【箱の中】逆境に処してうずくまる



<オープニング>


 その日、冒険者の酒場へとやってきた男は、小柄で引き締まった身体に、黒い絹の衣服をまとい、爪の先にまで手入れを行き届かせた出で立ちであったが、握手を交わせばわかるとおり、掌の皮膚は分厚く、良く焼けた顔には白い歯がただ目立っていた。織物を扱う商人であること、自らの名がスラトムであること、そして、一人娘の父親であることを告げると、男は言った。
「問題は……娘のことでしてね」
 薄明の霊査士・ベベウは、依頼者が椅子に腰掛けたのを見て取ると、カウンターへと視線を走らせて給仕を呼び寄せた。寡黙な酒場の女が、スラトムの口髭を見遣りながら注文を聞くのを視界に捉えながら、霊査士は言った。
「どうなさったと……」
 商人は上着のポケットから白い包みを取りだした。光沢のある艶やかなハンカチの内側からは、何やら破断した管のような物が取りだされた。硝子で作られた花瓶の破片であるという。
「それでは――」
 霊視を行ったベベウは、脳裏を幻影が駆けめぐった瞬秒の合間に、色を無くした仮面から、口元をかすかに波立たせる微笑の面へと表情を変えた。
「事情はお察しました」
 小柄な女性が、追いすがるスラトムを素早い動きでかわし、長い廊下を脱兎のごとく駆けながら、次々と調度の類を投げつけてゆく。彼女は父ばかりでなく、十に近い男の手を交わすと、小さな包みのひとつも持たずに、邸宅から逃げだしてしまった。
「彼女は北に……」
 そう言いかけたベベウを、スラトムは天を仰ぐ仕草で制止し、陽に焼けた皮膚を密かに青ざめさせると、杞憂が現実となったことを訴えた。
「はやり北でしたか……。先日、北からやってきたという染料売りの行商人がやってきましてな。娘と何やら話しておったと商会の者が目撃を……。やはりそうだ……あいつは娘をたぶらかし、さらっていたったに相違ありません」
 羊皮紙に何事かをしたためつつ、ベベウは父親に尋ねた。
「その行商人についてお聞かせ願えますか」
「お聞かせもなにも……とにかくでかい男でしてね。痩せた肩に木箱を背負っておって、ご存じですかな、赤い鉱石の染料があるのを」
「紅殻……でしょうか」
「ああ、それですよ、一度手につこうものならなかなかおちない、やっかいな染料です。あの男が商っておったのはそれです」
「彼の行き先について、何がご存じでしょうか」
「ご存じかは知りませんが、ここから北にいくつかの集落が身を寄せ合う狭い平野がありましてね。私も若い時分にはめぐったもんだったが……そこからさらに北へ向かうと口走っておったそうです。ニガラムとかいう豪商と取引するんだとか……。私は知りませんよ、この私がですよ? ニガラムなんて男は……よっぽどの潜りか……あの商人と同じ悪党に違いない! なんでも、なんとかベリーとかいう川辺の町に……」
「嗚呼……それは……」
 羽根ペンを硝子製の台座へと戻すと、視線は羊皮紙へと落としたまま、ベベウは首をかすかに振った。そして、顔をあげると、依頼人の瞳を見据えるようにして、その町には良くない噂があることを伝えた。今しがた、何名かの冒険者たちに依頼を伝えたばかりなのだ、とも。
 商人は果断なところを見せた。すぐに立ちあがってベベウを促すと、旅支度を調えているであろう冒険者たちの元へと向かい、我が娘の保護を訴えたのである。紅殻商人、背ばっかりが高い悪党――その他に、いくつかの汚い言葉を吐きながらも、スラトムの娘に注ぐ愛情には熱いものが感じられた。
「忘れていました……娘さんのお名前はなんとおっしゃるのです?」
 肘を抱えるように胸の前で腕を組み、事の次第を見守っていたベベウからの質問に対し、商人は盛大で大仰な感のある溜息をたっぷりついて言った。
「グレースと申します」

