<リプレイ>
●ナリキーン 「ガイさん……、僕が守ってあげるからね」 ウットリとした表情を浮かべ、漆牽牛煌・ルシュド(a28710)が自分の両手に頬擦りした。 両手には、まだガイのぬくもりが残っている。 そして、脳裏に浮かぶガイの笑顔……。 「ああっ、ガイさん。僕は……、僕は……、がふっ!」 あまりの暴走っぷりに仲間達が頭を抱え、次々とルシュドにボディブローを放っていく。 しかし、ルシュドは幸せそうな表情を浮かべ、まるでガイに抱擁されているような気持ちで宙を舞う。 「それじゃ、今日はこの辺で♪」 仲間達に元気良く手を振りながら、ルシュドが家に帰ろうとする。 「……まだワルダーを倒していませんよ?」 ルシュドの腕をガシィッと掴み、公平と標準世界の・ナナミ(a60119)がジロリと睨む。 「い、いや……、僕には家に帰ってやるべき事が……」 ナナミの腕を振り払い、ルシュドがダラダラと汗を流す。 しかし、仲間達が立ち塞がり、ルシュドをジロリと睨みつける。 「ガイさんのためにも、この依頼……、失敗するわけには行かないだろ? それともガイさんとの約束を破って、一人で……いや、何でもない」 説教をしている途中で何かに気づき、普通が服着て歩いている・ハウマ(a54840)が気まずい様子で視線を逸らす。 ……オトコには言葉で語れぬ事情がある。 「ガイさん、紙芝居まで作って大変なぁん……。同じ筋肉隆々仲間としては、なんだか放っておけないなぁん。それに金持ちの家なんてそうそう入れないしなぁん。め、飯とか食わせてもらえるかもしれないなぁん!」 グゥと腹を鳴らしながら、高らかに響く腹音・クルック(a58349)がルシュド達を連れてナリキーンの屋敷に向かう。 ナリキーンの屋敷はいかにも金がありそうな雰囲気が漂っており、本人をイメージして作った銅像が無駄に並んで気味が悪い。 「な、なんか……、いっちゃってますね。逝ってますよ。往っちゃいすぎてますよ……。正直、あんまり関わりたくないなー……っていうか拙者は何故にここにいる?」 引きつった笑みを浮かべながら、獅子の遺志を継ぐ者・ピオレッテ(a59029)が依頼に参加した事を後悔する。 真面目に考えれば考えるほど馬鹿らしくなってくるため、ピオレッテは考える事を……止めた。 「まぁ、気楽にやればええんやないの? あんまり難しく考えても損するだけやで」 苦笑いを浮かべながら、真っ赤な鶏冠の・トゥルティ(a58831)がドアをノックする。 「おおー、お待ちしておりましたよ、皆さん」 しばらくして虎の毛皮を羽織ったチキンレッグが、ワイングラス片手にトゥルティ達の前に現れた。 「あなたが犯人ですね」 すぐさまナリキーンのほっぺをつねり、バナナの皮大王・エル(a59510)がキッパリと言い放つ。 「いきなり何をするんだ! 喧嘩を売っているのか!」 不機嫌な表情を浮かべながら、ナリキーンがエルを叱る。 しかし、エルは手当たり次第にほっぺをつねり、ワルダーが紛れ込んでいないか調べていく。 「不快な思いをしたのなら、彼女の代わりに謝ります。ですがワルダーが紛れ込んでいる可能性も捨て切れません。とりあえずボディガードの人達を外に出してくれますか? あまりヤル気がないようですし、邪魔ですから……」 クールな表情を浮かべながら、鉄拳制裁・グロウベリー(a36232)がボソリと呟いた。 「……断る。お前達の中にワルダーの仲間がいるかも知れないからな」 先程の事でヘソを曲げたのか、ナリキーンが首を横に振る。 ここでナリキーンを怒らせれば、ワルダーを捕まえる前に屋敷から追い出されてしまう。 「でも、ボディガードの中にワルダーが潜んでいる可能性は高いと思うよ。せめて全員のアリバイだけでも取らせてもらえるかな?」 念のためナリキーンに許可を貰い、ルシュドがボディガード達の許可を取っていく。 本当ならボディガード達を纏めて広い一室に閉じ込めようと思っていたが、この状況でそんな事をすれば後で苦情が来てしまう。 「泥棒といえば屋根の上からの侵入だろ? 屋根の上といえば煙突! 煙突といえば、そう……ぐはっ!」 力説している途中でバナナを踏み、流水円舞闘の使い手・オルガ(a49454)がゴチンと頭を打つ。 「す、すみません。そのバナナを仕掛けたのは僕です」 青ざめた表情を浮かべながら、ピオレッテがオルガに駆け寄った。 しかし、オルガはグルグルと目を回し、ピオレッテの声が聞こえていない。 こうして冒険者達は先行き不安な状況で、ナリキーン邸の警備を始めるのであった。
