男女の装いといいますか



<オープニング>


「まったく、男という奴は女心をちーっともわかってないのです。こう、奴等は一度生まれ変わって女にでもならない限り女の気持ちなど……」
 ぴた。
「……それなのですよ。奴等も一度女の気持ちになってみればいいのです」


 ぱくぱくぱくりん ひとぱくりん♪
 のそのそのそりん ひとのそりん♪
 拙者の(なぁん)お腹は(なぁん)受け入れ準備も万全(なぁ〜ん)♪

「……なんだろうこの歌は」
 秋と冬の狭間で揺れる開けた森の広場、ストライダーの霊査士・テスリア(a90293)の目の前で、ヒトノソ忍者・クーニャ(a90310)の尻尾が揺れている。
 鮮やかな紅葉の絨毯の上にテーブルを並べながらゆらゆら。尻尾の動きを説明すると、
『ぱく(左)ぱく(右)ぱくりん(左右)ひと(くるっと回って)ぱくりん♪(右左)』
 こんな感じだろうか。
 ぼんやり思考を空に捧げて、テスリアはクーニャの動きから視線を引き剥がす。新たに視線を放り込む先は、椅子の上で爪先立ちになって銀杏の樹にランタンを吊るす姉、キリングナビゲータ・シリィ(a90304)。
「……で、これは一体何の準備だって?」
「うむ。世の中、互いの身を思いやれない人が増えてるのです」
「はぁ」
「互いの立場に立って物事を考える……そんな心が求められる世の中なのですよ」
「はぁ」
「故に男装・女装パーティを開催しようと思うのです」
「なぜ」
 どのような思考回路が搭載されていればそんな結論が導き出されるのか。思わずため息をつかずにいられないテスリアである。
 実の弟ですらそうなのだから、クーニャが首を傾げたのも無理は無い話だろう。
「えーと……つまりシリィ殿が女装なさるのでござるなぁ〜ん?」
「おねいさんは最初っから女なのですよ!?」
 失敬な人ですねお前さんは! とクーニャに指を突きつけるシリィを見ながら、テスリアは三割増しのぼやき声。
「別に姉さんが何しようと構わないけどさ……僕は絶対、女装とかしないからね」
「誰がお前さんに女装しろなどと言いましたか! 前髪スダレの見るからに攻略非対象量産型キャラなんぞ、別にどうだっていいのですよ!」
(「……怒っちゃだめだ。哀れめ僕」)


 で、結局話の概要はというと。
「要するに男装・女装推奨のパーティで楽しく遊ぶのです。いつもと違った立場で見ることで倦怠期の恋人さんにも新たな発見がどうこう」
「はぁ」
「一番男装・女装が似合ってた人にはおねいさんが自腹を切って優勝賞品プレゼント! 勝敗は男装・女装してない参加者を審査員として、反応と投票で決めるのです」
「投票なぁん?」
「そこがポイントなのですよ。……男装した女の人のカッコ良さに、同性だとわかっていてもドキッとしてしまった経験は無いですか?」
 まさか……! シリィ殿、恐ろしい子なぁ〜ん……!
 シリィが言わんとしていることを察して、クーニャが息を呑む。
 明後日の方向を見てお茶をすするテスリア、置いてきぼり。
「そう! 同性を騙せるぐらいの男装女装こそ究極っ……ということで、審査員が判定するのは同性のみ! つまり勝負は、同性の審査員をどれだけ多くドキッとさせられるかで決まるのです!」
 地獄に落ちろ。一瞬そこまで口を開きかけ、何とか留まるテスリア。これでも一応、世界でただ一人の姉。冗談でもそこまで言うのは良くないだろう。
 そんなテスリアの気持ちを知ってか知らずか、シリィは最後に、ついでのように付け足した。
「あ、ちなみに二人も審査員に入ってるのです。嗚呼、テスリアの胸を高鳴らせるような罪な女装男性がいたらおねいさん楽しいなー。その光景、絵にして残したいなー」
「地獄に落ちろ」

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参加者
NPC:キリングナビゲータ・シリィ(a90304)



