貴方の心に灯火を。



<オープニング>


「綺麗ですね……」
「ふふ……ありがとうございます」
「……それに、とても良い香りがします」
 ラナンキュラスが、見つめて呟く。
 その瞳の先にはやんわりと微笑む妙齢の女性。その彼女の手の中でゆらゆらと揺れる小さな火。
「アロマキャンドルですよ……香りにはいろんな効果があるんですよ」
 殊更に、強く主張するのではなく、しっとりとした灯り。
「他のもご覧になりますか?」
 彼女はそう言って、一つ一つ、キャンドルを並べながら説明をしてくれる。

「オレンジはストレスや心労。
 レモンなら気分転換と頭痛に効果が高いんです。
 カモミールの香りは精神を安定させ、安眠を誘ってくれます。
 ジャスミンやローズ、ラベンダーはリラックス効果がありますし、
 グレープフルーツは消化と強壮に効くんですよ」

 それぞれのキャンドルは、形も香りも様々。
 ただ、どれもが気分を良くしてくれるものばかりだった。

 そうだ、といいことを思いついたと突然手のひらをポンっと合わせる彼女。
「フォーナ様のお祭りも近いですし……どうでしょう、プレゼント用にご自分で作ってみませんか?」
 私もお手伝いしますし、簡単なものなら出来ますよ。
「他にもやってみたい、と言う方がいらっしゃるればご一緒にどうぞ。材料は余裕を持って用意しておきますので」
 そう微笑む彼女に、わかりましたと告げ。
 ラナンキュラスは酒場に集う冒険者たちの元へと向かった。


 アロマキャンドルを作ってみませんか?
 ご自分で使われる分でも、どなたかへの贈り物でも。
 食卓や寝室を飾るのに、とても良い物ですよ。
 作り方は専門店の店主、フローラさんが指導してくださるそうなので大丈夫ですし。

 ゆらゆら揺れる暖かな火と香りは、きっと心を暖かくしてくれますよ。

 

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参加者
NPC:黒人・ラナンキュラス(a90216)



<リプレイ>

 フローラの店の奥、工房の扉が開かれると、ふわりといろんな香りが漂っていた。
「それじゃ皆さん、大テーブルの周りで好きな場所に陣取ってくださいな」
 作業用に設えられた頑丈そうなテーブルは皆が取り囲んで多少狭くはなるものの、まだ余裕があった。
「ところで……キャンドルはどう作るのだろうか? あまり難しくないとありがたいのだが……」
「アロマキャンドルなんて、作るの初めてだぞー。細かいの作ったりするのは、割りとやるんだけどなぁ」
 ガルスタが尋ねると、ユナンも俺もと告げた。
 くすりと笑った彼女は籠に入った機材や材料を示す。中でも瓶に納められた精油からは、良い香りが漂っていた。
「いろいろ作り方はありますが、その中でも簡単な方法にしましたので。大丈夫ですよ」

「先ずは蝋燭を布に包んで、小さく砕いてください」
 フローラは作り方を説明していく。
「それを湯煎に掛け透明になるくらいまで溶かしていきます。色をつけたい時は、少しだけクレヨンを砕いて混ぜてください」
 そして、と型と精油を指し。
「最後に型に流し込んで冷まします。芯も倒れないようにしっかり固定してこの時に入れておきます。荒熱が取れたらお好きな精油を混ぜて、固めるだけ。あまり熱いうちに精油を混ぜてしまうと精油が飛んでしまうので気をつけてくださいね」
 ね、簡単でしょう? と笑う彼女は、材料を皆に配り終えると、それでははじめてくださいと作業を促す。
 ピーっと火に掛けられたやかんが、お湯の準備は大丈夫だと主張していた。

 フローラは皆の手元を確認しながら「貴方はどんな思いを篭められているのですか?」と尋ねて廻る。
 篭めた思いが微かな香りに安らぎを与えてくれる、それが彼女のキャンドルを作る一番大切なコツなのだと。
「キャンドルの明かりは大好きです。ちょっと疲れた時とか、心を落ち着かせたい時とか……見ていると心が暖かくなってホッとするのです」
 ミアは砕いた蝋を湯煎にかける。
「だから少しでも……心が暖かくなって、ホッと一息つけるような……そんな明かりを贈りたいと思います」
 気分転換になるというレモンと悩みつつ、彼女が選んだ香りはオレンジ。少しずつ精油を混ぜながらかき混ぜていく。
 あまり口に出されないけど、ストレスとかあると思うので少しでも効果があれば……でも、それより。
「明かりが気持ちを落ち着かせてくれたらと思います」
 もちろん、香りの効果もあると嬉しいです、と付け加えながら。
「私が傍に居ない時に……あの方の心にホッと一息を与えて下さい」
 ゆっくりと形となっていくキャンドルに、願いを篭めて。

