グドン地域大制圧戦:North Land



<オープニング>


●グドン地域大制圧戦
 ランドアース中央部に広がるグドン地域。
 この、大繁殖したグドンが棲息する荒れ果てた森林地帯は、獰猛なトロウル王国から自国を護るために、北方セイレーン王国がグドンを養殖して作り上げたものであった。

 しかし、グドンの繁殖力を制御する事など出来よう筈も無い。
 一度解き放たれたグドン達は、その繁殖力を最大の武器として急速に棲息範囲を広げていったのだ。
 グドン地域は、それ自体が生物であるかのように、森を喰らい大地を荒らし、大陸中央部を分割するまでに巨大な物となってしまったのだ。
 そして現在、グドン地域はピルグリムグドンの繁殖により、より危険な場所へと変貌を遂げている。

 荒れ果てた森の奥深く。
 そこへ分け入る事は、同盟諸国の冒険者であっても命を掛けた冒険となる。
 だが、このグドン地域のほぼ中央に、北方セイレーン王国の遺跡である『古代の遺跡図書館』が存在するという。

 古代ヒト族の残した叡智を得る事ができれば、トロウルの崇める大神ザウスに関わる真実を知る事ができるかもしれない。
 この叡智は、グドン地域を切り開き制圧する事でしか得る事はできない。

 北方セイレーン王国の協力を受けつつ、冒険者達はグドン地域へと足を踏み入れるのだった。

※※※

「皆様、お集まりいただけたようですね。
 先日行われた北方セイレーン王国への使節派遣については、皆様も良く覚えていると思います。
 最も興味をひかれたのは、やはり『グドン地域の真ん中にあるエギュレ神殿図書館の禁書庫』でしょうか。
 トロウルとの決戦を控え、この禁書庫の情報は是が非でも手に入れなければならないでしょう。
 レルヴァ大遠征時のザウスの雷の悲劇を繰り返さない為にも……」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、沈痛な面持ちでそう言うと、集まった冒険者達に向き直る。

「そこで、今回の依頼となります」
 強い意志を湛えた瞳で冒険者達を見たユリシアは、酒場のテーブルに地図を広げると、その中央に大きな丸を描いた。
 そして、一呼吸おいて
「このグドン地域を、地図より消すか……少なくとも半分の大きさにして下さい」
 と言ったのだった。

「グドン地域は、北方セイレーン王国、旧モンスター地域(死の国周辺)、トロウル王国の3つの地域に囲まれています。
 今回の作戦では、北方セイレーン王国側からと旧モンスター地域側からの2つの方角から、グドン地域を制圧していく事ができます」
 ユリシアの説明を要約するとこうなる。
 侵入路の一方、セイレーン王国側からの制圧部隊には、北方セイレーン王国の冒険者が同行し、道案内の役目を負ってくれる。
 彼らの案内で、セイレーン王国の幾つかの拠点を奪還していくのが役割となる。
 これらの拠点は、元々セイレーン王国の施設だった事もあり、拠点からグドンを一掃した後は、セイレーン王国へと返還する事になるだろう。
 もう一方、旧モンスター地域からの制圧部隊は、グドン地域の荒地に巣くうグドン達を殲滅して同盟諸国の領土を拡張する事を任務とする。
 北方セイレーン王国の冒険者は同行しない代わりに、こちら側で制圧した地域は、北方セイレーン王国より譲り受けて同盟諸国の領土とする事ができるだろう。
 そして、それとは別に、グドン地域の奥深くに入り込み『エギュレ神殿図書館』を探索する部隊も編成される。
 グドン地域の制圧が進めば比較的容易に中央部に入り込めるかもしれないが、グドン地域の奥地で孤立してしまう事に変わりは無い。引き際を誤れば、帰還する事さえ難しくなってしまう危険な任務となるだろう。

「グドン地域の中央部に近づけば近づくほど、ピルグリムグドンの比率が高まってくると予測されます。詳しい説明は他の霊査士からも行なわれると思いますが、充分に気をつけるようにお願いしますね」
 そう言うと、ユリシアは地図をくるくるとしまうと、冒険者達にむけて一礼したのだった。