<リプレイ>

●女装は同盟の文化?
 夕暮れの森に。
「装いが変わると見え方も変わりますわね……ボナ、私はどう?似合うかしら?」
 開き直った声が。
「HAHAHA! 僕だってラブリーなのだ〜!」
 響き渡る。
 秋深い空に紅葉、着物に桜。艶やかな舞妓姿のシシクを見ながら、グラリアは自らの三つ編みをいじる。男装女装パーティ会場。そこは歓声に倍する悲鳴と悲鳴に倍する混沌に満ちていた──

「三十にもなって、女装なんてやってられるかぁ〜!」
 響くシアの悲鳴。
「それがどうした!」
 それを断ち切る楽しげなコーガの声。ロープを手に、すっかり諦め顔のツキトににじり寄るサクヤとコユキの姿。
 そんな混沌を遠目で見るヴァイスは、多くの者の心中を代弁してつぶやく。
「……何で俺は此処に居るんダ。しかもフリル付ゴスロリで」
「あらヴァイスくん、似合うのね」
 片眼鏡に紅ネクタイも鮮やかな執事・ユキホに言われたり、アムリアに「まぁなんだ、一緒に踊るか?」と同情じみた言葉を掛けられたり──ましてやセリアに、可哀想なものを見る目で見られたりすると切なくてしょうがない。
 やるからには完璧な女装を目指すだけだ、とセリアをダンスに誘うリバーサイドぐらい割り切れればどんなに幸せか。
 ここにも、割り切るどころか楽しげな少年達が。
「とことん楽しむぞ♪」「お腹減ったですぅ……」とニーソとミニスカの間、触れたくなるような絶対領域の眩しさをちらつかせてアピールするのは、まるで姉妹のようなキリアルとリンゴ。
「ならお嬢様方、こちらの甘いものなどいかがですか?」
 女装に慣れてきた感のあるメイドレオンの甲斐甲斐しい世話に合わせて──宴が、始まる。『純白』を着込んだキズスの竪琴から漏れる音楽と共に。
「って、何ノリノリで放蕩の宴なんか使ってるんだよっ!」
 ツッコむハウマもマーメイドラインドレス。胸は個人的趣味でDカップな辺りが何ともはや。刀を佩いた着流し浪人風のマユミは理性を蕩けさせる煙を絡めて舞い歌い、キズスの手に口付ける。
「ふふッ、別嬪サン、良かったら私と共に踊ってくれないかねェ?」

 他方では、楓華武士姿の恋人・ロザリアと共にシズハを妖しげに押し倒し、襟を崩して項と鎖骨、ついでに太腿まで露出させるアケサトの姿が。
「じゃあボクがエスコートするね?」
 長い髪に花と簪。金糸の孔雀が舞う赤い晴着のシズハ姫に手を差し伸べるのは、萌黄色の着物に小さなちょんまげを結ったミルフレア。
 そこかしこで脱がされ、着せられ、男が女に女が男に変わる様は、価値観や倫理観が逆転しそうな光景。
 エプロンドレスのガルスタが「同盟はどこかおかしいのではないか……?」と呟く側から、こそっと隠れていたシルクやリーフ、ゴスロリ女装少年達が、一人、また一人と道を踏み外していた。
「ウフフ……こうなったらわたしの素敵な姿、見るがいいですよ!」
「リーフ・アルディアス15歳! 美しく散ってやる……!」
 ……微妙に満足気な表情で。


