≪赤茶けたテント村≫忘れられた村と忘れられた街道



<オープニング>


 それは、小さな村だった。
 小さな子供達が崩れかけた家と家の合間を駆け回り、父親らしき人物が汗を拭いながら作物を刈る。
 畑に育った食物は決して多くなく、痩せた芋を掘り出しながら父親は小さく息を吐く。
 旅団、赤茶けたテント村の一同が足を踏み入れたのは、そんな村だった。
「酷ぇな」
 ――誰とも無く、呟く。それほどに村は荒れていた。

 彼等がこの村にたどり着いたのは、偶然に近い。交易のためにテント村から少し離れた村へ出かけた時のことだった。
 必要なものを購入し、帰ろうとしたその時。村と村を繋ぐ中央辺りに、雑草に埋もれた道があるのを発見したのだ。
 等間隔に並ぶ石が、膝あたりまで伸びた雑草に覆い隠されている。もう数十年と使われていないような道だ。
 ――そんな状況に、好奇心が疼かないはずが無かった。
 赤茶けたテント内でメンバーを集い、道亡き道を進む。壊れた橋のある川を渡り、右手に広がる森を見据え――時折姿を見せるグドン達を切り捨てて。そうして数日進んだ先にあったのが、先の小さな村であった。――村があるとは思わず、冒険者達は目を剥いてその村の様子を眺めた。荒れた村、だった。
「……おお、人じゃ」
 と、村に居た一人の老人が呟いた。駆け寄ると、ありがたやと祈るような仕草で彼等を拝む。どうしたのですか、と等と老人は目尻と頬に深い皺を刻みながら笑って言った。
 この村に人が来るのは数年ぶりの事じゃ、と。
「詳しく、お話聞かせていただけませんか?」
 旅団長のレイクスが、代表として問い掛ける。と、その前に家へいらっしゃいと老人は壊れかけた家へと彼等を招待した。雑草を乾かして作ったような渋い茶が振舞われ、老人はこれ位しかだせんですまんのと眉尻を下げて悲しげに告げた。
「あの道を通ってきなさったんなら、途中でグドンに出会いましたろ」
 古ぼけた切り株で作られた椅子に腰を落としながら、老人がゆっくりと聞いた。一行が頷けば、老人はそうじゃろうと呟いてもう一度頷く。
 あのグドンが出た辺り、そこにグドンの群れが住み着いているのだという。しかも、それは数十年も前の事だという。
 近くの村へ行き助けを求めるにも、道はあの小さな道しかない。しかも距離も長い為、安全を考えると中々村から出ることが出来なかった。そうして既に数十年、彼らはこの村の中だけで暮らす事となったのだ。
 元々は作物も良く育つ土地だったという。けれど、住み着いたグドン達が時折田畑を襲い、荒れ続けた結果食物も思うように育たなくなった。今年は特に作物の出来が悪く、飢えも覚悟していた所だったのだという。
「通りすがりの方に頼むのは非常に心苦しいのじゃが、――頼む。また街道を抜けて、冒険者の方々にグドン退治を頼んで欲しいんじゃ」
 ――本当は、もっと早くに頼むべきであった。と、腰を曲げた老人は頭を垂れた。
「それじゃあ、街道のグドンを退治すれば良いんですね?」
「……なんじゃと?」
 レイクスの問いに、老人の目が丸くなる。ぱちぱち、と瞬きをする老人に、旅団員達は優しく笑って見せた。
 ――自分達は、冒険者です。だから、その仕事を請け負わせて欲しい。
 小さな小さな村、その生命線となるはずの道。この道を、このまま忘れさせていいはずが無い。
 ――行こう。と、一同は草の生い茂る道を踏みしめた。
 総ては誓いの為に。人々の、為に。

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参加者
業の刻印・ヴァイス(a06493)
紫龍摩天楼・セシム(a08673)
銅の彷徨人・レイクス(a24991)
銀蒼の癒し手・セリア(a28813)
硝子の剣・ルナ(a29459)
焔をはらむ風と共に・セルシオ(a29537)
ザ・フール(a30009)
無限のイブクロ・エル(a32875)
白き金剛石のヒト・ミヤクサ(a33619)
姫揚羽・ミソラ(a35915)
NPC:静寂を破る刀剣・グラック(a90317)



