【エルルの誕生日】キャンドル・パーティ



<オープニング>


「あ、ちょうどいいわ。ねえ、良かったら一緒に、キャンドルを作ってみない?」
 なにやら荷物を抱えて街角を歩いていた、リボンの紋章術士・エルル(a90019)は、そう出くわした冒険者達に誘いかけた。
 エルルが言うには、誕生日だから沢山のキャンドルの明かりの中でパーティをしたい……なんて思い立ち、せっかくだから、そのキャンドルを自分で作ろうと考えたそうなのだが。
「頼んでおいた材料を取りに行ったら、ちょっと一人じゃ作りきれない量で……」
 言いながら、エルルは困り顔で荷物に視線を落とす。
 どうやら、これ全部がキャンドルの材料らしい。
 しかもよく聞けば、材料はこれ以外にもまだまだあるらしい。
「誕生日なんだから遠慮しないで持って行きなさい……って言われたんだけど、さすがに1人じゃ、こんなにたくさんのキャンドルは作れないから……ね、皆さん、時間があったら、一緒にどう?」
 作ったキャンドルは、そのまま観賞してもいいし、持ち帰っても構わないから……と付け加えながら、エルルは冒険者達を見つめるのだった。

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参加者
NPC:リボンの紋章術士・エルル(a90019)



<リプレイ>

●お誕生日おめでとう♪
 冒険者の酒場には、エルルからの誘いを受けて、幾人もの冒険者が集まっていた。
「エルルさん、お誕生日おめでとうございます!」
 ヴァイス(a25660)は、今年も無事に誕生日を迎える事が出来て本当に良かったと、お祝いの言葉を告げる。
「これからの一年が、幸多き一年になりますように……♪」
「お誕生日おめでとう、エルルさん」
 そうティー(a35847)が笑えば、エステル(a00181)は「もう20歳なのね」と目を細める。
 それは、いわば1つの節目。自分の時には然したる感慨は無かったけれど、エルルはこれから、どんな道を歩むのだろうか……。
「これからもよろしく。この1年も、また元気にやっていけると良いわね」
 今までのように、それを見ていけたら嬉しいと、そう想いながらエステルは言葉を重ねる。
「みんな、ありが……」
 彼らからの言葉に、心から嬉しそうな笑みを零すエルルだったが、その瞬間。
「お誕生日おめでと〜ぅ★」
 センキ(a04531)に思いっきり抱きつかれ、エルルは慌てて転ばないようバランスを取る。
「もー、センキさんったら」
「えへへー」
 見つめ返したエルルにセンキは笑うと、「じゃあボクパーティの準備してるねっ」と厨房に向かう。
 そこから少し離れた場所では、バイビレッジ(a13869)が感慨深げな顔だ。
(「俺が祝うのも3回目か……あいつも、20歳になるし……月日が経つのは、早いな」)
 そんな事を考えつつ、しみじみしている場合じゃないかと我に返るバイビレッジ。
 そんな中、
「エルル、誕生日おめでとう。……20代になっても、あっちも慎ましいままでよかった」
「……あっちって……どこの事かしら……?」
 ぼそりと、けれど独り言というには大きなオメガ(a00366)の呟きに、エルルの表情が変わったように見えたのは、決して気のせいではないだろう。
「はっ、殺気がっ。うっかりエルルを怒らせて、ドロップキックとかバックドロップを喰らう訳には……!」
「もうっ、だから、そんな事しませんってばっ」
 大真面目な顔で呟くオメガにキッパリと否定して、周囲に向かって「こほん」と1つ咳払いすると。
「え、えっと……それじゃあ、キャンドル作りを始めましょうか」
 エルルは何かを誤魔化すように笑って、荷物を広げた。

