
 そこに現れた医術士のくず・ナオ(a26636)に軽く目線を送ると、自分が居た場所にナオを立たせる。
「……ぷはー! あれ、デスト君は何処行ったっす?」
「さあ?」
 こうしてリョクをやり過ごしたデストだが、其処に深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)が現れる。
 何やら手に持った紫と黄色がマーブルになっている飲み物を差し出している。
「……なんだ、これは」
 一応、聞いてみる。
「味は保証できますよ。ちゃんと味見しましたから」
 大きく、溜息をつく。どうにも子供には甘いらしい。
 期待を込めた目で見つめるカラシャからコップを受け取ると、一気に飲み干す。
 なるほど、確かに味はそれなりだ。
「……旨かった」
 そう言って軽く頭を撫ぜて立ち去ろうとする、と。また自分を呼ぶ声が聞こえる。
「あー、デストさん見つけた!」
 振り向くと、先程自分を呼んだ鈴の音を友に舞唄う栗鼠・ハナメ(a25460)を含め6、7人は居ただろうか。
 何やら真っ白に燃え尽きた静謐なる黒焔・シエロ(a34675)を鮮紅花炮・フィリス(a31192)が引きずっているが、何があったのだろう。
「……名誉の戦死なのじゃ」
 それだけで、何となく分かる。断りきれなくて飲み続けたのだろう。
 しかし、もう1人。彩士・リィ(a31270)が久遠に遠き予兆・ウィヴ(a12804)に肩を貸して貰って歩いている。
 此方も一体、何があったやら。ともかく、自分を探していたらしい。
「きっと……楽しいと、思う……です、よ」
 風舞淡雪・シファ(a22895)の言葉に、思案する。
 自分の事など忘れていていいのに、どうにも世の中にはお節介焼きが多いらしい。
 苦手だが、嫌いではない。
「……少しだけでいいならな」
 そう言って、溜息をついて歩き出す。
「……」
 その光景を観察していた欠片の少女・ルノア(a42211)が、乳白色の飲み物を軽く口に含む。
 少し目を細めたのは、微笑か。誰にも……本人にすら、分からなかったが。
「う……けほっ、けほっ」
 ちなみに、その見た目が無難なドリンクは……レモンの皮の味がしたそうである。

●珍奇な光景2
「ねえ、これとかどうかしら?」
 北の一刀・カルー(a42439)が指し示した先にあるのは、大きな鍋。
 何やら紫色の液体を、黒いローブを着た老婆が煮込んでいる。
 あからさまに怪しい。色んな意味で。
「店主殿! 最凶の品を頂きたいのじゃ!」
 躊躇せずにリィが買ったそれを、それをきらきらした満面の笑みでシエロにプレゼントするフィリス。
「……要らない」
 一応、シエロは拒否するが。フィルスにリィ、ハナメ、更にはシファまでもがシエロを見つめる。
「大丈夫、未知に挑戦しようとする姿はまさしく冒険者。君の屍の向こうにウマーを見つけてみせるから」
 そう言ってそ知らぬフリをする彩雲追月・ユーセシル(a38825)の目の前にも、ずいっと紫色の飲み物が突き出される。
 カルーの目を見る限り、どうやら飲めということらしい。
「世の中はそううまくいかないものである」
 ユーセシルは、そう言って語り始める。
「私ユーセシル人生17年。既に分かってはいた……発言力で勝てるわけがないとか、自分がのせられやすいとかじゃない。これは宿命? 飲料とのバト……」
 そこまで言って、視線の先にミッドナーがいるのを見つける。
「エンジェルは酒の飲めぬ種族なのでな、甘いものには強いんでござる……」
「なるほど……私は行った事ないですけど、何となくそんなイメージがありますよね」
 歌う山伏・ハル(a28611)と一緒に歩いてきたミッドナーは、果たして救世主か。
「お、姉御ー!」
 そう言ってカルーを見つけた愛の捕獲人・オレサマ(a45352)が走ってくるが。
 このタイミングで現れたのは、彼の不幸である。
「ミッドナーヘループ」
「どうしました? 宿命と戦うのを見届けて欲しいんですか?」
 ハルと話しながらも、しっかり聞いていたらしい。
「違っ宿命嘘、逃げられるものなら逃げたい。皆が笑顔で私をいじめるんです」
「はぁ」
 なるほど、確かにユーセシルが飲むのを今か今かと待っているようだ。リィとシエロは、何やら相打ちしたようではあるが。
「え? ここに何しに来たか? ……変な飲料を飲みに……」
 言って、墓穴を掘った事に気づく。
「そうですか」
 そう言って、紫色のドリンクをしっかりとユーセシルの手に握らせる。
 ユーセシル・ウィンプリム。シエロ・アストリア。オレサマ・ヒト。彼等はこの日、男とは何たるかを証明してみせた。
「うん、これでよし……と」
 そう言って、何故か『みっどなー観察日記』と題されたノートを閉じる黒き血の皇女・イルハ(a27190)。
 あとはドリンクを混ぜて、アルカナに薦めてみるだけである。
 そして、別の場所では。
「ロっシっアっン♪ ロっシっアっン♪」
 皓天・ミツキ(a33553)の歌にのせられるように、白華遊夜・アッシュ(a41845)が適当な飲物を口に含む。
「う……げふっ……もこさん、なんですかコレ?」
「ん? 辛帝ハーバーネロドリンク」
 悪びれずに言うナオは、東風・ツカサ(a48437)の薦めた妙な色をしたドリンクを盛大に噴き出す。
「ん、これもどうだ?」
「げふっ、ごほっ……げばあっ」
 どうやら、それ所ではない状態のナオ。覚悟してない舌には少々辛かったらしい。
「良いも悪いも今日の風次第だよう!」
 その向こうでは、そう言ってストライダーの武道家・リステル(a57947)が屋台のドリンクを口に含む。
 嬉しそうな顔を見ると、甘かったらしい。
 天国と地獄。まさにそんな様相を呈していた。
「俺のと、どちらが最凶かな?」
「へっ、この道25年! 負けやしねえぜ?」
 そう言って、自分で作った豆腐ジュースと市場の腐豆ジュースを飲み比べて倒れた蒼天の剣撃・カイン(a44957)と店主がいるかと思えば。
「あら、変わった紅茶ですわね……」
 まともに紅茶を飲めている紅色の剣術士・アムール(a47706)のような者もいる。
 まさに、天国と地獄。この市は、そういう場でもあった。

