マンモスファイヤー 〜セクシーへの道〜



<オープニング>


 ランドアースはもう寒い。
 布団を重ねがけしなければ朝寒くて起きてしまうし、布団から出るのに可也の決意を要するほどに寒い。
 嗚呼、こんな時はワイルドファイアにでも行って常夏気分を満喫するのが良いのかしらん……湯気の立ち上るカップを口元に運びながら、天に抗う誓約者・トワイライト(a43304)はそんな事を漠然と考えていた。
「セクシーになれる実が生る木があるんだって」
 そんなトワイライトの肩を叩くと、黒髪の紋章術士が事も無げに笑顔で言い放つ。
「……は?」
「だから、ワイルドファイアのマン森にセクシーになれる実が生る木があるんだって」
 二、三度瞬きをしてから素っ頓狂な反応を示したトワイライトに、流水の道標・グラースプ(a13405)は、もう一度言いなおす。人の良い笑顔の奥に、何やら逆らうことを許さない気迫が篭められているのは気のせいだろう……気のせいだと良いね。
「そんな噂、出任せに決ま――」
「わぁ、楽しそうなの〜。アユナも行って見たいの」
 噂だって解っているんだろ? と言いかけたトワイライトの言葉はしかし、わぁ♪ と、両の掌を合わせて瞳を輝かせる、桃華の歌姫・アユナ(a45615)によって阻まれる。
 アユナがセクシーに興味があるのか、ワイルドファイアに行って見たいだけなのかは不明だが「ね?」と小首を傾げて彼を見上げるその顔は本当に楽しそうである。
「……解ったよ、仕方ねぇなぁ」
「流石トワ、やるときはやるね」
 そんなアユナに負けたのか頭を掻いて承認してしまったトワイライトの脇腹をコノコノと、ほっぺたつままれた・レジィ(a18041)が肘で突く。止めろよと嫌がるトワイライトを他所に、
 ――グラースプとこっそり視線を合わせたレジィの瞳がキュピーン☆ と怪しく光ったような気がした

 ワイルドファイアに降り立った一行は噂話を聞いて来たグラースプの案内でマン森の入り口までたどり着く。
「えっと、この道を進めばセクシーな実が生る木に着けるらしい。で、途中にはワイルドセクシーガエルが沢山生息している沼があるからそこだけ注意だね」
「何その怪しいカエル」
 そして道順について説明を開始したグラースプに早速トワイライトが突っ込むと。
「何でも体長三メートル位のピンク色をしたカエルらしいよ。それでセクシーな踊りを踊り出すと周りに居る他の生物も一緒に踊り出してしまうとか。その後、踊りつかれた所を丸呑みにされるらしい」
 散々踊り疲れさせといて丸呑みである、嫌なカエルである……頭を抱えるトワイライトを無視してグラースプは先を続ける。
「後、途中には綺麗な花が咲いている原っぱもあるみたいだよ。休憩するならそこらへんかなぁ」
「とっても楽しみなの♪」
 お弁当とか用意していくと良いかもねと言うグラースプにアユナが楽しそうな笑顔を向けて、
「おし、じゃぁ行くか」
 来たからには仕方が無い、頑張って目的地を目指そうとトワイライトは拳をあわせた。
 
 ――だが、まだ彼は気付いていない……これが新たな道となることに

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参加者
鏡夜奏想・リア(a13248)
流水の道標・グラースプ(a13405)
空気は読まない・レジィ(a18041)
氷朧の檻歌・イル(a35993)
蒼の旋律・キャルロット(a38277)
弓使い・ユリア(a41874)
天に抗う誓約者・トワイライト(a43304)
桃華の歌姫・アユナ(a45615)