●North Land
 楽譜に色々と記号を書き足しながら、永き曲を独り紡ぐ霊査士・ニキータ(a90138)は冒険者を待つ。
「ん……こんなものかな、と。これから北方セイレーンの皆の為に尽力して欲しい」
 集まった冒険者達に振り向かず、五線にまた何か書き加えた。
「戦場となる場所は、それなりに大きな城砦とそれを囲うような大きな町の二つだ。大規模な砦の町だったようだね。町と城砦、併せて100体程の鼠グドンと4体のピルグリムグドンが住み着いている。一グループで両方に攻撃を仕掛けるのは流石に困難と判断した。そこで、完全に二つに分けて町と城砦を同時に攻撃を掛ける。そう、いつものト音の右手とヘ音の左手だ」
 そう言いながらニキータは楽譜にエンドを記した。
「町の状況と城砦の状況、両方を説明するから、ちゃんと聴いてくれよ」
 と言い、ニキータは鍵盤に指を滑らす。

●四角と四つ、L字と十字
「さてと、まずは両方に共通する基本的な事を説明しよう。町は城砦のベッドタウンのような感じで、町の周囲には高い石壁と乾いた堀の二つで囲まれていて、その石壁が城砦までに繋がっている。う〜んと、こんな感じかな」
 ニキータは白紙の楽譜を四重に折り畳み、広げる。折り目を境に、楽譜には同じ面積の四角形が四つ出来ていた。
「この楽譜の周囲の辺が石壁と堀で、折り目が町を四つに仕切る街路で、折り目で出来た北西の四角形が城砦で、残りの三つの四角形で町が構成されている……少し分かりにくいかもしれないけど、町と城砦の位置関係は大体こんな感じだね。それと、石壁には東と南だけに、荷車が余裕で通る程度の出入り口があり、東側だけに架け橋が下ろされている。南だけ架け橋が下ろされておらず、開いていないよ」
 今の説明で正しく伝わってくれるといいんだけどなぁ、と呟きつつ説明を続ける。
「城砦は、街路沿いに大きなL字の深い堀が作られている。と言っても、堀は外回りの堀と同じく乾いているし、城砦への入り口である架け橋は下ろされっぱなしだ。架け橋は街路が丁度、十の字に交わる辺りに掛かっている。進入するならそこからだね」
 何故、堀が城砦を更に囲う様に作られたのか、と言う質問は城砦の説明の時に教えるらしい。
「100体程度の鼠グドンが、町と城砦にどのくらい分かれているかは分かっていない。これは、君達の動き方次第で若干変化するだろう。武装は……槍と鞭と弓の三種類を確認した。城砦に放棄されていた武器を持ち出したようだね。後、あちら側の要望でグドンはあまり逃がさないで欲しいとの事。自分で蒔いた種とは言えまぁ、グドンの繁殖力は半端じゃないから、全滅させた方が喜んでくれるんじゃないかな。そして、ピルグリムグドンは町と城砦にそれぞれ二体ずつ、これは確実だ」
 町の方が広い事を考えれば、町の方にグドンが多いような気もするが……?
「そうそう、君達には紋章術士の少年がお目付け役として同行する。名前はヨルマと言う、非常に篤実で律儀で礼儀正しい……悪い言い方をすれば、北のセイレーン達に欠けているもので固められた、そんな性格かな。唯、飽くまでお目付け役だから、戦闘には介入しないけどね」
 セイレーンにしては珍しい性格である事は確かだ。
これで、共通部分の説明は以上だ。さて、これから町と城砦の説明に入ろう」

●町に吹く風
「では、町の方の説明に入ろう」
 短いメロディを奏で、意識を集めさせる。
「家屋は全部で60棟程。東西南北の出入り口から真っ直ぐに伸びる街路できっちりと三等分されているものの、デザインを強調した家が多い所為か、町の中は迷路の様に迷いやすい。家の中にグドンが住み着いている事も考慮すれば、少し骨かもしれないね」
 それに、グドンの総数がどれほどか分からないのである。
「町中にいるピルグリムグドンはなかなかの強敵だ。一体目は背中から突き出た管が特徴で、敵意を感じたら管から奇妙な霧を発生させる。この霧の中ではアビリティが使えなくなるから気をつけて欲しい」
 一筋縄ではいかない。だが、工夫すれば必ず勝てる相手ではある。
「もう一体目は、右肩から伸びている無数の触手で攻撃してくる。厄介なのはその触手、意外と長い上に何本も生えているから、複数の相手を纏めて叩きつける事が出来るようだ。問題はこの二体が一緒に行動している事が多いから、なかなか手を焼かされるだろう」
 街中が迷路状になっている事もあり、堅実な戦法が望まれる。
「それと、鼠グドン共は戦況が不利になってくると、城砦の方へ駆け込むか、町の外へ逃げようとするかもしれないな」
 生き延びる為に逃げる、それは冒険者達も同じなのだがグドンとなれば流石に煩わしい。
「町側の説明はこれで以上。後は君達の戦い方で全てが決まるよ」
 その台詞で、説明に終止符を打った。

