ふっくらとまきやすい



<オープニング>


 山鳥の声も遠ざかり、雪の気配が近付く季節。
 からからと大きな糸車の回る小気味良い音が、布団職人・マク爺の工房に響いている。
「こりゃまた、手触りの良い糸が出来たぞい」
 マクは完成した二種類の糸を検め、納得の笑みで頷いた。

「名付けて『ふさ糸』と『もふ糸』だそうです」
 祈らない霊査士・エリソンは、丸い焼菓子の丸さ加減を眺め終えて語る。曰く、マクの村で寝具の中綿に使われている『モチリ実』――もちもちとした独特の弾力性に富む繊維が、近頃は編物用の毛糸にも用いられ始めたのだと。
 それらはどちらも保温性が高い極太糸だが、仕上がりの肌触りが異なるらしい。
 ふさ糸はモチリ実と絹を合わせて作ったふさふさの糸で、毛皮の様な滑らかな肌触りは、毛糸のちくちくとした感触が苦手な人にも使い易い。
 一方もふ糸はモチリ実と羊毛を合わせて作ったもふもふの糸。肌触りは一般的な毛糸に似て、馴染み深く親しみ易い。
「今回はマクさんの工房で、これらの糸を使ってマフラーを編む体験実習会が行われます」

 手筈はまず、ふさ糸ともふ糸から好みの一つと色を選ぶ。
「毛糸の感触が苦手な方や、毛皮の様な手触りを好む方はふさ糸。オーソドックスなマフラーを好む方はもふ糸が良いでしょう。色はどちらも沢山取り揃えてあります」
 次に『指編み』と『棒針編み』から、好みの編み方を選んでマフラーを編む。指編みとは、編み針を使わず手指に糸を巻きながら編む初心者向けのスタイルで、手解きは職人・マクが行う。片や棒針編みとは、編み針を用いた一般的な編物のスタイルで、こちらの手解きはマクの妻・ランが行ってくれるだろう。
「編物が苦手な方は指編み、逆に得意な方や、得手不得手を度外視したチャレンジャーの方は棒針編みが良いでしょう」
 今回は極太の編み糸を用いる為、どちらの編み方にせよ、自分の実力に見合った長さと幅で編みさえすれば、初心者でも半日掛からず編み終える事が可能だと霊査士は言う。

「そして編み終えた後は、プレゼント用の包装を行うも良し、焚き火の暖かい中庭で茶話でもするのも良いんじゃないでしょうかね」
 また、『今回モチリ実は触らせてくれないの?』という好奇心旺盛な人には、モチリ実の繊維で糸を紡ぐ様子を見学・体験させてくれるそうだ。全工程は公開出来ないが、熱加工されてマシュマロの様な感触になった熱々のモチリ実を、ひたすらぐいぐいと引っ張って細長く伸ばしていく作業なら、冒険者達にも手伝えるらしい。
「うん……でもそっちのお手伝いは余裕がある人向けよね」
 ヨハナ・ユディトは苦笑する。
「えぇまぁ。自分の作業で一杯一杯の人は無理せず専念した方が良いと思いますよ。……そんな訳で、行ってみませんかね?」
 そう言うと霊査士は、冒険者達を手招いた。

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参加者
NPC:祈りはじめた霊査士・エリソン(a90312)



<リプレイ>

●思い糸手繰り
 窓辺には初雪の気配もひやり近付く、職人の工房。集い来た冒険者達は、実に総勢七十一名――。

「マクさんやランさんは大丈夫なんでしょうか」
 時節柄も手伝い、今回は殊更人出が多い。肩でも揉んで上げられたらと、セリアは老夫婦の姿を求めて頭を巡らせる。
「あのねですの……」
 その混雑に萎縮し、肩を震わせているルイを老婆が支えた。知人の嬰児の為に編みたいのだと彼女が小さな声で訴えれば、ランは『優しいお嬢さんね』と笑顔で糸玉を手渡して導く。

