≪【CLOVERS CAFE】≫真冬の雪国の記録



   


<オープニング>


 今日も【CLOVERS CAFE】のひとときは穏やかに過ぎる。
 和やかに空気で満ちた此処は、季節を問わず客足の絶えることが無い。特に冷たい冬の風が吹き荒ぶ近頃は、暖かさを求めてか引っ切り無しの来客が続いていた。場所によっては既に雪も降り積もっているだろうに、団員たちの休まる暇は無に等しい。
 そんなある日の夕暮れのこと、大賑わいの一日を終えてほっと一息吐くような時間に、深雪の優艶・フラジィル(a90222)がばたばたと駆け込んで来た。彼女は最近、妙にばたばたしているようなのだが、軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)と何か秘密の約束があったらしく、二人で顔を寄せ合って内緒話をし始める。
 暫くすると瞳をキラキラと輝かせたフラジィルが一堂を前に宣言した。
「粉雪の! 雪国の! クリスタルフェスティバルに行きましょう!」
 雪国、と言うキーワードに迷えるぽよぽよ・ポヨレー(a59383)が目を瞬く。雪は見てみたいであります、と興味津々に続きを促した。フラジィルは胸を張って人差し指を一本立て、説明を開始した。
 クリスタルワールドとは、とある雪国で毎年開かれる冬祭りの名称だ。
 祭りと聞いて悪戯な輝石・ピナピナ(a59168)は身を乗り出した。雪もお祭りも大好きなのに、二つが組み合わさったお誘いが素敵でないはずが無い。
 雪や氷で作られた美しいオブジェを鑑賞して楽しむ祭りであり、特に夕暮れ以降の美しさは格別であるらしい。氷の雪洞に灯りが燈され、世界に彩りを添える。空に星が煌く刻限には、澄み切った夜気の中に広がる幻想的な光景を目に出来るだろう。
 純白の癒し姫・シア(a03214)が思わず頬を緩めたのは、美しい冬の夜を思い浮かべたからだ。楽しそう、と胸の前で指を組む。青藍の武炎・イグニース(a59659)は微笑みながら緩く顎を引き、悪く無いと同意を重ねた。今までの生活からは縁遠い冬の祭りにも、心惹かれるものを感じる。
「更に、暖かい食べ物を買い食い出来ちゃう屋台まで完備です!」
 儚い白の希望・リオン(a48777)は勢いに押され、思わず小さな拍手を贈った。拳を振り上げたフラジィルは満足気に笑顔を輝かせる。
「こ、今回こそは是非お邪魔させて頂きたいのです……!」
 翳らぬ蜜星の讃美歌・ルーツァ(a14434)の震える手の中には夏頃にカフェの面々で出掛けた折の報告書があった。天翔ける白百合・ミルフレア(a52329)も、ボクも一緒にお出掛けして皆と親交を深めたいなぁ、と遠慮がちながら参加を希望する。
「そして温泉旅館もバッチリ手配済みなので、お出掛け日程は一泊二日になります」
 祭りと温泉と両方を楽しめるとの計画を聞いて、散り逝く者への子守唄・クローディア(a20766)は感心したように頷いた。良い考えだと賛同する。響くは鈴の音・ミュウ(a38694)も素敵な旅行が楽しみ、と祭り会場や大浴場を思い浮かべて笑みを浮かべた。
「ちなみに露天風呂だそうなのです」
「混・浴、ですよね。当然」
 疾しい発言を、黒狼・カシュー(a47550)は真顔で行った。本心を憚ること無く明らかにしている以上、所謂下心などは無いのだから、欠片の後ろめたさを抱くことも無い。混浴だなんて困ってしまいますわ、と海天藍・エルヴィーネ(a36360)は頬を赤らめた。ちらりと美形な男性陣に視線を向けることも忘れない。湯浴着を着ることが出来るようですから大丈夫ですよ、と草露白・ケネス(a11757)が優しく説明の補足をした。
 温泉に浸かった後、温まった身体で蒲団の上をごろごろするのはとても気持ち良さそうだ。宵藍・リュー(a36901)も気を惹かれたか無言ながら話の行く末を見守っている。団員たちの殆どが賛成らしいことを見て取って、桃華の歌姫・アユナ(a45615)も顔を綻ばせる。
「慰安旅行、とってもとっても楽しみですね」