<リプレイ>

「トワイライト君はセクシー♪」
 きらきらり〜ん♪ と人差し指を左右に細かく振りながら、流水の道標・グラースプ(a13405)が何故か上半身裸でリズムを刻む。
『『ゲコゲコ♪』』
 腰をキュッキュ♪ と振りながらセクシーカエルバックダンサーズがグラースプに続き、祈久願齎・リア(a13248)が頭上に召喚した小さな輪の色をピンク色っぽいセクシーカラーに変えると沼地中央辺りにあった平らな岩が照らし出される。
 その上に右肘を突いて、天に抗う誓約者・トワイライト(a43304)は寝そべり、左手の親指を口に咥えている。
「キミの背負う運命♪ それが何かと聞かれれば♪」
『『ゲロ♪』』
 リズミカルにクルリン♪ と回るグラースプと同じ動きで回ってゲコゲコなくセクシーカエル達。
 その音に併せるようにトワイライトが、体に巻きつけたシャハラーンの羽衣と名付けた霊布をフワッサ〜と風に流して布の端を口に咥えて流し目を送ると、ゲコ〜♪ と数匹の蛙が狂喜乱舞している!
「カッコイイ? ノンノン♪ カワイイ? ノンノン♪ そうさセクシーで世界を救う事さ〜♪」
『『ゲロゲロ♪』』
 露になった白い肌が仄かに上気し、汗がリアのライトアップに反射してキラキラと輝く。ビシィ! でパキュ〜ン! なポーズを決めると、指差した先辺りで、ほっぺたつままれた・レジィ(a18041)が放った淡く光る魔法のテフテフが煌びやかな舞を見せ周囲のカエルを魅了する。
「そうさセクシー♪ キミはセクシー♪ セクシー大魔王♪ イエイイエイイエイ♪」
『『ゲロゲロゲ♪』』
 イエイエイ♪ と人差し指をホッペタにあてて肘をワキワキするグラースプの動きに合わせてカエルたちがジャンプすると、壇上のトワイライトは額に手をあて腰と足を逆方向にキュッ! と捻り体の捻れで色気を醸し出し、跳ねるカエルたちによって沼の水が飛び散り、トワイライトの周りをキラキラと輝かせる! それを見たセクシーカエル達がゲコ〜♪ と狂喜乱舞して――宴は延々と続くのだった。

 ――何、この一大セクシーコンサート
 セクシーの後ろで同じ動きをするセクシーカエルが居る所を見ると、セクシーは単純に操られているだけなのだろう……だが、グラースプやレジィ、リアそしてバックダンサー及び観客を兼任するセクシーカエルの皆さんはノリノリである。
「トワイライトさん、頑張って〜♪ セクシ〜♪」
 愕然とする、氷朧の檻歌・イル(a35993)の横で、蒼の旋律・キャルロット(a38277)が手を振りながら無邪気な声援をセクシーに送っている。
「トワは、セクシーがかなり定着してきてますね……」
 キャルロットの声援を聞いたリアは優しい微笑みをキュッキュ♪ とセクシーダンスを踊りつづけるセクシー達に向けると、ライトアップするべく頭上に召喚した小さな輪の色を赤や紫に変化させ怪しい雰囲気を演出し続る。折角のセクシー対決なのだから、この程度の演出効果はあっても良いだろうと、リアは考えるのだ……何のセクシー対決かは不明だが。
「ん? もちろん、トワイライトさんはセクシーなの」
 すごいの〜♪ と、手をパチパチと叩いていた、桃華の歌姫・アユナ(a45615)はリアの言葉に満面の笑顔で頷いてから、再びキャルロットと共に無邪気な声援をセクシーに送る。
「トワイライト君はセクシー」
 セクシー……始めは戸惑いで挙動不審気味にキョロキョロと辺りを見回していた、弓使い・ユリア(a41874)であったが周りの先輩達の様子をみて、この言葉の重さを再び噛締める……迂闊に片足突っ込むと二度と這い上がれないぞと。
 ――まぁ、良いか……今更だし
 色々突込みどころは多かったけれど、なんだかもう止めてもしょうが無いかな? と、イルは思ったりもした。

