七色ビーズであつらえて



<オープニング>


「ご姉妹に聞いてきたのですけれど、同じ通りのアクセサリー屋さんで、ビーズ細工のアクセサリー講習があるんだそうですの。
 ……わたくし、とても気になっているんですけれど、一人でお出掛けもつまらないですし」
 でも、特定の男性の方を誘うと、何だか違う意味に取られそうで……。
 困った顔をしてマリーティアが話し掛けて来たのに、冒険者は苦笑した。
「確かに、男の人とじゃデートみたいに思われちゃうかもね」
「そうなんですの。ですから、迷っていまして」
「なら、俺等も一緒に行けばいいんじゃね?」
 ひょいと口を出した冒険者の言葉に、マリーティアは目を輝かせ。
「まあ、そうですわね。皆様で一緒に行けば宜しいんですわ。そうです、そうしましょう!」
 そうして、つい最近尋ねたばかりの薔薇姉妹のお店近くにあるアクセサリー屋に、皆は連れ立って講習へ向かう事になった。

 一口でビーズ細工と言っても、オーガニックな素材の素朴なものから銀細工、色硝子や天然石を使用したエレガントなものまで幅広くある。
 革紐にウッド素材のビーズを通せばカジュアルで男性にも向いているだろうし、天然石のチャームや羽根などの素材を合わせればぐっと雰囲気が良くなる。
 シルバービーズを使えば、男性の好む骨太な感じの渋い雰囲気を作れるだろうし、天然石をさりげなくあしらえば高級感が出るだろう。
 ビーズ細工の道は、かくも深いのである。
「まあ、今回はほんの入口の部分を紹介いただける、という事でしょうけれど」
 マリーティアは苦笑し、冒険者を店まで案内するのだった。

「ほー、ルビィがやったら褒めるからどんな子が来るかと思ってたら、あんたら冒険者なの? まあ、あの人らの事だから何かあるんだろうなとは思ってたけど」
 特別に一日、貸し切りで講習日を設けてくれたらしい店主は、目を丸くして冒険者を出迎えた。カラフルなワンピースにざっくりした茶色のカーディガンを羽織った三十手前ぐらいの女性は、皮紐のブレスやネックレスに色とりどりのビーズを通して装っている。きっと彼女のオリジナルなのだろう。
「ま、いいや。今日は簡単なレシピを紹介するから、気に入ったら後でパーツでも買い足して遊んでよ」
 からりと笑った女主人の名は、レジィと言うそうだ。

 今回の講習では、3つのコースから1つを選ぶ事が出来る。作成出来るのはブレスレットかペンダントだそうだ。
 ・オーガニックコース(革紐に木のビーズやチャームを通した、素朴なアクセサリーを作れる)
 ・シルバーコース  (銀ビーズやチャームを使ったちょっとハードな感じのアクセサリーが作れる)
 ・ストーンコース  (主に天然石やガラスチャームを使用した、可愛い&エレガントなアクセサリーが作れる)
 ビーズの色やチャームの形で自分らしさを演出すれば、同じレシピでも全く違うものが出来るだろう、とのこと。

「では、素敵なアクセサリーを作りましょうね」
 マリーティアは微笑むと、早速ビーズを選びに向かった。

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参加者
NPC:深蒼の萌花・マリーティア(a90343)



<リプレイ>

 サンプル兼売り物のビーズアクセサリーが飾られた賑やかな店の、更に奥まった場所。大ぶりのウッドビーズで綴られた仕切りを潜ると、テーブルと椅子があった。
 壁に沿って置かれたチェストの上に、本日の講習用であろうビーズが沢山の仕切りを備えた浅い箱にきちんと整理されて並んでいる。本日はここで講習が行われるのだろう。
「それでは、良い物を作れるよう頑張りましょうね」
 思い思いに席を確保しようと動く中、マリーティアが笑顔で言う。皆は笑顔で応えた。

