<リプレイ>
●警告 業の刻印・ヴァイス(a06493)はどこかの誰かへと顔を向け、真顔のまま口を開いた。 「ピンポンパンポ〜ン♪ 酒場でこのプレイング&リプレイを見ている同盟の全冒険者の皆様へ。このシナリオは、一般的な依頼・旅団シナリオとは激しく異なりますので、閲覧を続ける際は肉体的精神的ダメージにご注意下さい。間違っても参考になさらないよう、お願い致します。ピンポンパンポ〜ン♪」 何かをやり遂げた男の清々しい表情で、ヴァイスは何事も無かったかのように歩き去る。これが、世にも恐ろしく奇妙奇天烈奇々怪々な冒険譚の始まりであった。
●戦慄への序章 銀河に響く希望の歌声・ジーナス(a28981)はうっとりとつぶやいた。 「またあのお方にお会いできるのですね。望外の幸せですけれど私はくじけませんわ」 ジーナスは自ら身を堕とそうとは思っていなかった。極上の素材が目の前にあるのだ。使わない手はない。 「最愛のあのお方の為に尊い犠牲になってくださいね? おねがいっ♪」 小首をかしげて上目遣いに見上げる。大概の男はこれでイチコロ(古い表現で甚だ申し訳ない)の筈だ。しかし、ヴァイスも誤字と共に去りぬ・フェイト(a26711)も普通の男ではなかった。冒険者としても普通の範疇を越えている。上に『色々な意味で』と付け加えても良いくらいに。 「俺にはやるべき使命がある。ユウキを倒す。ついでに卵もぶっ潰す」 「正気ですか?」 ジーナスはモンスターでも見るかの様な視線をヴァイスに向ける。 「俺も適任ではないよ、ジーナス卿。誇り高き暗黒騎士の名を継ぐ者……決して悪にこの身を染めたりはしない……って、あれ? 暗黒騎士なら暗黒なんだし、悪いことしてもいいのか?」 「あ、あの……フェイトさん?」 「待ってくれ。俺の存在意義とかアイデンティティとか、そういう問題だから今ここでちゃんと結論を出しておきたいのだ」 フェイトは腕を組み首をかしげ、内なる自分と向き合う為深く思索に耽る。ジーナスが呼んでも叩いても、つねっても……反応がない。 「仕方ない。次の作戦行ってみようです〜!」 へこたれないのがジーナスの良いところ。けれど、一歩踏み出そうとしたら転んでしまった。足にロープが絡まっていた。 「な……どうしてこんなものが……」 辺りを見回しても、考え込むフェイトしかいない。ジーナスが去ると物陰から声がした。 「よし! 計算通り」 けれど、フェイトにはその声さえ聞こえていなかった。
●険しきツンデレへの道 店のドアには『準備中』の札が架かっていたが、厨房ではもう仕込みが始まっていた。蒼き仙人掌の華・サラティール(a23142)の願いはただ1つ。生き延びること。生きて帰る事であった。『羞恥で死ぬ』事を回避するためにも、どうしても裏方に廻る必要があった。 「昨日早起きしてオーナーに面接をしてよかった〜」 それでも心配で、サラティールは『肉体を凌駕する魂』をいつでも使える様心掛けている。防災意識がある者が災害から生き延びることが出来るように、有事に備える気持ちが生還へと繋がるのだと思う。サラティールがそこまで用心しなくてはならないほど、これは危険な冒険であった。 「時間です。お店わ開店しちゃうです。べ、別にオーナーがお金持ちになるためでも、お外で待つご主人様のためでもないんだからね! です」 特訓の成果を早くも披露しつつ、夢まどろむ蝶・ルティ(a26293)が厨房に顔を出す。恥ずかしいからなのか頬は少し紅い。僅かにのぞく胸から腰はスケスケ衣装。ルティが動くたびに見えたり見えなかったりする。その衝撃的な装いに、1人サラティールは涙した。 ほぼ埋まった客席の一角で呪文の様な声が響く。 「アルファ、クリアー」 「クリアー」 「クリアー」 開放者・エイト(a34504)がたった1人で受け答えをしている。これは……新手の催眠術か自作自演か? けれど、その一人舞台はまだまだ終わらない。 「よし、それでは作戦を実行する」 「ラジャー」 「ラジャー」 言っては敬礼し、もう1度敬礼する。なんとも奇怪な行動の後、エイトは技を使ってわざとスケスケ衣装のおねーさんたちをどじっ娘へと無理矢理路線変更させる。ある者は粘り蜘蛛糸で転び、ある者はミストフィールドで店内迷子になる。トイレ休憩から戻れなくなったおねーさんもいる。ドジっ娘続出だ。 「ふふふ……これこそがユウキ量産計画、別名『ユウキフェスティバル』だ!」 エイトは悦に入って忍び笑いを漏らす。 「お客様、しゃぶしゃぶのご注文は何人前になさいますか? べ……別にたくさん食べて欲しいなぁ、とか思ってませんからねっ」 エイトから対角線上に最も離れたテーブル席に歩み寄り、旋律・リオ(a35446)は自前のメイド服で接客を行っていた。