はじめてのこころみ



<オープニング>


「あああぁぁ! インスピレーションがこない! びっとこない!!」
 くしゃくしゃと紙を握りつぶしてぽいと投げる影。
 先ほどから机に向かい、何度も同じ動作を繰り返している男の名は紙芝居師ズドーフ。
「こう、なんだろう。リアリティというかなんというか……僕の心を熱くさせる何かが足りないのだよ!! むきーっ!!」
 わちゃわちゃと頭をかきむしる。
 しかし吉報(?)は思わぬところから届くわけであり。
「……村長、森に熊グドンが現れて、農作物が荒らされているようです」
「……ふむ。ならば冒険者様に頼んで一掃してもらうこおををわぁ!?」
「僕が依頼にいってきまーす!!」
 満面の笑みで窓から顔を突き出すズドーフ。
 紙とペンを握り締め、うきうきとユバのもとへと向かうのだった。 
 
●依頼
「みなさん、依頼なのです。今回はグドン50体の退治になるのです。村のみなさんが困っているのです!!」
 ユバメモを手にし、颯爽と酒場に現れるユバ。こういう普通な依頼はなんか久しぶりだわ。
「ある日森の中に熊グドンなのです!!」
 ほうほう。簡単じゃないの。
「でも、ただ倒せばいいわけではないのです!!」
 あらそう。
「同行者のズドーフさんを一人連れて行きつつ」
 ふんふん。
「面白おかしくグドンを退治してくるのです!!」
 ズコーッ!
 君はさあ、わざとそういう依頼ばっか受けてくるんじゃないの?

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参加者
笑劇の伝道師・オメガ(a00366)
温・ファオ(a05259)
幸多き旅人・ミミック(a11975)
蝶と戯れる闇華姫・アンシュ(a41199)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
久遠の旅路を歩む者・フェイ(a41383)
禍風・グラス(a50660)
セイバーファング・ジル(a55823)
物怪王女・マイハ(a56215)
月夜に舞い降りる白鳥・リヴァル(a58442)


<リプレイ>

●カオティックプロローグ
「ズドーフ!! 泥船に乗った気でまかせろ! 面白可笑しくグドンを倒してやる!!」
 熊グドンの群れがいると言われている森に向かう一行。
 笑劇の伝道師・オメガ(a00366)はともすれば沈んじゃいそうな意気込みを口にする。
(「紙芝居のぅ……どの様な内容かのぅ、完成が楽しみじゃ」)
 光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)は、とことこと歩きながら、後ろからついてくるズドーフが一体どんな紙芝居をぶっぱなしてくるのか、心がウキウキウエッティングである。
「大変ですね。みなさんお困りでしょうから、きれいさっぱりと退治してしまいましょうv ……え? 面白おかしくですか? 私そんなネタ依頼なんて行ったことないですし……あ、紙芝居が楽しみなんですーv」
 秋色の景色をゆったり眺めながら歩く蝶から零れる甘い蜜・アンシュ(a41199)さんはネタ依頼に行ったことがないんだってさ。ふーん。ふうぅぅぅん。
「面白おかしくグドン退治ですか。ズドーフさんの創作活動の糧になれるよう自信無いですが、頑張っちゃいます、私! でも、何やらカオスな依頼になりそうな予感が……それはさておき、紙芝居がどんなものになるか楽しみですね」
 ぽやぽや呟く絶望と希望の狭間を彷徨う者・フェイ(a41383)。そうやってカオスとか最初から予想しないようにお願いしますね。なりますけど。なるのかよ。
(「いちおう旅芸人出身だけど、こういった依頼ははじめてだなあ。肩の力を抜いていこうかな。ズドーフさんを楽しませてあげたいし、そのためには面白いコトをしないとね」)
 ストライダーの暇人・ミミック(a11975)は他のみんなの行動にも興味を示しながら歩く。まさにネタ依頼ははじめてのこころみであり、これを機に色々と勉強する気まんまんだ。
(「初めての戦闘依頼で緊張です。皆さんの足を引っ張らない様に頑張らなきゃ……」)
 セイバーファング・ジル(a55823)は程良い緊張と共に歩く。そんな君にいいことを教えてあげよう。この依頼は戦闘依頼のようであって、戦闘依頼なんです。はい。