「さてユノちゃんや……やるか」
「ふ、任せてくれ給えのんちゃ」
 シャノンは腕を捲り、ユノは奇妙な持ち方で編み棒を構えるが、
「待て!? ユノ何してんだーー!?」
「何だと! 俺の何処が下手なんだ!」
 直に糸まみれの押し問答が始まった。制止に入った職人が後に曰く、シャノンはむくれて背き、ユノは何故か土下座をしていたのだと。
 編物の経験こそあるが、記憶は遠い。ヴィーナは首を捻った末に指編みを指南する職人に倣う。綾取りの手筈にも似た作り目を繰り、穏やかな息を吐く。
(「たまには静かな時間を過ごすのも……悪くはないよね」)

「んと、ここは、えと、こうなって、それから……はにゅ? あれれ?」
「……え、と。こう来てこう行って……こう?」
 レシュリアナは絡まったふさ糸の中で掌をじたばたとさせ、レイティスは手元の編み目を自覚なく分解していく。
「こ、こりゃこりゃ。逆じゃよ」
 マクは慌てて不慣れな二人の手元を正した。
「うっかり道具を落とす心配もないし、何処でも出来て便利そうですね」
 真剣な眼差しで老翁の動作を憶えようと試みるイングリド。だがいつしか彼女の目は、唯翁の指繰りに見惚れていた。ユーニスも老翁の手を倣い、たどたどしくも熱心な手取りで編み段を手の甲に上げる。マクさんは、やっぱりすごいひとなのですね――と嘆息すると、老翁の頬は目に見えて緩んだ。
「マフラー♪ マフラー♪」
 若草色のもふ糸を指で繰るバーミリオンも、老翁の繰る糸に目を遣る。皺深く枯れた手は何処か暖かく、彼の目にはいつか穏やかな笑みが灯った。
「……何だかすごく……長くなっちゃったな?」
 その傍らでは、気付けば己の身長の倍を越す長さになっていた青藍のマフラーを片手に、頬を掻くロアン。
「少し……長過ぎましたでしょうか……」
 通りかかったランの手解きを受ければ、初めの緊張も何処へやら。笑顔と共に好きの一念を青蓮の糸で綴るクロエのマフラーも、相当の長さに達していた。

「「…………」」
 シルエットとミヤクサは、ひたすら無言で作業に勤しむ。併し同じ無口でも、手先の様相は随分異なる。片や、手の甲に縺れた赤いもふ糸を解くシルエット。編物の経験はないが、『好きなヤツの為』と思えば、不安混じりの慣れない作業にも耐えられた。片やミヤクサは、余裕の表情で棒針を諸手に気分上々だった。
「皆でやると楽しいですね〜」
 細かい作業を好む気質故に初の棒針は直ぐ馴染み、ルルイも語尾を弾ませる。
「やってみると楽しいものだな……♪」
 贈る相手を思えば尚捗り、頭には早くもラッピングの手筈迄浮かんだ。ガルスタも慣れた手付きで編み目を掬う。目まぐるしく動く手先とは裏腹、ゆるり思い起こすものは義娘の顔。過敏な彼女の肌にも合えばと、願って編み進める。
 編物は、刺繍に次いで大得意。ウィーは手早く編み段を重ねる。贈るべき相手は硬い鱗の持ち主で、普通の毛糸ではさぞ引っかかり易かろうと思えば、笑みが零れた。
『寒い冬を、暖かく過ごせます様に』
 同じ胸の内を誰かの呟きに認め、シファの心臓は軽く跳ねるが、
「ほわ、ほどけたですー!」
 助けを乞うソウェルの声に我を取り戻し、覚束ない手先を庇い合っては二人わたわたと右往左往する。
「え、と……どう、しましょう……」
「ランおばあさんっ、たすけてくださいです!!」
 『あらあら』と二人を助け終えたランの助言を得て、シーアスは二個目の糸玉を継ぐ。
(「あの方なら、雪降る中上着を羽織らないで薬草採取に行きかねません」)
 贈り相手の無鉄砲な姿が胸に浮かび、彼女は思わず親愛の苦笑を零した。
「出来れば長めの物が、作りたいのよね……間に合うかしら?」
 編み物は随分昔、子供の頃にやったきりだから、とステュクスは口元に不安を浮かべるが、思い出を辿る手に『大丈夫よ』と老婆の指先が添えられる。