●珍奇な風景3
「……困りましたね」
 そう言って、ミッドナーは溜息をつく。
 悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)が、やけに武侠・タダシ(a06685)に飲物を勧めてはいたが。
 どうやら「大当たり」があったらしく、積み重ねもあってか倒れてしまった。
 コータロー本人は膝枕して介抱してあげるのが最高の治療法だとか言って何処かへ行ってしまった。
 しかし、治療法と言われても。プラチナならともかく、タダシの巨体は少しも持ち上げられない。
「栄養価的にはダイエット、スポーツ、勉強、仕事、通勤等において、通常の食事が取れない時などの栄養補給に最適です」
 そこに現れた心に夢を貴方には愛を・ミヤクサ(a33619)が、何やら米とミルクの混ざったような匂いのする飲物を笑顔で手渡す。
「はあ、どうも……ところでこれ、持ち上げられます?」
「無理です」
 変わらぬ笑顔でアッサリと言うミヤクサ。
「……困りましたね」
 そこに、丁度依頼依存症・ノリス(a42975)が通りがかり。有無を言わさず木陰まで運ばせたのであった。
「くは……火でも点きそうだな、これは」
 そう言って酒の入った杯から悪鬼羅刹・テンユウ(a32534)が口を離すと、酒が次から次へと蒸発していく。
 どうやら、冗談抜きで火のつく度数らしい。
「うう、救護室は此処ですか?」
 あまりの度数に具合の悪くなった望郷の愚者・キズス(a30506)が救護テントに入ると。
「中々良い素材だな! ……安心しろ! コレを飲めば、お前のパンチのスピードは倍になる!」
「ドクター殿ぉ! 拙者はただの擦り傷でござるYO!」
 何やら無理矢理変な薬を飲ませた挙句。
「ふむ。この薬は違うようだな……俺が求めるオペはまだ遠い!」
 そう言ってテントの外に放り出すドクターの姿。
 よくノボリを見てみると、『メス』のマークの胃薬販売中と書いてある。
「新たな患者か!」
 気づかれてキズスは、ダッシュで逃げ出す。さすがにトドメは勘弁願いたかった。
 やがて日は暮れて、いつも通りにタダシの背中にのったミッドナーの元に集合して。
 コーヒー塗れで転がっているセナと。あと誰か1人を残して一行は市を後にするのだった。


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作成日:2006/10/19
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