●さあキャンドルを作ろう!
「作るといっても、自分の好きな形にするだけなんだけど」
 言いながらエルルは材料を並べる。形を整える為の道具、色を付ける為の道具も揃っているようだ。
「濃い緑色のキャンドルを作りたいんだが、可能だろうか?」
「ええ、大丈夫よ」
 ノリス(a42975)はその返事に胸を撫で下ろすと、香油の入った小瓶を取り出す。ノリスはこれを加えて、アロマキャンドルに挑戦するつもりらしい。
「キャンドル作りなんて初めて……エルルさんと一緒だと、色んな事を体験できて楽しいわね」
 くすりと笑み、エステルがラベンダーのアロマキャンドルを作りたいのだと告げれば、じゃあラベンダー色がいいかしらと、エルルは似た色合いのロウを取る。
「私はジェルキャンドルにしてみよう」
 グリューヴルム(a59784)は、キャンドルの目的を耳にして何やら思案すると、いくつか材料を追加で調達に向かう。
「では、私はフローティングキャンドルを」
 型を手にしたニューラ(a00126)は、水に浮かべた灯りはさぞ綺麗だろうと想像しながらロウを選ぶ。
「薔薇みたいなキャンドルは、どんな風に作るといいのかな……?」
「うーん、そうね……」
 思案顔のティーの言葉には、エルルも一緒に考え込んで。いろいろ相談して、粘土のように形を整えながら作るのが良いのではという結論になる。
「エルルは何を作るんだ?」
「動物にしようかなって。犬とか、ノソリンとか」
 動物のキャンドルか、とその返事に頷いたカーディス(a26625)は、ならブックハビタントはどうかと提案する。それも可愛いわね、と頷く様子に、じゃあ自分はそれをと、型を工夫し始める。
(「いろいろな色が出来るなら、マーブル模様に混ぜてみても綺麗かも……」)
 一方ではリナリー(a59785)が白とオレンジのロウを手にし、少しずつ混ぜていく。
「……あ」
 型に半分ほどロウを入れたところで、リナリーは何かを閃いて手を止め、懐から小さなルビーを取り出す。
 折角だから、これを混ぜてみたらどうだろう?
(「エルルさんがどんな顔をするか、見ものですね」)
 くすりと口元に笑みを浮かべ、リナリーは更にロウを加えると、最後にバニラの香油を垂らす。
 その他にも、周囲では次々とキャンドル作成への挑戦が続く。
 ごく普通の棒状のキャンドルに加えて、猫を模したキャンドルやムシャリンを模したキャンドルなど、可愛らしい物が多いが、中には丸い形のキャンドルを重ねて、鏡餅のようにした物もある。
「よーし、目指せノソキャンっ!」
 そうバケツを引っくり返したのはロスト(a18816)。緑のキャンドルを彫刻のように彫り、ノソリン型キャンドルを作る計画らしい。
 あんまり器用じゃないんですけどね、と呟きながらも、一生懸命真剣な顔で形を整えていく。
「ん〜〜……」
 隣のテーブルではババロア(a09938)が難しい顔でキャンドルに何かを描いている。どうやらエルルの似顔絵らしい。視線を上げて、本人とキャンドルを交互に見ながら指先を動かす。
「折角ですから、こうやって……と」
 カズハ(a01019)は近くで調達したグラスを並べ、その中にキャンドルを入れていく。様々な色に覆われたキャンドルは、きっと会場を彩ってくれるだろう。
「なかなか難しいものですわね」
 キャンドルに百合をかたどった紋章を彫ろうとしながら、リーザ(a52806)は呟く。彼女の様子に、覗き込んだ周囲の者達が彫刻刀を貸したり、こんな風にしてはとアドバイスしたり。
「焦らず地道にコツコツと彫るのが、最終的には一番の早道かしら。頑張ってね」
 そんな応援を受けながら、リーザは少しずつ作業を進め……やがて、完成したキャンドルを手に、満足そうに目を細めた。