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参加者
太白・シュハク(a01461)
赤褐色の天・マヤ(a16439)
愛での極め・ギュスターヴ(a16970)
渡り鳥・ヨアフ(a17868)
奏でるは悠久の旋律・ククル(a22464)
凛然たる氷凰・レイナート(a34578)
現実に眠る姫君・レーニエ(a39827)
美白の歌姫・シュチ(a42569)
依頼依存症・ノリス(a42975)
無限の刻の中静かに月を抱け・ユイ(a44536)


<リプレイ>

●喧々たる村
「あの……私と……同じ髪をした……人を知りま……せんか……?」
 歩く男の袖を引き、憂いを湛える琥珀色の瞳で見あげ、このように訪ねたのは、銀の髪をした小さな少女だった。外衣で背の翼を隠して、現実に眠る姫君・レーニエ(a39827)は路地を歩いた。美しい面立ちの彼女は、すぐにでも身をさらわれ、影の牢獄に囲われるかに思われたが、そうはならなかった。何故なら――理由は簡単だった――彼女は冒険者である。よからぬ魂胆を秘めてレーニエに近づいた者は、ことごとく、路地裏の片隅で眠りこける、といった姿で発見されたのだった。
 
「でかくて、痩せてて、木箱、背負ってて……紅殻商人で……。……俺、駄目……一人しか、思いつかない……」
 幼さの残る口元から細い吐息を洩らし、窮屈そうに肩をひそめてみせたのは、無限の刻の中静かに月を抱け・ユイ(a44536)だった。
「確か、ジャーメインとグレースもこの村に向かうとか言っていたな。無事だといいが」
 距離を開けられてしまったユイに追いつくと、渡り鳥・ヨアフ(a17868)は肩で息をしながら、そう言った。どこからどう見ても商人の風情――何故だかそういった外見のヨアフが、旅商人のお付きを演じるユイと合流したのは、奇妙な偶然の為せる技だった。
「……何か……ちょっと、俺……ジャーメインのこと……放っておけない……かも」
 紺碧の瞳をまばたかせて言ったユイに、ヨアフは通りの角へと向かってゆく男の背を指先ながら伝えた。
「あの娘が襲われたら、ジャーメインの売り物の紅殻とか手当たり次第投げつけて大暴れして、周りは阿鼻叫喚の巷になりそうな気がする。あの染料は落ちないんだよな。そう、ちょうどあの若者くらい染料が手足について……」
 
 榛色の瞳は油断することなくあたりを睥睨して、美貌の宝石商の護衛にあたっている。悪徳が花咲くその地、か――。依頼依存症・ノリス(a42975)は厳しい眼差しで、こちらへと近づこうとしていた男を追い払うと、視線を今日の主役であるチキンレッグの、艶やかな赤の房へと移した。
 純白の羽毛に包まれた四肢はしなやかに伸ばされて、その所作は優雅に雲の上をゆきでもするかのようだった。指先には煌めく青玉、胸元には大粒の石榴石と緑柱石、そして、掌には神々しいまでの金剛石を転がして、奏でるは悠久の旋律・ククル(a22464)は人々に自らという存在を喧伝している。
 ククルのもう一人の従者として、この物騒な町へとやって来たのは凛然たる氷凰・レイナート(a34578)である。物珍しさもあったのだろうか、チキンレッグとその護衛のまわりには、人だかりが生まれている。レイナートは金剛石の首飾りについての説明を行った。
「いらっしゃいませ〜♪ よりどりみどり、色々揃えてるわよ〜♪」
 と、ククルは歌曲の一節かと思われるほど美しく、細かな羽毛で包まれれた喉を震わせる。歌声に惹かれたか、主の肩に触れようとした男を、ノリスは低いうなり声で撃退した。
 
