<リプレイ>
●衝撃の……? 「筋肉が、見た目裸エプロン?」 はっ、んなもん見ても、もう驚きませんよ。筋肉マッチョが暴れて回るのはこれに始まったことではない。 「独り身男を狙う犯行とは…許せないなぁ〜ん! て、俺も思いきり範囲内じゃないかっ!! なぁ〜ん!?」 やばいなぁ〜ん。危険だなぁ〜ん。高らかに響く腹音・クルック(a58349)が他に餌食はいないか見回す。 でも、所詮は一般人。此方は歴戦の猛者である冒険者達の集まり。普段どおりに対応すれば、まったく持って無問題。 「とにかく……あ、はい、これが予定表です」 『激的、微舗阿〜』と書かれた羊皮紙を取り出し、東風の愚者・キズス(a30506)がさらりと流した。なんだか良く分からないけど、説得力はあった。 「似合ってますか?」 くるりとフリルのエプロンをつけた美獣・ミリファ(a00259)がくるりと一回転してみせる。 ちらりと見えた見事なくびれの腹部と黒のTバックから覗く白いウサギの尻尾がとってもセクシー。 今回唯一ともいえる心のオアシスは、連中と同じ服装で紛れ込み裏工作をするつもりらしい。 「男性率………約89%ですか……」 今回同行しているラートリを当初女性と思い込んでいた、マ教異端審問官・サファイアル(a45489)がため息をつく。野郎ばかりの連中が相手なのに更に男密度が上がった…… マッチョな野郎8人+冒険者の男性6人。恐るべき漢率。全ては運命と言う名の神の悪戯か…… 唯でさえチキンレッグの性別美醜の判断は実に難しい。それが、女装した男だと……まったく分からない。サファイアルに罪はなかった。 「別にわたくしは隠してはいませんわよ☆」 美しさの高みを目指した結果がこれ……らしい。歌漢女・ラートリ(a90355)……実に彼らしい意見である。 「んー………んー!!」 「煩いですね」 えいやっと無情にもキズスはすでに荒縄で縛り上げられ、抗議の呻き声をあげる普通が服着て歩いている・ハウマ(a54840)の鳩尾に強烈な突きを叩き込んだ。 「……これも冒険者の役割……だよな。そうだよな……」 きっとそうに違いない。哀れなハウマの様子を目の当たりにした、ダンディーマスター・グィド(a50200)が膝を抱えて地面に『の』の字を書く。 果たして囮となる自分に救いの手は差し伸べられるのだろうか……? 「まっそぅってなんやの。なんやのー」 少しブルーなグィドの気も知らず、最近手に入れたハリセンの出番はあるだろうか? うきうきとした調子で真っ赤な鶏冠の・トゥルティ(a58831)がその感触を確かめる。 できれば投げ出してしまいたいグィドとハウマの本心とは裏腹に、他の仲間達はのりのりであった。
●びふぉあ〜 てくてくてくときぐるみが街を歩く。 「このへんで あきぶっけん を さがすのね」 うんうん。と頷きながら。狐のきぐるみ姿の有害指定・フォクサーヌ(a14767)が人目も気にせずずんずん繁華街へ抜ける。 できれば家具付き、即入居可の物件が望ましい。何故なら今回囮となるべき仲間を配置する関係があるからだ。 「でも、このままだと もんぜんばらいされるかな?」 それでなくても彼女は12歳。まだ子供に分類される年頃である。 「ん じゃ……」 ててててて、路地裏に駆け込みきぐるみを脱ぎ捨てる。 「これで大丈夫ね」 くるりんと、振り向いたのは光沢のある赤のシルクのワンピースに身を包んだ小さなレディ。 いつの間にか薄化粧が施され髪もアップに項が悩めかしい。 太股までのスリットからチラリと見えるガーターベルトが、罪作りな薔薇の模様を浮き立たせるレースのストッキングを留めていた。 カシミアのロングコートを羽織れば立派な淑女の出来上がりであった。
「侘びしい男の独り暮らしが似合いそうな物件を探してるの。勿論、私が住むわけじゃないわ」 少しわけあり。フォクサーヌは空き物件を仲介しているという店先でそう切り出した。 「無ければ安物で良いから手配して貰えるかしら?」 即金で払う準備があると、無造作に取り出した皮の小袋からざらりと中のものを卓上に広げて見せた。 黒檀のテーブルの上に赤、青、緑、オレンジ、ピンク、紫、色とりどりの輝石が零れ落ちる。 「もちろん全部本物よ」 何なら鑑定書も見せましょうか? 「………は、はい! 此方なんかいかがでしょうか!!」 幼いフォクサーヌに最初は胡散臭げだった、店の者が手のひらを返したように対応を変える。 「庭付き一戸建て、前の持ち主が夜逃げしたので家具も揃っておりますよ」 簡単な間取りを書いたお勧め物件情報を説明する。それほど広くない一戸建て。キッチンと寝室風呂トイレ別本当に一人暮らし用の小さな家。 「庭も程よく荒れていて、寂しさ倍増。然程作りは立派でもなく寂しい殿方にはぴったりかと!」 「そう、じゃあそれを頂くわ」 トントン拍子で話がまとまった。
