ピッシュブルゲのケーキ祭。ケーキ屋さんも募集中!



<オープニング>


●流麗なる水の街
 街全体が、大きな湖の上にある街ピッシュブルゲ。流麗なる水の街と詩人達に謳われ、煌めきを抱いた湖に幸いを祈るこの街は白亜の建物が建ち並ぶ。ピッシュブルゲは観光の街だとある人は言う。またある人は愛でる街だという。詩人が愛し、旅人が妙齢の女性と見立てたこの街ではフォーナ感謝祭を前にあるイベントを行うのだ。
「それが、フォーナ感謝祭を前に行われるケーキ祭だ」
 紫煙の霊査士・フォルテ(a90172)は小綺麗な封筒を手で遊ぶ。質の良い紙の使われた封筒には美しい文字でサインがされていた。初めまして。から始まる手紙には、ピッシュブルゲで行われるケーキ祭の概要と、この度こうして手紙を書きましたのは。から始まる説明だ。
「ピッシュブルゲには、毎年この時期に多くのパティシエ達が集まりそれぞれ店を出していたんだが……どうも風邪をこじらせたらしくてな、数店出店が出来なくなったそうだ。ーーま、こっからは予想も付くだろうが、代わりに出店してくれるパティシエを募集していてな」
 ピッシュブルゲのケーキ祭は、パティシエ達がそれぞれ店を出し、フォーナ用のケーキを一つだけ用意するというものだ。客達はいくつものケーキを見て、選び、パティシエ達はそれぞれの腕を競う。
「まぁ、競うっても順位を決めるタイプのものじゃないがな。それぞれこれが、というものを用意してくる。そこに出てみないかって話だ。あぁ、勿論、ピッシュブルゲに遊びに来るだけでもいいぞ。折角のケーキ祭だしな、店を出す連中も間を見て買い物に行ってみても面白いと思うぞ」
「……つまり、フォルテは店を出す方っていうことだね」
 暫く、話を聞いていた庭園の守護者・ハシュエル(a90154)の言葉にフォルテは一つ笑って見せた。多趣味を通りこしている気がすると呟くハシュエルは、さして戦力にはならないだろう。頭の中で幾つかのケーキを考えながら、フォルテは集まった冒険者達を見た。
「俺は店を出す方の予定だ。お前さんらはどうだ? ピッシュブルゲで店を出すか、それともケーキを買いに行くか。どっちにしても、楽しいと思うぞ」
 趣味の料理が不思議な方に発展していると、呟くエルフを背に霊査士は酷く楽しげな表情でそう聞いた。

マスターからのコメントを見る

参加者
NPC:紫煙の霊査士・フォルテ(a90172)



<リプレイ>

●ピッシュブルゲ
 辿り着いたそれぞれのテントで準備を始める。
「栗好きの名に懸けて味、見た目共に完璧なモンブランを作り上げて見せましょう!」
 フォーナモンブラン。それが、シーズが今回考えたとっておきのケーキだった。ヴァインはそんな彼の姿に思わず笑みを零していた。
「しかしシーズの栗ケーキにかけるあの情熱……カワイイとこあんじゃん?」
 ケーキ奉公は彼に任せるとして、ヴァインの仕事は売り子だ。オルガは裏方に。オウリとセルトも売り子をやる。
「皆様と何かご一緒できるなんて……! 感激ですわ……嬉しいですわ〜」
 オウリの横、セルトは笑みを見せた。ひらひらのエプロンが風に揺れ、ちょっとずつだが聞こえてくる客の声に心も躍る。参加の皆さんに、甘いもので日々の疲れを取って、心の中笑顔いっぱいで帰って欲しい。
 勿論、自分もいっぱい楽しむ。
 ぐ、と拳を握ったセルトの目の端で、ラフィキがノソリンになったまま幟をくくりつけられる。美味しそうなモンブランケーキの描かれた幟が背に括り付けられた。ハナメ、ラセン、ユーリースはまだ外にいる。つまり客役になるのだ。黙々と作業を進めるシーズを筆頭に1日ケーキ屋さんの準備が進められた。
 準備は至る所で行われていた。籠いっぱいにいれた道具を手にチェリートはお菓子づくしの状況にふとあの人を思い出した。
「お菓子といえば、マカシェリさんも来たらいいのにね?」
 心労の天秤は紫煙の霊査士・フォルテ(a90172)の方に傾きそうだ。それが弱点だろうか。気を取り直し、用意を始めたチェリートはフォルテの隣に店を構えた。
緑の王冠かぶった苺はケーキにのせる果物の王様それともお姫様〜♪」
 じゃーん! とチェリートはケーキののった皿をフォルテに差しだして見せた。
「こんなの作ってみたです」
 プリンを中心に苺と桃色スポンジで花のように飾られたメルヘンなケーキ。うまそうだな、とフォルテは笑みを見せた。きっとプリンにも拘りがあるんだろう? と笑う声にミシェルがフワリンから降りた。せめてもの心の支えに、と連れてきたその子を返し、挨拶をする。
「お手伝いに来ました、ミシェルです。今日はよろしくお願いします」
「あぁ、こっちこそよろしくな。っと……シンク、だったよな」
「はい」
 穏やかさと共にやってきた2人にフォルテはまずは感謝を述べた。
 薄い青のアーチの前、町長の娘が祭りの開始を告げた。