●中庭 「ちょっ、ちょっと待ちぃや! うちは餌ちゃうよ!」 青ざめた表情を浮かべながら、トゥルティが番犬達から逃げていく。 警備のために中庭へとやって来たトゥルティ達はそこで番犬達の熱烈な歓迎を受けた。 番犬達は『遊んで♪』と言わんばかりに飛びき、押さえ込んで彼らを放さない。 「やや、かわいいワンコあるぅ〜〜♪」 満面の笑みを浮かべながら、愛と美を讃えるお菓子な刺者・スフレ(a52319)が番犬達の頭を撫でていく。 番犬達は千切れんばかりに尻尾を振り、狂ったようにスフレの顔をペロペロと舐め始める。 「何でこういう屋敷には、大きな番犬ばかりいるんや。この様子じゃ、飼い主にも相手にされておらんのやな。まぁ、その点は同情するんやが……」 魂の抜けた表情を浮かべ、トゥルティが溜息を漏らす。 しかし、番犬達はトゥルティの気持ちも分からず、興奮した様子で飛び掛ってくる。 「は〜いワンちゃん!! 餌あるよ♪ そぉ〜れ!!」 警備の事などすっかり忘れ、スフレが犬と戯れた。 「だから働けや! せめて賃金分は働かな! それは護衛としての、いや、働くもんとしての最低限のプライドちゃうんか?」 スフレ達の頭をハリセンでぱちんと叩き、トゥルティがクドクドと説教をし始める。 「……随分と楽しそうだな」 物陰に隠れて様子を窺いながら、ペスがダラリと汗を流す。 ぺスはナリキーンの屋敷に潜入するために犬の着ぐるみを着てきたのだが、あまりにも冒険者達がフレンドリーに番犬と接していたため、完全に飛び出すタイミングを見失っている。 「あれは僕達を欺くための罠です」 険しい表情を浮かべながら、東風の愚者・キズス(a30506)が口を開く。 「なるほどな。さすが元冒険者」 キズスの肩をぽふりと叩き、ボスが感心した様子で溜息を漏らす。 「いまも冒険者なんですけど。……って言うか、元冒険者だと、物凄くマズイ事に……」 気まずい様子で汗を流し、キズスがボスにツッコミを入れる。 どちらにしても、ここを突破しなければ、ナリキーン邸に潜入する事が出来ない。 「ならばわしが囮になろう。なぁに、犬の扱いなら慣れている」 覚悟を決めた様子で番犬達を睨みつけ、ペスが雄叫びを上げて茂みから飛び出した。 「て、敵や!? ……って言うか、物凄く怪しいんやけど!」 着ぐるみを着た筋肉質のオヤジ(注:ペス)が雄叫びを上げて走ってきたため、トゥルティが悲鳴を上げて尻餅をつく。 ペスは鬼神の如く殺意のオーラを漂わせ、そのまま強行突破をしようとした。 「そこだぁ!」 瞳をキラリと輝かせ、エルがどこでもバナナを発動させる。 それと同時にペスが派手にズッコケ、そのまま庭にあるプールに沈んでいく。 『みんなー、あのオジさんに遊んでもらうあるー』 獣達の歌を使って番犬に話しかけ、スフレがビシィッとペスを指差した。 「ぬおおおおお! やめろおおお!」 しかし、ペスの悲鳴は番犬達の鳴き声に掻き消され、スフレ達の耳には届いていない。 「うわっ……、さすがのオッサンも、これは効いたようやな」 同情した様子でペスを見つめ、トゥルティが癒しの聖女を使う。 次の瞬間、キズス達がトゥルティの後ろを横切り、ナリキーン邸へと入っていく。 「何故キズスさんがワルダーに……」 ワルダーの中に見覚えのある人物がいたため、ナナミがジャイアントソードを構えて後を追う。 キズスにも何か深い事情があるのだと信じながら……。
●女神像 「この女神像、誰かに似てないかな〜ん?」 黄金の間に飾られた女神像をマジマジと見つめ、茜空の舞剣・エンジュ(a15104)が不思議そうに首を傾げる。 黄金の女神像はクールな表情を浮かべており、何処かで見た事のある顔立ちだ。 「確か『偉大な御方』をイメージして作ったものらしいよ」 偉大なる羊の召喚を使ってボディガードを眠らせ、ピオレッテが黄金の間に入っていく。 屋敷のあちこちからはイビキ声が響いており、まるでカエルの合唱である。 「それじゃ、あたしの知っている鎖の人ってわけでもないかも知れないなぁ〜ん?」 キョトンとした表情を浮かべ、エンジュがボソリと呟いた。 しかし、黄金の女神像は個人を特定する事が出来ないようになっているため、エンジュの想像している人物であるとは断言する事が出来ない。 