マスター:愛染りんご 紹介ページ
 愛染りんごで御座います。
 出発まで間も無く申し訳無いのですが、宜しければ御参加下さいませ。

!雪国へ行こう!
 大まかな行動は二つに分かれています。
 どちらをメインに据えて行動するか、宜しければプレイングにて御指定下さいませ。リプレイ描写はクリスタルワールドの入り口に到着した時点から開始されるかと思います。

【選択1】クリスタルフェスティバルを楽しむ。
 雪像、氷像、雪洞、屋台がキーワードです。

【選択2】温泉旅館で混浴の露天風呂を楽しむ。
 混浴、露天、蒲団、一泊がキーワードです。

 フラジィルに何か御座いましたらプレイングにて御願い致します。お土産に関しましてはフラジィルが見繕って全員御揃いの品を発行させて頂くことになるかと思いますので、プレイングにての指定は不要になります。御安心下さいませ。
 愛染りんごでした。

参加者
想いを抱く癒しの薔薇・シア(a03214)
清麗なる空牙の娘・オリエ(a05190)
軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)
草露白・ケネス(a11757)
蜜星の讃美歌・ルーツァ(a14434)
散り逝く者への子守唄・クローディア(a20766)
春を待つ春告げ鳥・ソウェル(a34111)
海天藍・エルヴィーネ(a36360)
宵藍・リュー(a36901)
鈴響奏・ミュウ(a38694)
桃華の歌姫・アユナ(a45615)
氷炎の黒騎士・カシュー(a47550)
白の泣く音・リオン(a48777)
天翔ける白百合・ミルフレア(a52329)
ラブリージュエル・ピナピナ(a59168)
躍れるぽよぽよ・ポヨレー(a59383)
藍焼・イグニース(a59659)

NPC:深雪の優艶・フラジィル(a90222)



<リプレイ>

●クリスタルフェスティバル
 雪と氷で彩られた祭り会場に足を踏み入れ、青藍の武炎・イグニース(a59659)は小さく感嘆の声を洩らした。唇から零れた息が白い。光を細やかに反射する様は白い天鵝絨の煌きにも似ている。美しいものを美しいと感じ、今日と言う機会を心行くまで楽しもうと彼は僅かに表情を綻ばせ、澄んだ像たちの繊細な造形に暫し見蕩れた。
「雪って、こんなにふわふわしてるんだね。綿菓子みたい」
 響くは鈴の音・ミュウ(a38694)は初めて見た綺麗な雪世界で遊べることが嬉しくて、思わず笑みを浮かべてしまう。桃華の歌姫・アユナ(a45615)は白い像たちを見ると大興奮し、寒さのせいだけでなく頬を染める。幾ら見ていても飽きないとはしゃぐ彼女を見ていると、草露白・ケネス(a11757)も童心に返ったような気持ちになった。カフェの面々には雪を初めて見ると言う団員も少なくなかったが、ケネスの故郷は雪国だ。彼にとっては目新しいものでは無く、寧ろ懐かしさが呼び起こされる世界である。
「冷たい雪や氷で出来ているのに、ほんわか暖かい感じがします」
 頑張って作った人々の想いが伝わって来るような気がする、と微笑むアユナの息もまた白い。あちこち巡る間にも身体は冷えてしまう。暖かな飲み物を探しましょう、とケネスは屋台を指差した。寒いところで食べる温かいものは本当に美味しく感ぜられるものだから、アユナは嬉しそうに頷いて応える。
「あっちの屋台のお饅頭、美味しそうなのでありマス!」
 初めて目にした雪に感動し、ぴょんぴょん飛び跳ねていた迷えるぽよぽよ・ポヨレー(a59383)は、今度は饅頭に興味を惹かれたのか「皆で食べるのでありマス!」と周囲を誘いながら駆け出して行った。紫の外套を羽織った清麗なる空牙の娘・オリエ(a05190)は、転ばないようにね、と微笑みながら彼女の後を追い掛ける。
 早速おでんを購入した悪戯な輝石・ピナピナ(a59168)は、器の中でつるつる滑る玉子を何とか半分に分けようして、深雪の優艶・フラジィル(a90222)と共に悪戦苦闘を開始した。ピナピナにとって、同盟の冒険者となってから大勢で出掛けるのは今日が初めての機会だ。お祭り以上にお出掛け自体が嬉しくて顔を緩めつつ、世界を埋め尽くす白さを目に焼き付けようと周囲を見渡す。
「溶けなければ持って帰るのに。残念」
 溜息混じりに呟くが、その残念を補って余りあるほど、屋台の食べ物は暖かくて美味しくて、皆で分け合うのも同じくらいに楽しかった。熱々の豚汁が盛られた器を手に、天翔ける白百合・ミルフレア(a52329)は今此処に皆と居ることを酷く幸福に感じている。何処か幻想的な雪と氷の世界は本当に美しくて、うっとりと見惚れてしまった。
「その鮮色が失われるのは余りにも惜しい」
 立ち尽くしていては凍えてしまう、とイグニースは彼女に声を掛ける。美しさが凍り留められることは世界にとって僥倖であるかも知れんが、と口説き文句のような褒め言葉を語る彼にミルフレアは目を瞬いた。イグニースは屋台で温かい透明な酒を購入し、備え付けられた椅子に腰を下ろすと世界を見遣る。夕暮れ時まで映り行く情景を観賞したいと考えたらしい。
 フラジィルと仲良く手を繋いで歩いていた軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)も、甘酒の優しい香りに気付いて足を止めた。偶然にも発見した露天のアクセサリに翳らぬ蜜星の讃美歌・ルーツァ(a14434)が目を光らせる。純白の癒し姫・シア(a03214)には桜真珠と結晶のブレスレットが似合いそう、春を待つ春告げ鳥・ソウェル(a34111)には太陽を模した七宝焼きのペンダントが似合いそう、と手を繋いでいる二人をそれぞれ見遣って微笑みかけた。手を繋げば温かいですものね、と嬉しそうに小さく呟く。