 闇色の黒彪を思わせる出で立ちは、勝ち気な光を宿す彼女の凛とした双眸によく合い、何故か路地を急いでいる男たちを、容易く振り返らせるのだった。そんな、赤褐色の天・マヤ(a16439)のすぐ隣には、菫色の髪を背に長く垂らし、形のよい尖った耳を生やす、エルフの青年の姿がある。彼は名を、地蔵星・シュハク(a01461)といった。
 二人はこの村で一番という大通り――といっても、人が何人並んですれ違えたものかわからない――を訪れていた。そして、そこでとある人だかりと出会い、その原因となっているであろう、目に覚えのある半白のブロンドを目にしたのだが、声はかけずに立ち去ったのだった。あちらも、こちらに気づいたようだったが、知らぬ存ぜぬを通していた。
(「……おっと……お二人さんか……俺も誰かと来るべきだったかねえ……。にしても……今回もあのオトコときたら、イロイロ大変なようだ……まぁ、これも何かの縁だろう……」)
 手櫛でかきあげられた美しい髪を頬の左右に散らすと、愛での極め・ギュスターヴ(a16970)は傍らにある女性の肩を引き寄せ、嬌声をあげさせた。艶やかな詩句の踊る歌を、彼が口ずさんで通りを歩いた結果――それは、数名からなる女性の取り巻きというものだった。
 彼は足元に広げた赤い天鵞絨の上に、長剣などの武具を転がしているが、商いを始めたようには見えない。同性からは遺憾の意を、拳を振りあげるといった仕草で伝えられることも、ままあった。
 そういった場合、彼は腰に下げた長剣の柄へと指先を絡めたかと思うと、奇妙な風を吹き込ませて、不平を振りあげる男の身体を束縛した。
「痛い思いしたくなければ、そのまま自由を奪われた感覚を楽しんでくれ?」
 またしても黄色い歓声があがった。
 
 建物の表に掲げられた看板は、斜に傾いていたのだが、朽ちかけているからではなく、それが正しい意匠なのだという。その店は『空が好きな蛇亭』といった。
「こちらの方面に行ったきり帰って来ない友人を探しています。この子に似ているのですが……」
 店の主にそう尋ねたマヤは、掌をシュハクの肩においた。項垂れるエルフは、子供っぽい口調で言った。
「お姉さんがこの村に向かったって聞いたの」
 首をひねる主が手を布巾で拭いながらカウンターの表から出てきて、店の奥にある扉の把手に指をかける。開かれた扉からは、騒がしい声が聞こえてきた。シュハクを首を伸ばして、室内の様子をうかがっていたが、そこに見覚えのある顔を見つけて――。
「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ、もういい大人なんでしょ」
 大勢の男たちに交じり円卓を囲む、その小柄な女性は、才気渙発の話術を披露し、すっかり周囲の人間の心を掴んでしまっているようだった。
「あの……グレースさん……」
 肩を突かれた女性は、「んー」とうなって顔をあげた。
「あなた誰……うそうそ、シュハクくんだったよね。覚えてる覚えてる。どうしたの、こんなところで……あっ、でもちょうどいいわ、実はお願いしたいことがあって」
 それから後、話しださなければ深窓の令嬢とも思えてしまうグレースに導かれて、マヤとシュハクはある裏路地を急いだ。
 そこは、商人の娘曰わくところ「取引に行ってきますって言ってさ、下手なスキップして出かけたわりには、いつまで待っても帰ってきやしない」というジャーメインが訪ねたよからぬ商人、ニガラムが構える店の裏手にあたる。
 怒りに燃えた風のグレースが、華奢な指先を丸めて作った拳を、シュハクの制止も無視して振りあげた、その瞬間だった。別の棟の木戸が開かれて、二つの顔が交互に現れ、大きな方は枠が狭くて何もできずに引っ込み、小さな方は手招きをした。
 大きな方はヨアフ、小さな方はユイだった。
 
