≪銀の女王アラハース≫決戦アラハース! 銀の幼兵団



<オープニング>



 ――銀の女王アラハース
 蜘蛛達の母にして七大怪獣が一体。
 優美なる銀の装甲は岩よりも固く、あらゆる攻撃を跳ね返す強固なる鎧となる。
 体躯に比べ細く長いその脚はその一振りで木々をなぎ倒す力を持ち、木々よりも遥か高くより見下ろす八つの瞳は虹色に輝き、その森に生けるもの達はその瞳に映らないように、日々を怯えて過ごしている。

 ――もし
 彼女に抗うのならば気を付けるが良い。
 彼女が吐き出す銀色の糸に絡め取られたものは、彼女の為にだけ戦う兵に成り下がってしまうだろう。

 ――もし
 彼女を牙をむくのならば覚えて置くが良い。
 彼女の周りには常に銀の幕が張られる、銀の蜘蛛城の中では思うように身動きすら取れなくなるだろう。

 ――もし
 彼女を滅ぼしたのならば絶望に打ち拉がれるだろう。
 銀の糸に絡め取られた仲間は永遠に戻らない、呪詛と共に滅びる彼女の呪いは永遠に解ける事は無いのだから……。

 だが、それでも彼女を滅ぼさなければならないのならば……彼女が巣食う森の実を潰し、その体に塗るが良い。
 それが唯一、彼女の呪いを避ける術となるのだから――

●決戦アラハース!
 カラフルな森を抜けると、何も無い荒野に出くわすだろう、そしてその先に只佇むように一本の銀の木がある。
 何故、その木の周りには何も無くなってしまったのか……それは誰にも解らない事だけれど、そこに巣くう彼女にとって周囲から近づくものが全て解るその木は都合の良い場所だった。

「いよいよ、アラハースとの戦いを始める……」
 一頻り何かを考えていたアムネリアは、一つ大きく息を吐くと集まっていた護衛士達に向かい話しを始める。
「まず、奴を巣から引き摺りだすために、銀の蜘蛛怪獣の死骸を持って銀の木の前まで行って貰う」
 地面に大きな木の絵を描き、そこまでの線を引く。
「蜘蛛の道を抜けると銀の木までの間には結構広い荒野が広がっているから邪魔するものは何もない。だが、銀の木に近づこうとすれば必ず黄の眷属が道を塞ぐだろう。これを相手にし他の者達を先に進ませる役が必要になる」
 木の手前で大きな丸を描いてから、アムネリアは護衛士達を見回す。
「そして、骸を見ればアラハースは怒りに身を任せて突撃してくるだろう……それを正面から食い止め、奴の気を引き付ける役が必要だ。……食い止めるといっても、要するに逃げ回るだけなんだけどな」
 まともにぶつかって如何こうなる相手ではないのだから……と呟くと先を続ける。
「正面で引きつけて貰っている間にアラハースの後ろに回りこみ、その体を登ってもらう……が、彼女の子供達が進入を拒むだろう」
 つまり、子供達を叩く役も必要なのだ。
「最後……アラハースの体をよじ登り、その瞳を破壊する者達が必要になる。八つの目全てを潰せればアラハースを倒すことが出来るだろう」
 アラハースの弱点は八つの瞳なのだと彼女は言う。
「それと、アラハースは周囲に銀の蜘蛛城を張る……この領域に入った力無き物は身動きすら出来なくなるほど強力な糸の領域だ。彼女に害を与え様と思うのならばこの領域から逃れる事は出来ないだろう」
 今の貴様等ならどんなに体力が無くてもある程度は抵抗できるだろうけど……と言うと、アムネリアはそれぞれの役割について細かく説明を始めた。

