<リプレイ>
●東方より北の地に到る 16人の冒険者達は、お目付け役と言う、一人のセイレーンの紋章術士と出会った。 「僕は、ヨルマ・パヌラと申します。短い間ですが、皆さんのお世話になります」 そう言い、ヨルマと言うセイレーンは静かに頭を下げた。 最初に握手の手を差し伸べたのは、流水円舞闘の使い手・オルガ(a49454)。 「この度は宜しく頼む。必ず成功させ、良い報告を持って帰れるようにしよう」 オルガの心強い言葉にヨルマも握手を返しつつ、 「よろしくお願いします。皆様の御武運を期待します」 更にもう一人、銀の剣・ヨハン(a21564)もヨルマに礼をする。 「私はヨハンと申します」 ヨルマも同様にヨハンに礼をして返す。続けてヨハンは、 「これからの戦いでは、術士と離れないように行動していただけませんか?」 「皆様の戦い方をご覧になれるとならば願っても無い話です」 少し考えれば、戦わない同行者を引き連れる必要は無いのだが、このセイレーンの少年は寧ろそれを喜んでいるようだ。 「あの、ヨルマさん。聞きたい事があるのですがいいでしょうか?」 赤眼の優男・アーバイン(a50638)は筆記用具を取り出し、暫定的に作成した砦の町の地図を取り出す。 「これから赴く、例の町に関して何か知っている事があれば……」 だが、ヨルマは申し訳無さそうな表情を浮かべ、 「申し訳ありません。これから赴く地は、僕も初めて訪れる場所なのです」 お役に立てず申し訳ありません、と言葉を続けヨルマはアーバインに深く頭を下げた。
「それでは、案内致します」 16人の冒険者達はセイレーンの冒険者を先頭に、荒涼とした大地にその一歩を刻んだ。 ●北東より踏破せよ ヨルマの誘いにより、冒険者達は嘗て砦の町だった廃墟に辿り着いた。 「グドンと戦うのは正直な事を言うと初めてなんだよ」 重厚な鎧を纏った仲間の後ろに付き、風来・ワイル(a38613)が言った。激しい戦いに慣れている他の冒険者達の動きに従い、自らも適切に動く必要があるのだ。 すぐにそれぞれが適した隊列を組むと、冒険者達は町の中へと練り歩いて行った。 「足を引っ張らないように気をつけます。では、皆さんの健闘を期待します」 同時に町の中央へ向かう別の冒険者達に、ヨルマは言った。
入り口より進入しすぐに右側へ廻り、北東から攻撃を仕掛ける。 「これは確かに、迷いやすいかもしれないね」 周囲を見渡し警戒しながら、空を望む者・シエルリード(a02850)が言った。町は迷路状、霊査士の説明通り家屋の間隔が広くなっているところもあれば、極端に狭い通路もある。 (「よくよく考えれば、当然の事ですね……」) 周囲を取り囲う家屋の様子を見て、銀の炎・キサラ(a04388)は苦笑いを浮かべた。どの家もすっかり廃れており、壁に穴の空いた家など幾らでも見かける。 デザインを重視した家屋が特徴的とは言え、北方セイレーンがこの辺りをグドン地域と定めてから長い時間が経つ。勝手に住み着いた鼠グドンが破壊した家屋もあるかもしれないが、どの家屋も酷く劣化していた。 その時、どこからか矢が飛んできて、冒険者達の足元に刺さる。 「左側の家だ、一気に踏み込むぞ!」 矢が飛んできた角度を見て、ソニックハウンド・カリウス(a19832)が鼠グドンの居場所を見抜いた。すぐに、魔氷と魔炎を纏い、矢を放ってきた鼠グドンにそのまま放った。