「うぅん……手伝おうかい?」
 絡まるばかりの糸に悪戦苦闘するデイジーを見かね、職人が助力を申し出るが、
「どうにか自分で完成させます!」
 助言ばかりは有難く受け、彼女は難しい眉根で健気に編み続ける。その気概を見たサラは、やれ糸を引き過ぎだ裏編みだと職人達に次々と注意を受けつつも、
「ここで投げ出してたまるか……!」
 克己して水色の糸を掴んだ。

●安らぎは悦びは集い来
 誘い合い訪れた五人は、旅団『極楽鳥の鳴く場所で。』の一行。
「フフフ、すっかりこの感触の虜になってしまったよ……っあ痛ッ!」
 うっかり編み目に髪を巻き込み、クィンクラウドの笑顔が涙目に変わる。渋面で赤糸を解く彼の傍らでは、レインがビャクヤの首に編みかけのマフラーを巻き、贈り相手になぞらえて長さを検めている。まだ幾許か足りないと彼女が溜息を吐くと、義弟は『気合を入れて頑張ろ』と微笑みで励ます。
「女の子に喜ばれる様な物ってぇのは、勝手が判らんねぇ……」
 帽子の鍔を弄り、ワイルは『どうしたもんかね』とサフィアルスに訊ねる。が、レインの作が誰宛の贈り物なのかと、そちらにばかり興を傾けていた彼女は、つい己の贈り相手を問われたと勘違いし、曖昧な笑みで誤魔化して口篭る。

 白いふさ糸の手触りは愛犬・モコモコを思い出す。ノリスは目を輝かせて糸玉を撫で――やがてその思考は、ふさ糸を用いた編み人形に下着にと、様々な可能性へ漫ろ綻ぶ。
「もふもふして癒されたいですおぢさん」
 此方では、セドリックが淡緑のふさ糸の虜になっていた。編み進まなければ(もふ)。心ばかりは急くが(もふもふ)。
「ああ、でももふもふもふ……」
 肝心の手指は糸の感触を味わい続ける。余りに幸せそうなその姿に、ニニもつい眼前の糸玉に顔を埋めかけるが、
「はっ、いけないのです!」
 それが義兄への贈り物だと思い出し、誘惑に耐えた。イクスは不慣れながらの手付きで職人を倣い、指の根に巻いた赤いふさ糸を掬う。
(「こういう時、編み物も大きくならずに済んで楽ですね」)
 小さな恋人の姿を心に描き、胸が擽られた。ルルは職人達の手を伺い、浅葱の糸をくるりと指に取る。ふむふむ……と神妙な呟きも、要領を得るに従い軽快に変わる。
「何だか楽しくなって来るな……♪」
 一方ポーラは最初から要領が良い。
「手解き宜しくお願いします……」
 上目で見詰め甘い声で乞えば、赤い顔をした職人が咳払い一つ、丁寧な説明を買って出るのだった。
「……ふむ、単純単調。飽きて来たよ」
 アスベールはしなやかに指先を繰る。初心なのに大したものだと職人が称えれば、反復作業に厭いた面にも貴族然とした笑みが戻る。
「あれ? 今幾つでしたっけ? 目の数忘れました〜〜っ!!」
 優雅な育ち故に音楽以外の嗜みがないジーナスに、編物はやはり難儀だった。あう……と狼狽する姿に、手の空いた職人が声をかけようとするが、
「ほら……ね? 乙女の嗜みですから」
 彼女の手指を傍らのラキアがそっと正すのを見、頷いて踵を返した。

●当所のない温もり
「そ言えばフォーティアさは、誰かの為に編むんだべかな?」
 浮かんだ疑問のままウィルカナが面を上げると、彼女の編む黄色いマフラーに視線を向けていた友と目線が合う。
「えと。こうで良いの、でしょう、か。」
 照れ交じりに俯き、『どなたに差し上げるのかしら』とは言い出せない疑問を秘め、フォーティアは花白の糸先を示した。