 がさがさがさっ
「!」
 突然茂みを揺らす音に、冒険者達の間に軽い緊張が走る。もしかしてネタ依頼だからってこんなベタな展開でグドンが!?
 どでんっ
「はぁ、はぁ、誰か……誰か助けてください!」
 違いました。
 そこで前のめりにずっこけているのは紺を基調としたロリータ服を身に纏ったいたいけな少女。
 というかどなたでしょうかこの方は。私、こんなNPCを用意した覚えはないのですが。
「グラスさん……」
 ジルは同じ旅団ということもあり、その少女が片手に・グラス(a50660)という『少年』であることを一目で見破る。
「あのぉ、一人じゃ怖いので一緒に連れて行っ」
「行くぞグラス」
 グラスの言葉を冷たく遮るオメガ。ややぽかんとする温・ファオ(a05259)。スルーパスや傍観を得手としていたのだが、唐突に訪れることには対処が難しいらしい。これがネタ師の方とそうでない方の如実な違いか。
「いいじゃないですかー!! このシチュエーション!!」
 早速スケッチブックにがしゃがしゃとラフをとりはじめるズドーフ。
「グラスが仲間になった! 新しく冒険者図鑑に登録されます!!」
 よくわかんないけど嬉々とした声をあげながら後ろについていくグラス。
 このスルーっぷり、投げやりっぷりは勉強になる、とメモを取り出すミミック。
「カオスな依頼に……」
 呟くフェイ。まだなってないって。いや、ちょっとだけ、ね?
 ぐおおおお!
 おおうう!
 ドギャーン!!
 そして今度こそ熊グドンの群れが50体、なんの脈絡もなく現れたのだった。
 
●カオティックグドン
「さぁ〜、始まりました!」
 両者走り出すと同時に戦闘の開始を実況し始めるジル。
「前に出る必要は有りませんから、安心して創作に励んでくださいね」
「ここらへんなら大丈夫でしょう。もしグドンがこちらに来ても私達がちゃんとお守りいたしますよ」
 セイレーンの医術士・リヴァル(a58442)とアンシュはにっこり微笑むとズドーフの前に立つ。
 冒険者達はくさび型に陣形を取り、熊グドン達と相対する。
「あなた達〜、お眠りなさいな〜♪」
「眠れ〜♪ 熊サ〜ン♪」
 前衛のオメガと後衛のリヴァルが眠りの歌を歌うと、数匹のグドンがぱたぱたとその場に倒れる。
「妾は何故この依頼に参加したのじゃろうか……」
 ちょっ、プラチナさん……。いきなりそんなことをおっしゃられましても……。がんばってくださいよ……。
「うむ、何も思い浮かばぬので一気に突撃なのじゃ」
 自分の中で何かに納得したようで、ずしっ、と大剣を肩に乗せグドンに突撃をしかけるプラチナさん。
「あるー依頼! 森の中でー! 熊グドンにー! であーった! のじゃー!!」
 ぶいんぶいんと惜しげもなく大剣をぶんまわすプラチナさん(9歳・ランドアース在住)。
 ずどむっ
 ぐしゃっ
 嫌な音がしょっぱなから響き渡る。ちょっと自棄したいお年頃? みたいな?
「ダイナミックウルトラスーパー……えと……以下略! 斬・鉄・蹴!!」
 フェイがそう声をあげると、無数の黒い針が飛び出しグドン達に突き刺さる。
「あ、ズドーフさん、今フェイさんが放ったアビリティはですね、斬鉄蹴と言いま……斬鉄蹴!?」
 ズドーフさんにもよくわかるようにと、アビリティの解説をしようとしていたリヴァルは思わず自分にツッコミを入れる。人はそれをニードルスピアと呼んでいた。
「よし、みなさん、しりとりをしながら熊グドンを攻撃しましょう! まずはグドンのンからって、終わりかよ!」
 どがっ
「ズコーッ!!」
 崩れ落ちるミミックとジルを尻目に、スカートをひらひらとさせながらシャドウスラッシュをぼっぱなすグラス。見たくないものが見えちゃいそうだからあまり動かないでくださいませんか!!
「あたしの雄姿、見せてやるよ! イカしたテイルズ紡いでおくれ! さあ! 熊グドン共、あたしが料理してやるよ!」
 コック帽を被り、フライパンと包丁を握りながら突撃する捧ゲル死ト百合・マイハ(a56215)。
 って、そっちの料理かよ!!
「フッ、熊は右手がおいしーんだ!!」
 あら、お答えありがとうございます。
「さあ、マイハさんの三分キリングのスタートだ!! 活目しな!! 100年に1度のレジェンドが駆け抜けるよ!! まずは肉を叩いて柔らかくするんだ!!」
 包丁を持つ手が動いたかと思うと、流れる水のように次々と熊グドンをぶちたおしていくマイハ。
「いいかぁ! 押すなよ!? 絶対押すなよ!!?」
 尻を突き出し、両手を地面に水平にした状態でグドンに立ち向かうオメガ。誰が熱湯グドンシャルをやれと言った。
「震えるぞハート!! 燃え尽きるほどヒート!!」
 そのままの姿勢でぷるぷると震え始めるオメガ。まさか山吹色のナニカを出すつもりなのか!? イエース!! サンライトオーヴァード、どうでもいいか。うん。
 どがっ
 そんなオメガにグドンの一撃が加えられる。
「ぶったね! 親父にもぶたれた事がないのに!!」
 通常の3倍の速度で怒り始めるオメガ。あんまギリギリなこと口走んないでね、うん。
 ふっ
 オメガの頭上に一瞬現れ、そして消えるフワリンの姿。
「い、今のはなんですか!? 何か現れたように見えましたけど!?」
 前にいたファオに思わず問いかけるズドーフ。
「アット驚きましたか? オブらーとに包み込んで伝えますと……まあ気にすることはなインではなインでしょうか。言えるのはここまでです」
 適当な前置詞をつけながら静かに笑みを浮かべ、その問いにそっと答えるファオ。前置詞違いとはまさにこのこと。
「それはそうと、ズドーフさんは何色がお好きかしら?」
 戦況を見守りながら不意にズドーフに声をかけるリヴァル。ズドーフさんがひまにならないように、ホーリーライトを好きな色に変えてあげようという優しい思いからだ。
「どどめ色!!」
「どどめ色ですね……どどめ色!?」
 再びセルフツッコミをテイクアウトするリヴァル。
 どどめ色ってよく聞くけど実際どんな色かってあんまりみんな知らないよね。
「……わかりました」
 しばし思案した後、どどめ色ーっぽくライトを照らすリヴァル。
「ほほう、それがどどめ色なんですね!!」
 嬉しそうな声をあげるズドーフ。おめえもしらねえのか。
「ズドーフさん、汝カツモクせよ」
 木の穴に上半身を埋めた熊グドンを指差すグラス。
「あれは蜂蜜を取ろうとして抜け出せなくなった愚かな熊グドンです。ああ、童話でしかきっと起こりえない現実がここに!」
 自分で埋めたんじゃねえのこれ。
「でもこのままでは可哀相なので穴から救出することにしますね」
 すぽっ
「やったー! 熊グドンさんよかったですね!!」
 グドンを無事に引っこ抜き、喜びを爆発させるグラス。
 どがっ
 がつっ
「悲しいけど、これって依頼なんですよね」
 ちょっ、今なにした!?
 
