【First Step!】番外編・温泉が出た話



<オープニング>


 秋は深まりそれとともに、冬の足音が聞こえてくる。
 ここは冒険者の酒場。冬の姿はこの場所にも見え隠れしていた。
「うー、寒ぅ〜」
 はじまりは・プルミエール(a90091)は暖炉に手をかざしさすっている。たしかにな、と葵桂の霊査士・アイ(a90289)は相づちをうって、
「そんなこの時期にうってつけの依頼があるのだ。先日、熊に似た怪物を退治した件を覚えているかな?」
「お芋色した熊さんですね〜」
「そうそう。おかげで付近の村は活気を取りもどしつつあるという。その村からの再度の依頼でな……」
 と、アイは集まったメンバーに向き直った。

 熊が退治され山に自由に入れるようになったおかげで、その中腹にある岩場に温泉の湧き出している場所が見つかった。乳白色の湯は適温で、手をひたすとじんわり、骨まであたたまる気がするという。泉質もよく、怪我や肩凝り、風邪の予防に効能がありそうだ。ほのかに柚(ゆず)のような香もするらしい。
 だがその温泉、あまりにも産出量が少なくつかることもままならない。硬い巨岩が湯本をおおって、地上にでるのを妨害しているようなのだ。
「岩は非常に大きく、とてもではないが村人たちの手に負えるものではない。高さだけでもプルミー五〜六人分はあるだろう。硬さもかなりのもので、採掘用のノミ程度ならすぐに役立たずになってしまうという。相当深く埋まっており、いくら押してもびくともしないというのだ。
 この巨岩をどうにかして、温泉を利用できるようにしてほしい、というのが依頼だ。いわば敵は岩だ。鍛えてきたその力で破壊するのも手だろう。経験や知恵を総動員して、どかす作戦を考えてみるのもいいかもしれない。だがいずれにせよ、メンバーが協力しないとびくともしないと思われる。
 もちろん、成功すれば露天風呂を満喫してもらいたいともいわれている。諸君にはこれまで、戦闘にかかわる依頼ばかりまわしてきたが、ここらで小休止をかねて湯治というのもよいのではないかな?」
 プルミエールはもう寒いのも忘れてしまって、
「わーい、温泉♪ おんせんっ♪」
 どこからだしたのか洗面器をとりだし、タオルや石けん、アヒルのオモチャをつめはじめている。 
「気が早いな」
 アイは苦笑した。
「そうそう、岩の裏側には大量に湯がたまっており、一気に砕けばこれが吹き出して頭からずぶ濡れになってしまうから注意だな。また、湯をたくわえておく場所もある程度作っておいたほうがいいだろう。あと」
 あごに指をやってメンバーを見回し、
「その……諸君らは男女混成のチームであるから、つかるときは公衆道徳に配慮をするように。板で区切るとか……ま、まあ、女子連が混浴で平気というのならかまわんが」
 ふーむ、とプルミー、頬に指を当て、
「別に私は混浴でもいいですよ。でも私のなんか見ても楽しくないでしょうしー」
 ぶっ、となにか(鼻血?)を吹き出す音が参加者の一角からきこえた。

マスター:桂木京介 紹介ページ
 桂木京介です。
 初心者向けシリーズ【First Step!】、今回は番外編ということで温泉場をつくるシナリオを用意しました。例によって参加者の制限はありませんので、これまで本シリーズに参加経験があるかたも、はじめてのかたも歓迎します。お気軽にどうぞ。

 温泉を阻む巨岩を壊す、あるいはどけて温泉を利用できるようにしてください。
 ただし岩は非常に強固なので、各人がバラバラに攻撃したりしても望みは薄いでしょう。ここでも重要なのはチームワーク、団結力で障壁を取りのぞいてください。巨岩の撤去ないし破壊に失敗した場合、残念ながら失敗となりますのでご注意を!