!注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』という特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 永き曲を独り紡ぐ霊査士・ニキータ(a90138)の『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『誇り(pride)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。

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参加者
空を望む者・シエルリード(a02850)
銀の炎・キサラ(a04388)
ソニックハウンド・カリウス(a19832)
銀の剣・ヨハン(a21564)
夕闇に染まる白き大翼・トワ(a37542)
雲霧飄飄・ワイル(a38613)
流水円舞闘の使い手・オルガ(a49454)
赤眼の優男・アーバイン(a50638)


<リプレイ>

●東方より北の地に到る
 16人の冒険者達は、お目付け役と言う、一人のセイレーンの紋章術士と出会った。
「僕は、ヨルマ・パヌラと申します。短い間ですが、皆さんのお世話になります」
 そう言い、ヨルマと言うセイレーンは静かに頭を下げた。
 最初に握手の手を差し伸べたのは、流水円舞闘の使い手・オルガ(a49454)。
「この度は宜しく頼む。必ず成功させ、良い報告を持って帰れるようにしよう」
 オルガの心強い言葉にヨルマも握手を返しつつ、
「よろしくお願いします。皆様の御武運を期待します」
 更にもう一人、銀の剣・ヨハン(a21564)もヨルマに礼をする。
「私はヨハンと申します」
 ヨルマも同様にヨハンに礼をして返す。続けてヨハンは、
「これからの戦いでは、術士と離れないように行動していただけませんか?」
「皆様の戦い方をご覧になれるとならば願っても無い話です」
 少し考えれば、戦わない同行者を引き連れる必要は無いのだが、このセイレーンの少年は寧ろそれを喜んでいるようだ。
「あの、ヨルマさん。聞きたい事があるのですがいいでしょうか?」
 赤眼の優男・アーバイン(a50638)は筆記用具を取り出し、暫定的に作成した砦の町の地図を取り出す。
「これから赴く、例の町に関して何か知っている事があれば……」
 だが、ヨルマは申し訳無さそうな表情を浮かべ、
「申し訳ありません。これから赴く地は、僕も初めて訪れる場所なのです」
 お役に立てず申し訳ありません、と言葉を続けヨルマはアーバインに深く頭を下げた。

「それでは、案内致します」
 16人の冒険者達はセイレーンの冒険者を先頭に、荒涼とした大地にその一歩を刻んだ。
 
●北東より踏破せよ
 ヨルマの誘いにより、冒険者達は嘗て砦の町だった廃墟に辿り着いた。
「グドンと戦うのは正直な事を言うと初めてなんだよ」
 重厚な鎧を纏った仲間の後ろに付き、風来・ワイル(a38613)が言った。激しい戦いに慣れている他の冒険者達の動きに従い、自らも適切に動く必要があるのだ。
 すぐにそれぞれが適した隊列を組むと、冒険者達は町の中へと練り歩いて行った。
「足を引っ張らないように気をつけます。では、皆さんの健闘を期待します」
 同時に町の中央へ向かう別の冒険者達に、ヨルマは言った。

 入り口より進入しすぐに右側へ廻り、北東から攻撃を仕掛ける。
「これは確かに、迷いやすいかもしれないね」
 周囲を見渡し警戒しながら、空を望む者・シエルリード(a02850)が言った。町は迷路状、霊査士の説明通り家屋の間隔が広くなっているところもあれば、極端に狭い通路もある。
(「よくよく考えれば、当然の事ですね……」)
 周囲を取り囲う家屋の様子を見て、銀の炎・キサラ(a04388)は苦笑いを浮かべた。どの家もすっかり廃れており、壁に穴の空いた家など幾らでも見かける。
 デザインを重視した家屋が特徴的とは言え、北方セイレーンがこの辺りをグドン地域と定めてから長い時間が経つ。勝手に住み着いた鼠グドンが破壊した家屋もあるかもしれないが、どの家屋も酷く劣化していた。
 その時、どこからか矢が飛んできて、冒険者達の足元に刺さる。
「左側の家だ、一気に踏み込むぞ!」
 矢が飛んできた角度を見て、ソニックハウンド・カリウス(a19832)が鼠グドンの居場所を見抜いた。すぐに、魔氷と魔炎を纏い、矢を放ってきた鼠グドンにそのまま放った。