●バースディ・パーティ!
 キャンドルが出来上がるのを見計らい、センキが料理を運んで来ると、部屋の雰囲気が変わる。
 冒険者有志が調達したケーキが置かれれば、そこはもう立派なパーティ会場だ。
「では僭越ながら、司会はこの私が」
 こほんと1つ咳払いして、グリューヴルムが前に出る。パーティをどう盛り上げるか考えながら、まずは乾杯の準備だ。
「皆さん、こちらをどうぞ」
 ニューラはシャンパンに苺を浮かべて皆に配る。甘口だからエルルでも飲みやすいだろう。折角20歳になったのだから、どうせならお酒をと、そう考えたのだ。
「何だかドキドキしちゃうわ」
 そう零しながらエルルもお礼と共にグラスを貰う。ちなみに、お酒のダメな人には苺ジュースや、それを炭酸水で割った物が配られる。
「では、エルルさんの20歳の誕生日を祝し……乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
 音頭と共に皆のグラスが掲げられる。エルルは「みんな、ありがとう」と微笑んで、グラスに唇を寄せる。
「……あら?」
 と、不意に周囲の動きに首を傾げる。ケーキの周囲で何かをしている様子に、何事だろうとエルルが近付けば。
「あ、きづかれたのね」
 ケーキとその周囲に、皆が作ったキャンドルが並べられている。趣向を凝らした物から、ケーキに立てるのにピッタリなキャンドルまで、その数は丁度20個。
「たんじょーびには、としのかずだけ、ろーそくたてるのね」
 そしてこの場所にいるのも、エルルを除いて、ちょうど20人。
 だからフォクサーヌ(a14767)は考えた。みんなが作ったキャンドルを消して貰うのはどうだろう……ひっそりこっそり、皆に呼びかけて準備したのだ。
 フォクサーヌ自身のキャンドルも、もちろんケーキの上にある。
「えるる、ふーってけすのね?」
 手分けしてキャンドルを灯し、部屋の明かりを落とす。
「じゃあ……」
 ぼんやり浮かぶ灯火の中で、リナリーやニューラら、心得のある者達が楽器を構える。奏でられるのは、誕生日のを祝う歌のフレーズ。
「せーの!」
 ババロアが合図と手拍子を取れば、それに皆の歌声が重なる。
 本当に、心の底から嬉しそうに目を細めながら、歌を最後までを聞き終えると、エルルはケーキの上のキャンドルを一息に、次に周囲に置かれたキャンドルを、順番に吹き消していく。
「エルルおねぇちゃん、おたんじょうび、おめでとうございます、なの!」
 最後の1つはレシュリアナ(a35804)のキャンドル。
 この間のお礼にいっぱい「おめでとう」をするんだと、一生懸命作ったキャンドル。ちょっと歪になってしまったけれど、気持ちはいっぱい、いっぱい込められている。
 ふにゅ、と顔を崩してお祝いを言う彼女の様子からも、それはとてもよく伝わって。エルルは「ありがとう」と伝えるように微笑みながら、キャンドルを消す。
「エルルさん! ハッピー・ハッピー・バースディ、おめでとう!」
 直後、拍手と祝福が飛ぶ中、エルルが光に照らされる。ここぞとばかりに待ち構えていた、フィー(a05298)のホーリーライトだ。
「主賓のエルルさんをホーリーライトでライトアップするのです〜♪」
 上から照らすのは難しかったが、効果は十分。一人一人の顔を順番に見て「みんなありがとう」と告げるエルルの瞳は、ちょっぴり潤んで見えた。