 リオンはユディトと肩を合わせ、宛先のない贈り物を編む。人はいつか消える存在だが、それでも――
「……形が無いと不安になるもんだからね、人間って」
 眠気混じりの呟きに、女重騎士は『それで良いと思うわ』と答えた。ユーリースはその手元を覗き込み、何故か今年の冬はいやに寒く感じるのだと零す。
「今迄平気だったんだぜー、一人でも薄着でも――」
 続きの言葉は、はっと呑み込んだ息に埋もれた。……そっか、と一人得心して頭を掻く彼女に、ユディトは目を伏せる。
「安らぎに蝕まれる事も、きっと絆なのね」
 ドアは職人達の説明に沿って淡々と指に雲色の糸を巻く。既知の友を見付けても、その姿は目で追うばかり。
(「……喜んでくれると、嬉しいな」)
 唯、贈り相手の笑顔を切に願った。

 この時期に己の物を手作りする姿は、同盟では時に憐憫を誘うらしい。
 ノヴァーリスは物作り自体を好み、別段の寂しさも感じない。故にそれを奇妙な風潮だとは感じるが、同時に奇妙な安堵も感じた。
「こういう所、同盟は去年と変わってないな」

●あなたに
 慣れぬ作業に惑う指もいつしか持ち前の器用さに熟れ、グラースプは薄紫の端糸を閉じる。
「いつも有難うございます」
 ヒヅキは彼の首に、一心の集中で一手ばかり早く編み上げた紺青のマフラーをかける。彼女の笑みに暖かさに、目を見開いて窓辺から空を仰げば――早や雪の気配。夏に置き去りの心は疼く。
(「いつまでも前に進めていないのは俺だけか……」)
 二人編み上げた番いのマフラーを互いの首に巻く、クーヤとユウノ。
「うん、とっても似合います♪」
 幸せに高潮した頬で抱き付いて来る義妹をふわり抱き止め、ユウノは『クーヤちゃんも♪』とその髪を撫でた。暖かな絆を確かめ合い、エルフの義姉妹はお互いの腕と如何に似合うかを讃え続ける。

「ちょっと可愛くなり過ぎたかしら?」
 刺繍を終えて見てみれば、真っ白なフワリン柄は贈る相手の背格好には可愛過ぎる意匠にも思えた。カルマは苦笑し、白い包装と桜色のリボンを手に取る。
 隣で戦える程の力量は無いので、せめて応援させて下さい――
 時々使ってくれるだけで良いからと、ささやかな願いを込め、アラクシエルは赤いリボンで白い袋を結んだ。
「んと、こうかな?」
 周囲と己の手元をきょろきょろと見比べるティラシェル。編むも苦労包むも苦労とあれば、唯渡す相手の笑顔を祈るばかりだった。
 不器用ながらの健闘の末、遂に編み終えた空色のマフラー。ケイカはそれを誕生プレゼントとして包装していくが。
「……ま、マフラーはきれーに編めたのでいーのデス……」
 包み終える頃には、目線が卓上から逸らされていた。
「オゥゥゥライトッ!!」
 エキセントリックな叫び声と共、紺の包装を翻すガマレイ。だがその動作は直ぐに鈍り、チェロットに助けを乞うた。併し、慈愛の表情で丁寧な編み目を重ねる義母の姿に、彼女は『取り込み中みたいね』と肩を落とす。
「編物は……優しい気持ちで、心を込めて編む事。これが何より大切な事でしてよ?」
 そう微笑んだ後、柔らかな手が義娘の指先に伸べられた。
「出来はおいといて、愛情入ってれば、ね。うん」
 縺れ千切れに艱難辛苦の末、ミィミーは漸く完成させた赤いマフラーをラッピングし、最愛の夫を胸に描いて頬を綻ばせた。頭上に灯した明りの元、棒針でざっくりと編み上げたゴム編みのマフラーを包み終えたシトラ。彼女が糸紡ぎの見学を望めば、ミィミーも手を上げる。イングリドとウィーも、それに続いた。

