【P.M.】ストロングニャンコ



<オープニング>


●Pretty Monsters.
 モンスター。人々の生活や命を脅かす、恐るべき存在。
 しかし、そんなモンスターの中にも、時には攻撃する事に躊躇してしまうような奴、一度、思うさま抱きしめてみたいと思うような可愛い奴も現れる。
 だが、その円らな瞳が心に訴えてきても、そのもふもふの誘惑に負けそうになっても、決して屈してはならない。それらは、倒すべき存在、『モンスター』なのだから。

●強いにゃんこ
「仔猫の上目遣いって凶器ですよね……」
 霊査を終えた途端に、ぼそりと九転十起の霊査士・リーゼッテ(a90308)は呟いた。何の話だと振り返った幾人かの冒険者達に、ですよね? ともう一度同意を求める。
「確かに可愛いが……一体何が視えたんだ?」
「……にゃんこ、じゃなくって、猫です」
 何故か言い直した後、霊査士は詳細を語った。

 それは、とある街外れの森に出没するモンスターだ。大きさとしては人間の子どもか、それより多少大きいぐらいであろうと霊査士は言う。
「あ、でもそこはモンスター、体格の割に体力はあるので、甘く見ちゃだめですよ」
 念を押して、霊査士は説明を続けた。
 この猫型モンスターは、なかなかに嫌な特殊攻撃を仕掛けてくる。まずは鳴き声で、これは紅蓮の咆哮に似た効果がある。そして、怖いのは瞳。
「じーっと見つめてきたら要注意です。うっかり目が合うと、出血と混乱セット、大サービスです」
 その分、クリティカルヒットはない。ただ動きも速い為、当てるのもかわすのも大変だろう。
「それと、相手はおそらく……二体居ます。ほぼ同じ能力を持った」
 同時に出てくるとは限らないし、また、協力して攻撃してくるかも不明。いずれにせよ注意するに越したことは無い。
「森の中、いつどこで現れるかは分かりません。……どうか、ご武運を」
 酒場を出る冒険者達の背を、ごつっ、と痛そうな音が追いかけてきた。

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参加者
猫又・リョウアン(a04794)
降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)
儚き月・ミルフィナ(a16290)
終焉を綴る少女・テルミエール(a33671)
牡丹色の舞闘華・ヤシロ(a37005)
吟歌の巫女・ナルミ(a41610)
夢・リーファン(a42360)
煌蒼の癒風・キララ(a45410)
残響ノイズ・リュート(a48849)
上を向いて胸を張って生きたい・クークルゥ(a49286)


<リプレイ>

●猫の話
 森が息を殺している、と、先頭を行く猫又・リョウアン(a04794)は思った。そう感じてしまう程、森の中は静かだった――いや、静か過ぎた。枝や草の折れた跡や、鋭利な物で幹を抉った跡がないか、慎重に歩を進めながら確認する。
「こ、これはその……モンスターの所為ですかね?」
 やっぱり肉食でしょうか、と、上を向いて胸を張って生きたい・クークルゥ(a49286)は呟きを落とした。捕食されそうで、さっきから身震いがして仕方ない。
(「た、食べられないぞ……じゃなくて倒すぞっ!」)
 場合によっては囮にもならなければいけない事を思うと、やや違う意味で気合が入った。
 おかしな音がしないかと、降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)は耳を澄ませている。今この場所では、冒険者達の立てる物音が一番大きく聞こえた。これは嵐の前の静けさか、それとも杞憂か――思わず握り締めた手袋の蔦が、かさりと鳴った。
「この辺りは……特に、怪しくなさそうですね」
 樹上や、藪の中に動くものがないか警戒しつつ、終焉を綴る少女・テルミエール(a33671)は確認するように言った。警戒が功を奏しているのか、それともまだ相手の領域に辿り着いていないのか、今はまだ、何かが出てきそうな気配は無い。
「鳥の姿も見えないね」
 本当に、森が怯えているようだと旋風の八重牡丹・ヤシロ(a37005)も思った。先程から、特に上を気にして移動しているが、二匹のリスを見かけたきり、生物の姿が見えない。モンスターにしては小型な方だし、案外跳躍力はあるのかもしれない、と思った。とすれば、樹上を気にするのは必要な事だろう。
(「猫かー……ハッ、だめだためだ!」)
 ぶんぶんと首を振り、世界の猫飯を食べつくすぞ・リュート(a48849)は思わず和みかけた自分を諌めた。見た目に惑わされてはいけない。だからとりあえず、力の限り撫でるっ!
「って、それも違う!」
 幸いにも、突然吹いた強い風がツッコミの言葉をかき消してくれた。
 墓所へ続く悼みの道にも似たそこを幾らか進んだ時、目の前を何かが走りぬけた。驚いて吟歌の巫女・ナルミ(a41610)は思わず立ち止まったが、よく見ればそれは狸の親子。ほっとすると同時に、やらなければいけない事を思い出してナルミは歌いかける。
『……ぇと、この辺に出る変な猫モンスターさん達の事知りませんか〜♪』
 狸の母親はぶるりと体を震わせた後、森の奥、木と木の隙間が程よく空いた場所が気に入りのようだ、と答えた。そしてナルミが礼を言う間もなく、そそくさと子を咥えて走り去っていく。
「成程、そこが遊び場と寝床になってるんすね」
 ナルミから情報を聞いた蒼龍之夢・リーファン(a42360)は推測した。恐らく、戦い易いように拓けた場所では無いだろう。誘き寄せ、こちらの場に引っ張りこむ必要もあるかも知れない、そう思っている時、後列で簡単なトラップを仕掛けながら付いてきていた煌蒼癒風・キララ(a45410)が何かに気付いた。
「ま、前っ! 来るわよ!」
 冒険者達が武器を構えると同時に、黒い大きな猫が目の前に降り立った。

