その木の元に集うモノ



<オープニング>


 ただ木の実を食べたいと、二人のエンジェルは思っただけだった。
 それなのに、なんでこんな事になってしまったのだろう?
 二人が悪くないのなら、きっと運が悪かったんだろう。
 一本の木の上。身を寄せ合って震える二人の下には一体のギアが立っていた。
ギギギィ……
 悲鳴のような金属の摩擦音。それは木の下に立ち続けるギアが放つものだった。
 ギアの眼前には三体の、槍のような腕を持つピルグリム。
 腕はパチパチと音を立てユラユラと揺られている。
 更にもう一体、八本の鋭利な尖端を持つ蜘蛛の様な足を持ち、先端に巨岩を備えた触手をうねらす融合型のピルグリム。
 ギアに残る力は、あと僅か。

「エンジェルの子供が二人、大変危険な状態にあります。木の実を取ろうと森に入り、木へと登った二人はそこでギアの一団と遭遇してしまったのです。幸い登ってくる事は無かったのですが、更に不運な事にそこへピルグリムの集団が現われ……」
 ギアとピルグリムは即座に戦闘状態に入った。
 しかし数の上でピルグリム側が有利。ギアは徐々に追い詰められていった……。
「ギアの全滅は時間の問題でしょう。対するピルグリムも木を登る事は出来なさそうなのですが……、どうも飛行タイプのピルグリムが援軍として近付いているようなのです。そうなれば、二人は無事では済みません」
 援軍のピルグリムは四体。蛾の様な形状を持ち、輝く粉をばら撒いて相手を痺れさせる。
 それ以外の攻撃手段は体当たりのみ。
「この依頼、お受け頂けるのでしたらどうぞお急ぎ下さい。小さな二つの命を恐怖、そして死より救う為。どうぞお願い致します」
 エリアードはそう言うと、深く頭を下げるのだった。

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参加者
徹夜明け紅茶王子・デュラシア(a09224)
煉刃暗手・セイジ(a15891)
月煌・ハーク(a16699)
光と風のセンリツ・ウィンダム(a19114)
安らぎを奏でる柔らかな光・フロル(a25437)
焔纏う一陣の風・ディーン(a32427)
弓使い・ユリア(a41874)
残響ノイズ・リュート(a48849)


<リプレイ>

●その木の元に集うモノ
 ホワイトガーデン。この冬の季節に置いても緑溢れるこの大地、駆け抜けるのは八人の冒険者だ。
 件の森へと勢いのままに駆け込み、速度を落とす事無く前進を続ける。
「ピルグリムにギアか、あんなのに囲まれて……怯えているだろうな」
 急ぐ理由は焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427)の一言に表されているだろう。
 木の上で怯え竦む一組のエンジェルの子供。その姿を思うだけで気持ちがざわつく。
 何も悪くないのだ。ただの巡り合せによって輝かしい生が断たれようとしているのだ。
「どうか命が散ってしまいませんように……」
 それを阻む為に今出来る事は急ぎ、そして祈る事くらいだ。
「悲劇は繰り返させません。脅かされている仲間の命……必ず、子供達を救い出します。そしてピルグリムも一体残らず倒します!」
 優しげな容姿に決意を浮かべ、光と風のセンリツ・ウィンダム(a19114)はこの一戦に捧ぐ誓いを口にする。
「近いぞ」
 草木のざわめきに混じる戦闘音を聞き取りディーンは更に足を速めた。
「さって、頑張っていきましょい!」
 幼子の命、そして無邪気さと純粋さ、その全てを守る為、疑惑のヅラ紅茶王子・デュラシア(a09224)等、冒険者は行く手を阻む草むらを飛び越え戦場へと急いだ。

 エンジェルの少年少女が震えながら身を寄り添う木の下、彼等は集った。
 至る所に傷を負い、周りに数体の仲間の残骸を置きながら、踏み止まる一体のギア。
 数体の犠牲を出しながらも、融合型ピルグリムの力に、更に迫る増援により勝利まで後一歩へと迫ったピルグリム勢。
 そして双方の勝利を阻まんと駆けつけた冒険者。
「……あれみたいですっ」
「派手にやってるねぇピルグー共は……」
 指差し呟く安らぎを奏でる柔らかな光・フロル(a25437)に頷き応え、デュラシアは皮肉気に口元を歪ませた。
 ギアに打ち込まれる槍の如き触手の攻撃。戦闘は一方的である、ギアに勝機はあるまい。
「時間、もう無いみたいですね……」
 強弓を手にウェポン・オーバーロードを発動させ攻撃の機を伺う弓使い・ユリア(a41874)。
「まずは敵の引き離しだよな、行くか?」
 世界の猫飯を食べつくすぞ・リュート(a48849)の問い掛けに皆頷き返す。
 ギアが倒れれば、ピルグリムが何を仕出かすか分からない。
 今依頼、ただ二人の前衛。煉刃暗手・セイジ(a15891)と月煌・ハーク(a16699)を先駆けに冒険者達もこの戦場へと斬り込んだ。

