浪漫盗賊団



<オープニング>


「ない……ない、ない! なぁ〜い!」
 とある旅館の脱衣場に、少女の声が響き渡る。
 何が無いと言うのか。いや、この場で無いとなれば路銀か、あるいは下着か。
「服が……なぁ〜い!」
 そう、彼女の下着はキチンと、そこに置いてあった。路銀もちゃんと残っている。無いのはただ、服のみ。
 特に高い服というわけではないのだが……この裏には、妙な盗賊団の影がちらついていたのだ。

「さあ、依頼欲しい子は寄っといでー」
 羊皮紙をヒラヒラとさせるリゼルに、何人かの冒険者が目を向ける。
「今回の依頼は盗賊退治よ。場所は、この村なんだけど……ちょっと状況が複雑よ。話を良く聞いてね」
 今回の依頼の舞台となる村は、妙な盗賊団に狙われている。
 殺さず、傷つけず、浚わず。
 それをポリシーに掲げ、盗むのは金ではなく女性の服。
 そこに潜む浪漫を探求しているらしいのだが、ハッキリと変態である。
 しかも盗み方がまた変態的である。
 まず、干してある洗濯物は盗まない。
 着た後の服を狙う。
 つまり、脱衣所などに侵入して奪っていくわけだ。
 何故着た後の服なのかというと、浪漫があるらしいのだが。
「ま、変態よねー。で、たまたま村に来てた旅人の女の子が服を盗まれちゃったらしいのよ。彼女、凄く怒ってて。全員叩きのめしてやるって村中を歩き回ってるらしいのよ」
 勿論、村人の心情的には盗賊団がそれで何とかなるのなら有難いので止める気も無いらしく。
 それどころか、村の女性陣は彼女の味方なのだという。
「要は、旅人の女の子が盗賊団と接触すると勢いあまって殺しかねないのよ。かといって、力づくで彼女を止めれば村の人達からの心象が悪くなっちゃうわ」
 つまり、旅人の女の子を力づく以外の方法で何とかしつつ、盗賊団を捕まえなくてはならないということだ。
「盗賊団は神出鬼没よ。警戒心も強いから、ただ待ち構えるだけじゃ捕まらないかもしれないわよ」
 考えるべき事は、山のように。
 けれど、リゼルはまるで心配していないといった表情で眼鏡を光らせる。
「じゃ、頼んだわよ皆♪」

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参加者
白刃一閃・キョウカ(a01669)
白銀の山嶺・フォーネ(a11250)
無影・ユーリグ(a20068)
清廉潔白天使・ジェイダイト(a33722)
影舞い・キリエ(a46427)
修行中の翔剣士・ニコラ(a46814)
我は破滅を断つツルギなり・ルビナス(a57547)
瑠璃の太公望・アリア(a57701)
迅雷・レイフォリア(a58297)
神風・キャロット(a59243)