<リプレイ>


「成果を期待しているぞ!」
 森へ向う仲間たちの背を見送って紫龍摩天楼・セシム(a08673)がひらりと手を振った。振り返れば、既に村人の避難を行う仲間達の姿が目に入る。
 グドンらの来襲は何時になるか分からない。万が一を考えて家へに篭もる事となった村人たちは瞳を微かに震わせていた。
「大丈夫ですよ」
 と、姫揚羽・ミソラ(a35915)が柔らかく笑う。皆とならば失敗する筈が無いと確信にもにた仲間達への信頼を胸にミソラは村人に微笑む。
「依頼をしたくても出来ない事もあるんですね」
 柵作り用の木材を切り倒す許可を得るべく村人と交渉をしていた探求する銀蒼の癒し手・セリア(a28813)が荒れた田畑を見て小さく呟いた。
 ランドアースは、とても広い。知らなかったでは済まない事もあるのだと微かに痛む胸を押さえてセリアは静かに誓った。こうやって気付くことが出来たのだから、謝るのではなく全力で守る為に頑張ろう。
「人里近くに巣食うと厄介この上ねーな」
 皆を避難させ終えて、フールはぐるりと村を見渡した。村はとても小さくて、狭い。既に何度となくグドンに襲われたであろう村は、酷く荒廃している。厄介だ、ともう一度呟いて雑草に埋もれた道を見据える。
 村に残った彼等は柵を作り待つ事となっていた。一時的なもので気休め程度にしかならないだろうが、有った方がマシだろう。
「柵と云ったら木だな。任せた! フール!」
「力在るんだから逃げるなよ、セシム」
 肩を叩き傍観しようとしたセシムの腕を逆にぐいと引き寄せ、フールらは柵の材料を探しに向う。村の近くにある森へ赴き幾つかの木々を切って行く。主にセシムが。
 木々を集めたら次は村への運搬だ。村を守る為に残ったのだから森に延々と居る訳には行かない。
 ここは一気にいかねえと、とフールがニヤリと笑んだ。
 ふん、と拳を握り締めれば途端に肉体が膨張していく。固く鍛えられた筋肉に身を纏わせ、フールはひょいと木々を持ち上げる。
「見よ、この溢れんばかりのポゥワァー! 某ちんまい人とは違……ギャー!」
 ――何処からともなく現れたリングが、フールの脇腹を抉ったらしい。危険、危険。
「ガンガン運べますよ! 任せてください!」
 体には自信があると、やり取りを楽しげに見ながらミソラが体躯に似合わぬ力で木々を運んでいく。二人を中心に木々が幾つも村へと運び込まれた。あとは、組み立てて行くだけだ。
 見回りを交代しながらの柵作り、作り方を聞いたり教えたり和気藹々とした雰囲気ではあるが、身にまとう緊張は消えることが無い。
 柵を作る手を止めて、セリアは遠眼鏡を覗き込む。
 がさり、と雑草が揺れた。
 その奥に姿を現すは――犬グドン。
「来ました」
「グドンか!」
 一つ吼えたフールが地面を蹴り出し声に反応したミソラがそれに続く。ピルグリムグドンらしき個体は無い。先制とばかりにヨイチが矢を放てばグドンらの足元で爆音を轟かせる。
「応急の柵じゃがどれだけ持ってくれるか」
「柵はやってもいい。が、他にやってみろ! 俺等が許さん!」
 出来かけの柵を持……とうとして失敗したセシムが指を一つ鳴らしつつ隠れる横で、ルナが細身の剣を一つ振り下ろす。光を走らせ跳ぶヨイチの矢とルナの生み出したリングスラッシャーが地を駆けて足止めを謀る。
 その視界の端に先に駆け出していたフールの背が目に入った。気合の入る彼の背を押すように、ルナが高らかに声を上げる。
「行けフール! 存分に働いて来るが良い!」
「ああ、援護頼むぜ!」
 勿論だと返答を返したフールが一太刀目を大きく振り下ろす。慌て蹈鞴を踏むグドンらを即座にミソラが流れるような槍捌きで突き崩した。その二人が身を翻したタイミングにあわせルナが放った衝撃破が打ち込まれ、空からはセリアの放った黒い針が雨のように注ぐ。
「しっかりやらんかぁ!」
 何故か後衛に残ったままのセシムを除けば好調な滑り出しであろう。――セシムもとぼとぼ前線へ向ったようだ。
 絶えず襲い来るグドンを見据えてフールとミソラが武器を構える。グドンの量が増えれば村へと到達される可能性は増える。早く多くを巻き込むような一撃が必要だ。
「柵ふっ飛ばさねーように注意しねーと」
 ミソラが牽制とばかりに槍を繰り出す横でフールが次の一撃の為に肉体を大きく増強させていく。後方からはルナの衝撃波が飛び、村へ近づこうとしたグドンの出鼻を挫く。そしてセリアの体から溢れた淡い虹色の光が仲間たちの傷を直していく。
「戦う力がある事を誇る訳ではない」
 冒険者として戦い続ける日々を思いルナが小さく呟いた。誰もが冒険者への道を選べる奉仕種族の居ない同盟という地。冒険者など化物のようなものだ、とルナは胸中で呟いた。強大な力を持つ自分達は日々新たな力を得て強くなっている。けれどそれは自分の為にある力ではない。総ては武器を持つ事を選ばなかった人が、この先も持たずに生きられるように――皆が幸せで暮らしやすい、暖かくて柔らかい世界に近づけるようにする為のものだ。
 自分達の力は、総ては力なき民の為にあるのだ。
「守るべきものは守らなきゃ。だから、全力で頑張る!」
「出来る事はやんねーとな!」
 ミソラとフールが声を重ねて大地を力強く蹴り出す。ミソラの突き出す美しい穂先が軽やかに穿ち、逃れたグドンはフールの増強された筋肉から生み出された竜巻に天高く舞う。
「村には絶対に入れませんし、これ以上の手出しはさせませんから」
 誓いめいたセリアの言葉が風に揺れる雑草の音色を切り裂く。生み出された黒い針が言葉を形にするが如くグドンらに降り注がれる。
「やっぱ俺、こういう仕事の方がやる気出るぜ」
「我等には相応しい戦場じゃろうて」
 冒険者らしい仕事だとばかりに言えば皆が一つ頷きを返す。残るグドンはあと数体、指先に力を込め足を踏み出しながら――総ては力無き者の助けとなる為に、彼らは大きく吶喊した。