家屋には運が良いか悪いか、矢を放ってきた鼠グドンしかいなかった。だが、カリウスが放った矢を受け、断末魔の悲鳴を上げた鼠グドンの悲鳴を聞きつけ、ぞろぞろと他の鼠グドンが集まってきた。 「なかなか一筋縄ではいかなさそうだね……」 家屋に目印を刻み、夕闇に染まる白き翼・トワ(a37542)は仕方無さそうに呟き、太刀を抜き払う。 すぐにヨハンの流水撃が放たれ、目に見える鼠グドンはすぐに一掃された。だが、隊列を為していた冒険者達の後方から、鞭を所持する鼠グドンが多めに現れた。 「失せろ……!」 アーバインが放つニードルスピアに殆どの鼠グドンは倒れたが、新たに駆けつけてきた鼠グドンが逃げ腰になった。こんなところで逃がすわけにはいかない、トワとオルガは一気にグドンとの距離を詰めて、逃げようとする鼠グドンを切り払った。
「ヨルマさん、怪我は無い?」 「はい、お陰様で大丈夫です」 ヨルマに声を掛け、シエルリードも仲間達を見る。戦いにくい場所での戦いとなったがそれは予想の範囲内。ピルグリムグドンが居たら話は変わっていたかもしれないが、回復アビリティの無駄遣いもなく済んだ。 「この辺りはもういないな……?」 気配を探りつつ、カリウスは呟く。今の襲撃で鼠グドンは15体倒す事が出来た。それで暫く襲撃が無いとすれば、場所を変える必要がある。 「んでは次は南東辺りを調べんとな」 簡易的な町の見取り図をチェックしながら、ワイルが皆に聞こえる様に言った。基より、酒場で探索する順番は決めてあるのだから、そろそろ頃合だろうと皆が判断していた。 「では、参りましょうか」 アーバインがそう言うと、冒険者達は来た道を引き返した。 念入りに周辺の気配を探りつつ、迷わないようにつけてきた目印を確かめる。そして何事もなく、町の北東方面から出る事が出来た。
●それは南東に潜む 続けて、見取り図を確認しながら冒険者達は町の南東へと向かった。 「一応、この辺りに置いておきますか」 先行する前に、キサラは風の通りがいい街路に、自ら持ってきた匂いのある食料を置いてきた。風上から食べ物の匂いを迷路状の町中へと運んでくれれば、潜んでいる鼠グドンを見つけやすくなるだろう。
迷路状の町を歩く冒険者達。数歩歩けばすぐに目印をつけなければならないくらい入り組んでいる。 道中で単体の鼠グドンを度々見かけては倒す事が出来た。だが、鼠グドンの悲鳴を聞きつける他の鼠グドンがやけに少なく感じられる。 「何でしょう……? グドンに統制は無いにしても妙ですね?」 今まで倒してきた鼠グドンの数を書き足し、アーバインは呟いた。南東方面を歩いてそれなりに経ったが、倒してきた鼠グドンは想定数の半分にすら満たない。 「何か香ばしい匂いがしたような気がするねぇ……?」 周囲を見渡しながらワイルが言った。皆も同様に確認すると確かに、微かにではあるが良い肉の焼ける香ばしい匂いがする。 だが、すぐに緊張感がすぐに引き締まった。 遥か先の方から、背中から二本の管を生やしたピルグリムグドンと、右肩から無数の触手が伸びるピルグリムグドンが、さほど広くは無い路地から曲がってきたのだ。 「先を取られたら不利だ、行くぞ」 そう言いながらヨハンは、シルバーソードに新たな外装を付け足した。 「凍らせる、この一撃で……!」 カリウスは狙いを定め、まだこちらに気付いていないピルグリムグドンのコンビの、背中から管が突き出ているピルグリムグドンに狙いを定め、矢を放った。 『ギャッ……!?』 そのピルグリムグドンは、魔炎と魔氷を同時に受けて行動不能に陥った。もう片方のピルグリムグドンが冒険者達の存在に気付いた。 「あれは……」 思わず前に出そうになったヨルマを、オルガが下がらせる。 「初めて見るのか? ピルグリムグドンだ」 鋼糸に鋸状の外装を纏わせ、オルガは前に出た。