本来は店のお仕着せであり、ウリであるスケスケ衣装でなくてはならないのだが、拳にモノを言わせて許可を取ったようだ。これも冒険者の凶行して、後刻密かに噂が蔓延するだろう。店長だってこんな稼業をしているのだ、ただ者ではない。けれどリオは自分の身代わりをちゃんと用意していた。頬を染めて横を向くリオの側で、所在なさ気に立ち尽くす蒼水流転の翔剣士・タルウィス(a90273)の服装はスケスケであった。どこかでフェイトも同じ衣装を着ている筈だが、パッと見どこにもいない。 「リオ……私のこの格好は犯罪だと思うよ」 だからもう止めようと言外にタルウィスは言う。確かに詳しく描写したくない格好だ。うっかりどこかのグリモアガードに捕まっても文句は言えない。けれど、リオはニッコリと笑って首を振った。 「タルウィスは似合ってますよ。じゃあ注文をサラティールに伝えてきますね」 笑顔で手を振りリオが厨房へと向かう。 タルウィスのやる気がない様子とは裏腹に桜吹雪の如き幼麗なる舞姫・シシャモ(a31183)は闘志満々であった。光があたるとキラキラ光るスケスケ素材で作った丈の短いワンピースを着ている。清楚で愛らしい姿はとても54歳の男とは思えない。ここまでくるともう不老種族か魔物扱いしたくなる。シシャモははにかむように腕で身体を隠しつつ、そこはかとない色気を醸しだし身をくねらせる。 「わしが女形を務めて四十余年、さすがにツンデレは初挑戦じゃな。しかし事前の調査は十分、今こそ己を試してみる時かのう……」 店の扉が開かれ外で順番待ちをしていた男性客が入ってくる。 「お帰りなさいませ、ご主人様……って、わざわざアンタを迎えに来たんじゃないんだからね!」 絶妙のタイミングで声をかけ、掛けたそばからそっぽを向く。見事な間合いである。客の表情が一瞬でデレっとなる。 店の奥でその様子を見ていた無敵の・ギルガメッシュ(a33171)は低く口笛を吹いた。シシャモの技量への賛辞代わりだ。けれど態度にも表情にも余裕がありまくりだ。 「わたしも負けてはいられないかな……いらっしゃいませー♪ ギルガメ要塞へようこそー♪」 余裕の笑みを崩さずにギルガメッシュは店の戸口へと向かう。その様な名の店ではなかったはずだが、改めて見返すと確かに扉に描かれていた店の名前が変わっている。今朝までは確かに『もえもえ』だったのだが、今は『ギルガメ要塞』。ギルガメッシュ恐るべし。 「おぬし……何時の間にこのような手練手管を……」 元祖ドリルメイド、火月乃竜・ユミ(a29508)がギルガメッシュをドリルな右腕でビシッと指し示す。ちなみに右腕だけではなく、左腕も頭にも円錐型で溝のあるドリルが装備されている。着脱可能でユミの手作りだ。 「戦いが始まったときには既に勝負は決まっていたのだよ。店も店員も何もかも、全て買収済みだ」 ギルガメッシュの勝利の高笑いがツンデレ喫茶に響き渡る。 その時、無数の矢が乱舞した。先端がハートの形をした特別の矢が12回も射掛けられる。 「敵襲か!」 「何が起こったです???」 シシャモは呆然としているルティを引き倒す。その胸にハートの矢が命中する。 「ルティ!」 「シシャモさん!」 手を取り合うスケスケ衣装の2人。けれど、シシャモがガックリと膝をついた。見る間に汗が額に浮かぶ。 「シシャモさん!」 ほとんど精神力だけでシシャモが苦痛に耐える。同じ苦しみを店にいた全男性が味わっていた。 「奇襲か! 敵はどこだ! ぐ、ぐあああああぁぁぁぁ」 身体の中から突き上げる様な苦しみに剛勇な冒険者、叢雲の重騎士・ガルガルガ(a24664)が苦悶の表情を浮かべる。こんな唐突で激しい衝動は初めてであった。何が起こったのかわからないが、諦めるわけにはいかない。苦痛との戦いを放棄すれば、待っているのは汚辱と恥辱だけだ。言葉通りの意味で……。 「ゆ、ユウキ……」 それがたった1つの希望の光……と、でも言うようにガルガルガはカラオケで言ってしまう言葉・ユウキ(a15697)へと手を伸ばした。スケスケ衣装にほんのちょびっとだけ身を包んだユウキがじっとガルガルガを見つめている。 「…………」 既に床に倒れ伏していたプレイングは・マッシロ(a30396)はもう声も出ない。その名の通りなんの行動も書いてないだけの事はある。体当たりなネタにきっと全同盟諸国が泣いた! だろう。けれどそんな強者マッシュロにしてもこの苦しみは別のモノ。もはや限界は近い。おそるべし、腹下し薬の威力。 「いけない! 仲間が傷ついています! こんな時は、高らかな凱歌発動です!」 ユウキは大きく息を吸った。そして豊かな声量で歌を歌う。伴奏などなくてもその歌と歌の持つ力は店内をあますところなく、くまなく響き渡る。脳天気な歌詞だが、効果はある(歌詞はひ・み・つです。とても表記できません)。 