●貴方と一緒に- with -
「レジィさん、よろしくお願いしますー♪」
「ご指導よっろしくお願いしやす」
 アトリとヘレンの元気な挨拶に、店主はあいよと笑って答え。
「しっかしビーズにも色んなのがあんのなぁ」
「本当にいろんなのがあって迷うよー」
 二人は目移りしながらきらきら光るビーズを選び、指導のもと、心を込めて互いに手渡すビーズ細工を作る。
 素朴なウッドビーズ、冷えた色の銀ビーズ、カラフルな天然石。並ぶビーズは個性的。
「きらきらがいっぱいです」
「そうですね」
 ユキが嬉しそうに目を輝かせるのを見て、エミリオもまた微笑む。
 悪戦苦闘するユキを手伝いながら、何事も精一杯取り組む姿に、どこか放って置けない自分を自覚して。
「完成です……団長さん手伝ってくれてありがとうです」
 自分らしく出来たと、笑顔を浮かべるユキ。その笑顔が曇らずにいてくれればいいと、エミリオは思う。
「良かったら羽根を使って下さい。色々な物がありますのでお好きなものをどうぞ」
 バランが皆に洗浄済みの羽根を差し出す。色とりどりの羽根は、とても美しく繊細にテーブルを彩る。
「あら、良い素材をいただけたの?」
 器用にビーズを糸に通しながら、イングリドが友の苦労を想像してくすりと笑った。きっと愛鳥に突付かれたり、それは大変な採取風景だったのだろうと。
「月なのに赤い石を使うのは、キル様の恋人が赤が好きだからなぁん?」
 キルと色違いの首飾りを作る途中、手を止めてメロディは気になった事を聞いてみる。
「琥珀や金の月だとさ、夜空に高く上りすぎてオレの手が届きそうにねーからだ。それより、誕生日の贈り物を作ると言ってたよな」
「………フワリン出しましょうかなぁ〜ん?」
 照れ隠しでそんな事を言いつつも、真面目に答えてくれたキルに、メロディは良く知った人だと告げる。
 思いとは、時に御しがたく。
「ぬー……めんどくさいー、変わりにやって」
「ん? 何だ……って、お前な……自分の分位自分でやれ」
 ぱたりと机に突っ伏すリオンの様子に呆れ、アインが渋面を作る。そんないい加減では、貰う方が可哀想だと。
「んー? あげる人? 別に居ないけど」
 手慰みに再びビーズを弄りだし、『あの子』ではないけれど『誰か』に渡したい、と言うリオンに、思いは形にし辛いのだと、アインが答え。
 それは家族のような、いつもの風景。
「あにさま、何つくられているんですかー?」
「はいはい、後で教えてあげるから」
 隣で懐くように手元を覗き込むイナルナに、セドナは心あらずで答える。大事な人への贈り物だから、ひとつひとつ丁寧にしたいのだ。
 デートも兼ねて、相手への贈り物を作る。
 なんだかおかしいかなとラテルは思ったが、まわりを見てみれば、身近な人に贈り物をと考えている人は、他にもいるようで。
 隣で熱中しているルナンガをちらりと盗み見たり、何だか初々しく時間を過ごす。
「ルルナさんはプレゼント? オレは自分のーですよ」
「はい、お知り合いの方の誕生日プレゼントを作るのです」
 ソアの言葉に答えながらも、ルルナは真剣そのもの。差し上げる相手を思ってビーズを選ぶ時も、こうして作っている今も。それが分かっているから、ソアは一緒に苦心しながら作るこの時間が、とても素敵に思えた。
 不器用でも、少し時間が掛かっても。そこにとても優しい気持ちが、込められていると思うから。
 その隣では、本日は休戦だと言い渡され、ライバル同士が仲良く講習参加中。
「そうそう、プレゼントしたい相手の笑顔を思い浮かべながら作ると良いですよ〜」
 不器用なマイシャを半ばからかいつつ、それとなくフォローしてやりながらユナンがアドバイス。
「こ、心がこもっているから大丈夫だ!」
 手元を覗き込んでいたのがバレたのか!? 焦るマイシャは必死で誤魔化す。
「うふふふっ。このペンダント、結構綺麗になりましたわ」
「こちらも、なかなか上手く出来ていると思いますわ」
 集中力が物を言ったウェンデルと、不慣れだったがどうにか形にしたアムール。自分の作品を掲げて二人は微笑み合う。