<リプレイ>

●盗賊団、潜入作戦
「あそこがタマタマ村ですか……」
 何故か眼鏡をかけた無影・ユーリグ(a20068)が、そう言って村の入り口から様子を見る。
 あちらこちらから立ち上る湯気は、温泉地ならではの代物だ。
 この村に、女性の服を盗む「浪漫盗賊団」が現れるのだ。
「なかなか面白い盗賊さんだネ。依頼じゃなかったら一緒に遊びたいケド、今回は敵だから容赦できないヨ」
 ニコニコ笑う神風・キャロット(a59243)だが、しっかりとお仕置きするつもりなのが手に取るように分かる。
 人を傷つけない辺り、盗賊というよりは窃盗団なのだが……その辺りは、比較的どうでもいい。
 確実なのは、命の危険は無いという事。そこばかりは情状酌量の余地もあるだろう。
「服を持っていくんですか……下着泥棒よりマシ……なんでしょうか?」
 白刃一閃・キョウカ(a01669)の言葉に、白銀の山嶺・フォーネ(a11250)が首を横に振る。
「変態的な趣味とはいえ、あくまで趣味としてなら個人の自由かもしれませんが、さすがに盗みまで働いてとなると、見過ごすわけには行きませんね」
 確かに。変態は個人の自由だが、人に迷惑をかけてはいけない。
 それは世間の常識であるはずなのだが、時として常識を外れる存在というものは現れる。
「悪趣味で集団? 困った人達だね。」
 そう、まさに瑠璃の太公望・アリア(a57701)の言う通りだ。
 自分の内なる獣を解放させて暴れまわる彼等を、属に変態的犯罪者と呼ぶ。
「何はともあれ、捕まえないといけないどすなあ」
 迅雷・レイフォリア(a58297)の台詞に、全員が頷く。
 死で償う程の重罪ではないが、軽くお仕置きしてあげるくらいは必要だろう。
「浪漫。良い言葉にござる。浪漫を求め、人は生きていくものでござるよ……」
 まあ、古今東西、「浪漫」と称されるものの6割はロクなものでは無いのだが。
 とにかく、影舞い・キリエ(a46427)はそんな事を呟きながら茶屋へと入っていく。
「この辺りに良い温泉宿はないでござるか?」
 手近な男達にそう聞くと、彼等は顔を見合わせる。
「んー……何処もいいよなあ?」
「ああ、別にどっか1つを勧めると後でネチネチ言われるからじゃなくて」
「だよな。此処の温泉宿は何処もお勧めだぜ、お嬢ちゃん」
 微妙に情けない事を言う男達は、そのまま顔をつき合わせてヒソヒソと囁きあう。
「なあ、言ったほうがいいんじゃねーの?」
「でもなあ、俺達が悪い噂流したって言われるのもなあ」
「だよな。でも、どーせ被害出たらネチネチ言われるの俺達だぜ」
 しばらく話していて結論が出たのか、男達がキリエに耳打ちをする。
「実はな、此処のところ……村に変な連中が出るんだ。風呂入るときは、服に気をつけな」
「一応、一番安全そうなのは向こうの方にある宿だと思うけど……保障はできねえな」
「ま、気をつけろってこった」
 その言葉にキリエが軽く微笑み、手を振る。
「かたじけのうござる。其方の宿に言ってみるでござるよ」
 これで、宿は決まった。後は待つだけだが……勿論、これだけではダメだろう。
 ユーリグはその頃、清らかなる天使・ジェイダイト(a33722)達と別れて酒場に来ていた。
 さすがに昼間から飲んだくれている者は居ないようで、酒場は静かなものである。
 とはいえ昼食を取っている者は何人か居て、ユーリグは彼らの会話に耳を澄ませる。
「お客さん、ご注文は?」
「あー……お茶をいただけますか?」
 しばらく耳を済ませていたが、彼等の会話は天気や畑に関する話ばかりだ。
 あまり有効な情報は無さそうだと判断し立ち上がろうとすると、入り口から凄い音を立てて誰かが入ってくる。
 ユーリグは一瞬其方を見て、すぐにあさっての方向を向く。
 間違えるはずもない。其処に居たのは巨大剣を背負った少女、テッツァだった。
 何度も彼女に会った事のあるユーリグは、例え変装していたとはいえ見破られてしまうかもしれない。
 すぐに動くわけにもいかず座っていると、隣の男達の話題が、彼女に関するものに変わっている。
「よくやるよなあ、テッツァちゃんもあいつ等も。あーゆーのをイタチごっこっていうのかね」
「いやあ、テッツァちゃんは毎回逃げられてるからイタチごっこにもなってないだろ」
「こらぁ、聞こえたぞ!」
 テッツァの大声に、男達は驚いたように身体を大きく揺らす。
 どうやら、女性に頭が上がらないのは骨の髄まで染み込んでいるらしい。
「もー、疲れたよ。あいつ等、絶対捕まえてやる」
「ははは……頑張ってくださいね」
 カウンターに座って店の主人から出されたジュースを飲みつつ、テッツァは店の中を見回すように振り替える。
「相変わらずお客さんいないねー。大丈夫なの? 此処」
「まだ時間も早いですから……」
 そんな会話を交わしながら店の中を見ていたテッツァの視線が、ユーリグとバッチリ合って止まる。
「……どっかで見たような……?」
「パンケーキが焼けましたよ」
 その声に、すぐに興味を失ってカウンターの上のパンケーキをパクつくテッツァ。
 どうやら、助かったらしい。ユーリグはそのまま歩いて、足早に酒場を出る。
「……困りましたね、何とか糸口を探さなければ……」
 しかし、そう簡単に糸口など落ちているはずも無い。
 無ければ、作れば良かったのだが……その色んなプライドを捨てる方法は、さすがにユーリグには思いつかなかったようであった。