 温泉をいかに楽しむかは参加者にお任せします。脱衣所は村側が簡易の小屋を用意してくれていますし、男女を分ける板なども、希望すればすぐにもってきてくれます。また、心づくしの山菜料理で歓待してくれることでしょう。
 プルミエールは浮かれ気味で天真爛漫にはしゃいでいます。ああ見えていちおう二十歳のプルミーは、「湯船にお盆を浮かせ、そこにお銚子を乗せて燗酒を味わう」というのをやってみたいようです。

 それではリプレイでお会いしましょう。

参加者
猫又・リョウアン(a04794)
物語・メロス(a38133)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
色事師・ポワソン(a47140)
シルトリッター・スー(a49369)
灼炎の歌音・カノン(a50135)
金色の閃光・フェイト(a50291)
彷徨影翼・サマエル(a54204)
清純可憐な乙女・ヤーヴォ(a58279)

NPC:はじまりは・プルミエール(a90091)



<リプレイ>

●掘ってどけて
 なるほど大きな岩だった。見あげれば見あげるほど上があるような状態。
「ほはー……」
 はじまりは・プルミエール(a90091)、ぽかんと口を開け見あげている。これだけの大きさで「一個」の岩なのである。生物ではないが「敵」といってさしつかえあるまい。
「気をつけてください」
 見あげすぎて倒れそうになったプルミーの身を、猫又・リョウアン(a04794) が支えた。
「あ、リョウアンさん。ありがとうございます」
 プルミーははにかみながらいう。
「この依頼でもリョウアンさんとご一緒できて光栄です♪」
「今回は初心に帰ってがんばるつもりです。三年も冒険者をやっているのに、いまだに初心者以下の行動しか出来ないのは自分でもいかがかと思いまして」
 立派なベテランながらあくまで謙虚なリョウアンなのであった。
「それでは作戦を確認しておこう」
 色事師・ポワソン(a47140)、フッと微笑して告げる。
 岩は破壊せず、どける作戦となった。大岩の周囲の地面を掘り、岩を倒して湯の湧口を確保するのだ。
「さっき地形を調べてみたのじゃが」
 光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)が提案した。
「どうやら、倒した岩を囲むように湯を溜めることができそうじゃぞ」 
 約束の剣花・メロス(a38133)、砂遊びする子供みたいに嬉しそう。
「それじゃ頑張らないとね? 温泉の為にも♪」
 メロスは両手に超絶ツインクローを装備し、穴掘りに大いにやる気をみせている。
 温泉の湯気がでているとはいえ、やはり冬、吹く風が冷たいのはいたしかたないところ。だが灼炎の歌音・カノン(a50135)のバイタリティは、そんなものにはびくともしない。
「おーんーせんっ! おーんーせんっ!」
 はりきるのである。成功すれば温泉バカンスだ、愛しのお嬢(プルミエール)もいるのだからもりあがらないはずがない。混浴となればお嬢と……考えるだけでドキドキではないか。
「なんかカノン、すごい盛り上がりだな」
 彷徨影翼・サマエル(a54204)がいう。相棒のカノンに誘われきてみたこの依頼、カノンの「意中の人」も見ることができたし、面白いことになりそうだ。
 サマエルはロープを盾愛好家・スー(a49369)に渡す。これをスーが体に固定するのも手伝った。スーが岩をよじ登り、引いて倒せるようロープを巻きつけるのだ。
「お気をつけて」
 闇屠る星光・フェイト(a50291)が心配そうにいう。岩は非常に高い、落ちたら大変なことになるだろう。
「ええ、フェイトさんこそ、温泉で怪我を癒せればいいですね」
 準備体操中のスーは、切れ長の瞳を細めて微笑した。フェイトは戦刃峡谷で怪我を負っていたのだ。
「わたくしたちは掘りはじめるといたしましょうか?」
 清純可憐な乙女・ヤーヴォ(a58279)が呼びかける。
「さて、お手柔らかにね、岩だけど」
 スーは岩に手をかけ登りはじめた。