「ちょっとした気の迷いだった♪ 最初は冗談だった♪ でも今は違うよ? キミは絶対無敵のセクシーヒーローさ〜♪」
『『ゲロゲロゲ♪』』
 高らかに歌い上げるグラースプとセクシーカエルバックダンサーズ。そしてセンキュー! のポーズでビシィ! と決めポーズを決めるセクシーの指先にレジィが放ったテフテフが舞い飛び綺麗な残響を残す。
「セクシー!」
 そして暫しの沈黙の後、グラースプが叫ぶと同時に己がエゴの具現化するかのような呪われた鎖を放出し、周囲にいたセクシーカエルを引き千切って行く!
『ゲコ!?』
「……お前なんかに……負けるかッ!」
 一斉攻撃の合図だ……本来前に出て戦うのが好きなイルは、怪我のため後衛に下がっていた鬱憤をぶつけるかのように限界まで闘気を込めたイレーネスにを大きく振り回し周囲に竜巻を起こすと、え〜!? 行き成り何するゲロ!? とビックリするセクシーカエル達が竜巻に飲み込まれて行く!
 そして、アユナが持って来たお弁当が崩れないようにと気を使いつつ清く美しい煌きを持つ薄桃色の小宝珠を中心に紋章を描き出して幾筋もの七色の光線を放ち、普段は状態異常が気になってあまり使えないファナティックソングを使う絶好の機会とばかりに気合を入れたキャルロットの肉体と精神を破壊する美しい歌声が周囲に響き渡る!
(「トワイライト先輩の後ろのカエルは狙っちゃ駄目なのかな……」)
 ズガガガガ! と蹴散らされるカエル達からセクシーに視線を移し、ユリアはそんな事を思ったりもするが、何時までも放置しておく訳にも行かないだろう……外装を追加しその威力を増した強弓を構えるとそこから稲妻の矢を作り出し、セクシーの後ろに居るカエルを打ち抜く!
「やっと解放され――ぶふぅ!?」
 雷光を描いて飛来するユリアの矢がカエルを打ち抜くと同時に、セクシーに掛かっていた踊りの呪いはとけたようだ。
「おおっと、足が滑ったー」
 だが、ほっと息を付いたセクシーの虚を突くようにレジィがラリアットをかましつつセクシーもろとも沼の中に飛び込んで――ザッパーン! と大きな水飛沫が周囲に飛び散りアユナ達にも水が降りかかる。
 そんな様子を見ていたリアが少し慌てた様子で周囲を確認し、
「……ああ、良かった……本当に良かったです……お弁当が無事で」
 上手い事水を避けたグラースプとアユナを見て、ホッと胸を撫で下ろすのだった。

 セクシーカエルを駆逐後、リアの召喚したフワリンでノンビリと沼を渡った一行は原っぱで休憩を取っていた。
 太陽は高く登り、黄色や赤、紫など色とりどり花に囲まれたこの場所はお弁当を食べるには絶好の場所だろう。
「え〜っと、ちょっと人生見つめなおす時間が欲しいというか……」
 ……そんな中、まだ乾かない体を温めるように暫しの間ボーっと空を見つめていたセクシーがそんな事を呟いてみるが、
「却下」
「無理じゃない?」
「……今更?」
 グラースプに速攻で却下された上に、レジィとイルにも首を傾げられた。
「うんっやっぱり今日もセクシーなの」
 人生って一度踏み外すと、もうどうにもならないのかなぁ……ウフフと遠くを見つめるセクシーに、アユナはサンドウィッチを差し出しつつ賞賛の言葉を送る。
「嗚呼、美味しいなぁ。このサンドウィッチ……」
「そんなに喜んで貰えると照れちゃうの」
 涙ながらにサンドウィッチをほうばるセクシーに無邪気かつ満面の笑みを浮かべてアユナは喜ぶが……その涙はきっと喜びの涙じゃない。
「……はい、お茶」
 そんなセクシーの背中をポンポンと叩いてお茶を差し出すイルから、視線を花を手に取りながら楽しそうに談笑する女性陣に移し、
(「まあでも、キャミソールは見目麗しいよね!」)
 女性全員体型がはっきり分かる形状をした艶やかな黒いキャミソールを着用しているのだ、眼福以外の何物でもない。
 そんなグラースプの視線に気付いたのか、リアは体を手で隠すようにするとこそこそとキャルロットの影に隠れ、アユナも少し恥ずかしそうな視線をグラースプに向けて抗議する。
 水も滴る良い女……ではなく何故かやたら健康的なレジィや、慣れているのか色々自信があるのか気にした様子もないキャルロット、そして全く意に介した様子もないユリアは別として、改めてまじまじと見られると恥ずかしいようだ。
「トワ……良かったね。今、皆トワの事……忘れてる」
「……そのまま何もかも忘れてくれ」
 サンドウィッチを口に運びながら呟いたイルにセクシーは心の底からそう思うのだった。