●あなたのために- dear -
 誰かを思って作る時間。それはわくわくするような、どきどきするような、不思議な興奮に彩られる。大切なあの人に、お世話になった人に。真剣な面持ちで、あるいは楽しく、皆はビーズを綴った。
「小さい物をちまちまと作るのって、結構幸せ気分になるのにゃよね♪」
「ふむ。要するに、紐に飾りを通せばそれで良いわけか」
 イオンは可愛いラピスラズリのチャームを選び、ガルスタは端的に言って、ビーズを綴る。素朴で温もりのある、そんなものを目指して。
「殿方の好まれるデザインは良くわかりませんが……」
「これなら、お守りのようにも見えて、男性でもさりげなく着けられそうですわ」
 心を込めれば、恋人も気に入ってくれる筈。いつまでも、ずっとずっと、一緒にいられますようにと、コーシュカは思いを綴る。
 エルノアーレはじっくりデザインを選んで、シンプルなデザインの物を作った。日頃のお礼にと。ホムラは戦闘中にも邪魔にならないであろうリボンへ、丁寧に細工する。ロゼリィは知らない人ばかりで緊張しながらも、日頃のお返しにと銀ビーズを綴っていた。
「……むぅ」
 じっと睨むようにして、ラシェットはぎこちなくビーズを綴る。器用ではないけれど、出来るだけ丁寧に、心を込めて。
「ん〜……これくらいで大丈夫かな……?」
 どう見ても長すぎるぐらいの革紐。試行錯誤しながら、思い浮かぶ面影にふとやわらかな笑顔を浮かべ。ルラははたと気付いて首を振ると、また作業を続ける。
「ねぇさま……よろこんでくれるかなぁ……」
 時に順番を違え戻ったり、ゆっくりゆっくり、時間は沢山掛かるけれど。納得いくものが出来たら……贈りたいとユエは思う。
 俄かにわっと、声が上がった。何かと思って声の方を見遣れば。
「その、差し上げたい方があなた様と同じぐらいの方なので……」
 ふいに腕を取られ、カラシャの行動にぎょっとした頑健そうな青年は、その言葉にようやく納得してサイズ測りに腕を提供する。
「やはり木の暖かみが伝わるものがいいですね」
 アンリは心を込めてウッドビーズを綴りながら、途中で額の宝石に触れ、思いついたように翡翠を少しだけ混ぜた。それは自分を映す色、そして守りにと。
「これがいいですぅ〜♪」
 大切なご主人様へ。初めてだけれど、格好よく出来るといい。デザイアはチャームに合わせてビーズを選ぶ。
「……随分と綺麗になっていてね、驚いたものさ」
「へえ、良かったじゃないかい。まあ、その子に喜んで貰えるよう、張り切るんだね」
 職人同士気が合ったのか、レジィと話しながらヴィンスが銀ビーズを選んでいる。どうせ飾るならば花のような女性にと。
 明るい声、失敗に嘆く声。さまざまな声に彩られる空間に、思った通り賑やかになったものだとソウヤは端の方に座り、贈り物を丁寧に綴った。