心ここにあらず……己を失ってまで歌うユウキの歌は止まらない。どうやら歌詞は2番になっている。けれど、あれほど男達を限界の淵にまで追いつめていた激しい腹痛がすっかり消えていた。 「今だ!」 乱暴に店のドアが開かれ、ヴァイスが飛び込んできた。すぐさまユウキにむかって白い糸を放つと、自由を奪い拉致っていく。 「玉葱、ピーマン、ハム(ヴァイス・ルティ・フェイトの隠語)」 ヴァイスに連れ去れるユウキの歌声がどんどん小さくなる。自分がどのような状況にあるのか、理解していないのだろうか。 「追うぞ!」 ガルガルガは命の恩人、ユウキを追って店を出る。客も従業員も何がなんだかわからない間に店を出た。サラティールも勝手口から外に出る。 「店長。約束の品を……」 真っ先に避難していた店長に向かってギルガメッシュが手を差し出す。 「ギルガメッシュ卿……これは」 フェイトはギルガメッシュとその取り巻きに囲まれた店長を庇うようにしてギルガメッシュの前に進み出る。 「邪魔はゆるさんよ、暗黒騎士。これは商取引なのだから……ね」 ニッコリとギルガメッシュが笑う。店長を振り返るとうなだれた様子でコクリとうなずいた。 「あいわかった」 渋々とフェイトが退くと、店長は秘伝の薬をギルガメッシュの手の中に渡した。
皆がヴァイスを崖に追いつめる。けれどどこにもユウキの姿はない。 「……はぁはぁ……はぁはぁ……ユウキ母わ……はぁはぁ……どこです???」 ちょっとの距離を走っただけなのに盛大に息をきらせたルティが尋ねる。 「谷底だ。はは……あははは、それもこれも同盟諸国の平和と未来の為だ。幻想を抱いて溺死しろ! ユウキ!」 ヴァイスは勝ち誇って大声で笑う。 「こんなとこで道草はいけないのですー! 敵は……敵は螺旋城の卵なのです!」 いきなり歌が聞こえた。栄光の詠い手・シグリア(a25952)の歌がその場にいた全ての者達に破滅をもたらす。全身から血が止めどなく流れ始める。けれど、心は空虚で止血をすることも、仲間を労ることも……そもそも自分が誰でここで何をしているのか、何もかもわからなくなる。 「あああぁぁぁ」 「わあああああ」 「ぎゃああ!!!」 「ひっ……ひっ」 「ガンガンいこうぜ!」 「フェイヨきゅ! なんとかしてです」 「殖装せよ!タルウィス卿!」 「む、無理〜〜」 「タルウィス坊よ、わしは反省はしている。が、後悔はしていない。」 「横取りしたしゃぶしゃぶが谷底へ……」 ただ闇雲に声をあげ、のたうち回るしかない。ファナティックソングを歌うシグリアはうっとりと虚空に視線を投げていた。その目には何も映らない。心のどこかで砂船をぶんどっちゃえばよかったなーと思う部分があったが、すぐに混沌に飲み込まれていく。
力尽きるまでシグリアは歌い、パッタリと倒れた。その頃には血を流していた者達は皆倒れている。真っ赤に変わったメイド服で空の皿を抱きしめているリオ。大量に失血したマッシロは肌も真っ白に変貌している。凄まじいのは褌姿にマント+頭巾+白い仮面+遠眼鏡、そして長い棒を持って倒れているエイトだ。これなら羞恥で死ねるかも? 「うっ……」 ふらりと立ち上がったのはサラティールだけであった。一足先に全世界裸エプロン大会会場に向かったギルガメッシュもきっと無傷だろう。けれど、この薬は実はすりかえられていて、ギルガメッシュの知謀をもってしても、大会に参加することは出来なかった。 「そ、総員……退避じゃ」 苦しい息の下から血まみれになったユミが言った。新妻の底力とドリルの素晴らしさを広く世に知らしめようとする彼女の野望もまた……この地が終焉であった。
冒険は終わった。血にそまった冒険者の傍らには、どこから飛んできたのか手製の折り紙がそっと添えられていた。谷底へ落ちたユウキの消息は不明である。
螺旋の城にあまたある温泉。その浴槽の1つにシグリアはいた。 「お風呂は気持ちいいです〜っ♪」 湯船に浸かっているともう何もかもがどうでもよくなってしまう。何処かで誰かが寂しさにむせび泣く声が聞こえたような気もしたが、風呂を出てまで探す程の事でもない。 「気持ちいいです〜♪」 1人だけ奇跡的に幸せであった。
もしかしたらこれは夢、集団催眠だったかもしれないが……と、すれば忘れられない秋の悪夢であった。

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参加者:14人
作成日:2006/11/03
得票数:戦闘1
ダーク1
コメディ19
えっち5
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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