グドン地域大制圧戦:その向こうに



<オープニング>


●グドン地域大制圧戦
 ランドアース中央部に広がるグドン地域。
 この、大繁殖したグドンが棲息する荒れ果てた森林地帯は、獰猛なトロウル王国から自国を護るために、北方セイレーン王国がグドンを養殖して作り上げたものであった。

 しかし、グドンの繁殖力を制御する事など出来よう筈も無い。
 一度解き放たれたグドン達は、その繁殖力を最大の武器として急速に棲息範囲を広げていったのだ。
 グドン地域は、それ自体が生物であるかのように、森を喰らい大地を荒らし、大陸中央部を分割するまでに巨大な物となってしまったのだ。
 そして現在、グドン地域はピルグリムグドンの繁殖により、より危険な場所へと変貌を遂げている。

 荒れ果てた森の奥深く。
 そこへ分け入る事は、同盟諸国の冒険者であっても命を掛けた冒険となる。
 だが、このグドン地域のほぼ中央に、北方セイレーン王国の遺跡である『古代の遺跡図書館』が存在するという。

 古代ヒト族の残した叡智を得る事ができれば、トロウルの崇める大神ザウスに関わる真実を知る事ができるかもしれない。
 この叡智は、グドン地域を切り開き制圧する事でしか得る事はできない。

 北方セイレーン王国の協力を受けつつ、冒険者達はグドン地域へと足を踏み入れるのだった。

※※※

「皆様、お集まりいただけたようですね。
 先日行われた北方セイレーン王国への使節派遣については、皆様も良く覚えていると思います。
 最も興味をひかれたのは、やはり『グドン地域の真ん中にあるエギュレ神殿図書館の禁書庫』でしょうか。
 トロウルとの決戦を控え、この禁書庫の情報は是が非でも手に入れなければならないでしょう。
 レルヴァ大遠征時のザウスの雷の悲劇を繰り返さない為にも……」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、沈痛な面持ちでそう言うと、集まった冒険者達に向き直る。

「そこで、今回の依頼となります」
 強い意志を湛えた瞳で冒険者達を見たユリシアは、酒場のテーブルに地図を広げると、その中央に大きな丸を描いた。
 そして、一呼吸おいて
「このグドン地域を、地図より消すか……少なくとも半分の大きさにして下さい」
 と言ったのだった。

「グドン地域は、北方セイレーン王国、旧モンスター地域(死の国周辺)、トロウル王国の3つの地域に囲まれています。
 今回の作戦では、北方セイレーン王国側からと旧モンスター地域側からの2つの方角から、グドン地域を制圧していく事ができます」
 ユリシアの説明を要約するとこうなる。
 侵入路の一方、セイレーン王国側からの制圧部隊には、北方セイレーン王国の冒険者が同行し、道案内の役目を負ってくれる。
 彼らの案内で、セイレーン王国の幾つかの拠点を奪還していくのが役割となる。
 これらの拠点は、元々セイレーン王国の施設だった事もあり、拠点からグドンを一掃した後は、セイレーン王国へと返還する事になるだろう。
 もう一方、旧モンスター地域からの制圧部隊は、グドン地域の荒地に巣くうグドン達を殲滅して同盟諸国の領土を拡張する事を任務とする。
 北方セイレーン王国の冒険者は同行しない代わりに、こちら側で制圧した地域は、北方セイレーン王国より譲り受けて同盟諸国の領土とする事ができるだろう。
 そして、それとは別に、グドン地域の奥深くに入り込み『エギュレ神殿図書館』を探索する部隊も編成される。
 グドン地域の制圧が進めば比較的容易に中央部に入り込めるかもしれないが、グドン地域の奥地で孤立してしまう事に変わりは無い。引き際を誤れば、帰還する事さえ難しくなってしまう危険な任務となるだろう。

「グドン地域の中央部に近づけば近づくほど、ピルグリムグドンの比率が高まってくると予測されます。詳しい説明は他の霊査士からも行なわれると思いますが、充分に気をつけるようにお願いしますね」
 そう言うと、ユリシアは地図をくるくるとしまうと、冒険者達にむけて一礼したのだった。

