≪銀の女王アラハース≫銀の幼生



<オープニング>


「森の中で銀色を見たなぁ〜ん」
 生態調査で見つけた銀色、確認する間は無かったが確かにあれは銀色の何かだったと、暴れノソリン・タニア(a19371)から報告を受けたアムネリアは深く考え込む。
 この森の生物は自分が住んでいる色の森から外には出たがらない習性があるのだ。それが保護色によるところなのか、如何なのかは不明であるがそう言う物なのだろう。
 それなのに、黄色の領域に銀色のものが在る……物ならばありえない話でもないが……さて。
「む〜、調べておいたほうが良いかな……」
 調べないで後悔するよりは、動いて置いたほうが良いだろう。
 うん、そうしよう。と、大きく頷くとアムネリアは準備を始めた。

 緑の森を越え、黄の森に入って暫くした頃。
 途中色々なものが失われ、いろいろなものがアレして呪だった気がしないでもないが、今、一行の目の前に銀色のそれが横たわっていた。
「これが銀色の正体でしょうか……丸いですね」
 幾重にも糸を巻いて作ったような球体、銀色の鞠のようなもの。
「つい最近あれと同じような物を見たなぁ〜ん……」
 そう、中身がでろでろでどろどろなアレである、アレは色違いだったけれど間違い無いだろう。
「でも、これがアレだとすると本体が近くに居そうだけど」
 そう言われ辺りを見回すが、本体らしきものは見つからない。
「……足跡が向こうに続いておるのう」
 ポツポツと続く足跡は、冒険者達を誘うように黄色の森の奥へと続いていた……。

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参加者
炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)
月闇の樹氷・アスト(a31738)
天蒼の探索者・ユミル(a35959)
ミスターブドー・ジャムル(a38662)
舞闘家・グロリオーサ(a42376)
空白の大空・マイシャ(a46800)
楽園の小飛虎・リィザ(a49133)
ノソ・リン(a50852)


<リプレイ>

●追跡
 真上から差し込む陽光が黄の森に降り注ぎ、辺りは優しい光に包まれている……そんな森の中を奥へ奥へと誘うように続く足跡を、冒険者達は追っていた。

「さーて、頑張って持ち帰るなぁ〜んよ!」
「腐ろうが変な虫が沸こうが、とにかく死ぬ気で持って帰る!」
 気合十分! と言う感じで言う、炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)に、命知らずの燈火・ジャムル(a38662)が力強く同意する。よそ見している間に紛失しましたなどと言語道断なのだ、気合も入ろうと言うものである。
「戦闘後には……死骸を回収……ですか……」
 そんな事を言うジャムルに、編み上げ靴とウサギの足・マイシャ(a46800)は少し微妙な顔をする。
「怖いのかい?」
 ぼそぼそと呟いたマイシャに、舞闘家・グロリオーサ(a42376)は首を傾げて問いかけると、
「べ、別に蜘蛛も鰐も鳥も……何も怖くなんかないですよ……!」
 少し声を上ずらせてマイシャは否定したものである。グロリオーサは解り易い反応に肩をすくめると、そうかいと一言だけ返した。

 そんな彼女の態度がお気に召さなかったのか、本当に怖くないんですよ! とグロリオーサに突っかかるマイシャに目を細め、銀花小花・リン(a50852)は何か変な臭いがしないか、変わった音がしないか? と神経を研ぎ澄ませ、銀色の何か以外のものもでるかも知れないと、闇樹氷・アスト(a31738)は周囲を警戒しする。
 世界はまるでパラノイア・リィザ(a49133)もまた黄色じゃ無い物や、銀色の物が視界に入らないかと辺りを見回しているが、
「目が痛くなってきますね」
 目に入るものは黄色、黄色、そして黄色……変わったものは見つからない。
 そんな中、たまに目に入るアストの緑の髪や、マイシャの青い髪などが黄色になれた目に優しかった。

(「銀……と言う事はアラハースの子供なのでしょうか?」)
 銀色と言えば何らかの形でアラハースに関わっている可能性は高いだろう、天蒼の探索者・ユミル(a35959)はその正体をアラハースの子供なのではないか? と考える。
 そして、アラハースの子供ならば油断は出来ない……と、一つ息をついてから青い宝玉が柄に埋め込まれている剣を握り直し頭上や周囲の物音に注意を向けるのだった。

