<リプレイ>
●まだ見ぬ遺跡を求めて 一行が同盟を出てから既に数日が経ち、森の深いところまで差し掛かっていた。昼に行軍し、夜は休憩を取ってはいる。天候予測を趣味に持つ舞い降りる剣・ローゼンシア(a18953)によって、昼間であっても天気が崩れそうであれば、無意味な体力消耗を避けるために、休むようにもしていた。 ライジングサンヴァーミリオン・マディン(a34736)など、金属製の鎧を身に纏った者は鎧の隙間に布を挟むなどして音を立てないようにし、少しでも森の奥深くまで行けるよう、相手に気付かれず迂回すれば回避できる戦闘は避けてきた。 それでも既に冒険者である力はあと数回の戦闘が限度だというところまで消耗している。 けれど、図書館を見つけるという目的のため、一行は歩を進めていた。 先を行くのは紅焔舞う夢幻之宵天・オキ(a34580)と護りの幻影姫・キラ(a90153)。本隊から視認できるくらい先で、周囲を警戒しながら進む。 逆に、本隊の後ろの方を歩く翠玉の残光・カイン(a07393)は、足跡の痕跡を残さぬよう、皆の足跡を消すように歩いていた。また、その隣では漂う耀きの記憶・ロレンツァ(a48556)が時折、木や岩に剣で目印をつけながら歩く。 泡沫の眠り姫・フィーリ(a37243)はというと、図書館があったくらいなのだから、そこまでの道の痕跡がないかどうか、注意しながら歩いていた。 ふと、オキが足を止めた。彼の視線の先に、グドンが十体近く、群れを成している。草や土を塗りつけているため、すぐに匂いでばれることはないだろうが、これ以上近づくと物音や気配で相手も気付くであろう。 迂回をしようとその場を離れ、オキとキラは他の道を探す。 けれど、探し当てた他の道の方が更に多くのグドンの姿が見えた。 グドン地域の奥地まで来ている分、どの道を選んでもグドンとの戦闘は避けられないほど、グドン達がひしめいているのだろう。 「初めに見つけた道が一番、グドンの数は少ないようですね。そちらを突破しましょう」 「うん」 オキの言葉に、キラが頷き、腰に下げた太刀に手をかける。オキもまた、フィーリに預けたサーベルをアビリティの力によって、引き寄せた。 近づいていくと同時に、グドン達も気がついたのか、こっちに向かってき始める。 その群れの先頭のグドンへと、現実と理想の悪夢に架せし華・キサ(a31048)が一本の矢を放った。光の軌跡を描いて、その一本の矢はグドンに飛来し、肩口に突き刺さる。 その一撃が戦闘の開始を告げる合図となった。
●戦闘開始! 狐の頭を持つグドン達が十体ほど、叫び声を上げながら冒険者達に駆け寄ってくる。奥の方には狐の頭を二つ持つピルグリムグドンの姿も一体見えた。 「かかって来るって言うなら……俺が相手だっ!!」 マディンは巨大剣を構えて意気込む。 カインとロレンツァ、ローゼンシア、ウィー(a18981)の四人は、それぞれ邪竜の破壊力を制御し、黒き炎を身に纏う。 ピルグリムグドンの姿を確認したキサは、周りの狐グドン達を早々に片付けようと、光の軌跡を描いて飛来する矢を放つ。避けることの難しいその矢は、一匹の狐グドンに突き刺さる。 狐グドンに囲まれ、ピルグリムグドンに手が出せないオキは、傍まで来た狐グドンの腕をサーベルで一突き貫いた。 マディンは巨大剣を振るい、やって来る狐グドンを薙ぎ払う。 先ほどの狐グドン達の叫びが聞こえたのか、戦う音が聞こえたのか。他の道を探しているときに見かけたグドン達が駆けつけてきた。 前衛をサポートするように、キラは太刀を片手に握り締めたまま、粘り気のある蜘蛛の糸を片手に作り出した。襲い掛かってくるグドンに向かって、その糸を放つと、グドン達は足を取られて転倒する。 フィーリは握り締めた儀礼用長剣で狐グドンに殴りかかった。紅蓮の色した魔炎と銀色の魔氷が殴られた狐グドンを包み込む。 後列から春風そよめく舞蝶円舞曲・ミア(a41826)は、一本の矢を放った。彼女と一体化した召喚獣の魔炎と魔氷が、矢に貫かれた狐グドンを包み込み、炎と氷によるダメージを与える。 後衛に控えていたイージス(a20790)も横の茂みから身を乗り出してきたグドンに向かって鋼糸を放つ。 最初発見したときより狐グドンの数は三、四倍まで増えていた。 その前衛に立つものから剣や斧などで攻撃を受け、後方には少ない矢を駆使して弓の弦を弾くものも居る。 更に、駆けつけた中にはもう一体、同じようなピルグリムグドンの姿が見えた。 「ピルグリムグドンだけは……確実に倒しておきたい……っ!」 マディンが叫ぶ。 仲間達も避けられない以上、あまり被害を受けないくらいまで数を減らしてから、逃走を図ろうと試みることにした。