●開泉!
「大丈夫ですかー」
 下から見あげるプルミエールに、スーは「なんとか」と返事した。壁面は凹凸がすくなくやっかいだ。
 穴掘りチームも着実に作業をすすめていた。
「こーいう作業は大人数のほうが断然効率的っスよねー!」
 カノンはそういって、大量の「人手」を用意していた。土塊の下僕である。
 メロスはとにかく掘りまくる。どかどかと土が山となる。その山を土塊の下僕たちが片づけてゆく。ちゃんと事前に村人に頼んでおいたから、土嚢袋もソリも充分にある。
「力仕事はあんまり得意じゃないんだけどね」
 というがメロスの活躍は大きい。ある程度進んだところで、ガッと音をたててツインクローが硬いものにつき当たった。ヤーヴォがのぞきこんで、
「岩盤ですね、けっこう硬い……でも、ここも崩しておかないとお湯を溜めるには浅いでしょうか」
 そこへポワソン、さりげなく参上。
「正直女性が力仕事をするのは好まないのでね。ここは私が」
 と、手にしたスコップを持ち上げようとするのだが、
 ごす。
 ヤーヴォはそれより先に、大地斬で岩盤をたたき壊していた。
「すいません、なにかおっしゃいまして?」
 くるっとヤーヴォはふりむき微笑、ポワソンは持ち上げたスコップのやりどころがなくなり、さくと地にさした。

「おー、もう少しじゃ」
 とプラチナ、その姉フェイトも声援をおくる。
「がんばってくださーい」
 スーは岩の頂上そばにいた。足場がない場所は槍で岩肌を削って足場にするなど苦心したが、ついにここまでこれたのだ。ほどなく頂上に登りつめ、ロープをかけるのに成功した。胸を満たす達成感。下から仲間たちが喝采している。
「お願いします」
 と頂上からスーが投げたロープをサマエルがとる。
「じゃあ、俺の側にロープを引くよ」
「では私は、その反対側から押しましょう」
 リョウアンは手にしていたスコップを置き、岩のところへ向かった。プラチナも押す側にいく。
 プルミエールは
「綱引き綱引きー」
 とかけてゆく。すでに岩の土台は掘り崩してある。湯船用の穴もそろった。
「それではわたくし、岩が一気に倒れないように支えますわ」
 ヤーヴォは袖をまくり、巨岩のたもとに歩み寄ろうとする。そこに、またもフッ、とさりげなく登場するのはポワソンだ。
「紳士として申し上げる。ご婦人にそのような危険な役割をお願いするわけにはいかない。ここは私が」
「あら」
 するとヤーヴォ、艶然とした笑みを浮かべて、
「ご心配なく。わたくしこれでも、けっこう強いんですのよ」
「しかしそれでは私の心が痛む」
 とナチュラルに肩を抱くポワソン、このへんさすがである。されどヤーヴォは春風のようにその手から抜けて、
「でしたらご一緒に支えません? 紳士さんたち」
 と岩に向かった。
「紳士さん『たち』?」
 といいかけてポワソンは肩をすくめる。
「お力になれれば、と」
 フェイトが恥ずかしそうにいった。彼女が召喚したありったけの土塊の下僕が、岩の土台に向かっていたのだ。小さいながらかれらも「紳士」といってよかろう、ポワソンは小さく笑った。
「じゃあ、力をあわせて」
 スーもすでに岩から降り、ロープを引く側にまわっていた。
「いつでもいいよー!」
 サマエルが応じた。
「せーの!」
 といったのはメロス。力をこめて岩を押す。最初無反応に思えた岩が、唐突にごとりと動きはじめた。
「うーん……」
 プルミエールは力を込めてロープを引いている。気合い満点、顔が紅潮しはじめていた。
「はう……」
 そしてカノン、運良くプルミエールのすぐ後ろでロープを握っている。プルミーが綱引きの要領で腰をおとし後部にのけぞるものだから、カノンは必然的にプルミーを抱くような姿勢になっている。目の前には栗色のプルミーの髪だ。
(「お嬢の髪……甘い香りがする……♪」)
 息を吸いこむ。ずっとこうしていたかったが、それは何秒もつづかなかった。まもなく岩はごろりと外れ、同時にどっ、と温泉があふれ出したからだ!
 石を隙間なくしきつめた穴に、乳白色の湯がみるみる満ちてゆく。白い湯気がたちのぼり、たちまち周囲に柚(ゆず)のような微香がひろがった。冬の張りつめた空気さえ、まるくなったように感じられる。
「無事成功かしら?」
 ふふっとメロスは笑う。汗もかいたし、風呂はさぞ気持ちよかろう。
「それでは恒例の〜」
 とフェイトがいうと、サッとプルミエールが両手をあげて待つ。ハイタッチ。プルミーからカノンへ、カノンからプラチナへ……初参加の者も含め、ハイタッチの輪が広がってゆく。