 家屋には運が良いか悪いか、矢を放ってきた鼠グドンしかいなかった。だが、カリウスが放った矢を受け、断末魔の悲鳴を上げた鼠グドンの悲鳴を聞きつけ、ぞろぞろと他の鼠グドンが集まってきた。
「なかなか一筋縄ではいかなさそうだね……」
 家屋に目印を刻み、夕闇に染まる白き翼・トワ(a37542)は仕方無さそうに呟き、太刀を抜き払う。
 すぐにヨハンの流水撃が放たれ、目に見える鼠グドンはすぐに一掃された。だが、隊列を為していた冒険者達の後方から、鞭を所持する鼠グドンが多めに現れた。
「失せろ……!」
 アーバインが放つニードルスピアに殆どの鼠グドンは倒れたが、新たに駆けつけてきた鼠グドンが逃げ腰になった。こんなところで逃がすわけにはいかない、トワとオルガは一気にグドンとの距離を詰めて、逃げようとする鼠グドンを切り払った。

「ヨルマさん、怪我は無い?」
「はい、お陰様で大丈夫です」
 ヨルマに声を掛け、シエルリードも仲間達を見る。戦いにくい場所での戦いとなったがそれは予想の範囲内。ピルグリムグドンが居たら話は変わっていたかもしれないが、回復アビリティの無駄遣いもなく済んだ。
「この辺りはもういないな……?」
 気配を探りつつ、カリウスは呟く。今の襲撃で鼠グドンは15体倒す事が出来た。それで暫く襲撃が無いとすれば、場所を変える必要がある。
「んでは次は南東辺りを調べんとな」
 簡易的な町の見取り図をチェックしながら、ワイルが皆に聞こえる様に言った。基より、酒場で探索する順番は決めてあるのだから、そろそろ頃合だろうと皆が判断していた。
「では、参りましょうか」
 アーバインがそう言うと、冒険者達は来た道を引き返した。
 念入りに周辺の気配を探りつつ、迷わないようにつけてきた目印を確かめる。そして何事もなく、町の北東方面から出る事が出来た。

●それは南東に潜む
 続けて、見取り図を確認しながら冒険者達は町の南東へと向かった。
「一応、この辺りに置いておきますか」
 先行する前に、キサラは風の通りがいい街路に、自ら持ってきた匂いのある食料を置いてきた。風上から食べ物の匂いを迷路状の町中へと運んでくれれば、潜んでいる鼠グドンを見つけやすくなるだろう。

 迷路状の町を歩く冒険者達。数歩歩けばすぐに目印をつけなければならないくらい入り組んでいる。
 道中で単体の鼠グドンを度々見かけては倒す事が出来た。だが、鼠グドンの悲鳴を聞きつける他の鼠グドンがやけに少なく感じられる。
「何でしょう……? グドンに統制は無いにしても妙ですね?」
 今まで倒してきた鼠グドンの数を書き足し、アーバインは呟いた。南東方面を歩いてそれなりに経ったが、倒してきた鼠グドンは想定数の半分にすら満たない。
「何か香ばしい匂いがしたような気がするねぇ……?」
 周囲を見渡しながらワイルが言った。皆も同様に確認すると確かに、微かにではあるが良い肉の焼ける香ばしい匂いがする。
 だが、すぐに緊張感がすぐに引き締まった。
 遥か先の方から、背中から二本の管を生やしたピルグリムグドンと、右肩から無数の触手が伸びるピルグリムグドンが、さほど広くは無い路地から曲がってきたのだ。
「先を取られたら不利だ、行くぞ」
 そう言いながらヨハンは、シルバーソードに新たな外装を付け足した。
「凍らせる、この一撃で……!」
 カリウスは狙いを定め、まだこちらに気付いていないピルグリムグドンのコンビの、背中から管が突き出ているピルグリムグドンに狙いを定め、矢を放った。
『ギャッ……!?』
 そのピルグリムグドンは、魔炎と魔氷を同時に受けて行動不能に陥った。もう片方のピルグリムグドンが冒険者達の存在に気付いた。
「あれは……」
 思わず前に出そうになったヨルマを、オルガが下がらせる。
「初めて見るのか? ピルグリムグドンだ」
 鋼糸に鋸状の外装を纏わせ、オルガは前に出た。