●四葉の雪だるま
 指先で掬うと、雪は瞬く間に溶けて消えてしまう。
 こんなに綺麗で美味しそうなのに食べても味がしないのは不思議、と儚い白の希望・リオン(a48777)は首を傾げた。団員たちが集まり始め、雪だるま作りが開始される段になると、拳を握り締めて参戦を表明する。雪で遊ぶと聞いて雪合戦よりも雪だるま作りに行く発想が紳士淑女のものに思えて、ルーツァは敬意に似たものを抱いた。
「(いつも頑張って働いている皆さんの疲れを癒して差し上げる為にっ!)」
 直接的に何かをすることは出来ないが、雪だるま作りの特に大変そうな作業を率先して行うなどして頑張ろうと決める。見渡す限りに積もった雪を見るのも初めてと言う散り逝く者への子守唄・クローディア(a20766)は、当然雪だるま作りも初体験だ。周りに言われた通り、雪玉を作り転がして行く。徐々に大きくなる雪玉が新鮮で、素直に感心してしまった。
「皆で力を合わせて、おっきな雪だるま作ろうねっ♪」
 ミュウも微笑んで大きくなり始めた雪玉を転がす。彼女の身に着けた鈴がちりちり可愛らしい音を立てた。きっと、あの雪像に負けないくらい素敵なものになる。そう確信しながらシアも、きゅっきゅっと音を立てる雪原に目を細めた。
 形が整い始めると、今度はポヨレーがプーカ風の耳を作る。エルヴィーネはセイレーンに許された芸術性を生かして、無駄に凛々しい眉毛を付けた。男前になった雪だるまの横に、ピナピナは誰かに似ているようなプチ雪だるまを、ミルフレアは小さな雪うさぎを作って行く。
「赤く円らな瞳はジルさんと似ている、かな」
 うさぎの目に南天の実を添えながら、ケネスが呟いた。今日も幸せそうなフラジィルは、紫のボタンか何かも持って来れば良かったです、と少しだけ残念そうに言葉を返す。何処からか戻って来たオリエは、そんな彼女の頭を優しく撫でてから「差し入れだよ」と買い込んで来た袋を示した。
 クローディアも宵藍・リュー(a36901)も共に屋台へ行って来たらしく、悴み始めていた皆の手足が再び温まるくらいの美味しい料理が齎される。冬の美しい空は段々と赤みを帯びて来ていたけれど、その美しさは欠片も減じることが無い。
「良いものだな……」
 和やかな場の空気に、感慨深げにクローディアが呟く。おなかいっぱいに差し入れを食べたミュウは雪の上へごろりと転がった。冷たいけれど柔らかい。ふと思い出したように跳ね起きて、完成し掛けていた雪だるまに四葉のクローバーを貼り付ける。奇遇です、と目を輝かせてルーツァは二枚目の四葉を足した。
「頑張って作った雪だるまも、いつか溶けてしまいますが」
「思い出として、心の中にはずっと残ってますよね」
 リオンとシアは、顔を見合わせてにっこりと笑う。
 夕陽に照らされた雪はとても綺麗で、雪だるまの影が伸びて行く様も不思議に幻想的で心が弾んだ。連れて来てくれて有難う、とピナピナは胸中で呟く。大切に心の中へ留めて置きたい宝石がまたひとつ増えてくれた。これからも皆と仲良く出来ますように、と雪だるまに手を合わせて雪だるまに祈る。御利益は何と無く、あるような気がした。