●私のための時間- for me -
 自分好みに、自分にぴったりの物を作れる。それが手芸の醍醐味でもある。皆はせっせと誰かを思い、あるいは装った自分を想像して、ビーズを綴っていた。
 去年より近づけた距離。普段の自分を見て貰えるなら、今度は特別な、あの人の為に装った自分が見てもらえるよう……。
「なんてなんて〜」
 きゃっと顔を覆って、その拍子にビーズがばら撒かれる。ユイリンは慌ててそれを拾う。
 繊細な細工に、思いを寄せて。
「もう、冬ですね……」
 スノーは雪の結晶を象ったチャームを手にし、そのひんやりした表面に冬の到来を思う。雪が降る頃。今年のフォーナ祭はどうだろうか?
「ん、と、こう……かな」
 講習を聞きながら、ソエルはぎこちなくビーズを綴る。たまにはお洒落に興味を持つのだって、悪くない筈。
 記憶は連想ゲームのように、ふとした瞬間ひらめく事がある。
「何だか思い出しちまうなぁ……」
 セイレーンの娘に髪の事を言ったからか。そう遠くない記憶を思い出し、ジオグローブは僅かに顔をしかめた。
「レッグランブランドに参加しませんこと?」
「……何だい、そりゃ」
 シュチはレジィを相手に勧誘したかと思えば、ビーズ細工に興じて。
 独創的などはいいけれど、形にならないこともある。
「贈り物は気持ちだけ貰っとくよ。それで、あんたそんなの何日掛けて作る気だい? 泊まりでやられても迷惑なんだがねぇ。……あと、実費でやっとくれよ。在庫総ざらえされても困るんでね」
 ようやく目的の幅の半分まで通したノリスが、リジィにアドバイスを貰った所厳しい言葉を告げられた。そもそも短時間の講習で、肩幅のビーズの、しかも布を編む事など出来よう筈も無い。
「あれ……何だか上手くいかないなぁ」
「大丈夫かなぁ? それ……」
 革紐を大胆に細工してみようとしたのが裏目に出たか、レシピだけでは追いつかず、ツバキが苦戦している。ミントレットは隣で不安そうに見守っている。

●みんなで一緒に- enjoy -
 マリーティアを囲むようにして、のんびり話に興じながらビーズを綴る一角があった。
「ふふ、皆さん楽しそうですわね。わたくしも慣れないけれど、一緒に頑張りましょうね」
 こちらのグループは自分用にと製作中。皆と共にビーズを綴りながら、マリーティアは楽しげに微笑んでいる。
 わいわいと話し合いながら作業するのは、何とも楽しい様子だ。
「皆はどんなの作るの? 私は赤系統で統一して……」
 レティルは頻りに話し掛け、手が止まったと思えばまた動き。
「配色・配置も悩みますね〜……何かコンセプトを立ててそれに沿った形で行くのが良さそうでしょうか?」
「僕らしい物作りたいんだよねー……」
 デザインに妥協をしたくはない二人は熱心に話し合う。エルシエーラが小首を傾げる横で、ユアがうーんと唸っている。
「まあまあ、どんな物が出来るか楽しみですわ……あら」
「あ、そこはこうして……昔、よくビーズで虫や果物、指輪とか作って遊んでいたんですよね」
 何だか懐かしいですと言うマシェルは、ぎこちない手を見て、マリーティアを手伝ってやっていた。

 もう一つのグループは、誰かへの贈り物を製作中。
「わたしは日ごろの感謝を込めて贈り物にするつもりだよ」
 オリエは輝くビーズの数々を眺めて楽しそうにしながら、マリーティアにどんな物を作るの? と聞き。
「うちも気になりますわぁ。どんなの作るん?」
 一人で参加は寂しいかなと思えば、思わぬ大所帯に苦笑しつつヴィオラも首を傾げ。その手には作りかけのブレスレット。
「わたくしは紅水晶メインで、普段使いにも出来そうなものを作りますわ」
 にこにこ微笑み合う横では、イサヤが慣れない作業に唸っている。
「俺も贈り物だけど、うーん、なかなか難しいもんだなぁ……」
「そうですわね。単純そうですのに、こんなに悩むとは思いませんでしたわ」
 マリーティアも頷きながら、せっせと綴る。
「ボクはもう出来ちゃった。ねえ、後でお茶しに行かない?」
 プレゼントの品をそっと仕舞いながら、レイナートが皆に笑い掛ける。それもいいねと声が上がり。
「マリーティアはミントレットの友達なぁ〜んね」
 友達の友達は友達だと、どこかで聞いたような事を言いながら明るく笑うグリュウに、マリーティアは楽しげにゆったりと頷いた。

 そうして、時間は過ぎ。
 誇らしげにビーズ細工を見せ合う皆の様子を見ながら、マリーティアは言った。
「同じ物を使って、同じ物を作るのに、こんなに違いますのね。とても不思議なことですわ」
 それがきっと、個性というのだろう。


マスター:砂伯茶由 紹介ページ
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