 ――良く伸びますのね、面白いですわ。
 ――……細糸になっちゃった?!
 工房の奥から聞こえ来るシトラ達の楽しげな歓声に耐え、カロアは『編物専念宣言 兼 勝利宣言』を下す。
「命拾いしたな! モチリ実よ!」
 そして彼女は、一色の糸を手にゆっくりと編み進めるユユへと、優しい眼差しを向ける。
「……?」
 俄か訪れた静寂にユユが顔を上げれば、親愛を湛えた目と目が合う。
「ユユがカロアちゃんのマフラー編んで上げるの」
 あどけない笑顔でそう返せば、暖かさが満ちる。笑みを交わす二人を見守り、カルアは無言で淡く青い糸を継ぐ。甘やかな時を緩やかに過ごす――安寧を一つ覚え、彼は一つ息を吐いた。『老けたんだろうか』と自嘲はしても、それも悪くはない事なのだと、やがて思い至る。

「え、食べられないんですか!?」
 聞くに『モチリ実』は食用でないらしい。イクサは目を丸くする。美味しそうな名前なのに、と残念そうな面になるが、向かいで小気味良く糸を締めるギンバイカの姿を見れば、一刻も早く完成品の交換をしたい一心で、やがて彼女も指編みに専念していく。
 黒の君には彩りを、白の君には更なる白を――互いへの思いに、胸の奥は温まる。

●いつか繋いだ絆
 庭先のミシャはマフラーの両端に縫い付けた純白の飾り玉を見つめ、『霊査士が好きそうな質感だ』と思う。
「マクお爺さんもランさんもお体には気を付けて、元気でいてね」
 焚火で手を温めて頭を下げれば、老夫婦はその頭を撫でた。
「ゆ、指がー……」
 ソアは手首を振りながら嘆き、糸が巻かれたままの指を休める。そして視界に入った霊査士に歩み寄ると、窓越しから鼠に見立てた毛糸玉の愛嬌について、暫し共に興じた。
 ふと思い立ったファンバスが庭に向け糸玉の幾つかを転がすと、中でも取り分け丸いものを追い、話し終えた霊査士が走り来た。
「――」
 糸玉を拾い面を上げれば、見慣れた顔がある。言葉少なに挨拶を交わせば、親しみと信頼が交わった。
 中々に整った編み目に仕上がったマフラーを包み終え、リディアは中庭へ向かう。
「美味しいコンフィチュールを貰って来たので、お湯に溶かして飲むのはどうかしら」
 蓋を開ければ、甘い香りがふわりと漂う。ニルギンは持ち来たチーズケーキを卓上に切り並べ、熱い紅茶を注ぐ。肌に触れる毛糸の暖かさは、亡き養父を思わせる。俄か蘇る懐かしい日々に、彼は人知れず滲む涙を堪えた。空に爆ぜる火の粉が、やけに眩しく感じた。
「出来上がりぃーv うん、上出来……かしら」
「僕もティアちゃんもお疲れ様!」
 ヴァレンティアとナツキは、両掌を重ねて喜びを分かち合う。片や美しい結い紐付き、片や羽根をあしらったブローチ付き、慣れぬ苦労を重ねた末の完成品を取り交わし、二人は笑顔で紅茶の碗を手に取る。

 喧騒から離れた一隅では、ライアスが編んだマフラーを首にかけ、懸命に純白の糸を繰るスノー。
 この暖かさを、早くライアスにも――
 逸る指は棒針を落としかけるが、ライアスはそれを庇い取る。
(「私がいる時は、腕の中で二人で一緒に温まりたい……」)
 触れた指から伝わる熱に、スノーは頬を染める。

 思い糸手繰れば 安らぎは悦びは 集い来
 当所のない温もりも あなたに
 いつか繋ぐ絆が ありますようにと――

 夕暮れに霞む鈍色の分厚い雲の彼方、降り始めた初雪が願いの数々を包む。


マスター:神坂晶 紹介ページ
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参加者:69人
作成日:2006/12/18
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