 右肩から触手を生やしたピルグリムグドンが奇声を上げると、少しずつだが鼠グドンが彼方此方から現れ始めた。
「厄介な感じだね……」
 そう言いながら、シエルリードは後方より現れた鼠グドンにエンブレムシャワーを浴びせかける。
 すぐにキサラは、ピルグリムグドンの近くへ駆けつけると、触手のピルグリムグドンにホーリースマッシュの一撃を叩きこんだ。
「避けられるようにして……!」
 同じく、トワも触手のピルグリムグドンを狙い、距離を取りながらソニックウェーブを放つ。
(「え、触手の方が先……?」)
 一瞬疑問に感じたもののアーバインは、魔氷で動けないでいる管を生やしたピルグリムグドンにブラックフレイムを放った。間違いなく厄介なのは、管を生やしたピルグリムグドンである。その為に先手を打ったカリウスがそのピルグリムグドンを凍らせたのだ。
「先に退いてもらう……!」
 更に、ヨハンのシルバーソードが触手つきのピルグリムグドンに振るわれた。
 冒険者達の一斉攻撃を受けたが、触手つきのピルグリムグドンは右肩の触手を一斉に冒険者達になぎ払った。数が多いそれは、前に立つ冒険者を巻き込む。冒険者達は足を踏みしめ、何とか苦痛を堪える。
「あああ……大丈夫かぁ?」
 不安になりながらも、ワイルは近くに来た鼠グドンの群れにニードルスピアを放ち、数を減らす。

●霧中の決着
 暫く凍り付いていた、背中に管を生やしているピルグリムグドンが、魔氷の束縛から解けた。
 そしてすぐに、背中の管から白っぽい異様な霧を噴出し、辺りを覆った。
(「これでも持った方だな」)
 ミラージュアタックを仕掛けようとしたが、オルガはすぐに普通の斬りに変更して触手のピルグリムグドンを狙う。
(「厄介な霧と知ってたけど……!」)
 シエルリードは霧から逃れるべく後退するが、前で戦う仲間達とは十分な距離を取らなければくなってしまった。前で戦う仲間達から下がってきてくれないと、高らかな凱歌は届かない。
 再びカリウスは管を生やしたピルグリムグドンに矢を放ち、再び凍らせるも霧が止む事は無かった。一度噴出した霧が掻き消えるまでまだまだ時間が掛かりそうだ。
 これを好機としたか、触手のピルグリムグドンが容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
 その為に、前衛の冒険者は殆どが一時後退せざるを得なくなったが、キサラはそれでも地面に足を踏みしめ、触手のピルグリムグドンを睨んでいた。
「もうこれ以上は痛めつけないで下さい……!」
 そう言い、キサラは触手のピルグリムグドンを袈裟から斬り付けた。
『――ッ!!』
 集中的に攻撃を受け続け、触手つきのピルグリムグドンは先に倒れた。
「後は……!」
 背中から管を生やしたピルグリムグドンは未だ凍らされながら、焔に焼かれていた。その隙を狙い、ヨハンとトワは同時に斬りつける。
 だが、それでもまだしぶとく、倒れる事は無かった。それどころか奇跡的にも再び魔炎と魔氷から逃れ、何と冒険者達から逃げ出そうとした。
「逃げるか!」
 霧の中にて即座にアーバインはブラックフレイムを放ち、管に命中させたが一瞬転倒しまたすぐに逃げ出したのだ。
「それよりも、今いるのを何とかせんと!」
 まだ残る鼠グドンに衝撃波を当てながら、ワイルが叫んだ。