「と、いうわけで……此処がグィドの今晩の城よ」 「おぉ〜」 「中々立派だなぁ〜ん」 寝室兼私室となる部屋は結構広い。 「之なら漢押し競饅頭はやらずにすみそうだね」 「グィドはんも一国一城の主やね」 「おーまーえーらー」 人事だと思いやがって!! 「で……何方でしたっけ?」 ミリファがエプロンを揺らしてフォクサーヌを見下ろす。 「……あ、フォクサーヌモードのままだったわね これでよしっと」 はたりと手を打ちフォクサーヌがきぐるみ姿のふぉっくすへと早変わり。 「「「「「「「!?」」」」」」」 免疫がないとちょっと厳しいギャップの差。 世の中、深く突っ込んではいけない事は多々あるのだ。
●ぷろせす 「……耐えろ、耐えるんだ俺様……」 ぶつぶつと呟きながら傍らにあった酒瓶を瓶毎呷る。何処か自棄酒の雰囲気をかもし出しているのは気のせいではないであろう。 仲間達が街の其処此処で此処に寂しい一人身男が住んでいると風潮して回っている。 空き瓶が数本転がる部屋に居直ったグィドに最早逃げ場はなかった。
「まだですかね」 褌一丁で奥歯を鳴らす。サファイアルが一人酒盛りをしているグィドの様子を伺う。 「サファイアルさん寒くないんですか?」 「キズスはんくすぐったいんー」 もふもふとしたトゥルティの羽毛にすっぽりとおさまったキズスが頭を出す。 「わたくしの胸もあいてましてよ〜♪」 歌うように腕を広げるラートリの胸は何処から同見ても立派な鳩胸。少しも柔らかそうではない。 「大丈夫、僕はマッチョではないけれど褌の御加護があるから」 「ふんどしは いだいなのね」 その傍でふぉっくすがしたりしたりと深く頷いた。 「お……始まったみたいなぁ〜ん」 「それでは行ってきますね」 ミリファがこそこそと闇に隠れて一足先に家に近づいていった。
「寒空のした、自棄酒を呷るなんて……そんな寂しい貴方に朗報です!」 「わたくしたちの開運リフォームを受ければ、ハッピーになれる事間違いなし!」 セイやっ! 轟音と共に入り口が木っ端微塵に吹き飛ばされる。 土埃の影からむぅんとポーズをとる、見事な肉体。真冬だと言うのに黒光りをしていて鳥肌一つ立てていない。 「今は不運どん底な貴方を救う、光の道を指し示す」 「ラッキーカラーはライムグリーン!」 之に決まりですわ☆ ばっちっとマスカラの重いウィンクが痛い。 「な………」 見るのと聞くのとではショックの度合いが異なるのは仕方がない。 筋骨隆々なそいつらの体を申し訳程度に飾るふりふりエプロンは、新婚さん真っ青なレースたっぷりの代物。 「てめぇら一体何もんなんだ!?」 「わたくしたちこそ、ランドアース大陸一のリフォーム集団ですことよ」 胸襟をぴくぴくと動かして胸を張る姿を視界に納めまいとグィドが必死で視線をそらす。 聞いた俺が馬鹿だった。 「今日は特別……貴方にもこのエプロンをプレゼントですわ!」 マッチョの一人がグィドの目の前にぴらりんと御揃いのエプロンを広げて見せた。
「とってもたのしそうやね」 「そうですね」 賑やかにマッチョたちはグィドの城を改築して回る。リボンとレースがとってもふぁんしー。 「うーん…やっぱりマッチョのあの格好は、女の子がやった方が嬉しいなぁ〜ん……」 何故かマッチョにまぎれてリフォームを手伝うミリファの姿にクルックが鼻の下を伸ばす。 グィドさん、すぐ助けれなくてごめんなぁ〜ん。と心の中で手を合わせつつも時折見えるTバックから覗く尻尾を堪能していた。