●その向こうに
「ユリシアさんから話は聞いたかな? それじゃあ、わたしからお話しするね」
 そう言って、灰狐の霊査士・ヴァルナ(a90183)は、集まった冒険者達を見回した。
「皆には、エギュレ神殿図書館を探索する部隊の一つとして、グドン地域に乗り込んで欲しいの。ユリシアさんも言ってたように奥地に入り込めば、相手も手強いはずよ。準備はしっかりとして、引き際を見誤らないようにして欲しいの。相手については……次から次へと来るみたいで、詳しいことは言えないのだけど……」
 ヴァルナの話を聞いて頷く冒険者の中には護りの幻影姫・キラ(a90153)の姿もある。
「怪我しないで……っていうのは流石に無理があるかもしれないから、せめて、皆、ちゃんと帰ってきてね」
 笑みを向けてから、ヴァルナはぺこんと頭を下げた。


!注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』と言う特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 灰狐の霊査士・ヴァルナの『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『献身(devote)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。

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参加者
翠玉の残光・カイン(a07393)
天使のプレゼント・ローゼンシア(a18953)
悪夢ノ華・キサ(a31048)
淙滔赫灼・オキ(a34580)
紅焔の・マディン(a34736)
泡沫の眠り姫・フィーリ(a37243)
春風そよめく舞蝶円舞曲・ミア(a41826)
漂う耀きの記憶・ロレンツァ(a48556)
NPC:護りの幻影姫・キラ(a90153)



<リプレイ>

●まだ見ぬ遺跡を求めて
 一行が同盟を出てから既に数日が経ち、森の深いところまで差し掛かっていた。昼に行軍し、夜は休憩を取ってはいる。天候予測を趣味に持つ舞い降りる剣・ローゼンシア(a18953)によって、昼間であっても天気が崩れそうであれば、無意味な体力消耗を避けるために、休むようにもしていた。
 ライジングサンヴァーミリオン・マディン(a34736)など、金属製の鎧を身に纏った者は鎧の隙間に布を挟むなどして音を立てないようにし、少しでも森の奥深くまで行けるよう、相手に気付かれず迂回すれば回避できる戦闘は避けてきた。
 それでも既に冒険者である力はあと数回の戦闘が限度だというところまで消耗している。
 けれど、図書館を見つけるという目的のため、一行は歩を進めていた。
 先を行くのは紅焔舞う夢幻之宵天・オキ(a34580)と護りの幻影姫・キラ(a90153)。本隊から視認できるくらい先で、周囲を警戒しながら進む。
 逆に、本隊の後ろの方を歩く翠玉の残光・カイン(a07393)は、足跡の痕跡を残さぬよう、皆の足跡を消すように歩いていた。また、その隣では漂う耀きの記憶・ロレンツァ(a48556)が時折、木や岩に剣で目印をつけながら歩く。
 泡沫の眠り姫・フィーリ(a37243)はというと、図書館があったくらいなのだから、そこまでの道の痕跡がないかどうか、注意しながら歩いていた。
 ふと、オキが足を止めた。彼の視線の先に、グドンが十体近く、群れを成している。草や土を塗りつけているため、すぐに匂いでばれることはないだろうが、これ以上近づくと物音や気配で相手も気付くであろう。
 迂回をしようとその場を離れ、オキとキラは他の道を探す。
 けれど、探し当てた他の道の方が更に多くのグドンの姿が見えた。
 グドン地域の奥地まで来ている分、どの道を選んでもグドンとの戦闘は避けられないほど、グドン達がひしめいているのだろう。
「初めに見つけた道が一番、グドンの数は少ないようですね。そちらを突破しましょう」
「うん」
 オキの言葉に、キラが頷き、腰に下げた太刀に手をかける。オキもまた、フィーリに預けたサーベルをアビリティの力によって、引き寄せた。
 近づいていくと同時に、グドン達も気がついたのか、こっちに向かってき始める。
 その群れの先頭のグドンへと、現実と理想の悪夢に架せし華・キサ(a31048)が一本の矢を放った。光の軌跡を描いて、その一本の矢はグドンに飛来し、肩口に突き刺さる。
 その一撃が戦闘の開始を告げる合図となった。