●露天風呂
「お迎えに上がりました閣下! 浴場までの警護はこのカシューにお任せを!」
 女子部屋の襖を突き破りかねない勢いでノックしながら、黒狼・カシュー(a47550)は勇ましく声を張り上げた。
「女子達ー、一緒に行きましょう♪」
 女性陣から襖の向こうの彼の顔を見ることは出来ないが、弾む声が全てを物語っている。浴場の入り口で別れる際に、また中で、とカシューは女性陣に声を掛けた。
「(なんと甘美な響きだろう……!)」
 幸福に酔い痴れながら脱衣所に入った彼を待ち構えていたのは、旅館の貸し褌だった。深い苦悩に沈む彼の横で、グリモアの加護を受けたような気がしているリューが早々にタオルを纏っているのには気付けない。苦悩に沈み過ぎたらしい。

 登場したカシューの姿に、ミュウは頬に手を当てて「流石ですっ」と声を掛ける。シアも面白いものを見物するような視線を彼に向けて来た。耳をほんのり赤く染めたカシューは葛藤の末、期待に応えてきっちり褌姿である。サラシは多めに使うことで自分にも女性にも優しい、目のやり場に困らないデザインを保っていたが、視線が集まるとやはり恥ずかしい。
 しかし彼の目が捉えた現実は、彼の想像を遥かに超えて、素敵に可憐だった。
「グッッッッッジョブッ!」
 湯浴着を纏った女性陣の艶姿を心に深く刻み込みつつ、彼は輝く笑顔で拍手喝采を贈る。既にケネスには完膚無きまでに回避され、再び敗戦を喫したエルヴィーネは次の獲物を見定めた。逃がすものかとさり気無く距離を詰めて行く。
「カシューさん、お背中お流し致しますわっ」
「おお、エルヴィーナ。うなじの色っぽさが良い仕事だ」
 エルヴィーネは乙女らしく朱に染まった頬に手を当てて見せるも、爛々と輝く瞳は獲物を狙う狩人の目である。
「嫌ですわ、カシューさんったら乙女の名前を間違えるなんて……きゃあ、足元が滑って!」
「――カシフンがー!!」
 彼女に縋り付かれた彼は悲鳴を上げた。
 ちなみに、カシフンとは貸し褌の愛称のようなものだ。
 リューは彼らを視界へ入れないよう気遣いながら、楽しくのんびりと雪景色を眺めていた。湯気が真っ白で夢の中に居るようだと微笑むソウェルを見て、妹が居ればこんな感じなのだろうかと瞳を細める。冬と雪が似ているように思えて、ソウェルは首を傾げた。柔らかい雪は見た目、暖かそうにも思えるのに、触るとひんやりしていて不思議なところも好きだった。寒い外気に触れながら入る温泉は、アユナにとって驚くべきものだったけれど、じんわりと染み込んで来る暖かさが徐々に心地良くなって来る。
「みんなが温泉を好きな気持ちがわかる気がするの」
 アユナの呟きで思い出して、ソウェルは桶を取り出した。桶の中に詰めた雪は、持ち込んだジュースを良く冷やしてくれている。
「大人のひとはお風呂でお酒のむってきいたので、一度やってみたかったです!」
 嬉しげなソウェルを見て、リューも何処と無く嬉しそうに微笑むとジュースを頂いた。
「……ちょこっと大人の味なのです」
 リオンは幸せそうに呟く。年の瀬が迫るほどに忙しくなるのが世の常だから、この時期に旅行へ来ることが出来て良かったと思いながら、オリエもジュースを受け取った。リューシャはひと段落ついたらしいカシューを労おうとお酌しに行く。未成年に酒を呑ませることは出来ないから、代わりに熱々の紅茶を注いだ。
「いつも有難う。日頃の疲れを癒して下さいね!」
 間近でにっこり微笑んで貰えた彼の幸福さ加減は推して知るべしである。リューシャは団員の皆へ感謝の言葉を紡ぎながらお酌をして回り、彼女自身もひと段落つくとフラジィルと一緒にあひる型の玩具で遊んで楽しんだ。