 その後、霧にまみれながらも残りの鼠グドンを倒すことには成功した。すぐにシエルリードが高らかな凱歌を歌い、仲間達の傷を癒す。
「あっちは……確か、南西だ」
 ピルグリムグドンが逃げた方角と自分たちがいる位置を、見取り図で確かめながらトワが言った。
 南西方面は最後に探索する予定ではあるものの、ピルグリムグドンに逃げられるとは思わなかった。
「これでまだ、30体程度……どうなっているのでしょうか?」
 鼠グドンの死骸を数えつつ、アーバインは腑に落ちないものを感じずにいた。どう考えても、もっと鼠グドンの襲撃があってもおかしくないと想定していただけに、不安を感じずにはいられない。
 回復を終えた冒険者達は仕方なく、そのまま南西方面へと向かった。

●南西の屠殺者
 すぐさま、逃げたピルグリムグドンを追い南西方面へと向かった。面倒な事にあのピルグリムグドンは逃げながらも霧を生み出していた。お陰で霧を追い続ければ、確実に追い詰める事が出来ると皮肉な好機ももたらしている事にはなるのだが。
 アーバインが懸念した通り、どうにも鼠グドンの数が少なく感じられる。
「これで7体か……」
 ピルグリムグドンを追い詰めながらも途中で鼠グドンは見かけた。一度に遭遇する数はやはり少なく、城砦方面から離れたところから遭遇する事が多かった。
 北に見える城砦の位置を確認すれば、今居るところはかなり西寄りのようだ。もしかしたら、ピルグリムグドンは違うところに逃げたのだろうか?
 だが、袋小路の末にようやく、背中から管を生やしたピルグリムグドンを見つけた。3体のグドンを引き連れているが、もう逃げ場は無い。
「散々逃げといて……観念してもらおうか!」
「悪運もここまでです!」
 キサラとオルガが前に立ち、それぞれ武器を振るいピルグリムグドンに攻撃を仕掛ける。
「終わらせる、この一矢で!」
 そう言って、カリウスが放った矢はピルグリムグドンに突き刺さる。
『――ッ!!!!』
 余りにも声にならない悲鳴を上げ、ピルグリムグドンは絶命した。
 そして、残された3体の鼠グドンが一掃されるのに時間が掛かる事すら無かった。

 ピルグリムグドンを倒した後も南西方面を歩いてみたが、これ以上鼠グドンと遭遇する事は無かった。
「40体……!?」
 掃討した鼠グドンの数を数え続けてきたアーバインは不安に近いものを感じていた。2体のピルグリムグドンを撃破できたのはいいが、予定していた数より10体も足りないでいた。
「これ以上は意味が無いかもしれない、二手に分かれるぞ」
 ヨハンの提案により、冒険者達は二手に分かれて行動する事となった。役割分担がはっきりとしていなかった為、ヨハン・カリウス・ワイル・アーバインの4人が東門へ向かい、残りの4人が城砦前に向かう事にした。

 城砦前に向かった冒険者達が見たのは、架け橋の上で大勢の鼠グドンと戦う、もう片方の冒険者達だった。焼いた食べ物のいい匂いがする。この匂いに町中の鼠グドンが集まってきたとするなら、やけにグドンが少なく感じられたのも納得が行く。
「急いで助けに行きましょう!」
 その後、城砦の架け橋周辺の鼠グドンの死骸を数えたところ、60体近い鼠グドンの死骸が発見された。

●冒険者として
「皆さん、本当にお疲れ様でした。心からお礼申し上げます」
 そう言って、ヨルマは丁寧に頭を下げた。
「それと、皆様の戦いはお見事でしたが、最初から入り口付近に誰も立たせなかったのは何故ですか?」
 町側の冒険者と城砦側が倒した鼠グドンを合計すれば、きっちり100体になる為、逃走したグドンは居ない筈。だからと言って、もしかすれば町から逃亡していた鼠グドンもいたかもしれない。
「まあ、下手に人員を欠いてしまうのは危険でしょうから間違っていない選択だったと言えるかもしれません」
 ヨルマはそう言いながら、レポートにスラスラと色々と書き込む。
「何はともあれ、奪還を見事成功させて下さり本当に有難う御座いました。それと……」
 少し間を空けてから言った。
「皆さんの勇敢なる戦いをこの目に焼き付ける事が出来た事を、ヨルマ・パヌラとして感謝します」
 ヨルマの感謝の言葉を締めに、北方の地の拠点解放は無事に完了した。


マスター:壱又捌 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/11/23
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