●地下の王国
 ニガラムなる名の悪党が構える店は、その印象を他の店構えに埋没させてしまうほど、地味で手狭なものだった。しかし、雑多な品物が並ぶ店先から、狭隘な通路を進み、紫煙が充満する小部屋に隠された石段を降れば、あたりの景は一変する。
 地上の建物など、ただの飾り物に過ぎなかった。地下の空間にこそ、悪党の豪華な暮らしは隠匿されていたのである。
 赤い絨毯が伸ばされた食堂には、程度のよい寝椅子が置かれていた。青白い頬に黒い髪、疑念に苛まれた瞳を細め、足元にすがる男の額を蹴りあげた人物こそ、夜盗の首領ニガラムその人である。彼はたった今、組織で重要な任を担ってきた男を、地下牢へと送りこんだところだった。
 そして、その傍らには、光の揺らぐ不可思議な青の髪を、乳白色の肌が晒されたなめらかな肩に這わし、濃藍の瞳には涙を湛えるセイレーンの姿があった。美白の歌姫・シュチ(a42569)はニガラムに感謝の意を表した。その理由は、「彼はわたくしを嫌らしい目で見てきましたの……」というものだった。
 悪党はまだ気づいていなかった。自らの心を籠絡した美しい刺客と、その仲間たちによって、悪徳によって築きあげられた楽園が、今まさに、足元から瓦解しようとしていることを……。
 室内であるというのに外衣を脱ごうとしない男に、ニガラムは何らかの疑念を抱いたようだったが、シュチが輝石の見事さを湛えはじめると、すぐにも顔を溶解させて、手渡されたルーペで青玉をのぞきこんだのだった。
 ノリスはククルに目配せをした。チキンレッグの吟遊詩人はわかっているようだった。輝石の箱を掲げるため床に片膝をつくレイナートに、嘴をわずかに上下させる仕草で、これからの動きを知らせる。
「ちょっとばかり失礼するぜ」
 植物の紋様が染め抜かれた外衣をはためかせ、鍛え抜かれた二本の腕を露わとすると、ノリスはつかつかと歩き出して、地下牢へと続く扉へ向かおうとした。
 ニガラムは立ちあがり、腰の裏側に隠していた短刀を引き抜いた。彼だけではない、室内には十ほどの男たちが一斉に獲物を構えている。首領が口を開いた。
「お前らただの……」
 不意に室内へと響いた歌声は、ククルが口ずさんだものだった。術手套に守られる指先で、鍵盤をなぞるかのような仕草を見せ、彼女が歌ったのは、耳にする者を深い眠りの淵へと誘うしらべだった。
 すべての男たちを縄で絡めとった後、レイナートはその中から一人を選びだした。肩を揺すられたニガラムは、先ほどは口にすることも許されなかった言葉の続きを吐こうとしたが、髪をかすめて後方へと飛び去り、石壁を砕いた疾風のごとき衝撃に怯え、それ以上、口を開くことすらできなかった。笑顔でレイナートが言う。
「……もう悪行ができないように脅しておこうと思って、普通の人ならこれくらいでいいよね」
 
 美しい煌めきの封じられた聖なる糸で織られた更紗を、少女は不安げに重ねられた左右の手の平に絡めている。湿った壁が黴くさい暗渠で、レーニエはこちらに近づいてくる足音と、カンテラらしき赤い灯りに気がついた。
「……来ました……」
「……うん、レーニエの言った通りだった……な……」
 優美な線を描く猫の尾を、足元から天井へと向かわせると、ユウは後方を振り返った。この先には、表の運河へと通じる扉がある。悪党たちが逃亡に使用しそうな経路といえるだろう。
 少年と少女は、あまり音の響かない暗闇に、ほぼ時を同じくして、各々の歌声を渡らせた。
 その頃、アジトの裏路地には、煌々たる輝きが踊っていた。石畳に幅広くたゆたう光の薄膜は、空から俯瞰することが叶うなら、美しい紋章として瞳に宿ったことだろう。中心に立つのは儀仗を手にする紋章術士――ヨアフだった。
 見慣れぬ何かが足元に広がり、悪党たちは色めき立ち、互いの肩を衝突させながら踵を返そうとした。だが、その先には、新たに現れた二人の冒険者の姿がある。
「今回ジャーメインさんも捕まってるのカナぁ。もし助けだせても、ストラムさんにヒドイ目に遭わされてそうだし」
 そう呟くと、シュハクは左右の拳を合わせ、瞳を閉じ、気の力を高めた。小さな気合いを発すると同時に、武道家は瞼を開いて、傍らにある女性の姿を確かめると、優しい笑みをふりまいた。
 古色蒼然とした佇まい誇る手套『オーバーソウル』を胸元にあてがうと、マヤは歌を紡ぎはじめた。簡素な歌詞が、単調でわかりやすい旋律に乗せられただけだったが、武器を手に取る男たちは、次々と面白いように眠りこけていった。
 木製の扉を開いた先には、鉄の格子がはめられていた。濡れた石の壁に固定された松明から油が爆ぜ、頬に熱気が伝わった――ノリスは霊枝を振り抜き、ひうという音をたてた。飛びたった衝撃波は、格子をねじ曲げ、蝶番を駄目にし、地下の牢獄を解放した。
 最後に残されていたのは、門番らしき男の処理だった。ギュスターヴは、影に身を寄せ合う女性たち――おそらくは、さらわれた五人だろう――を一瞥すると、風もない暗渠に旋風を巻き起こして、唖然とするその男を容易く絡めとるという形で、この戦いの呆気ない幕引きを演出した。
 