●そして混浴
 温泉は岩を真ん中にしてU字型のものとなった。岩の右側が男湯、左側が女湯、そして左右の交わる中間地点が混浴。
 目に見えて緊張しつつカノンは訊いた。
「あ、あの……お嬢はどれに入るっすか?」
「混浴ですよー」
「えマジ!?」
 混浴は水着で、ということになったが、刺激的な事実にはちがいあるまい! うきゃー!、と小躍りするカノンだ。お嬢と混浴、ふたりっきりで露天! これは事件だ!
「妾もじゃ。先行くぞ」
 さっと脱衣場の小屋からでてきたプラチナが、洗面器片手に水着姿でとてとてと歩む。
「私も……」
 おなじく水着姿のフェイト、丁寧に一礼してから湯船に向かった。
 ふたりっきりじゃないのね、と脱力するカノンの肩を、ポンと叩くのはポワソンである。
「許せ少年、私もだ。両手に華の夢、かなえる好機なのでな……」
 たたっと脱衣所にむかうポワソン、水着をもってきてないといっていたがどうする気だろう?
 少々残念だがこれもまたよし、カノンは「じゃあお嬢、後で」といって男性用の小屋に向かう。それはそうとさっきからサマエルが、チラチラこちらを見ているようなのが気になる。
「あ、プルミエールさん」
 着替えにいこうとするプルミーに、リョウアンが声をかけた。
「銚子を湯船に浮かべるなら、お盆より風呂桶に乗せた方が良いですよ。お盆だと絶対にひっくりかえしますから」
「おー、たしかに!」
 ポンと手を打つプルミエールである。リョウアンがアドバイスしていなければ、きっとひっくりかえしていたにちがいない。
「もしかしてリョウアンさんって……温泉の達人さんですか!?」
「いや……ははは」
 リョウアンは笑った。素直なプルミエールといるとどうしても、初々しい気分になる。自分が冒険者になりたてのころはどうだったろうか、とリョウアンは思った。だが少なくともアドバイスできるだけ、自分も成長したにはちがいない。

 とぷとぷと波打つ温泉、脚からつかれば、つまさきまであたたかさがしみてゆく。乳色の湯はなめらかな肌ざわりだ。
「あー、こりゃいいわぁ……」
 肩までざぶりとつかって、メロスは幸福な吐息を漏らした。昼間の疲れなどすべて、湯に溶けてしまったように思える。
 すぐ隣ではヤーヴォが、目を閉じて湯につかっていた。髪をあげているせいもあり、白いうなじが目にまぶしい。
「あら、プラチナさん」
 ヤーヴォが顔をあげると、そこには水着姿のプラチナがいた。そんなプラチナに隠れるようにして、姉のフェイトもひょっこりと顔を出す。
「ご一緒よろしいかの?」とプラチナ、
「私も」これはフェイトだ。
 もちろん否やはなく、二人とも静かに湯につかった。広さは充分にある。
 す、と音もなく湯船に登場。隣の男湯から流れてきた彼はポワソンである。
「フッ、両手に華のつもりであったが、それどころか百花繚乱であったか……良いではないか、良いではないか」
 などといいながら女性の輪に入ってみたり。
「い、いいですけど……ポワソンさんたしか……タオル一丁ですよね」
 フェイトが恐る恐るいうと、
「隠すべきところはしっかり隠すが、理性は開放的に行きたいところである」
 まったくもって意に介さぬポワソン、なんだかそれが許されてしまうキャラであった。
「理性は知らんが……タオルのほう開放したらおしおきじゃからな」
 しかしプラチナはとりあえず宣言しておくのであった。
「あ、プルミーちゃんがきたわよ。おーい」
 メロスが手を振る。湯煙のむこう、風呂桶を手にプルミエールがくるのが見えた。がちゃがちゃいっているのは湯船に浮かべるつもりの酒類だろうか。
「はーい」
 がちゃがちゃ、プルミエールが駆けてくる。がちゃがちゃがちゃ……がしゃーん!
 こけた。