●戦う話
 美しい毛並みと金の目を持った黒猫モンスターは、ぴんと背を伸ばして冒険者達を睨んだ。どこか凛々しくもあるその姿に、かつての同胞の姿が想像できる気がして、儚き月・ミルフィナ(a16290)は哀しげに眉を寄せた。猫のようだと評される事もある自分だから、少し親近感はあるが、容赦は出来ない。
 1匹しか居ない。つまりもう一匹が跡から現れるはず、と、テルミエールは周辺の警戒に集中した。樹上か、茂みの中か、いつ飛び出して来られても仲間に報せられるよう、目を光らせる。
 スタインは陣の中央に位置取り、そこで静謐の祈りを捧げる。辺りに満ち満ちていく厳かな祈りは、冒険者の下に幸運を齎すだろう。
「こっちに来るっすよ!」
 リーファンから放たれたスーパースポットライトに、びくりと体を震わせた後、モンスターはひらりと宙を舞った。それは、羽根でもついているかと疑うほど軽やかで、瞬く間に距離が詰まる。しかし、鋭い爪は紙一重の差で空を切った。素早く宙返りをして離脱するも、モンスターの目はまだリーファンを見ている。
「そこ……っ」
 ミルフイナの創り出した木の葉が炎を纏い、モンスターに襲い掛かった。回避する間もなく、その炎は容赦なく黒い身体を焼いた。僅かに、モンスターの顔が苦しげに歪む。
「うぅ、可愛い……けど、悪いわねっ!」
 キララは何処か罪悪感を感じつつ、神々しい輝きを放つ光の槍を撃ち出した。小さく悲鳴めいた声を上げ、思わず数歩後退するモンスター。ぐっと睨むその眼には、怒りの炎が燃えていた。
『なぁおぉーん!』
 ぐっと胸を反らして、高々と鳴くモンスター。悲壮な叫びに、不運にもおよそ半数の冒険者が自由を奪われる。その中に、状態異常回復の要であるスタインが含まれていたのが一番の痛手だ。
「……えと、大丈夫ですか?」
 すぐに麻痺が抜けたナルミは、高らかに凱歌を歌い上げた。歌声は仲間を勇気付け、リーファンが麻痺から抜け出す。
「これはなんて試練なんだぁぁぁ!?」
 予想通り可愛い猫モンスターに苦悩の悲鳴を上げながら、リュートの描いた紋章からはアビリティの力が放たれた。命中。しかしモンスターは防御に成功し、すぐ反撃に出た。
『シャーッ!』
 リーファンの肩を、モンスターの鋭い爪が抉る。と、次の瞬間モンスターの横っ腹にカードが放たれた。不幸を齎すカード、それを使ったのはリョウアンだ。見た目には分からないが、悲鳴が上がったという事は命中したのだろう。
「わ、わ、私に勇気と力を!」
 クークルゥは震える腕を抑え、己の武具に心を注ぐ。鋭く変化した大鉈は、いつもより頼もしい相方だ。
 その時、テルミエールが視線の隅に何かを捉えた。それはまるで雪のような白、あれは――。
「来ました、片割れですっ!」
 木から木へと跳び移りながら現れた白猫モンスターは、じっと冒険者らを見つめた。