●就寝前の枕投げ
「皆で並んで手は腰だ!」
「カシューさんのまねっこしたらだめだって、リューさんがいったです」
 珈琲ミルクを一気飲みしようとソウェルを誘ったところ、少し寂しくなれるような理由で断られた。
「ジルが、ジルが付き合いますから!!」
 カシューの煤けた背中に同情したらしいフラジィルが立候補している。ケネスは旅館の従業員との歓談を終えると客と言う立場ながら手際良く蒲団を敷き詰め始めた。これが今宵の寝具なのかとイグニースはカルチャーショックを受けている。
「想像の範疇を超えるものだ……」
 蒲団を敷き終わる頃、誰が言い出したのか枕投げ大会が始まった。
 枕をぶつけられるたびにピナピナが反骨精神で立ち上がる。ポヨレーも「わがはいも狂戦士のはしくれでありマス!」と声を荒げながら枕を掴んだ。枕投げと言う遊び自体が酷く新鮮に思えるリューは、音楽しか無かった己の環境を思い返しながらも、無我夢中で枕投げをする。流れ枕に当たったソウェルは、睡魔に負けたのか蒲団に倒れこむと其の侭すやすや眠り始めてしまった。枕投げに胸を高鳴らせたリオンは、手加減無しでカシューを狙う。何故か手際良くオリエに盾にされ、かつ集中攻撃も浴びたカシューは力尽きて枕の合間に埋もれ、洗い立ての枕カバーから香る石鹸の薫りに浸りながら良い夢を見た。
「(大好きな方々の笑顔を見ていることは、どうしてこんなにも幸せなのでしょう……)」
 心がとても温かくなる。ルーツァは窓の外に視線を移すと、綺麗な真冬の空を見上げて近付くフォーナ感謝祭の夜を想った。就寝前の短い雑談の折、ミルフレアはそっとクローディアに耳打ちする。
「ボク、クローディアさんみたいなかっこいいお姉さんに憧れてたんだー」
 良かったら仲良くしてね、とはにかみながら御願いした。エルヴィーネはいそいそと早々に蒲団へ潜り込むと、皆が寝静まった頃に遣って来てくれる格好の良い殿方を待ち始める。爛々と瞳を輝かせる彼女が何とか眠りにつけた場合、夢の中では逢えたのかも知れない。
「来年も、みんなと楽しく幸せに過ごせますように……」
 賑やかで楽しい素敵な慰安旅行でした、とシアが微笑む。隣の蒲団に腰を下ろしてリューシャも頷き、寝る前にと窓の外へ目を向けた。氷の雪洞に燈された灯かりが照らし出す美しい夜の光景が遠く煌き、思わず息を吐いてしまう。今も既に夢の世界に居るような気がした。
 明かりが消され、夜色の沈んだ部屋の中、ケネスは遠い灯かりを眺めながら一杯の酒を傾ける。ちらちらと降り積もる白い雪に混じって、微かにリューが吹く篳篥の音が聞こえて来た。慰安旅行と言うひとときは、冬の中にひとかけらの暖かさだけを残してあっと言う間に過ぎ去ったのだった。


マスター:愛染りんご 紹介ページ
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参加者:17人
作成日:2006/12/20
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