「これがセクシーになれる実が生る木ですか……?」
「えっと……怪獣?」
 ユリアが首を傾げ、キャルロットが率直な意見を口にした。ウネウネと、そこはかとなくセクシーな動きをするその木は誰が如何見ても怪獣だ。
「……やっぱり、ハート型……」
 近付いても何もしてこないその怪獣から、予想が当ったのが嬉しいのか少し機嫌良さそうにイルがハート型でピンク色の実をもぎ取りセクシーに渡す。
「セクシーな実……是非感想を」
 リアが木の実を手に沈黙したセクシーの顔を覗き込むように期待に満ちた視線を向け、
「怖がらずにどーんと男らしく食べてくださいなの」
 食べればセクシーに成れると言うその実に少し惹かれつつも、更なる高みを目指して欲しいとアユナがセクシーに声援をおくる。
「ああ解ったよ! 食えばいいんだろ! 食えば!」
 どうせ逃げようとしても後ろで良い笑顔で見つめるグラースプや、ハリセンを構えるレジィから逃れられやしないのだ、ならば男らしく食らうしかない! 意を決したセクシーがガブ! と実に食らいつくと――
『トワイライトよ……』
 唐突に目の前が真っ暗になり、自分の体が浮遊しているような感覚に襲われる……そして何時の間にか正面にうっすらとした白い影のような物が語りかけてくる。
『汝に、ついに目覚めの時が来たのだ……』
 誰だ? 言葉にならない言葉で影に語りかけると、まるで、長い……長い時間封じられて居たとでも言いたそうに、それは重々しく口を開いた。
『さぁ、我を吸収し己が全てを解放するが良い!』
 目覚め……? そう、再び疑問を口にしたセクシーに力強く、拒否を決して許さぬ口調で言うとその影はブワッ! と目の前に広がって――
「……ど、どんな感じですか?」
 ゴクリと唾を飲み込んで、ユリアは呆けたように宙を見つめ全く動かなくなってしまったセクシーに問い掛けると、セクシーはガックリと項垂れてユリアの両肩を掴む。
「きゃぁ!?」
「俺は……俺は……俺はこんなんじゃない――セクシー仮面なんだ!」
 不意に捕まれたユリアが思わず声を上げるが、そんなのは聞いちゃいなかった! 何処かぶっ飛んだ……否、何か全てが吹っ切れたような済んだ瞳で爽やかに宣言する!
「「「……え?」」」
 呆然とするリア達を無視して彼の口上は続く。
「そうさ、俺はセクシー仮面! どんなセクシー怪獣にだって負けやしねぇ!」
 正義のセクシーヒーローは何時だって無敵だ! まるで妖精のように軽やかに舞い踊りながらセクシーは嘯く。
「皆のセクシー、皆をセクシー、世界をセクシーにするため日夜奮戦する正義の味方だぜ!」
 まるで白鳥のように優雅に足を上げ、くるりくるりと回転すると、ビシィと唖然とするキャルロット達に向けて胸の辺りに手で輪を作り必殺技を放つポーズを作る!
「せえぇぇぇぇぇぇぇくぅぅぅぅしぃぃぃぃ! びぃぃぃぃぃ――ぶべぇ!?」
「正気にもどれー!」
 これ以上はヤバイと判断したレジィがハリセンで脳天を打ち抜くと、セクシーはセクシーポーズのまま沈黙したのだった。

 ――そして後日
「俺何したああっ!?」
 どうやら当時の記憶が飛んだらしいトワイライトだが、女性陣の視線が何処か余所余所しい事に気付いたらしい。
「……本能の開花……俺、トワの姿、一生目に焼き付けて生きてくよ」
 世の中忘れた方が幸せになれることだってあるのだ……俺は絶対忘れないけどね? と、そんなトワイライトの肩を叩いてイルは呟く。

 一体何をしたんだぁ!? もう一度叫ぶトワイライトを余所に空を見上げれば、雲に隠れた太陽がその姿を表し始め……今日も良い天気になりそうだった。

【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/12/17
得票数:コメディ26  えっち2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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