「あいたたた……」
 とりあえず酒や銚子の換えはいくらでもあったので、仕切なおして再度プルミエール登場。
「大丈夫っすか」
 気づかうカノンだが、じつはプルミーの介抱ができてちょっと嬉しくもあった。
「じゃあもらうね?」
 メロスはプルミエールを気づかいつつ銚子を手に取る。中身はぬるめの燗酒。
「はい、じゃあヤーヴォさん」
 ヤーヴォ、もじもじとお猪口をとって、
「あの、じつはわたくしお酒は……」
「あ、じゃあ少なめにしとくね」
「お酒は……強くてよ」
「え?」
 と驚くメロスの眼前で、つがれた酒を一気に干してしまうヤーヴォであった。
「私は女性陣の艶やかな肌を肴に一献といこう」
 ポワソンも上機嫌だ。さて、と自分も誰かにつごうとして、相手がプラチナであるのに気づいた。
「失敬、未成年の淑女諸君には……」
「心配無用。自前がある」
 とプラチナがとりだしたのは、銚子である。
「自前の『エンジェル酒』じゃ」
「エンジェル酒!?」
「中身はジュースじゃがな。姉上もどうぞ」
「うん、ありがとう」
 フェイトは微笑んだ。かつて家を出たときは、こうして姉妹そろって温泉で酌み交わすことができるなんて思わなかった。絆の不思議さよ。

 こちらは男湯、広い湯船だが離れ合ってつかる三人、湯煙がたちこめているのでお互いの姿はほとんど見えない。
(「温泉の達人さん、ですか……」)
 タオルを頭にのせ、湯煙の上の暮れゆく空を眺めつつ、リョウアンは日頃の疲れが癒えていくのを感じていた。
 スーもまた、岩風呂に脚をのばし、静かな時間を楽しんでいた。
「ふぅ……たまにはこういうのも悪くないね」
 まったくの初心者だったあの日、グドン退治にでてから早数ヶ月――たくさんの冒険を経験した。親しい仲間もできた。これからどんな冒険が待っているのだろう? どんな人たちと出会うのだろう? でも同じくらいたくさん、別れも経験することになるのだろう。ふと、そんなことを考える。
 さてサマエルは、悪戯の結果を考えてニヤニヤとしていた。
「さ〜て、あいつはどうするのかな……」
 サマエルは相棒カノンの服を、小屋から少し離れた場所に隠したのだ。カノンがあわてふためく様子を想像すると笑いがこみあげてくる。
 だがサマエルの夢想は途中で断ち切られた。
「見っけ」
 頭上でなんと、ヤーヴォが笑っているではないか。
「え? ここ男湯……」
「カノン君はプルミーちゃんにデレデレしっぱなしだし、ポワソンはメロスとフェイト&プラチナ姉妹ばっかり追うんだもん。わたくし、つまんないですのよ!」
「??」
「だからあなた、わたくしのお酌をなさい!」
 がし、ヤーヴォは問答無用でサマエルの腕をつかみ立ち上がる。息が相当に酒臭い……酔っている、それもかなり!
「けど俺、お酌っていっても未成年で」
「エンジェル酒がありますわ」
「エン……? ち、ちょっと、待って!」
 ざばと湯からあげられ、あわてて下半身をタオルで隠すサマエル。そのまま混浴の方向へひっぱられていく。
「あれ? その服……」
 サマエルは気づいた。ヤーヴォの片手に、かれが隠したカノンの服があることに。
「なんかお酒を追加しにいったら、落ちてたからひろってきましたわ。まったく、男の子はどこにでも服を脱ぎ散らかすんだから!」
「い、いやそうじゃないと思……」
 だがその抗議を封じるように、ヤーヴォはぴしゃりといったのである。
「わたくし!」
「は、はい?」
「お酒は強くてよっ!」
「意味わからーん!」
 そんなツッコミもむなしく、混浴のほうへとずるずるとひっぱられていくサマエルなのであった。

(つづく)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2006/12/11
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