「もう大丈夫ですよ……なんだ?」
 発言の後半部分で、思わず地をだしてしまったのはマヤである。彼女は石段を駆けおりて、地下の牢獄へとやってきたばかりだった。そこでさっそく、囚われであった五人の女たちに手を差し伸べ、話しかけたのだが、奇妙なことに気がついたのだ。
 額に掌をあてがい、天を仰いで見せ、盛大な溜息までもついたのち、ギュスターヴは言った。
「まったくお前は……今回はどうした?」
 女たちは、くすくす笑いをしている。シュハクに手を引かれた女たちが退き、監獄の奥に露わとなった姿は、女性にしてはあまりに大きすぎる姿だった。
 
 
「心配してたんだからね!」
 まさに怒髪天を衝く勢いで自らの杞憂を伝えたのも束の間、続いてまっさきにグレースが行ったことは、腹を抱えて笑うことだった。『空が好きな蛇亭』なる名の、酒場兼食堂で起こった出来事である。
 長い睫毛をぱちくりとさせて、ジャーメインはがっくり肩も首も項垂れさせた。彼の顔には、五人の娘たちがわずかな灯りを頼りにして行った仕業が、くっきり残されている。恐怖から逃れるためにしてもあんまりだろう――紅殻商人は女装させられていた。
 絶句するジャーメインの大きな瞳に笑いをこらえつつ、ククルはグレースに尋ねた。
「どうして父の元を離れて、この人に着いていったの♪」
 彼女が応える前に、レイナートが言葉を添えた。
「お父さんが心配していたよ」
 さっぱりとした笑顔を浮かべて、マヤがグレースに訊いた。
「誰か会いたい人でも?」
 目元に浮かんだ涙を拭うと、グレースはジャーメインの顔から視線を逸らした。そして、質問にはこう応えたのだった。
「そりゃあ、好きな人くらいいたっていいじゃない。それにさ、余所に行きたいって言っても娘を羽交い締めするような親を、どうにかして欲しいわ!」
 うわずった笑い声をあげたのは、室内にジャーメインただ一人だけだった。彼の首がグレースの指先によって絡めとられたのを見届けると、ユイは呟いた。
「……何で、ジャーメインは……グレースに、協力してるんだろ……。……グレース、どこ……行きたいのかな……?」
 平和的な光景である、ある意味で――。笑いださなかったことにほっと安堵の息をつきながら、ヨアフは顔の輪郭すら定められぬほどに激しく揺さぶられるジャーメインの頭部に向かって、こう言葉をかけた。
「しかし、行く先々で何かに巻き込まれてないか、ジャーメイン。報われないな。それで次はどこへ行くんだい」
 商人は「仕入れ」と言っていたのだが、そのときには「死にそう」としか聞こえなかった。


マスター:水原曜 紹介ページ
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作成日:2006/11/26
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