 ――この1年近く遠くに出たまま、なかなか帰ってきませんでした。これからはゆっくりと一緒にいられますように
 そういった事を願いながらのんびりとキャンドルに蔓の模様を付けていくスタイン。

「道を見失ったり進んでいる道が不安になった時に、光が見えるとすごくほっとします。悩まず順風で進む事も素晴らしいですが……途中で迷い止っても、光を見出し、頑張ろうと前を向き少しずつでも歩いていければ、それも素晴らしい経験となると思いたいです。
 貴女は? と尋ねられたファオは、ふわりと微笑み答える。
「私自身はいつも勇気を与えて頂いているので……もしも、あの方が迷われた時に少しでもお役に立ちたい。漁火花と冠するシクラメンの形にラベンダーの香りを添えて、贈り物としたいと思います」
 型を組み合わせて形を整え、想いを篭める。……とても大切な、幸せで居て欲しい方へ。……傍らに在れます様に、と。
 
「どこか判らない手順はありませんか?」
 一番隅で出来るだけ人と顔をあわせないようにしながら説明に耳を傾けていたルイにフローラが尋ねる。
 人が大勢いることが怖いのか、涙を堪えながら作る彼女に、フローラは壁際の作業台を指し「よかったらあちらでどうぞ」と勧める。
 そして、さらさらと紙に手順を書き記して「わからないことがあれば聞いてくださいな」と彼女に手渡した。
「アロマキャンドル……頑張って、心を込めて作りますの。ルイ、人が沢山の所が怖くなって逃げてしまいましたですけれど。お礼を……したい方が沢山おりますの」

「初めまして、フローラさん……。あまり匂いがきつくなくて、香りが奥ゆかしく風と戯れる様なアロマキャンドルを探しているのです……もし宜しければ、手伝っていただけませんか……?」
 ウィーに尋ねられ「どのような方に贈られるのでしょうか?」と尋ね返すフローラ。
「少し前の、ノスフェラトゥ戦役をご存じでしょうか……その時、大切な兄であり心の支えを亡くした友人がいるのです。あれ以来あまり眠れていない様だから……。ボクは……彼に頼まれたけれど、上手く友人を支えられているだろうか」
 それでは安眠に効くカモミールですね、と言われ彼は願いを込めて作り始める。「どうかどうか、貴方の心に消えぬ灯火が在りますように」

「心に灯火を……か。欠けたこの心も、少しは暖かくなるだろうか」
 そう呟くのはルヴェンダ。
「ん……どれも良い香りがして、綺麗だ。落ち着くな……炎は、ともすれば、傷つけ、焼き尽くし、奪うものとなる。だが、身体を温め、光を与え、心を癒すものともなるのだな」
 並ぶ小瓶とキャンドルを見て廻る。
「俺はジャスミンのキャンドルを作ってみよう。幸運の欠片の団長には、いつも世話になりっぱなしだからな。少しでも、返すことができると良いな……」
 忙しい日々の合間に、リラックスできる時間がありますように、と。
「ラナンキュラス、今日は素敵な誘いを有難う。良い一日を過ごせたよ」
 彼はにこりと微笑んだ。
 ノリスは地道に作業を進める。
「うまく出来ると良いな」

「贈りたい人はいるけど、自分のためってのもちょっと……ううん、大分、あると思う」
 シンジュは瞳を閉じて、じっと考える。
「こういうので、気持ち、届くといいなって思うけど、やっぱり私はそのとき思ったことをその時の言葉で伝えたくて……私の言葉で伝えたいから、ちょっとだけ、後押ししてほしいなって」
 こんなのガラじゃないかも、だけど……伝えたい想いは、たくさんあるから……でも、やっぱりガラじゃないのかなぁ……
 遠くを見つめながら、悩み続ける彼女に「がんばってください」そう声を掛けていく。
「場違いと解ってるけど物作りって楽しいなー」
 ゆっくり湯煎をするノヴァーリス。
「自分用のキャンドルだし気持ちを込めるのも変な気分ですが……せっかくだし少しでもあんな風になれたら、と憧れてる先輩の紅い瞳の色をイメージして作ります」
 先輩はフォーナの時期に同性から贈り物されて喜ぶ人じゃなさそうなので、と付け加えながら。
「素っ気無い様に見えてさり気無い気配りの上手な先輩ですから、香りは酸味が利いてるけど甘い、紅玉林檎みたいなカモミールが近いかな」