「いざ出発だよ!!」
 元気一杯の無限のイブクロ・エル(a32875)が拳を突き上げて先頭を歩み一行はグドンが住み着いたといわれている森へとたどり着いた。鬱蒼と木々が立ち並ぶ森は視界が悪く何処にグドンが居るのか検討もつかない。
 業の刻印・ヴァイス(a06493)が村人から借り受けた地図を睨み、有っていると一つ頷く。
 虱潰しに行きましょう、と交渉人は歌姫を愛す・レイクス(a24991)が告げて一同は森へと入っていく。未開の地に似た森は草が侵入を防ぎ少し歩き辛い。
 少し先を見てくるとヴァイスは身を草の中に溶け込ませながら静かに足を進めた。
「ピルグリムを放置した選択、高くついたな」
 当時の選択としては正しかったのだけれど、とヴァイスはゆるく頭を振る。繁殖力を持つグドンにピルグリムの力が合わさった強大な敵、恐怖はグドンとの比ではない。
 だが、今更言っても仕方が無い――今は目の前の村を守ることが先決だ。
「人々が行き交った道が、記憶から消えてしまうのは悲しすぎますからね」
 唇に歌声を乗せてグドンらの居場所を聞いていた焔纏風往・セルシオ(a29537)が呟くように言った。何年もかけて作り上げられたであろう道や村。総てが消えてしまう前にまた村人が安心して街道を使えるよう、セルシオは懸命に足跡や草の倒れ具合を調べる。
「――忘れられた地」
 ふと後ろを振り向いたコッペリア・ミヤクサ(a33619)が村を思い出してそう呟いた。
 総ての人を救うことは難しい。同盟領は広がり冒険者も民も数多く増えた。それでも予測できぬ事件には対応出来ないし。今は前を見据えて出来ることを行うしかない。
「この先、荒れた草原があるそうです。その辺りが怪しいかと」
 セルシオが動物から得た情報を元にヴァイスが静かに確認に向う。そこには数体のグドンが群れながらぼんやりと宙を見ていた。まだ此方には気付いていない。
 一度戻り報告をしたヴァイスはツェペシュへ新たな外装を付け加えながら前を見据える。ミヤクサが虹色に変化した黒き炎を背負い準備を整えた。行こうと足を踏み出せばがさりと足元の草が音を響かせた。
「ボクのご飯を奪う奴は許さないよ!」
 ぐうとなったお腹に耐えながら、エルは黒い針の雨を勢い良く降らせる。今回は一仕事終えてもご飯が待っている保障は無い。針の雨を潜り抜けながらヴァイスやレイクスの放つ気の刃がグドンらの体目掛け駆け抜けた。広場に屯していた数対は直ぐに絶命する。
 だが、当たり前のように戦闘は続いた。広場の奥に小さな洞穴が見えそこから数十体というグドンが姿をあらわす。中心に、一際異様な雰囲気を纏った一体――ピルグリムグドンの姿。
 セルシオの指示でグラックが風を生み出せば、新手から打ち込まれた矢の一本が阻まれ戻っていく。
「グドン邪魔だよ! 黒い飴の力で散っていけだよ!」
 イントネーションは違うが、先ずはグドンを一掃とばかりにエルの黒い針が舞った。
「二人とも敵を引き付けてくれないか?」
 一つ声をかけたヴァイスがその場から素早く離れた。頷いたセルシオが悟られぬようピルグリムグドンとの距離を詰め、焔の紋様を舞わせるように蛮刀を一閃する。剣の舞から数対が逃げるように駆け出せばその進路を防ぐように気の刃が飛ぶ。
「っと……ここから後ろには通してあげませんよ?」
 鋼糸を構え術士とグドンらの間に入ったレイクスが宣言するように告げた。
 黒い針が降り、剣が舞い、空に描かれた紋章から光が降り注ぐ。群れていたグドンの大半を消し去った後残るのは、ピルグリムグドン一体のみだ。
「少しでも、皆さんの明日への夢を実現させる為に!」
 疲労の溜まった仲間達を癒すように、ミヤクサの体から虹色の淡い光が溢れ出す。癒えていく傷を感じながら、セルシオの蛮刀を振るいピルグリムグドンの腕を捉えた。
 後方からレイクスが不幸色のカードを放つ。ピルグリムグドンの体が微かに闇色に変化した瞬間、――ヴァイスの槍が背から腹へと貫通する。全くの死角外、足音も草の音も、武器を振るう音すら隠した一撃は脳までも狂わせて大きな隙を作り上げる。
 幾つもの誓い、願い、思いを乗せた攻撃がの身を穿ち、断末魔の声を漏らす間もなくピルグリムグドン崩れた。異型の触手も地面に萎え転がる。
 一陣の風が通り過ぎ木の葉の音を響かせる。言い様もなく爽やかで、静かな音色だった。
「残りがいないか探しに行くよー!!」
「グドンの巣も片付けてしまった方が良いでしょうね」
 仕事はまだ終っていない。街道に安全を齎すには、まだやることは幾つもある。