●銀の幼兵団
「アラハースの子供達……彼等は彼女の元で育ち、その恩恵により日々驚異的な成長を続ける」
「はわ! それじゃアラハースみたいに大きくなっちゃうなぁ〜ん?」
 物思いに耽るように語るアムネリアに、赤い実の・ペルシャナ(a90148)が問う。
「いや、アラハースほどに大きくなるには相当な時間が必要だろう。だが、もう少しすれば眷属達よりは強くなるかもしれないな」
 そうなれば手に負えなくなってしまう、だからこそ今アラハースとの決着を付けなければならないのだ。それに彼等の成長は王の恩恵があればこそ、女王さえ倒してしまえばそれほどの成長はなされないだろう。
「そうなのなぁ〜ん?」
 良く解らないと言った様子で小首を傾げるペルシャナに、アムネリアは目を細めると先を続ける。
「この小隊はアラハースの子供達から、アラハースの体を登る者達を護衛する役目を担う。アラハースの周り……特に横と後ろには多くの銀の子蜘蛛が従属している。その無数の子蜘蛛達から道を切り開き、加えて追いすがるであろうそれらから仲間達を護る」
 彼等は単体では眷属たちに遠く及ばないが、その数の多さは侮ることは出来ないとアムネリアは付け足す。
「大変そうなぁ〜ん」
「銀の蜘蛛城は当然受けるから、上手く身動きが取れないかもしれないけど、それは相手も同じだと思ってくれ。それと、足元まで行く場合は踏み潰されないようにな? ……踏み潰されちゃったら大変なんだから」
 あの巨体である、踏み潰されたら笑えない状態になるだろう。アムネリアは本当に心配そうに護衛士達の顔を覗き込むと、
「彼等はアラハースと言う自分の糧を護るために、生きる為に必死に戦うだろう……心してかかってくれ」
 祈るように目を閉じるて、護衛士達を見送った。

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参加者
ちょ〜トロい術士・アユム(a14870)
空気は読まない・レジィ(a18041)
楽園の大地に生きる・サーリア(a18537)
閃紅の戦乙女・イリシア(a23257)
桜舞彩凛・イスズ(a27789)
天蒼の探索者・ユミル(a35959)
弓使い・ユリア(a41874)
楽園の小飛虎・リィザ(a49133)
NPC:赤い実の・ペルシャナ(a90148)



<リプレイ>

●果たすべき決意
 大きく仰け反るように体を起こしたアラハースが再び地に足をつけた後、その体から透き通るような銀の糸が出された。まるで細かい雪のように舞い落ちるそれは、体に触れると溶けるように消え去って行く。
「これが、銀の蜘蛛城……!?」
 アラハースの正面に回った小隊を迂回し、瞳を狙う小隊を護衛するように囲みながら進む、弓使い・ユリア(a41874)達だったが、降り注ぐ蜘蛛の糸に道を阻まれる。
「来ましたなぁ〜んっ!」
 そして糸の幕の中をもがくように進む彼等の前……霧の向こうに赤く輝く無数の玉が映し出される。
「……全力を尽くしましょう」
 一体、二体……と次々に姿を現す銀の蜘蛛怪獣を前に、のそるんです・サーリア(a18537)と、天蒼の探索者・ユミル(a35959)は各々の鎧の形状を大きく変化させる。
「ぎょ〜さん子蜘蛛ちゃんがおるんやなぁ〜ん。けど〜、がんばって相手をするんやなぁ〜ん」
 ちょ〜トロい術士・アユム(a14870)が掲げた両手杖の先に描いた紋章から七色の光線が作り出され、疑惑のヅラ紅茶王子・デュラシア(a09224)が放った光と交じり合い、現れた銀の蜘蛛怪獣達を駆逐せんとその体に降り注ぐ!
「この戦いで、決着をつけましょう。その為に今まで準備してきたのですから」
 前方に放たれた光線の雨から視線を逸らさずに閃紅の戦乙女・イリシア(a23257)は淡々と告げるとJormungandrを持つ手に力を入れ、そこへ新たな外装が追加していく。
「これが最後の戦いなのですね……」
 全員が無事に帰るために頑張らなくてはと、桜舞彩凛・イスズ(a27789)は大きく息を吸い込むとその体に黒い炎を纏っていく。
 イスズと同じように黒い炎を纏おうとした、ほっぺたつまむ・レジィ(a18041)だったが、舞い落ちる蜘蛛の糸に絡めとられ動きを封じられてしまった。

 小さな羽が震えるほどの衝撃がアラハースの影から響き渡り、立っているのも困難なほど地面が揺れる。
(「他の皆さんの為にもなんとしてもやり遂げましょう」)
 アラハースの正面で戦っている仲間達のためにも、なんとしても自分達の役割を果たさなければならない。
 そしてそれは、今正に正面で銀の蜘蛛怪獣達と切り結び始めた仲間達と共にならば必ず果たせるに違いないと、イリシアは暫し想いに馳せるように閉じていた赤い瞳を開くのだった。