「……いつも心配かけさせてますし、たまには、その〜、姉さんに何かあげるのもいいかなぁ、って」
 ユナンは照れ気味に、そして反抗期っぽい口調で言う。
「血の繋がりは無いけど、俺にとっては大事な家族ですし。なんて、本人の前では言いませんけどっ」
 ふふ、と笑うフローラに、彼は尋ねてみる。
「でも俺、想いとか籠めて物作るの、あんま経験無いんだけど、アレかな。歌を楽しく歌ったりするのと似たようなものか? それならわかるんだけど」
 えぇ、と彼女は頷く。

「こういうのって作るの初めてなぁ〜ん、フローラさん今日はよろしくお願いしますなぁ〜ん」
 ペコリと頭を下げてルーディアは精油の瓶を見て廻る。
「わぁ、色んな香りがあるなぁ〜んね……どれにするか迷うなぁ〜ん」
 そして幾つ目かの瓶にに目を留め。
「月桂樹……お月様なぁ〜ん? う〜ん、名前はあの人にピッタリかも知れないなぁ〜んね。うん、これに決めたなぁ〜ん!」

「大切なお友達へのプレゼントだもの、一生懸命心を込めて作ります!!」
 レンカは、そう言うと悩み始めた。
「……えーと、何の香りにしようかな? リラックスしてもらいたいから、ローズとかラベンダー系の甘い香りが良いのかな?」
 でもなぁ、気分がリフレッシュする柑橘系の香りも捨てがたいな……と中々決まらない。
「……うーん……決めた! 迷ったけど、やっぱりローズの香りにしよう!! 毎日毎日、たくさんのこと頑張ってるから、ゆったりリラックスして欲しいもの。……それに、ローズの淡いピンク色って、あの子のイメージにピッタリだしね!!」
 手にとったものは大切な友達への気遣いが篭った薔薇の香りだった。
「ラナンキュラス、初めましてだな」
「はじめまして。」
「今回は自分用にと思い参加した宜しく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 オルガがラナンキュラスに声をかける。
「依頼や戦闘の前などに集中力を高めたいと思い、ユーカリを使ったアロマキャンドルを作ろうと思う」
「こんちはラナンキュラス。青いキャンドルにはどんな香りが合うんだろうな」
 反対からはジオグローブの声。
 青い花の香りが、一番自然なのでは? と返すラナンキュラスに、彼は詩を綴り始めた。
 記憶を取り戻して欲しいという気持ち、思い出して欲しくないという願い。
 言い出せないでいる、傍に居たい……居て欲しいと矛盾する気持ちを。

「緊張したときにリラックスできる香りが欲しいからです」
 クロウハットはそう口にしながら、違う理由を胸に秘める。
 孤児だった自分を育ててくれたあの人が好きだった花。ラベンダーの香りを嗅ぐことで過ごした過去を思い出したい。
「あの頃に戻れないことは、わかっているんですけどね……」

「大好きなアラクナにプレゼントを、という事で参加じゃ」
 作り方はしっかり覚えたコハクは、そこで頭を捻る。
 アラクナに聞いたところ好きな花や香りが無い様なんじゃな〜、と。
「リラックスできる香りはどれじゃろ?」
 ラベンダー辺りかの? そうフローラに尋ねると、そうですね、と返ってくる。
「優しいんじゃよ、彼女は。それ故に、なのかの……疲れ気味じゃったりたまに無茶したり。知らず知らず無理してるんじゃな」
 砕いて溶かした蝋に、香りをつけながら。
「冒険者だから、と彼女は言うんじゃがな。わしかて心配なんじゃよ。たまに心配しすぎてこっちが参るしの〜」
 だからリラックス出来るように、と想いながら。
 ゆっくりとキャンドルを形作っていく。
「えーっとこの花弁がこうなってっと。お、思ってたより難しいなこれ……」
 悪戦苦闘するクレスの横では、コトナが同じように、少し不器用に……だけど、一生懸命に夢中で製作している
「……ん、良い香りなのじゃ♪」
「そういやコトナは何の香りにしたんだ?」
「ジャスミンじゃ。香りはれでぃのたしなみじゃからのぅ♪」
 出来上がったキャンドルを前に、喜ぶコトナに尋ねると、そう答えてくれた。
 これを贈るお友達は『目指せ大人のレディ』仲間で、一緒にせくすぃーな女性になりましょうねという気持ちも込めているから。
「いつかきっとこーんな! 感じのナイスばでーに……!」
 と未来予想図のウェストラインを空中に描くと。
「違う!ナイスバディってのはこうだ!」
 クレスがその上からもっと縊れたラインを描いた。
 ちら、と覗くとコトナはぷぅっと頬を膨らませて拗ねていた。
 普段は怒らない子だけに、少し慌てて彼女に謝ったクレスは「言葉で伝えるのが苦手だからせめて少しでも感謝してる気持ちが伝わればいいんだけどなぁ。頑張ってる彼女が何時までも笑顔でいられるようにひと時の安らぎを……」と、自分の作ったキャンドルをそっと箱にしまい込んだ。