 ……足跡が続く先は、更に奥へ続き、深い深い、黄い水の底へ誘うかのように続いていた。

●銀色
 黄の森の奥から吹いてくる風がリィザの小さな羽根を揺らして――
「居ましたわ」
 頬を撫でる金色の髪を後ろに払うと、正面をのそのそと歩く銀色の物体を示す。
「やっぱり蜘蛛ですか……」
 半球のような腹部から無数の細長い枝のような脚が伸びる独特の形状……ユミルが呟く通り、間違い無く蜘蛛である。
「無防備すぎないか?」
 そのあまりにも無警戒な姿に一瞬罠かと、リンは辺りを見回すが……特に何かが潜んでいる様子も無い。
 我が物顔で歩くその様に聊か疑問を持ちながらもジャムルは、鎧に強大な力を流し込み仲間達の鎧の形状を変化させ、リュリュは武器に新たな外装を付け加える。

「……兎に角、行きましょう!」
 マイシャは冒険者達の姿に気付く様子も無く、悠々と歩く銀の蜘蛛怪獣の後ろへ走りこみ、不吉な絵柄のカードを放り投げる!
 お尻にそのカードを受け黒く変色した銀の蜘蛛はギィ!? と不愉快な音を立てると慌ててマイシャの方を振り返るが……続けざまに距離を詰めていたユミルが強力な護りの天使を頭上に召喚し、手に持つエッテタンゲにその力を上乗せして顔面を殴りつける! と、……メキィ! と固いものに皹が入るような音が辺りに響いた。
 一瞬何が起こったのか解らない様子で目を七色に輝かせる銀の蜘蛛……だが、すぐにその瞳を真っ赤に染めると脚を振り回す!
「っ!」
 アトミックガードで身を守ったものの完全には威力を殺しきれなかったユミルが吹き飛ばされた!
 幾ばくかの距離を飛ばされたユミルが再び武器を構えた事を確認すると、リィザは体に纏った黒い炎の一部を投げるように銀の蜘蛛へ黒い炎の蛇を撃ちだし、その黒い蛇を追うようにグロリオーサとリンが両の手を振り回し何度も拳を銀色の装甲に叩き込む!

 アストが正面に紋章を描くと、そこから現れた銀色に光る狼にペインヴァイパーの緑のガスが融合し――放たれた銀狼は蜘蛛怪獣を捕らえるとそのまま組み伏せ押さえ込んだ!
「ボウヤのくせに銀色なんて良い趣味してんじゃねえか」
 そして、ペインヴァイパーの赤いガスと稲妻の闘気を融合させたジャムルのコスウェールが銀色の腹に深々と突き刺さって、
「銀色! 覚悟なぁ〜ん!」
 脇腹に目掛けてリュリュがワイルド・インパクト・ボーンに稲妻の闘気を込めた、強大な抜き打ちの一撃を与えると――腹を割かれた銀色の蜘蛛怪獣は力無く地面に崩れ落ちるのだった。

●運搬
「しかし……虫って巨大サイズで見るとちょっと気持ち悪いですね」
 ピクリとも動かなくなった銀の蜘蛛怪獣の顔をジッと見つめて、アストは唸る。確かに気持ち悪いが、黒色の甲殻生物な方々に比べれば、蜘蛛なんてましなほうだとも思われる。
「まずはカモフラージュをせねばな」
 ジャムルの言葉に頷き、マイシャとグロリオーサがテントなどの布で銀色を目立たなくさせ、荒縄で固定する。
 そして、リンがその上に落ち葉を被せて周囲の色と同化させると……、
「バッチリですね」
 少なくとも、上から見た位ではそうそう解らないだろう。マイシャは満足そうに頷くと、今度は蜘蛛怪獣の骸を運ぶべくその下に回る。
「な、なぁ〜ん!? リュリュがここを持つのなぁ〜ん!?」
 持つと、なにやらドロドロした物体がどろ〜んと流れ落ちてくる場所を任されたリュリュが不満そうだったけれど、自分で切っちゃった場所だから仕方が無いのである。
「こうして見ると、眷属より小さいですね」
 そんなリュリュを見なかった事にして、ユミルは蜘蛛怪獣の体を持ち上げる……近くで見る怪獣は確かに眷属達よりも二周りほど小さく見えた。