「ということで始まりました男装あーんど女装コンテストーっ!」
「可愛いセシャくんを優勝させるべく、全身全霊を尽くしマスよー!」
 ステッキを振り回す黒スーツの名も無き司会(ギルガメッシュとも言う)の声を受け、セシャーマを撫でぎゅーするルゥの目は本気。そんな彼女のタキシードの胸元には、そっとセシャーマが捧げた一輪の薔薇。
 レシュノのウッドベースから響く斬れの良い軽快なジャズに合わせて、軍服風詩人服のエウリューシアが歌を口ずさみ「……よい歌ですね?」と暗紅色のスカートの裾を摘んで会釈したレイティスの手を取る。
 非日常の場所ならば、互いの立場も変わるのか。そこかしこで恋人達が互いの服を交換して踊り出していた。
「ガイヤ様の服きついなぁん……」
 どこが、と問うなかれ。一方リィルアリアの服を着たガイヤは、一番身近な女性──妻の仕草を真似て、ちょっと可愛く頑張ってみたり。
「な……なぁん♪」
「ソーア様、エスコートしてもらえるかしら?」
「……お互い、男装や女装という気がしないな」
 ドレスよりしっくりくる白の燕尾服を着て、ヴァンシュの言葉にソーアは笑みを返す。
 まさか再び女装する時が来るとは思わなかったが、妻にエスコートされるのも新鮮なものだ。薄紫の燕尾服を着たエルが恭しく伸ばした手を取って、眼鏡クールなお姉さんと化したシェードは思う。
「……どうぞ、マダム・シェード?」
 更に向こうでは、シファ王子とイサヤ姫。散葉の間を踊りながら「可愛いよ」と耳元で囁いたのはどちらが先か。
「もう行ってしまうのですか、イサヤ姫……」
 姫の残したガラスの靴を巡って続く劇を見下ろす月光が、二人に舞踏会の幕間を告げた。

 視点を変えればこちらはこちらで、学園物の劇でも起こりそうな風景。
 セーラー服のシルヴィアをお姫様だっこするランディ、そんな二人に背を向けて佇むフィオリナは、共にボタンを止めずにさらしで胸を押さえた学ランをなびかせた姿。
「何処から見ても男性そのもの! いよっ二人とも色男!」
『似合いすぎじゃな゛ぁ〜ん!』
 ぎろ。フィオリナの番長視線がシュトロハイムにだけ刺さったのは、とっても可愛らしいフリル付きナムールノソリンの言葉を通訳できる者がいなかった故の幸運だろう。