 荒れた街道が生き返るように橋作りに必要な木材を求め木を切り倒す。
「やっぱりここはお約束のアレをやらないと。倒れるぞー!!」
 セルシオの声が森中に響き渡り小鳥が慌てたように飛び立つ。大地を揺るがして倒れた木は、橋に丁度良さそうな大きな木であった。
 セリアが村人から借りた工具を皆に渡し、大木を橋の形へと近付けていく。街道の建設はグリモアガードで慣れてますからと微笑みながらセリアが言えば、俺もとヴァイスが少し遠い目をした。
 ミソラは軽やかな鼻歌を響かせる。グドン退治も終わり気が楽になったのか、足取りも歌声も踊るように楽しげだ。
「ノソリンが通れるぐらいにはしたいね」
「荷車が通れる程度にはしておかないと品物が運べませんからねぇ」
 荒れた道へ木材を運びながらヴァイスとレイクスが言葉を交わす。ノソリン車が通れるようになれば、荒れた村だって交易の盛んな町へと変わっていくかもしれない。
 二人の言葉を耳にして、草刈を続けていたルナがふと村の方向を見つめた。
「特産品の一つもあれば良いのじゃが」
「確かに、名物とかがあったら村の発展に役立つんだけど……何かあるかな?」
 道が繋がっても売る物がなければ発展には繋がらない。だがそれは冒険者達だけではどうにもならぬ事だ。