 暫く歩く……背中にのしかかる重圧は何とも言えぬ重量で、グロリオーサ達を押しつぶそうとしているようだった。だが、重いからといって捨てていく訳にも行かず、彼女達は足元に気を付けながら一歩一歩確実な歩みで進んでいく。
 そんなグロリオーサ達より少し前を進み、リィザとアストは周囲を警戒していた。
「こっちの方は大丈夫そうですわ」
 それなりに大きい物を運んでいるのだ、通り道には気をつけて置いて損は無いだろう……リィザは蜘蛛を運んでいるリン達が十分に通れる場所を選んで誘導する。
 不意に目の端に何かが映り……ハッ! とマイシャがそちらを振り向くと、木々の陰に混じって移動するように大きな影があった。そして、その影を追うように空を見上げると、
「鳥の怪獣です!」
 空高く、太陽を背負うように両翼を広げる鳥怪獣の姿があった!
 一行は慌てて蜘蛛怪獣の骸を木陰に隠し……鳥怪獣は急速に滑空して地表に近づいて――

 バサバサ! と大きな翼が空を叩く音が聞こえ、その鉤爪に捕らわれた哀れな獲物の鳴く声が段々と小さくなっていった。
「……上手くやり過ごせたようです」
 木陰からこっそりと顔を出し、リィザが胸を撫で下ろすと、
「ぐちゃぐちゃなぁ〜ん……」
 蜘蛛怪獣の下敷きになっていたらしいリュリュが何だかドロドロになっていたりもした。
「保護色が役に立ちましたね」
 そんなリュリュから視線を逸らし、アストは蜘蛛怪獣に掛けられているテントを掴み、その上に乗せられた黄の木の葉を確認する。
 周りの色から浮いてしまうテントだけではもしかしたら見つかっていたかもしれなかったのだ……お手柄ですね、と言われたリンは少しくすぐったそうにそっぽを向いていた。

●夜営
 炎がリィザの白い頬を赤く照らし、その体に当たる事の叶わなかった光達は周囲の紫に吸い込まれるように溶けてゆく。
 夜営を張って既に数刻、他の仲間達は数日の道程の疲れのためか静かな寝息を立てて、
「………み、耳は噛んじゃだめなぁぁぁ〜ん!!?」
 たてて……、
「……なんで牙でムニムニできるなぁ〜ん!?」
 蜘蛛怪獣に寄り添うように寝ている反動か、ビクゥ! と、身を痙攣させながら妙な夢を見ているらしいリュリュに苦笑いを零し、グロリオーサは火に薪をくべる。
「……ん? うわぁっ!」
 そんなリュリュの寝言で目を覚ましてしまったマイシャもまた、目の前にあった蜘蛛怪獣の八つの目に肝を冷やされ。
「……ぅ……うぅ……」
 何かあっても大丈夫なように、蜘蛛怪獣の体と自分の体を布で結ぶほどに密着したリンの額には大粒の汗が浮き、犬の尻尾を逆立てながらうなされていた。
「まだ交代の時間ではありませんわ」
 ここ数日そんな光景が続いているのだ、好い加減見慣れたのか、リィザは息を整えているマイシャに微笑むと再び周囲を見回す。
 火の光を恐れる動物も居るのだろうが、光は同時に様々な生物を惹き付ける……光が漏れないように布を張ったユミルの判断は間違っていなかっただろう。特に、夜の森ではどんなモノが徘徊しているかも想像できないのだから。
 少し悲しそうな顔で再び銀の蜘蛛怪獣に添い寝をするマイシャを視線の端に捕らえ、リィザは周囲の気配に注意を払うのだった。

 日が昇り紫の木の葉の向こうに見える空が水色に輝いている。
 アストが妙な踊りを踊ると、それを見ていた仲間達は満ち足りた気分になり、空腹を満たされた。
 腹を満たし、ジャムル達は出発の準備を始める……あと少しで森を抜けられるだろう。
「もうすぐだ、気合を入れていくぜ」
 そうすればこの骸ともおさらば出来る……ジャムルは仲間達に声をかけると銀の蜘蛛怪獣を担ぎ上げ、慣れ始めた重さを背負って冒険者達は進む。

 ――視界が開ける
 森を抜けた彼等を暖かく迎えるように、産まれたばかりの陽光が照らし出し……無事に帰還した彼等を歓迎しているようだった。

【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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作成日:2006/10/18
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