「美の女神とて、貴女には嫉妬するでしょう……」
「花が選り取りみどりなんだ、声をかけないほうが失礼というものだよ」
 黒スーツも爽やかなエルノアーレはネタの為。普段から男装に近いクリスはナンパを楽しむ為、男装する。そしてイルハは。
「たった一人の愛しい女性の為に男装を……」
 囁きながら手をヒトノソ忍者?の頬に添えてそっと顔を近づけ──驚いた一瞬の隙に尻尾をムニる為、手を伸ばす──すか。
「あ、あれ? クーニャさん、尻尾無い……?」
 それもそのはず。同じくこそっと手を伸ばしていたティーに振り返ったのは、クーニャの忍装束を着たミカゼだったのだから。
「これぞ変わり身の術なぁん」
「いえ、服交換して頂いただけなんですけど」
「服交換……せっかくだし後でこれも着てもらいたいな」
 エスがバッグから覗かせたのは、男物のレザーのコートとズボン。
「クーニャじゃ胸と尻尾が邪魔して無理なぁ〜ん♪」
「大丈夫よパクちゃん、胸はこうしてさらし巻けば……ってミソちゃん締め過ぎ! いたたた!?」
 さらし越しでもはち切れそうなメルミリアの胸が、ぎゅっと締められる。
 後ろを振り向くとそこには、放蕩酔いしたミソがなぁんなぁん笑って「かっこよさのしんずい」を追求していた。
 男らしい褌一丁、上着無し。これなら胸と尻尾が邪魔になる恐れ無し! ……ある意味。
 恥ずかしくなんてありません。だってヒトノソだから。むしろ普通。
「あはは、皆さん踊って楽しくすごそうなのですよぉ♪」
「なら先刻クーニャさんが踊ってたダンスを……」
 のそのそりん♪
 ミカゼに言われて、シルクハットに煌びやかな衣装のファリーが、お揃い衣装のパクの手を取る。『だんでぃー』を目指してバイオリンにスーツのクロウは、慣れない服でダンス中に転びそうになったクーニャを慌ててぎゅ、と抱きとめていたり。
「……お姉ちゃん達の新鮮な姿はいいなぁ」
 そんなダンスを遠目に見やるラスの手が、突然ふわっと柔らかい感覚に包まれる。『純白』に身を包みブーケを手にした娘──女装セットの封印を解いたバルバロッサは、潤んだ瞳で告げた。
「ラスさん、僕に……一票入れてくださいね」
「オマエ……道を踏み外したな……」
 案ずるなかれ。道を踏み外した者ならここにも。
「メイフィード、こちらに来て皆様にお酌を」
「はーい、今参りますです」
 豊かな胸とセクシーに開いた背中。謎の淑女レグリーナとフィード嬢の声を聞きながら、ラジシャンは居たたまれなくなって踵を返す。
「二人がそれでいいなら、いいか……」
「お、思わずノっちゃったけど良くない! 見捨てないで助けてー!」
 まるでお姫様の如きフィードの縋りつきを見たイズミが首を傾げる。
 何せ母の形見であるドレスが「女装しなさい」とばかりぴったりだった彼にとって、女装はむしろ普通なわけで。続くエスティアの言葉は自分の疑問でもあった。
「……どうして皆さん女装を嫌がるのでしょうね?」
「不思議そうに言うな。『お似合いですよ』的な顔で寄るな」
 エスティアに剣呑な視線を向けるヒヅキは、黒い十字をあしらったメイド服。俺は女装についても頂点に立つ男だ。との言葉に、聞き捨てならんなと影一つ。
「女形を勤めてはや四十余年、このわしにこそ頂点は相応しい!」
 音響少女りりかる☆シャモンことシシャモ、誘惑の歌と共に推参。
「ジークルーネさん、こっちも負けられませんよ!」
 化粧水をぺちぺち、桜の香水をぱたぱたさせたミヤクサが、無責任な発言でジークを送り出す。
「ちきしょう、いつかぎゃふんと言わせ──っわっ!?」
 ……あ、慣れないスカートに足取られて転んだ。ジュースを運ぶ給仕メイド・メイヨウを巻き込んで。
「だ、大丈夫でござるかスフェーン殿?」
 頭からジュースを被ったのか、びしょ濡れになった三つ編みを解いたスフェーンは、素で女と見紛う程の美貌だった、とか。
 ちなみに、転ぶ機会を窺っていた人はたくさんいたようで──てへっと照れ笑いで立ち上がって方々にアピールする令嬢風のグラスも近くに居たり。
 更にその隣で転んでいたジャンに手を貸し、軽い口付けを指先に落とすユキノシンの背で、リボンで纏めた髪が揺れた。
「私と一緒にお茶でも如何ですか、お嬢様?」
「べ、別に助けて欲しいなんて言ってへんやん……! でっ、でも……おおきにな」
 真っ赤なジャンを見て、白衣に眼鏡の医者風マリアが「女の私より可愛いってどういう事よ。詐欺だわ!」とかつぶやいたそうな。
「マリアさんも、ほほえましく可愛らしいですよ……私も、女装するべきでしたかね」
 そんなルーファスの迷いを読んだように、童話から出てきたような赤い頭巾のミミュがつぶらな瞳でにこにこ彼を覗き込む。
「悩むぐらいならやるといいなぁ〜ん。皆さんの知らない皆さんを見つけるお手伝いしますなぁ〜ん」
 自制心を溶かす妖しげな紫煙と共に……

「テスリア様、本日はお招き頂きありがとうございますわ……まあ、タイが曲がっていましてよ?」
 森の一角、会場の端。薔薇の如きベリルの笑顔が向けられたのは、木々から顔だけを覗かせ、威嚇する霊査士。何があったか「お、お前も男かー!? だだだ騙されませんよ!」とすっかりテンパったテスリアに、だった。
「美少女オーラ全開の私まで男扱いとは、ひどい言い草だ、なー」
 ちょっと色々白状してみー? と、動物を呼ぶ仕草で手招きするユユとアルは実に楽しそうだ。
「くく、そう警戒するな。今回は主旨通り、クーニャを口説きに来ただけだ」
「……クーニャさんを?」
「ああ。具体的にはまず恋文を渡し、飴を口に含んでだな」
 もういいです。首を振ったと同時──ふと、黒スーツのアダムと目が合った。
「こ、この方は私だけのモノですから……!」
 何か勘違いした振袖着物のロイが言うが早いか、片眼鏡についた銀鎖をちゃりっと鳴らして、アダムはロイの鎖付き首輪を手繰り寄せる。
「御主人様をモノ扱いとは仕方のない子だ。お仕置きが必要なようだね……」
 妖艶な男装少女に引き摺られる首輪付き女装少年……実に背徳的だが、視線を上げれば、のどかに揺れるフワリンの上でそれ以上の光景が。
「頑張れ俺。耐えろ俺」
「ダーリン、ガータートスの時間ですわッ!」
 泣きそうなユーリー(男)が花嫁姿のレーニッシュ(やっぱり男)のガーターを口で外して観客(どこまでも男)に投げる。
 ……そのガーターを受け取ったのは、身長2mの修道女。ユラ。
「か、神に仕える身のわたくしがこのような物を受け取っても……そんな……」
 こんな格好してる時に目立たせんじゃねー! との心の叫びを上げつつ、だが。
 ……泣いてもいいんだよ、ユーリー?