●銀の幼兵団
 アラハースの足の横を抜ける……正面で頑張っている仲間達は良くやっているのか、アラハースの体は殆ど動く事が無い。只、響き渡る轟音と震動が正面で戦っている仲間達の戦闘の激しさを伝えてくる。
 それとも、足元にいる子蜘蛛達を踏みつけないように、彼女の母性が働いているのか……。
「大丈夫なぁ〜ん?」
 蜘蛛糸のせいで殆ど身動きの取れないレジィとユリアを引き摺っていた、赤い実の・ペルシャナ(a90148)が尋ねると、応えの代わりに赤く透き通る矢と七色に輝く光の雨が正面を塞ぐように陣取っている蜘蛛怪獣を吹き飛ばす!
「邪魔をしないで欲しいなぁ〜んっ!」
 そしてサーリアは近くにいた蜘蛛怪獣の足を掴んで大きく振り回すと、そのままの勢いで爆発が止まぬ蜘蛛怪獣の群れの中に放り投げた。
 更にアユムの光の雨が、どこでもヒトノソリン・メルフィ(a13979)が作り出した無数の黒い針が次々に蜘蛛怪獣達を蹴散らして行くが……蜘蛛怪獣達が引き下がる事は無かった。
「いったい、何匹入るんでしょうか……!」
 正面から連繋するように連続で打ち付けられる蜘蛛怪獣の脚をアトミックガードでしのぎ、後方へ牙を剥いた蜘蛛怪獣の牙をあまった手で防ぐ。ミシッと乾いた木の枝を万力で押しつぶすような音がユミルの腕が立てるが……、
 何処からとも無く飛んできたチャクラムが蜘蛛怪獣の体を凍りつかせ、イリシアが槍を素早く振るって放った衝撃波が蜘蛛怪獣の顔面を捕らえるとユミルの腕を噛んでいた蜘蛛怪獣は力無く地面に伏した。
「まだまだ……頑張って」
 ユミルの状態を見た、楽園の小飛虎・リィザ(a49133)が黒影剣と名付けた儀礼用長剣を掲げ体内から淡く光る波を発し傷付いた仲間達を癒し、イスズの仲間達を励ます歌が周囲に響き渡る。

「この辺りで大丈夫でしょうか」
 次々と現れる蜘蛛怪獣を蹴散らし漸くと、アラハースの腹の下に辿り着いたリィザ達は女王の体を登る仲間達を援護する為にその周囲に陣取る。
「瞳班が〜登るまで〜持ち堪えるんやなぁ〜ん」
 アユムは自分達の動きを封じようと銀の糸を撒き散らす蜘蛛怪獣から清らかな祈りで仲間達の自由を確保し、
「瞳班に成功してもらうためにも、本気で足止めしなくちゃねー」
 レジィがクリスタルスタッフから七色に輝く木の葉の突風を放つと、迫ってくる蜘蛛怪獣を吹き飛ばす!
 だが、確実に銀の蜘蛛怪獣達の包囲網は狭まっていく……何処まで持つのか? 状況が良く見える立場に居ればこそ良く見える現実に首を振り、
「誇り。伊達に吼えた訳でない事、お見せしませんとね」
 只一つ自分が掲げた信念をその心に確認するように呟き、リィザは儀礼長剣を握る手に力を篭め直すのだった。

●戦場に響くもの
「……私たちも生きるのに必死なの」
 強引に突破しようとし、アラハースを登る小隊に襲い掛かろうとした一体を七色の木の葉の突風で吹き飛ばし、レジィは呟くように言う。
 だから全力で……吃驚した様子でロープにしがみ付いている黒耳のヒトノソリンに手を振って彼女達を見送り……追撃などさせないと、ギチギチと牙を鳴らす蜘蛛怪獣達を青い目で見据えた。
 確実に距離を詰めてくる蜘蛛怪獣に黒い蛇の炎を放つと、リィザの体に融合していたキルドレッドブルーの力によって直撃を受けた蜘蛛怪獣の体が魔炎と魔氷に包まれる。
「頑張って! みんなで帰ってただいまって言うまでが遠足だよ!!」
 強弓に赤く透き通る矢を番えると、ユリアは叫ぶ。誰に……誰かに、アラハースの体を登った仲間達、今共に戦う仲間達に……或いは全員に聞こえるように、皆でちゃんと帰れると信じていると。
 そして、左右から近付いてくる蜘蛛怪獣に矢を放つと、併せるようにデュラシアとメルフィの光線と黒い針が降り注ぎ、爆発に巻き込まれた蜘蛛怪獣の体が辺りに四散した。