●戦闘開始!
 狐の頭を持つグドン達が十体ほど、叫び声を上げながら冒険者達に駆け寄ってくる。奥の方には狐の頭を二つ持つピルグリムグドンの姿も一体見えた。
「かかって来るって言うなら……俺が相手だっ!!」
 マディンは巨大剣を構えて意気込む。
 カインとロレンツァ、ローゼンシア、ウィー(a18981)の四人は、それぞれ邪竜の破壊力を制御し、黒き炎を身に纏う。
 ピルグリムグドンの姿を確認したキサは、周りの狐グドン達を早々に片付けようと、光の軌跡を描いて飛来する矢を放つ。避けることの難しいその矢は、一匹の狐グドンに突き刺さる。
 狐グドンに囲まれ、ピルグリムグドンに手が出せないオキは、傍まで来た狐グドンの腕をサーベルで一突き貫いた。
 マディンは巨大剣を振るい、やって来る狐グドンを薙ぎ払う。
 先ほどの狐グドン達の叫びが聞こえたのか、戦う音が聞こえたのか。他の道を探しているときに見かけたグドン達が駆けつけてきた。
 前衛をサポートするように、キラは太刀を片手に握り締めたまま、粘り気のある蜘蛛の糸を片手に作り出した。襲い掛かってくるグドンに向かって、その糸を放つと、グドン達は足を取られて転倒する。
 フィーリは握り締めた儀礼用長剣で狐グドンに殴りかかった。紅蓮の色した魔炎と銀色の魔氷が殴られた狐グドンを包み込む。
 後列から春風そよめく舞蝶円舞曲・ミア(a41826)は、一本の矢を放った。彼女と一体化した召喚獣の魔炎と魔氷が、矢に貫かれた狐グドンを包み込み、炎と氷によるダメージを与える。
 後衛に控えていたイージス(a20790)も横の茂みから身を乗り出してきたグドンに向かって鋼糸を放つ。
 最初発見したときより狐グドンの数は三、四倍まで増えていた。
 その前衛に立つものから剣や斧などで攻撃を受け、後方には少ない矢を駆使して弓の弦を弾くものも居る。
 更に、駆けつけた中にはもう一体、同じようなピルグリムグドンの姿が見えた。
「ピルグリムグドンだけは……確実に倒しておきたい……っ!」
 マディンが叫ぶ。
 仲間達も避けられない以上、あまり被害を受けないくらいまで数を減らしてから、逃走を図ろうと試みることにした。