 いろんな人がいろんな攻撃を繰り出す戦闘。その後も
「超絶! スーパーハートクエイクアロー!!」
 と、叫びながらグドンの頭を鷲づかみにしてスキュラフレイムをぶっ放すフェイさんがいたり、
「うふふ……デストローイ! です……うふふへへ……!」
 と、楽しそうにデストロイブレードで破壊の限りを尽くすフェイさんがいたり、
「な、何ですか! 別にた、楽しくないです! ……ちょっと面白かったかもしれませんが」
 と、何故かツンデレ風に反論するフェイさんがいたり、ってフェイさんは自分がカオス空間を形成している十分過ぎるほどの一員であることを理解していらっしゃいますかー!!? どーなんですかー!?
 
「と、まあこれがあたし達冒険者の戦いだよ。ズドーフさんの目にどう映ったかは分からないけど、どうか素敵な話を描いてほしい……」
 包丁についたいろんなものを綺麗に拭き取ると、懐にしまうマイハは満足げにズドーフに告げる。
 どっかの打ち切りになった漫画のような急展開を見せる中、いかがお過ごしでしょうか。
 めくるめく展開!
 予想だにしない出来事!
 それがまさにネタ依頼の真髄なのである。
 うそはいけないのである。

●みんなー! ズドーフさんの紙芝居、はっじまーるよー!
「あら奥様、今日はどうされましたの?」
「いえね、なんでもズドーフさんの最新作が今日ここでお披露目されるというものですからいてもたってもいられずに参りましたの」
「おほほ、実はわたくしも!」
 わいのわいのと広場に集まる人々。
「どんな熱いのか楽しみですv」
 一番先頭の席でわくわくしながら、ミミックと共に座るアンシュ。ミミックは今回学んだことをせっせとメモに纏めている最中である。何か学ぶことがあったと、そうおっしゃいますか。
「熱い紙芝居……気になるところです……」
 いつ紙芝居が始まるのかと気が気でない様子のファオ。
 他の冒険者達もいまかいまかとズドーフの登場を待ちわびる。
「あら、いらしたわ!」
 うおおーっ!
 一際大きくなる歓声。
 へこりへこりとお辞儀をしながら現れるズドーフは、最前列に並んだ冒険者達に一礼をすると、おもむろに分厚い紙の束を取り出す。

 さ、みんな、お茶とお菓子の準備はできたかなー?
 じゃ、いってみよ!
 