●作戦開始、第一段階エンジェル救出
 ギアとピルグリムが激突を続ける戦場に、光条の雨が降り注ぐ。
 デュラシア、ウィンダム、フロルが放ったエンブレムシャワーは双方を巻き込み炸裂。
 驚き攻めの手を緩めるピルグリム、大きく揺らぐギア。新手の姿を確認しようとする双方。
 が、ギアは確認する前にディーン、ユリアの放った闇色の矢に胴を貫かれその動きを停止させた。
 残るピルグリムは姿を見せた冒険者を明確に敵と判断し、行動を開始する。
 迎撃するは二人の忍び――
「ハーク、行こか」
「あぁ、行こうか」
 互いに短く声を掛け合い、セイジ、ハークは戦場へと飛び出した。
 双方手に生み出すのは不吉の絵柄を宿すカードだ。
 射程ギリギリ、後衛の術者、狩人達が下げる戦線の前に立ち塞がりピルグリム達に攻撃を仕掛ける!
 付かず離れずの攻防戦。冒険者側は徐々に戦線を下げ敵の接近を阻むが敵としては接近せねば戦闘にもならない。
 攻撃を耐え、自慢の槍で交わし、捌き、冒険者前線へと取り付いた。
 冒険者側の前衛はたったの二人、しかし二人ともが相当の実力者である。イリュージョンが如き身のこなしで繰り出される攻撃を交わし、後衛へ抜かせない。
 双方の戦線が止まり、双方共に本格的な戦闘状態へと移行した。しかしピルグリムは気付いていない。自分達の本来の目的、エンジェルが居る木から離れてしまった事。八人居たはずの冒険者が六人しか居ないという事に。
 その時点で、作戦の第一段階は成功したようなものだった。

「お〜い、大丈夫かー?」
 木の下から声をかけるリュート。
 僅かな間を空けて、枝木の間から少女と少年が顔を覗かせた。
 顔色が悪い。緊張で表情は強張り、目は真っ赤になっていた。
 消耗も激しいように見える。自力で木を降りるのは難しそうだ。
「まあ、しゃあねぇな」
「気をつけて下さいね、私は警戒に当たっていますから」
 フロルに目配せをし、リュートは木をよじ登った。
「もう大丈夫ですよ。安心して降りてきて下さいね」
 フロルに応援を受けつつ木を降りてくるエンジェル達。
 無事、大地に帰り着き、緊張が解けたのかグズグズと泣き出す二人を根元へと横たえた。
 不安そうな表情を浮かべる二人に微笑みリュートは眠りの歌を紡ぐ。エンジェル達は数度、瞬きをするとスッと眠りに落ちた。
「少しの間眠っていて下さいね……」
 フロルを中心に柔らかな光が広がる。
 彼女が発動したアビリティ『安全な寝袋』は、眠りに付いたエンジェルを敵の視覚より隠す。これで二人の安全性はグッと高まったと言えるだろう。
 さて、此処からは作戦の第二段階。敵勢力の掃討。
 頷き合うフロルとリュート。ピルグリムの増援は、直ぐそこに迫っていた。

●増援襲来、第二段階掃討戦
「向こうは、上手くやったようやな」
 融合体の振るう巨岩の一撃を交わし、セイジはニヤリと笑った。
 融合体の斬撃、殴打という複合攻撃もイリュージョンステップを発動させた彼とハークには関係ない。
 得物であるサーベルを操り、鍛えられた身を操り、巧みにかわす。
「あぁ、残すは敵の殲滅」
「複合型が指揮官かねぇ。ならアイツを先に落としたいわぁ」
 勝手知ってるが故の簡単なやり取りで目標を定める。
 弾かれた様に飛び出し正面から迫るセイジ、回り込むハーク。
 漆黒の闘気、宿したる刃を持って斬りつける! 二人の接近を拒むように暴れ狂う融合型ピルグリム。残るピルグリムはリーダーを守る為に……冒険者後衛へと攻撃を仕掛けた!
「こっちに来た!?」
 慌てて次の一矢、鮫牙の矢を番え放つユリア。一撃を受け、血を流しながらも、ピルグリムは猛り襲い掛かる。
 鋭利な穂先が切裂く横腹、次いで走る電撃。
「チィ! 今、癒したるわぁ!」
 デュラシアの紡ぐ高らかな凱歌が傷を癒し、痺れを取り除く。が、戦闘はこれを期に乱戦へと移行してしまった。
 元より前衛の薄さと言う問題があった。二人は良く耐え維持したが、それでも敵の数が多い以上は限界も来る。
 それを抜かれ後衛に達してしまった今、元の戦線へ回復させるのは至難。
「クッ! こうなったら、一刻も早く敵を倒さないと……!」
 陣中で暴れまわるピルグリムをエンブレムシャワーで同時に攻撃するウィンダム。
 敵も無傷ではない。融合型はともかく、取れ巻きは後一押しで倒せる。
「燃えちまえ!!」
 戦闘へ復帰したリュートの呼び出す緑の業火が敵一体を焦がし倒す。
「くっ……そ!!」
 動き回るピルグリムを必死に目で追い、ディーンの放ったライトニングアローは見事に直撃し木へと縫い付ける。
 ピルグリムは僅かに痙攣し、動かなくなった。
「って、来たぞ! 増援だ!!」
「この忙しい時にかよ、タイミングいいやんけ……!」
 ディーンの報告に忌々しげに舌打ちするセイジ。出来る事なら初期の敵を全て打ち倒して迎えたかった増援だが、こうなっては徹底抗戦以上取るべき道は無い。
 融合型を援護するかのように、飛行する新手は攻撃を開始した。