●二匹の話
 黒と白。まるで寄り添う影のようなモンスター達。家族だっただろうか、友人だっただろうか――澄んだ赤い瞳も、金の瞳も何も語らない。
「………!?」
「ッ、今祈りを!」
 混乱したミルフィナとキララに、麻痺から解放されたスタインが再び静謐の祈りを捧げた。幸いにもすぐに効果は打ち消され、二人は我に帰り、未だ麻痺していたクークルゥもその呪縛から解き放たれる。
「猫いっぱい……ちょっと勿体無かったかな……」
 でも、少し幸せな感じだったらしい。もっふもふー、と少し幸せの余韻に浸った後、キララはぐっと顔を引き締めた。
「そんじゃもう一丁、こっちを見るっす!」
 リーファンが二度目のスポットライトを灯した。今度は二匹同時にリーファンを狙う。
「そうはさせない」
「いくら可愛くても、許されない事があるのよっ!」
 だが、眼前に立ちはだかったリョウアンが黒猫モンスターを斬鉄蹴で止め、キララの慈悲の聖槍が白猫モンスターを止める。後退した所に、ナルミのニードルスピアが降り注いだ。隙間なく落ちる針に、引き裂かれていく二匹の身体。
 リュートがエンブレムシャワーを放った。既にかなりダメージを積み重ねていた黒猫モンスターが、それを受けてぐったりと横たわる。
『にゃ、あ……』
 哀しげに一声、片割れにさよならを告げるように鳴いて、そのまま動かなくなった。一瞥をくれた白猫モンスターの目に悲しみが映ったのはきっと――気の所為だろう。
「あ、当たって下さいぃ!」
 紫電を纏ったクークルゥの大鉈が振るわれる。横薙ぎの一閃に、白猫モンスターは仰け反った。重ねるようにリョウアンの斬鉄蹴がその身を裂き、ミルフィナの放つ炎の葉が焼き、ヤシロの美しい扇が冷たい魔氷を与える。テルミエールの放った光の槍が貫いて、モンスターは動きを止める。
 最後にリーファンの電刃衝がその身を砕いて、偶然にも先に逝った相方と寄り添うようにして、その命を終えた。

●僕らの話
 心なしか賑やかさの戻ってきた森に、土を掘る音が聞こえる。亡骸は埋めてあげたい、というのは冒険者ほぼ全員の意見で、10人がかりでやれば、二匹が揃って入れるような墓穴はすぐに作れた。
「……………」
 二つの身体を埋め終えて、スタインはそっと黙祷する。モンスターになってまで寄り添った二人だから、次の命となる時もきっと、一緒だろうと――一緒であればいいと、祈る。
「凄く可愛かったです。どうか安らかに」
 テルミエールも静かに手を合わせた。と同時に、ふっと本物の猫を愛でたくなった。
「おやすみなさい……」
「やっぱ、普通の猫の方がいいっすよねー……」
 ヤシロはじっと、埋められたばかりのそこを見つめる。リーファンは、肩の傷を少し気にしながらしみじみと言った。
「あー、なんか近所の猫を思う様撫でたくなった」
 手に付いた土を軽く払って、リュートはそんな事を呟いた。可愛いものは良いことだ。しかし、それは安全な存在であるからこそ可愛いと言える訳で――時にはその愛らしさが凶器になり得るのだと、そう感じる。
「ふー、はー……よし、こんなモンで大丈夫ですね」
 息を切らせたクークルゥが、最後の土を盛って軽く表面を固める。かての同胞に敬意を表して、軽く一礼をした。
「皆さんお疲れ様です。……さぁ、帰りましょう」
 ミルフィナの言葉をきっかけに、冒険者らは荷を纏めて帰路を辿り始める。あんなにも静かだった森は今、数多の生命の音に満ちていた。

 恐るべき存在の一つは消え、今暖かな時間が訪れた。
 可愛い可愛いモンスター。さて、次はどこに現れる?


マスター:河流ロッカー 紹介ページ
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