「通しませんなぁ〜んっ!」
 サーリアは跳躍した蜘蛛怪獣にまんもースカイを放り投げて迎撃し、直撃を受けてひっくり返りながら落ちた蜘蛛怪獣にイリシアが作り出した衝撃波が切り裂く!
 戻って来たブーメランを掴んで肩で息をしているサーリアに襲い掛かろうとする蜘蛛怪獣を、ユミルは流れるような動きでエッテタンゲを横凪ぎに払い牽制すると僅かばかり蜘蛛怪獣の包囲が広がった。

 既に周囲は銀の蜘蛛怪獣に埋め尽くされ、正面で戦っているはずの仲間達の様子も見えなくなっている。
 戦況は如何なのか……? 相変わらず聞こえる轟音と震動が彼らの戦いが終っていない事を告げているようで――ふと、その音の狭間から荒々しい、只荒々しいだけの笛の音が聞こえたような気がした。
 その音が何を意味するのかは判らない……けれど、戦っているのが自分達だけでないと改めて実感できる。それだけで励みとなる。
「みんなで〜ぶじにかえるんやなぁ〜ん」
 蜘蛛怪獣達と接触し傷付いて行くサーリア達にアユムが癒しの光を放ち、
「全員が笑顔で帰れるように……頑張らなくてはいけません」
 皆がそれぞれするべき事を全う出来るよう、自分に出来ることを全力で頑張らなくては……と願うように、祈るように、イスズは仲間達を励ます歌を歌うのだった。

●彼等の行方
 隣で戦う仲間達の息遣いが聞こえるほどに、レジィ達が作った陣は狭まっていた。
 もはや身動きもまともに取れない……前衛で奮戦していたユミルが崩れるように膝を降り、サーリアもだらりと垂れ下がって動かなくなった左腕を庇うように立っているだけでやっとの状態。
「彼らの元へ行かせるわけにはいきません」
 しかし、それでもアラハースの瞳を破壊しに言った仲間達のために、この場を護らねばならなかった。
 頭を超えていこうとする蜘蛛怪獣をイリシアの放つ衝撃波が切り裂き、ユリアの矢が爆発を撒き散らす。
「――這ってでも、全員で生きて勝ちを持ち帰ります」
 そして、乱れる息を整え、渾身の力を篭めてリィザが癒しの光を放ったとき――

『――!』
 不意に空が開ける……真上にあったはずのアラハースの腹はそこには無く――ズゥゥゥン! と地面を揺るがす震動と共に響いた轟音は長く、長く尾を引いて……その衝撃によって起こされた暴風がイリシアの髪を乱す。
「……終った……の?」
 ポツリと呟いたイリシアの言葉は実感の無いものだったが、彼らの周囲にいた蜘蛛怪獣達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出して、
「終ったーー!」
 遠くに蜘蛛怪獣達が見えなくなったのを確認してから、レジィは溜まっていた物を吐き出すように大きく息を吐くと、ぐったりと地面に体を預けた。
「……皆さん、無事でしょうかなぁ〜ん?」
「ええ、なんとか……」
 ボロボロになったサーリアが仲間達を確認すると、同じく全身傷だらけのユミルが応え……その声に、やっと訪れた勝利の確信と張り詰めた空気が抜けて行く心地良さに安堵の笑顔を浮かべるのだった。

 空は青く晴れ渡り――周囲に広がっていた銀の蜘蛛糸の領域も何時の間にか消え去っていた。
「希望をつなげましたね」
 アラハースの体から溶け出し宙に舞う銀色の綿雪のような物が、彼等の勝利を祝福しているかのようだった。


【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/11/09
得票数:冒険活劇8  戦闘19 
冒険結果:成功!
重傷者:赤い実の・ペルシャナ(a90148)(NPC)  楽園の大地に生きる・サーリア(a18537)  天蒼の探索者・ユミル(a35959) 
死亡者:なし
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