右肩から触手を生やしたピルグリムグドンが奇声を上げると、少しずつだが鼠グドンが彼方此方から現れ始めた。 「厄介な感じだね……」 そう言いながら、シエルリードは後方より現れた鼠グドンにエンブレムシャワーを浴びせかける。 すぐにキサラは、ピルグリムグドンの近くへ駆けつけると、触手のピルグリムグドンにホーリースマッシュの一撃を叩きこんだ。 「避けられるようにして……!」 同じく、トワも触手のピルグリムグドンを狙い、距離を取りながらソニックウェーブを放つ。 (「え、触手の方が先……?」) 一瞬疑問に感じたもののアーバインは、魔氷で動けないでいる管を生やしたピルグリムグドンにブラックフレイムを放った。間違いなく厄介なのは、管を生やしたピルグリムグドンである。その為に先手を打ったカリウスがそのピルグリムグドンを凍らせたのだ。 「先に退いてもらう……!」 更に、ヨハンのシルバーソードが触手つきのピルグリムグドンに振るわれた。 冒険者達の一斉攻撃を受けたが、触手つきのピルグリムグドンは右肩の触手を一斉に冒険者達になぎ払った。数が多いそれは、前に立つ冒険者を巻き込む。冒険者達は足を踏みしめ、何とか苦痛を堪える。 「あああ……大丈夫かぁ?」 不安になりながらも、ワイルは近くに来た鼠グドンの群れにニードルスピアを放ち、数を減らす。
●霧中の決着 暫く凍り付いていた、背中に管を生やしているピルグリムグドンが、魔氷の束縛から解けた。 そしてすぐに、背中の管から白っぽい異様な霧を噴出し、辺りを覆った。 (「これでも持った方だな」) ミラージュアタックを仕掛けようとしたが、オルガはすぐに普通の斬りに変更して触手のピルグリムグドンを狙う。 (「厄介な霧と知ってたけど……!」) シエルリードは霧から逃れるべく後退するが、前で戦う仲間達とは十分な距離を取らなければくなってしまった。前で戦う仲間達から下がってきてくれないと、高らかな凱歌は届かない。 再びカリウスは管を生やしたピルグリムグドンに矢を放ち、再び凍らせるも霧が止む事は無かった。一度噴出した霧が掻き消えるまでまだまだ時間が掛かりそうだ。 これを好機としたか、触手のピルグリムグドンが容赦なく攻撃を仕掛けてくる。 その為に、前衛の冒険者は殆どが一時後退せざるを得なくなったが、キサラはそれでも地面に足を踏みしめ、触手のピルグリムグドンを睨んでいた。 「もうこれ以上は痛めつけないで下さい……!」 そう言い、キサラは触手のピルグリムグドンを袈裟から斬り付けた。 『――ッ!!』 集中的に攻撃を受け続け、触手つきのピルグリムグドンは先に倒れた。 「後は……!」 背中から管を生やしたピルグリムグドンは未だ凍らされながら、焔に焼かれていた。その隙を狙い、ヨハンとトワは同時に斬りつける。 だが、それでもまだしぶとく、倒れる事は無かった。それどころか奇跡的にも再び魔炎と魔氷から逃れ、何と冒険者達から逃げ出そうとした。 「逃げるか!」 霧の中にて即座にアーバインはブラックフレイムを放ち、管に命中させたが一瞬転倒しまたすぐに逃げ出したのだ。 「それよりも、今いるのを何とかせんと!」 まだ残る鼠グドンに衝撃波を当てながら、ワイルが叫んだ。
その後、霧にまみれながらも残りの鼠グドンを倒すことには成功した。すぐにシエルリードが高らかな凱歌を歌い、仲間達の傷を癒す。 「あっちは……確か、南西だ」 ピルグリムグドンが逃げた方角と自分たちがいる位置を、見取り図で確かめながらトワが言った。 南西方面は最後に探索する予定ではあるものの、ピルグリムグドンに逃げられるとは思わなかった。 「これでまだ、30体程度……どうなっているのでしょうか?」 鼠グドンの死骸を数えつつ、アーバインは腑に落ちないものを感じずにいた。どう考えても、もっと鼠グドンの襲撃があってもおかしくないと想定していただけに、不安を感じずにはいられない。 回復を終えた冒険者達は仕方なく、そのまま南西方面へと向かった。