「やったぁ、完成なぁ〜ん♪ フローラさん、教えてくれてありがとうございますなぁ〜ん。う〜ん、この香り気に入ってくれると良いなぁ〜ん……」
 ルーディアは出来上がったアロマキャンドルを丁寧に包みながら、月桂樹のビンを元に戻す。
「ふむふむ……この木は枝を冠にしたりもするなぁ〜んね、今度探して作ってみようかなぁ〜ん」

「普段から香りを身に着け生活の一部となってるのですがキャンドルは作ったことありませんでしたね」
 材料を見つめ、カレンがふと顔を上げる。
「素敵なお誘いを持ってきて下さったラナンキュラスさんに感謝を……ラナンキュラスさんはどんなのをお作りになるのでしょう?」
「ラベンダーのキャンドルですよ」
 と微笑み答える彼に微笑み返し。
「送る相手は男性ですのであっさりしたのが良いですね。グリーン系で、少し水の涼しさを混ぜたもの」
 イメージがすでに固まっているのか、カレンは迷うことなく、すっと瓶を手にとった。
「その人は歌がとても上手な天使なんです。忙しいようだから少しでも良い夢がみれるように」

 ルヴィンは、ノソリンの形のキャンドルを作るって張り切ってるのよね。こういうとこ、子供っぽくて可愛いv
 ミィミーは緩みそうな顔を堪えてキャンドルに向かう。
「どうしたんだ?」
「や、なんでもないわよ」
 と、あんまりニヤニヤしてると最愛の旦那様、ルヴィンに声を掛けられ慌てて「えーっと、私はカモミールを使おうかな。持ってきたクッキー型を使って、と」手をパタパタと振りながら作業に集中する振りをする。
 ルヴィンの方は、大きめにつくったキャンドルを削って磨いて、ミィミーが大好きなノソリン型にしてみようと
 うまくできるか心配だなあと思う反面、一緒に何かを作るのも久々なので、気合いも入りまくり。
 変な形になってしまっても.、愛情でカバーだ!! そんな気持ちを篭めながら、少しずつ形を整えていく。
 ミィミーの方も……遠くでお仕事してるルヴィンのために、体に気をつけて頑張ってねと。あと、ちょっとだけ寂しいの気持ちが入っちゃうかな……。
 そんな想いが少しだけ表情を沈ませた。
「大丈夫かい?」
 何か困っているのかと、微笑を浮かべて尋ねる優しい旦那様に「なんでもないの」と彼女は嬉しそうな笑みを返す。

「ラナンキュラスさんはどうもお声をかけて頂き有難う御座いました。フローラさんにはお世話になります、宜しくお願いします」
 お辞儀をしたリツは、蒸しケーキ入りのバケットを差し出す。
「せめてものお礼なのですがサツマイモの蒸しケーキを作ってきたので。もし宜しければ後で食べて頂けると嬉しいです」

「炎って不思議ですよねぇ、大き過ぎればその揺らぎが恐怖の対象になるのに。それでも側に感じると安心するなんて……。人と人という間柄にちょっと似ているかもしれませんね」
 淡く微笑んだ彼女はそっとキャンドルに手を添える。
「私は色々守れませんでしたけれど、これを贈る相手には幸せでいて頂きたいです」

 この灯火が、貴方の心を温りで満たしてくれますように、と。
 誰もが願いながら、ほのかな香りの工房は冬の日であっても暖さに包まれていた。


マスター:仁科ゆう 紹介ページ
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作成日:2006/12/23
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