「もう大丈夫だから安心してほしいよ?」
 柵を綺麗に廻らせた村でエルが持ち込んだ豚汁を振舞っている。奥には村の畑仕事を手伝うフールの姿も見えた。少し離れた場所では疲弊し動けない村人たちを勇気付けるようにミヤクサの柔らかな歌が響きわたる。溢れる光が空っぽだった腹を満たし生きる気力を分け与えていた。
 歌い終えたミヤクサが、何かに気付いて子供達の元までかけていく。ポケットからハンカチを取り出した彼女は地面に膝を付け、泥で汚れた子供たちの頬を優しく拭って微笑んだ。
「綺麗になりましたね」
 子供達は豚汁を大事そうに抱えながら、太陽のような笑顔で大きく頷いた。
 橋作りを終えた仲間達が戻ってくる。お疲れ、と相棒の頭をくしゃりと撫で――ようと頑張るフールの横で、暇そうなセシムにセルシオが剣の素振り(に見せかけた草刈)を薦めている。
「……ああ、有難うございます、有難うございます」
 そう言って彼らを迎えたのは、最初に出迎えてくれたあの老人であった。覇気の無いあの時の表情と違い、今は嬉しそうに頬へ皺を刻み、感謝で涙を零しそうな様子だ。有難うございます、と幾つも繰り返す老人に呼応するように、村人たちから感謝の言葉と幸せそうな笑顔が幾つも向けられた。
 老人は村を代表してもう一度礼を述べて、少し悲しそうな顔で言葉を続ける。
「お礼をしたいのですが、ご覧の通り荒れた村でしての」
「特産品とかは何かないのですか?」
 ミヤクサの問いに、彼はううむと唸って俯いた。難しそうな表情に冒険者達の表情も些か曇りはじめる。
「――腐るほど有る物であれば、一つだけ心当たりが」
 老人に案内されるがままに道を進めば、蔓の張り巡らされた場所へとたどり着いた。木々ににまで巻きつき成長しようとする植物、レイクスが目を細めて問う。
「……葛?」
「さよう。薬草として程度しか使用法はありませぬが……」
「いや、でも葛粉とかに加工すれば、特産品になるんじゃないか?」
「葛粉、とは」
 老人は驚いたように目を瞬かせた。葛は葛粉の原料となるもので、葛粉は加工すれば色んな菓子にも姿を変える。この村の人は葛粉への加工方を知らなかったようだ。

 村は新しい交易品を手に入れ、冒険者も沢山の葛を手に村を後にする。また様子をみにこようとルナが提案すれば、皆大きく頷きを返した。
「自分から足を運んで見るのも必要なのかもしれませんね」
 意見を交わしあうだけでなく自ら動く。何かを助けたり救ったりするには、それが大切なのだとセリアは自分の胸に刻み込むように言葉を紡ぐ。
 忘れられかけていた村は生き返り、新たな交易品と道を得て――これからは笑顔溢れる村へと変わるだろう。入り口を塞いでいる雑草を刈り取り、大きな街道と新しい道を繋ぐ。そしてその入り口へ、セルシオが手作りの道標をぐいと立てる。
「これでもう忘れられたりしないでしょう」
 村の名前は『ヨシノ』。これから有名になる、かもしれない。


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作成日:2006/11/23
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