●南西の屠殺者 すぐさま、逃げたピルグリムグドンを追い南西方面へと向かった。面倒な事にあのピルグリムグドンは逃げながらも霧を生み出していた。お陰で霧を追い続ければ、確実に追い詰める事が出来ると皮肉な好機ももたらしている事にはなるのだが。 アーバインが懸念した通り、どうにも鼠グドンの数が少なく感じられる。 「これで7体か……」 ピルグリムグドンを追い詰めながらも途中で鼠グドンは見かけた。一度に遭遇する数はやはり少なく、城砦方面から離れたところから遭遇する事が多かった。 北に見える城砦の位置を確認すれば、今居るところはかなり西寄りのようだ。もしかしたら、ピルグリムグドンは違うところに逃げたのだろうか? だが、袋小路の末にようやく、背中から管を生やしたピルグリムグドンを見つけた。3体のグドンを引き連れているが、もう逃げ場は無い。 「散々逃げといて……観念してもらおうか!」 「悪運もここまでです!」 キサラとオルガが前に立ち、それぞれ武器を振るいピルグリムグドンに攻撃を仕掛ける。 「終わらせる、この一矢で!」 そう言って、カリウスが放った矢はピルグリムグドンに突き刺さる。 『――ッ!!!!』 余りにも声にならない悲鳴を上げ、ピルグリムグドンは絶命した。 そして、残された3体の鼠グドンが一掃されるのに時間が掛かる事すら無かった。
ピルグリムグドンを倒した後も南西方面を歩いてみたが、これ以上鼠グドンと遭遇する事は無かった。 「40体……!?」 掃討した鼠グドンの数を数え続けてきたアーバインは不安に近いものを感じていた。2体のピルグリムグドンを撃破できたのはいいが、予定していた数より10体も足りないでいた。 「これ以上は意味が無いかもしれない、二手に分かれるぞ」 ヨハンの提案により、冒険者達は二手に分かれて行動する事となった。役割分担がはっきりとしていなかった為、ヨハン・カリウス・ワイル・アーバインの4人が東門へ向かい、残りの4人が城砦前に向かう事にした。
城砦前に向かった冒険者達が見たのは、架け橋の上で大勢の鼠グドンと戦う、もう片方の冒険者達だった。焼いた食べ物のいい匂いがする。この匂いに町中の鼠グドンが集まってきたとするなら、やけにグドンが少なく感じられたのも納得が行く。 「急いで助けに行きましょう!」 その後、城砦の架け橋周辺の鼠グドンの死骸を数えたところ、60体近い鼠グドンの死骸が発見された。
●冒険者として 「皆さん、本当にお疲れ様でした。心からお礼申し上げます」 そう言って、ヨルマは丁寧に頭を下げた。 「それと、皆様の戦いはお見事でしたが、最初から入り口付近に誰も立たせなかったのは何故ですか?」 町側の冒険者と城砦側が倒した鼠グドンを合計すれば、きっちり100体になる為、逃走したグドンは居ない筈。だからと言って、もしかすれば町から逃亡していた鼠グドンもいたかもしれない。 「まあ、下手に人員を欠いてしまうのは危険でしょうから間違っていない選択だったと言えるかもしれません」 ヨルマはそう言いながら、レポートにスラスラと色々と書き込む。 「何はともあれ、奪還を見事成功させて下さり本当に有難う御座いました。それと……」 少し間を空けてから言った。 「皆さんの勇敢なる戦いをこの目に焼き付ける事が出来た事を、ヨルマ・パヌラとして感謝します」 ヨルマの感謝の言葉を締めに、北方の地の拠点解放は無事に完了した。

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参加者:8人
作成日:2006/11/23
得票数:冒険活劇16
戦闘2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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