●温泉にて
「はぅ〜……生き返るでござるなぁ」
「……なぶらや鳥山を探すのは得意なんですけどね」
 影舞い・キリエ(a46427)は肩までしっかり温泉につかり、その豊満な胸元を修行中の翔剣士・ニコラ(a46814)がチラチラと見る。
 途中でテッツァと会う事は出来なかったが、何とかなるだろう。
 キャロットは、無事にテッツァに会う事は出来ただろうか?
 色々と考えながらつかっていると、何だかクラクラしてきたような気がする。
 ニコラは、ふと脱衣場の方を見る。
 あちらには錬金術魔術剣士の学園長・ルビナス(a57547)やアリ達が隠れていたはずだが……。
 それにしても、本当に良いお湯だ。
「温泉って、こんなにいいものだったでしょうかねえ……」
 ふう、とニコラは溜息をついた、その頃。
 全くの無音で、脱衣場に影が現れた。
 それは2人の服を音も無く袋の中に入れると、するりと抜けるようにして出て行く……事は出来なかった。
 出てきたアリアの眠りの歌でアッサリと昏倒してしまう。
「一人確保……あれ、一人だけ?」
 この脱衣場の中にいる曲者は、今目の前で昏倒している男の一人だけだ。
 やがて出てきたルビナスや迅雷・レイフォリア(a58297)と顔を見合わせ、溜息をつく。
 まあ、確かに。たかが2人の女性の服を盗むのに、そんなにゾロゾロと繰り出しては来ないだろう。
 残りは他の宿にいるのかもしれない。そう思った時、遥か遠くの方で吼えるような声が聞こえた。
 まるで紅蓮の咆哮を彷彿とさせるが、どうやら普通の咆哮のようだ。しかも女性の。
 一体何があったのか。ルビナス達は、そこに急行する事にした。
「みーつーけーたーぞー!」
「うおお、危ない、危ない!」
 そこでは、テッツァと1人の男の壮絶な追いかけっこが始まっていた。
 少し様子を見ようかとも思ったが、このままでは盗賊の命が危ない。
「ちょうどワンピース着てるし……エイッ☆」
 それは、まさに風のいたずら。
 キャロットが能力を発動させ、テッツァのワンピースがふわりとめくれる。
「うわ、わー!?」
 慌てて服を抑えるテッツァの前に素早く出て、幻惑の剣舞を発動する。
 此処での盗賊の不運は、風のいたずらに気を取られて、逃げるのを忘れた事だったろう。
「あ、捕まえたの?」
「うん、一人だけどネー」
 やってきたルビナスにキャロットがニコニコと笑いかける。
「そぉか、君達……冒険者だなあ……」
 さすがに此処までやれば分かるのか、テッツァが恥ずかしさと怒りの入り混じった表情をする。
 テッツァにしっかり殴られた、その後。盗賊団を一人も発見する事は出来ず……二人の盗賊団を捕まえるだけに留まった。

●盗賊団への質問
「で、私の服返してよ。あと、アジト教えろ。全員ぶん殴ってやる」
 テッツァの尋問に、盗賊団員は鼻を鳴らす。
「ふふん、殴られても嬉しいだけだ。喋りはせんぞ」
「全くだ。蹴りも入ると、もっと嬉しいぞ」
「うわっ、気持ち悪い」
 ルビナスの言葉に、盗賊Aが嬉しそうな顔をする。
 とことん変態である。突き抜けている。
「ロマンとかいって女を辱める輩は絶対に許さないわ! テッツァさんと一緒に、死なない程度にお仕置きよ!!」
「ふっ……望むところだ」
「ああ、存分にやってくれ」
 気持ち悪さに我慢がならなかったのか、テッツァの鋭い蹴りが入る。
 本当に嬉しそうに倒れる盗賊Bを、羨ましそうに見る盗賊A。
「浪漫は肝要でござるが……盗みは駄目でござろう。そもそも、拙者の着物に……どの様な浪漫が?」
 虐げられたが故の、嘆きが生んだ浪漫。
 そんなものを感じ取っていたキリエが、そんな事を言う。
 ひょっとしたら、多少は情状酌量の余地があると思って。
「浪漫とは……言葉に出来ないものさ」
 カッコつける盗賊Aにも、蹴りが入り。
 その後、アリアの獣達の歌による捜索の結果、盗賊のアジトを襲撃し、30人弱の盗賊達を拿捕。
 リーダーのチラや複数の幹部は逃したものの、中々の成果と言えるものを残したのであった。
「かなりの量ですね……」
 盗賊団のアジトに綺麗に保管されていた服を眺め、フォーネは溜息をつく、
 よくもまあ、こんなに集めたものだ。
「被害者の方に謝罪と償いをして下さい……相当地獄を見るでしょうが」
「地獄か……ぞくり」
 どうやら、此処にも変態が居たらしい。
 思わずフォーネは、本日何度目かの溜息をつく。
 同じように疲れた顔をするキョウカやレイフォリア達は、一応の平和を得た温泉へと向かって。
 ユーリグが、テッツァに何事か突っ込みを入れた後、思いっきりつねられる。
 そして肝心なタマタマ村の温泉地は、どうやら浪漫盗賊団のターゲットから外れたようである。
 完全な成功とは言いがたかったが、ある程度の達成感を得つつ冒険者達は帰路につくのだった。


マスター:じぇい 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2006/11/26
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冒険結果:成功!
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