●ギリギリの戦い 受ける攻撃をヨル(a31238)が励ましの力強い歌を歌うことで癒していく。 黒き炎を纏ったカインが、自身の周りに細く黒い針を無数、作り出す。そして、それを向かってくる狐グドン達に向けて放った。鋭い針は雨のように狐グドン達に降り注ぎ、彼らの身体に突き刺さった。 「この一撃に全てを……!」 狐グドン達の奥に居るピルグリムグドンに向かって、ローゼンシアは紋章の力を集約した火球を放った。強化されたそれは、大きなダメージを与えるが、それでもふらふらしながら、ピルグリムグドンは立っている。 キサはピルグリムグドンの前に立ちはだかる狐グドンに向かって、光の軌跡を描いて飛ぶ矢を放ち続けていた。 オキも前衛をサポートするため、ピルグリムグドンまでの道を開こうと、狐グドンに次々とサーベルを振るう。 炎を身に纏ったウィーもまた、黒く鋭い針を狐グドン達の上に降り注がせた。 仲間達から離れすぎないよう、時折後方を確認しながら、マディンは狐グドン達を薙ぎ払っていく。もう少し蹴散らせば、先ほどのローゼンシアの攻撃でダメージを負ってしまっているピルグリムグドンに刃が当たるだろう。 先ほど蜘蛛の糸で身動き取れなくなってしまった狐グドン達をキラは確実に仕留めていた。 魔炎と魔氷を与えるように、フィーリは狐グドン達に儀礼用長剣で殴りかかっていく。 ミアはまた、矢を放った。矢が突き刺さった狐グドンは炎と氷に包まれていく。 黒き炎、それに召喚獣が融合して左右それぞれから炎と氷を噴出させながらロレンツァは黒い炎を狐グドンに向けて放った。狐グドンは炎と氷に包み込まれていく。 攻撃されても怯まず襲い掛かってくる狐グドン達に、前衛で戦うマディンやフィーリ、そして二人をサポートするオキとキラは、それぞれ腕や足を切り付けられたり殴打されたりする。 ある程度、受けた傷の痛みが溜まってからヨルとローゼンシアが力強い励ましの歌を歌い、受けた傷を癒していった。 そして、やや前衛寄りに居た一体目のピルグリムグドンをマディンが闘気を極限まで込めた巨大剣の一撃で、落とす。 残るは半数ほどまで減ってきた狐グドンの群れともう一体のピルグリムグドンである。 一行は、ここぞというときに力を残しながらそれぞれの武器を振るうだけで狐グドンの群れを蹴散らしていった。 それでもきりのない狐グドンの数。 「負けてられないなぁん。頑張るのなぁんっ」 ミアは近くなってきた二体目のピルグリムグドンに向けて、一本の矢を放った。矢には鋭い逆とげが生えている。 二つの頭の間に突き刺さった矢は、逆とげによって抜こうとしても簡単には抜けず、ひどい出血をピルグリムグドンに与える。 「もう回復の力があまり残ってないです」 もう少しだというところで、ローゼンシアの声が戦場に響いた。
●撤退…… 行軍したはいいが帰れないというのは避けたいところ。 誰もがそう思い、ある程度の条件を決めていた。 回復を促す力が少なくなった以上、この場から逃走した方が安全だろう。 「殿は任せろ!」 マディンが叫ぶ。 「少しの間、視界が悪くなるけど、逃げれば問題ないからね」 そう言ったキラが、その戦場に魔法の霧を発生させた。戦場から抜け出せば、霧は意味をなさなくなるが、足止めにはなるだろう。 そして、逃走を始めるも狐グドン達もその見え辛い霧の中を追いかけて来た。 「お休みなさい……」 眠りへと誘うカインの声が狐グドン達へと響く。 一番近くに居た狐グドンの何体かはその歌を聴いてしまって眠り込んでしまうが、その後ろから来ていたものには届かなかったのか、眠り込んでしまった仲間を踏みつけてまで、追って来た。 「こっちだなぁん!」 暖かく光る矢が、一行が逃げる方向とは別の方向に飛び、着弾点からミアが念じた偽りの言葉が流された。 そちらに逃げたのだろうかと、いくらかの狐グドン達がそちらへ向かう。 逃げながら、キサは狐グドンの群れへと一本の矢を構える。矢は赤く透き通っていて先端には炎が付いている。 その矢を狐グドンの群れの真ん中に着弾するようにと放った。 群れの中心部よりやや前衛寄りの場所に、その矢は落ちた。着弾した瞬間、爆発が起こり、狐グドン達は爆風に巻き込まれた。 殿を務めていたマディンにも爆発の際の風が、傍をすり抜けていく。 足止めできたと思ったとき、爆発で煙が上がったのにまぎれて、まだ立っていることのできるピルグリムグドンがマディンに襲い掛かった。 不意の攻撃にマディンは避けきれず、今まで狐グドン達の小さな攻撃を受けていたのが仇となったか、深手を負ってしまう。 そんな彼を支えて一行はその場を離れる。 やがて狐グドン達の姿が裸眼では確認できなくなった頃、キサとミアは撹乱させるための矢を居るのは止めて、逃げる方に集中した。
回復が付きかけ、重傷者が出ては仕方がない。 そう諦めをつけながら、一行はもと来た道を同盟に向けて戻り始めるのだった。
終。

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参加者:8人
作成日:2006/11/16
得票数:冒険活劇7
戦闘24
コメディ1
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冒険結果:失敗…
重傷者:紅焔の・マディン(a34736)
死亡者:なし
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