「まぁ、難しい事は考えない方がいい。いまは警備に集中しよう」 クールな表情を浮かべながら、ハウマがメイドの肩を抱く。 いつの間にかメイドを口説いていたのか、やけに良い雰囲気になっている。 「こういう時はどんな表情を浮かべて殴ればいいんだろうな。やっぱり笑顔か? 笑顔を浮かべて血祭りか?」 こめかみをピクピクとさせながら、グロウベリーがハウマの胸倉を掴む。 既に頭の中には鉄拳制裁しか選択肢がなかったため、ハウマが答えを返す前にボコスカと殴っている。 「悪い子には御仕置きなぁ〜ん」 激辛レインボー煎餅をすちゃっと取り出し、エンジュが笑顔を浮かべてハウマの口に放り込む。 次の瞬間、ハウマが悲鳴を上げてのた打ち回り、唇を分厚くさせて転がった。 「お、俺だって遊んでいるわけじゃない。きちんと警備だってしているぞ! ほら、これなんて怪しくないか? いつの間にか女神像の横にマッスル像が立っているぞ!」 自分の無実を訴えるようにして黄金のマッスル像をバンバンと叩き、ハウマが乾いた笑いを響かせる。 黄金のマッスル像はクルックが金色の絵の具を全身に塗って化けていたもので、ハウマがバンバンと叩くたびに金色の絵の具が手についていく。 「……お前がワルダーだな」 劇画タッチに表情を険しくさせ、ハウマがキッパリと言い放つ。 ここで何か手柄を立てなければ、再び地獄を見る事になるため、ハウマも必死である。 (「ううっ……、まだか。まだワルダーは現れないのか」) そんな中、オルガは鎧聖降臨を使って赤と白の暖かい服装で屋根の上に待機し、遠眼鏡を覗き込みながらワルダーが現れるまで待ち続けるのであった。
●ワルダー 「一体、どうなっていやがるんだ。ほとんどの扉が閉まってやがる!」 不機嫌な表情を浮かべながら、ボスがナリキーン邸の廊下を走っていく。 ナリキーン邸の扉はルシュドの手によってシャドウロックが施されており、黄金の間以外の扉は開かないようになっている。 「ワルダーさんいらしゃいなぁ〜ん。ご案内するなぁ〜ん」 フールダンス♪を踊ってボス達を黄金の間に迎え入れ、エンジュがスーパースポットライトを放つ。 「そこを動くな、曲者っ!」 それと同時にグロウベリーが紅蓮の咆哮を放ち、ボスの動きを完全に封じ込める。 「これで一件落着だね」 爽やかな笑みを浮かべながら、キズスが何事もなかったようにボスを縛っていく。 ……仲間達の冷たい視線。 キズスは気まずい様子で逃げ道を探す事にした。 「まさか貴様がワルダーの仲間だったとはな。……覚悟しろ!」 彼が言い訳する隙すら与えず、ハウマが慈悲の聖槍を放つ。 それに合わせてキズスが素早く横に飛び、エルの仕掛けたバナナでコケた。 「ま、まさか、こんなところで……クッ!」 悔しそうな表情を浮かべながら、キズスがふらりと立ち上がる。 次の瞬間、クルックが紅蓮の咆哮を放ち、再びハウマが慈悲の聖槍を放つ。 「裏切る悪い子も覚悟するなぁ〜ん」 そしてトドメはエンジュのレインボー煎餅。 肉体を凌駕する魂が発動しなければ、そのまま病院送りになっていた事だろう。 「共に手を取り合う仲間がありながら悪の道に走るとは、不届きにも程があります! ワルダー共々、覚悟してもらいますよ!」 キズスをジロリと睨みつけ、グロウベリーがブツブツと説教をし始める。 その間にボスが意識を取り戻して逃げようとしていたが、ピオレッテがすぐに眠りの歌を歌ったのでそのまま眠りについた。
……数時間後。 オルガはまだ屋根の上にいた。 既に日が暮れており、寒さで身体が動かない。 「それにしても妙に静かだな。皆の声は聞こえないし、屋敷の明かりも消えてるし……。ま、まさか! 俺は忘れ去られているのか!? ちょ、ひどいぞって……うわぁぁぁ!」 そしてオルガは悲鳴をあげ、屋根から転がり落ちるのだった……。

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参加者:12人
作成日:2006/12/22
得票数:冒険活劇1
戦闘1
ほのぼの1
コメディ8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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