「お嬢様、喉はお渇きではありませんか?」
 布で抑えた胸に、束ねた髪、抑えた声。一味違うセンスが光るウエイターのアムからワインを受け取りつつ、シリィははふぅと息をついた。
「格好いいお姉さんと綺麗なお兄さんがいっぱい。おねいさん満足です」
「貴女の様な素敵なお姉様に喜んで頂けるなら頑張った甲斐があるというものです」
 にこり。モニカのホスト系な流し目に艶笑。営業用でもこれだけできれば勘違いしてしまう人は多そうだ。
「は。ジーニアスさんや、今すぐモニカさんを主催者権限で+百点……」
「それは駄目だろう」
 持参した人形と対象を比較して審査していたノリスが止めたのは幸いだったのだろう。
「では、そろそろ結果発ぴ──」
 ──突然、空気が変わった。
 それまで、思い思いに過ごしていた者達が、一斉にシリィの方へ向く。中には、あからさまに浮くマントやら、煌びやかな参加者の衣装の裾を握るドールやらまでいたり。
 どうやら一部参加者にとって、女装はプライドを賭けた戦いだったりするらしい。
「きゃー! 戦闘状態扱いっ!? 下手な冗談は暴動が起こる勢いですよこれは!?」
 頑張れシリィおねーさん! とケーキ食べつつ主張する審査員・ジーニアスが、引き継いで声を張り上げる。
「さて今回の審査の基準は『男装の麗人はどこまでもオトコマエであれ』!」
「それと同時、女を装うには男を捨てる勢いが必要です」
 わ、私は捨ててませんが、と余計な一言を告げるブレイズは、ブレスィールなる女性審査員として参加していたらしい。いつバレるかと思ったら今迄バレてない辺りがすごい。
「アムさんとかシシャモさん、ジャンさんやシズハさんと僅差での優勝は──」
 ぱっ、とホーリーライトで照らされたその人は、演奏の最中だった。俯き加減のまま笛からそっと放した唇は濡れて赤く、チャイナドレスの赤と同じ色。
「──ベルーさんですっ! 化粧の仕方に仕草、装備にまで気を遣ったのが高ポイント! テスリアも思わず惚れたと言」
「ってない」
「……フッ、可愛いぞ。ベルー」
 拍手するヴィトーも振袖も艶やかな着物美人。薄紅の口元を隠す扇子も趣味良い緋色。
「ということで、女性を凌駕する男性であるベルーさんへの賞品は、発送を持って換えさせて頂くのです。おめでとうっ!」
 なのです!
 でござるなぁ〜ん♪
 ……つきましては誰か頭を叩いて下さい。色々記憶消したいから。
 主催側三者三様の答えを持って、実に参加人数九十人超の合計戦闘力97477(シリィ調べ)。一軍を相手に出来そうな冒険者達を集めた一夜の幻は終わりを──
「そ、そろそろ元の服に……」
「だ・ぁ・め。うふふ(*ノノ)」
「我々は『男女の装いといいますか』において精神に重傷を負いました。完治にはしばらく必要です」
 夜が更けても延々と続いたらしい。


マスター:麻生南 紹介ページ
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