●ギリギリの戦い
 受ける攻撃をヨル(a31238)が励ましの力強い歌を歌うことで癒していく。
 黒き炎を纏ったカインが、自身の周りに細く黒い針を無数、作り出す。そして、それを向かってくる狐グドン達に向けて放った。鋭い針は雨のように狐グドン達に降り注ぎ、彼らの身体に突き刺さった。
「この一撃に全てを……!」
 狐グドン達の奥に居るピルグリムグドンに向かって、ローゼンシアは紋章の力を集約した火球を放った。強化されたそれは、大きなダメージを与えるが、それでもふらふらしながら、ピルグリムグドンは立っている。
 キサはピルグリムグドンの前に立ちはだかる狐グドンに向かって、光の軌跡を描いて飛ぶ矢を放ち続けていた。
 オキも前衛をサポートするため、ピルグリムグドンまでの道を開こうと、狐グドンに次々とサーベルを振るう。
 炎を身に纏ったウィーもまた、黒く鋭い針を狐グドン達の上に降り注がせた。
 仲間達から離れすぎないよう、時折後方を確認しながら、マディンは狐グドン達を薙ぎ払っていく。もう少し蹴散らせば、先ほどのローゼンシアの攻撃でダメージを負ってしまっているピルグリムグドンに刃が当たるだろう。
 先ほど蜘蛛の糸で身動き取れなくなってしまった狐グドン達をキラは確実に仕留めていた。
 魔炎と魔氷を与えるように、フィーリは狐グドン達に儀礼用長剣で殴りかかっていく。
 ミアはまた、矢を放った。矢が突き刺さった狐グドンは炎と氷に包まれていく。
 黒き炎、それに召喚獣が融合して左右それぞれから炎と氷を噴出させながらロレンツァは黒い炎を狐グドンに向けて放った。狐グドンは炎と氷に包み込まれていく。
 攻撃されても怯まず襲い掛かってくる狐グドン達に、前衛で戦うマディンやフィーリ、そして二人をサポートするオキとキラは、それぞれ腕や足を切り付けられたり殴打されたりする。
 ある程度、受けた傷の痛みが溜まってからヨルとローゼンシアが力強い励ましの歌を歌い、受けた傷を癒していった。
 そして、やや前衛寄りに居た一体目のピルグリムグドンをマディンが闘気を極限まで込めた巨大剣の一撃で、落とす。
 残るは半数ほどまで減ってきた狐グドンの群れともう一体のピルグリムグドンである。
 一行は、ここぞというときに力を残しながらそれぞれの武器を振るうだけで狐グドンの群れを蹴散らしていった。
 それでもきりのない狐グドンの数。
「負けてられないなぁん。頑張るのなぁんっ」
 ミアは近くなってきた二体目のピルグリムグドンに向けて、一本の矢を放った。矢には鋭い逆とげが生えている。
 二つの頭の間に突き刺さった矢は、逆とげによって抜こうとしても簡単には抜けず、ひどい出血をピルグリムグドンに与える。
「もう回復の力があまり残ってないです」
 もう少しだというところで、ローゼンシアの声が戦場に響いた。

●撤退……
 行軍したはいいが帰れないというのは避けたいところ。
 誰もがそう思い、ある程度の条件を決めていた。
 回復を促す力が少なくなった以上、この場から逃走した方が安全だろう。
「殿は任せろ!」
 マディンが叫ぶ。
「少しの間、視界が悪くなるけど、逃げれば問題ないからね」
 そう言ったキラが、その戦場に魔法の霧を発生させた。戦場から抜け出せば、霧は意味をなさなくなるが、足止めにはなるだろう。
 そして、逃走を始めるも狐グドン達もその見え辛い霧の中を追いかけて来た。
「お休みなさい……」
 眠りへと誘うカインの声が狐グドン達へと響く。
 一番近くに居た狐グドンの何体かはその歌を聴いてしまって眠り込んでしまうが、その後ろから来ていたものには届かなかったのか、眠り込んでしまった仲間を踏みつけてまで、追って来た。
「こっちだなぁん!」
 暖かく光る矢が、一行が逃げる方向とは別の方向に飛び、着弾点からミアが念じた偽りの言葉が流された。
 そちらに逃げたのだろうかと、いくらかの狐グドン達がそちらへ向かう。
 逃げながら、キサは狐グドンの群れへと一本の矢を構える。矢は赤く透き通っていて先端には炎が付いている。
 その矢を狐グドンの群れの真ん中に着弾するようにと放った。
 群れの中心部よりやや前衛寄りの場所に、その矢は落ちた。着弾した瞬間、爆発が起こり、狐グドン達は爆風に巻き込まれた。
 殿を務めていたマディンにも爆発の際の風が、傍をすり抜けていく。
 足止めできたと思ったとき、爆発で煙が上がったのにまぎれて、まだ立っていることのできるピルグリムグドンがマディンに襲い掛かった。
 不意の攻撃にマディンは避けきれず、今まで狐グドン達の小さな攻撃を受けていたのが仇となったか、深手を負ってしまう。
 そんな彼を支えて一行はその場を離れる。
 やがて狐グドン達の姿が裸眼では確認できなくなった頃、キサとミアは撹乱させるための矢を居るのは止めて、逃げる方に集中した。

 回復が付きかけ、重傷者が出ては仕方がない。
 そう諦めをつけながら、一行はもと来た道を同盟に向けて戻り始めるのだった。

終。


マスター:暁ゆか 紹介ページ
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作成日:2006/11/16
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重傷者:紅焔の・マディン(a34736) 
死亡者:なし
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