●グッバイフォーレバーグドン
 はらり(紙をめくる音)
「昔々、ある所に熊グドンの群れが50体いました。そしてその熊グドン達は村の大切な農作物を食い荒らし、それはたいそう人々を困らせていたのです」
 はらり
「さて、この熊グドン達に困り果てた村長達。一体どうしたものかと思案した結果、ある一つの答えに辿り着きました」
(「割と静かに進むのでしょうか」)
 もっと凄くて熱いことになるのかな、と想像していたファオは、案外普通な滑り出しにちょっと意外だという表情を浮かべる。
 はらり
「オッメェガァァァオウ!! プゥゥラッチイィナァアア!! フェエエェイェェイ!! グッラアァァッスウゥゥゥ!! ジイィィィイルゥウゥウ!! マイッハァアァァアア!! リッッヴァアァァッルルルゥゥ!! アーンッシュ!! アンシュ!! アンッシュウウゥゥ!! ミミミミミミック! ミミミックククゥゥ!! ファーオ! ファーーーオ! ファーーーーおおほっ、えへげほっ! おぼふぇっ!!」
 突如弾け飛びそうな程首筋に血管を浮かび上がらせながら叫び、そしてむせるズドーフ。
 うおおおおおお!! といきなりマックスボルテージの観衆。またこういう展開か。
 さっ、と迅速に喉飴を差し出すファオ。喉飴の登場はええ!!
 どーんと大きな一枚絵に描かれた冒険者達は、ヒト一人ぐらい泣かしてそうな凶悪な顔つきで佇む。
 鮮やかな草原とは対照的に暗黒のオーラを纏った冒険者達一行。こういった絵はデフォルメが基本とは言うものの、これでは既にグドン登場と思われてしまう可能性がなきにしもある。
(「くっ……僕にはここまでできるのだろうか」)
 ペンを握り締めながら自問自答を繰り返すミミック。真似、しないほうがいいかもしれないね。
 
 はらり
「……さて、この10人の勇敢な戦士達は、早速グドン退治に出かけたのです」
 はらり
「資本主義の豚は何処じゃ〜!! オメガはグドン達を探します」
 鬼の形相でナタをかざしながら獲物を探す化け……オメガの姿。
 泣き出す子供多数。
 はらり
「そこに現れる熊グドンの群れ。さあ! 熊グドン共、あたしが料理してやるよ!! マイハは研ぎ澄まされた包丁に舌を這わせます」
(「這わせては、いない」)
 更に泣き出す子供達。心の中でツッコミを入れるマイハ。
 はらり
「ここらへんなら大丈夫でしょう。もしグドンがこちらに来ても私達がちゃんとぶちころして差し上げますよ? 心優しいアンシュはズドーフの側に控えます」
 捏造、よくない。
 はらり
「出会ってはいけなかった両者は遂に相対し、こうなれば避ける道など皆無!! かくして熊グドン50体と、聖なる戦士達との世紀の決戦が始まったのです!!!!」
『ひょおおおおぉぉ!!!』
 無言で顔を見合わせる冒険者達。
 なんだか、ちょっと疲れてきちゃったなあ――

 ――「……ど、言うわけで熊グドン達はめでだぐ夕焼げの戦士達によってだがってぶちごろざれたのでじだ めでだじめでだじ……」
 喉も枯れ切り、いつの間にか上半身裸になっていたズドーフがしっとりとその物語を紡ぎ終えると、中には感動のあまり涙を零す観客の姿が見える。
 FIN、と大きく書かれている鮮やかなオレンジ色を背に、びしぃっと暗黒舞踏のようなポーズに怪しげな笑みを浮かべる物語の中のジルを見つめながら、ジルははじめての戦闘依頼が無事終わったことに、心から安堵した。
 よね?


マスター:湯豆腐 紹介ページ
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作成日:2006/11/25
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