●あふたー 「んまぁ! ちょっと皆様これをごらんになって」 「きゃっv 破廉恥ですわ!」 イヤ、お前らの方が十分に破廉恥だ。既に魂を明後日の方向に飛ばしているグィドが意識の片隅で突っ込みを入れる。 あいつらぜってぇ見て楽しんでやがるな………仲間達の来る気配すら感じられずグィドは一人涙を呑む。 そんな彼を尻目に、マッチョ達が見つけ出したのは、ベッドの下にふぉっくすが潜ませた漢と漢がくんずほぐれつしているちょっとイケナイ、人様には見せられない内容の同人本。 「ちょっとわたくしにも御見せになって!」 リフォームそっちのけで漢達が殺到する。 「丁度いい頃合ですね」 先生お願いします。キズスがクルックの肩を叩く。 「任せるなぁ〜ん!」 「まてまて! そういう無意味なことやめよう!? アレ一般人とは言えマッチョだから!! 絶対むこうに与えるダメージより俺の精神的ダメージのがでかいから!!!」 末期の情け猿轡を外されたハウマがじたばたもがく。 物体ってな、軟らかい物のほうがダメージ受ける仕組みになってるんだよ? あんな鉄のような胸板に当たったらコッチが砕け散ってしまうわ!! 「心置きなく逝ってらして〜♪ その勇姿は忘れませんわ〜♪♪」 題して英雄への葬送曲をラートリが歌いだす。 「うおぉぉぉ! 唸れ俺の筋肉ぅぅぅぅぅ!! なぁ〜ん」 男らしくハウマを片手で担ぎ上げた。 「これぞ『必殺! エルフスパイラル(でも回転しない)!!』だなぁ〜ん!」 ブゥーン! その時彼の肉体は音速を超えた(嘘)。ハウマには悲鳴をあげる間すら与えられない。 どごぉぉぉぉぉおん! 先ほどのマッチョ達の登場よりも派手な音が響き人間弾頭が窓と壁を突き破り炸裂する。 「な、なんですの!?」 ふぉっくすの用意した餌にひっかかったマッチョ達は完璧に不意を付かれる形でそれをうけた。 「さーてお仕置きの時間だよ?」 入り口に回ったサファイアルが手にしたロープをぴしりと鳴らす。 「そのおぞましい醜態さっさと隠さんかい!」 すぱーんとトゥルティ手にしたハリセンが乾いた音をたててマッチョを張り倒す。 「う〜ん……部屋はカワユイんですよ? 部屋は」 半分ほどリフォームが終わっていた部屋を見回しミリファがコトリと首をかしげた。 可愛いのかこれが……ドギツイライムグリーンに塗られた壁に張り巡らされたレースとリボン。 こんな部屋で生活するのは……とても、いや絶対無理! それが男性陣の感想であった。 「おーい、戦友、生きてるかー……」 「やっときたか」 早くこの縄解いてくれー。 息も絶え絶えなハウマが芋虫のようにはってグィドの傍による。 「今回復を……」 仲間達は一切信用できない。心の傷を癒すにはこれが一番。美しく魅惑的な光り輝く聖女が二人の頭上に現れる。 「これ一度やってみたかったのなぁ〜ん」 「だはー!?」 「ちょっとまっ!!」 クルックが縄で縛られている二人に近づき一気に引いた。 「良いではないか、良いではないかなぁ〜ん」 コマの様に二人が回転する。 「ふふふふ なのね」 慈悲の欠片もない光の槍で縄で縛られ芋虫状態の裸エプロンにつきたてふぉっくすがくすくすと笑う。 苦悶する様がなんとも言えずいい味を出している。 「お二人ともいきてますのん?」 不運が重なりハウマとグィドは虫の息。 一度はイヤといったけど見るに見かねてトゥルティが声をかけた。 「「……………」」 返答はない、二人の運命は最早風前のともし火かもしれない。 「仕方ないやね」 最初はイヤといってはみたが回復を……トゥルティが淡い光に包まれ癒しを施す美しい聖女が姿を現す。 「「@$#2*&¥!?」」 聖女? 言葉にならない悲鳴が響く。 「聖女はん今日も美人や」 トゥルティのうっとりと聖女に見とれる。 「わたくし程ではありませんけどね〜♪ 貴方の尊い犠牲の元に世界は回るのですわ〜♪♪」 チキンレッグの美醜は、他の種族の者にとっては理解できない高みにあるのかもしれない。 俺達って一体……… 凱歌が追い討ちをかける。
「結局………今回の一番の被害者って誰だったと思う?」 誰ともなしにハウマが問いかける。 「聞くな………」 迷惑集団は全員確保した。仕事は上々。怪我は……仲間のお陰で癒えている。 ただし精神的はショックは未だ癒えきらないものがあった。
「………またか………」 あいつ等……某霊査士に大量の請求書及び修理費がまわされてきたのは冒険者達のささやかな復讐であったのかもしれない。 それでも律儀にすべてを処理するその姿に酒場に居合わせたものはもらい泣きをしたという。

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参加者:8人
作成日:2006/12/24
得票数:ほのぼの6
コメディ7
えっち1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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