「守るんだ。絶対に邪魔させないんだから!!」
 滑空する飛行型に目標を定めるユリア。ただ闇色の鏃が狙うのはその本体ではなく影だ。
 はなたれた矢が影を射抜き、途端敵は動きを鈍らせた。続くデュラシアのエンブレムシャワーに飲まれ、敵は絶命する。
 冒険者達の後ろにはあの木がある。その根元にはエンジェルが今もまだ眠っているのだ。
 敵増援に押され冒険者は何時の間にか木を背後に戦う形となっていた。これ以上さがればエンジェルに被害が及ぶ危険がある位置だ。
 ハーク、セイジが融合型の前進を阻み、後衛は戦線の回復維持、飛行型の対応に追われる。
「ま、まだだ。万が一の時にはこの身すら盾にすると決めたのだ。この程度で、倒れるものか」
 敵の体当たりを受け衝撃に唸るウィンダム。だがその強固な意志で倒れる事を防ぎ、己の凱歌で傷を癒す。
「そこです!」
 フロルが空中に描く紋章から放たれた光条は上手く戦場の敵、全てを捉え、槍手のピルグリムは全滅した。
「後はデカイのと、上の奴だな!」
「空高く飛べたら安全なんて、思わない事だよ!」
 頭上を耳障りな音と共に舞うピルグリムへ、最大の射程を持つディーン、ユリアの攻撃が続く。
 舞い降りてくる粉を受け、体が自由を失う事もあるが仲間達が紡ぐ凱歌が支え、次々と飛行型は地へと堕ちた。
「取った」
 融合型の背後に回りこんだハークのサーベルが敵を薙ぐ。
 振り下ろされる鋭利な足の斬撃を潜り抜け、セイジのサーベルが闇の闘気を纏い融合型を正面から切り裂いた。
「これ、で!!」
 セイジが飛び退いた瞬間、待っていたウィンダムの掲げるエンブレムノヴァが炸裂!
「これで、ラスト!」
 思い切りひいた弦、最後の鮫牙の矢を番え、ユリアは最後のピルグリムを狙い打つ。
 見事貫かれ、奇声を上げて墜落するピルグリム。それは尚足掻くも、倒れた融合型の下敷きとなり息絶えた。

●帰還
「また何処からピルグリムが湧いて出るか分からないからね」
 エンジェルを村へ送ると言うウィンダムの提案を否定する者は誰も居なかった。
 目を覚まし、現実に悪夢から解放された二人の子供は大いに泣いた。
 冒険者達はただ優しく声をかけ、落ち着くのを待ってこの忌まわしい戦場を去った。

 集落では二人の親が待っていた。
 帰還の報を受け、村中のエンジェルが集まってくる。
 大いに、大いに喜ぶエンジェル達。それこそ、自分達の掛替えの無い宝物が戻ったかのように。
 逃げ遅れた(?)冒険者達はエンジェルに囲まれ猛烈な感謝を受ける事となった。
 ユリアやウィンダムなどは同族と言う事もあってかさながら英雄の様な扱いである。
「向こうは大変そうだな」
 人事のように呟くハークも状況は変わらない。
「いいじゃねえか、悪い気はしねぇしよ。なぁ、セイた?」
「まあ確かに、悪い気はせんわ」
 デュラシアとセイジは笑い合う。自分達を守ったもの、それを実感して。
「本当に、本当にありがとうございます! この子達がいなくなってしまったら、私はもう生きていく事も出来なかったでしょう。あなた方は、わたし達親子の命の恩人です……!」
「良かったですね」
 子供の親からの礼に対し、フロルはただ心からの言葉と笑顔で応じた。

「はは、まるで祭りみたいだな」
 その様子を離れた場所から愉快そうに見守るディーン。リュートも微笑を浮かべる。
「あぁ、助けた甲斐もあったってもんだな」
 今、この小さな村には喜びだけが溢れていた。


マスター:皇弾 紹介ページ
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作成日:2006/12/21
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