●ところで20歳といえば?
 室内を再びキャンドルで照らしながら、パーティは続く。
「エルルさん、これ……」
 機を見計らってティーが差し出したのは小さな箱。中身は、雪うさぎの形の宝石をあしらった指輪だ。
 他にも、ノリスからはアクセサリーセット、ニューラからはビロードのリボンをソーダライトで飾った髪飾りが贈られる。
「では、私からはこれを」
 カズハはそう言うと竪琴を掲げる。カズハからのプレゼントは弾き語りだ。
「お、いっちょいいのを頼むぞ」
「はは、ご期待に添えると良いのですが」
 ポンとバイビレッジに肩を叩かれて軽く笑いながら、カズハは竪琴を構えて。
「……エルルさん、誕生日おめでとうございます。今回はこのような会場に似合うような、そんな、皆で歌って踊れるような歌を作ってきました。どうぞ、お聞きください」
 そう一礼して竪琴を弾き、ゆったりとしたテンポの曲を奏で始める。
「小さくても暖かく、小さくても暖かく―――輝くあの場所へ」
 その旋律に乗せて紡がれる歌声に、エルルはしばし聞き惚れる。
「カズハさんの歌、素敵にゃね〜。キャンドルの明かりも幻想的だし……ロマンチックにゃね〜!」
 隣ではイオン(a02329)が瞳をキラキラさせながら、「あ」と荷物に手をやる。
「エルルさんはお酒解禁だから、イオンからはマタタビワインをプレゼント★」
 プーカさんがいないか気をつけてマタタビのコクを楽しんでにゃ、なんて笑うイオン。
「おっと、考える事は大体一緒か」
 その様子に呟きつつ、バイビレッジが出したのはベリーの果実酒だ。
「いっそ、ここで試しに飲んでみるですか〜?」
 にょっきり顔を出したフィーはジョッキを差し出す。……ほのかに伝わる香りが、中身がめんつゆであると教えている。
「フィーさんってば。引っかからないわよ?」
 それは、フィーがわざわざめんつゆを持って来たという事に他ならず。エルルは、くすくすと笑う。
「先程のシャンパンとか、飲んでみての感想はいかがでしたか?」
 ぜひ感想を聞いてみたい、と尋ねるヴァイスに、エルルは少し考え込んで。
「そうね……甘くて、ジュースとはちょっと違った感じがして……うーん、でも、ドキドキしてたから、あんまりよく分からなかったかも」
 ちょっと照れたような顔のエルルに、ヴァイスは「ああ……」と、何やら複雑な声色で呟く。
「エルル先生も、とうとう大人の階段を登られてしまうのですね……」
 どこか遠くを見るように零したヴァイスは、すぐに「……どうやら、私はすっかり酔っているようです」と苦笑する。
「なら、もう1度飲んでみては?」
 一方、そう提案したのはリナリーだ。軽めのワインなんてどうだろうか、と思案する彼女の脇から、ついとグラスが差し出される。
 それは、ちょっぴり緊張しているようにも見える、リル(a49244)からのもの。
「はらほろひれ〜……ってなっちゃダメなぁ〜んよ〜?」
 それは彼がプレゼントに用意した、ワインの片割れを注いだもの。片方をこのパーティで、もう片方は今度またどこかで。二度楽しんで貰えたらと用意したものだ。
「じゃあ……」
 頂くわね、と手を伸ばして、エルルはゆっくりと口を付ける。1口、また1口。こくんこくんと喉を鳴らして、グラスの中身を傾ける。
「どうなぁ〜ん?」
「うふふふ、そうねぇ。とってもいい香り……。でも、もうすこぉしあまーいお酒の方が、すきかしらぁ?」
 その受け答えに滲む違和感。
「あれぇ? うふふっ、ゆかがふみゃってしてゆの〜。なんらかたーのしい〜」
 ――誰もが何かを直感する中、リルが「ああっ!」と叫ぶ。
「ま、間違えたなぁ〜ん……」
 ワインは2本。水のように軽いワインと、とっても強いワインが1本ずつ。だから、軽い方を開けたつもりが……強い方を開けていたらしい。
「で、すっかり酔っ払っちゃったわけね……」
「あっ、あぶない!」
 ころころと楽しそうに笑いながら、くるくるりとその場で踊ろうとして盛大に転ぶエルルを、冒険者達は慌てて受け止めた。

 しばらく、きゃいきゃいとハイテンションに楽しんでいたエルルだったが、やがて酔いも薄れて。
 エルルは普段の様子を取り戻すと、恥ずかしそうに皆を見る。
「え、えーっと、その……ちょ、ちょっと、お恥ずかしい所をお見せしちゃったけど……でも、今日はとっても楽しかったわ。みんながこんなにお祝いしてくれて、本当に、とっても嬉しかったの」
 自分のささやかな動機を聞いて、一緒にキャンドルを作ってくれたみんなに。
 誕生日を祝ってくれたみんなに。
「――本当に本当に、ありがとう!」
 満面の笑みを浮かべるエルルの言葉で、誕生日パーティの幕は下りるのだった。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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参加者:20人
作成日:2006/12/20
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