「ねぇ、ママ、あのお店も見てみたい!」
 ユズは試食用にいくつかケーキを小皿にわけた。ビター・キッシュトルテ。今回作ったのは、砂糖を控えめにチェリーブランデーやキスリュワッサーをふんだんに使ったものだ。周りに散らすチョコレートもビターなものを使った。隣には、スズネの店がある。彼女のケーキは、ルロ・フルーツ。スポンジの上に生クリームを塗り、スライスイチゴ、マンゴー、みかんを並べたケーキルロ・フルーツ。上からココナッツとシュガーパウダーが泡雪のようにおり、頂上にはマロングラッセ。
「おいしそう……」
 吐息にも似た言葉にスズネは微笑んだ。
「このケーキははまえからしてフォーナに合うからな」
 呟きは彼女に届いたのか、アイレンはふと顔を上げた。黒いローブの合間から見えたのは感じた気配の通りに2人の少女。白い雪を思わせるケーキを見て、ぱたぱたとやってくる。その姿を目の端に、フォルテは小皿を用意した。真っ白な皿にとん、とのっただけのケーキにシンクが口を開く。飾り付けや盛りつけはもっぱらシンクの仕事だ。手際よく皿に盛りつけミシェルに渡す。手を添えて受けとったその人を視線で見送り、ミシェルはほう、と息をついた。慌てないように自分に言い聞かせ、また一人やってきた客を見る。試食用の小皿にはビターチョコレートにお酒を効かせたロールケーキ。添えられた木苺の酸っぱい香りがミシェルの鼻先をかする。少しくらい残らないかなー。そう、思うのは不謹慎だろうか。
「2人ともこっちに飲み物おいておくから間見て喉を潤せよ」
 鼻先をかすめていったのは蜂蜜レモンの香り。まかないだろうか。冒険者さん達の店を重点的に覗くアキナがゆっくりと笑みを刻めば、それは見付けた印。珍しいケーキにアキナは笑みを浮かべ地面を蹴った。ガルスタは見付けたその店へと足を向けた。
「ミヤクサさん」
 覚えのある声に顔を上げたミヤクサは笑みを浮かべた。こんにちわとそう言えば、見渡したガルスタが何かに気が付いたような顔をする。ミヤクサはそっと口を開いた。
「今日は動物用のパウンドケーキなんです」
 食べられない事は無いが、甘さが足りないだろう。この子も一緒にフォーナ感謝祭を祝うことができる。と微笑む客を見ながら、ガルスタはミヤクサに小さくエールを送り、次の店を目指した。


 どっかにでかけるのは久々ー。
 青く澄み渡った空にリーフィアは眩しそうに目を細めた。翳した手はすぐに下ろされ、黒の瞳が巡らされる。最近はタルトがまいぶーむなのですよ。心の中、小さく告げた事実はケーキ祭の賑やかさに消されていく。しかもーー見えない。昼も過ぎれば店先に集まった客達の山で、つい、と背伸びしてもリーフィアの目にはどの店にどんなケーキがあるかは分からなかった。とはいえ、人混みをかき分けるのも重労働だ。そんなリーフィアの横でローランドは意識してフルーツタルトを売っている店を探していた。
 ーーあれかな。
 見付けた店にあたりをつけて、人混みをじっと見ているリーフィアに手を出す。
「……やっぱ一緒にいると楽しいから、ありがと」
 戸惑いか、それとも何か考えてか。ゆっくりと乗せられた手をぎゅ、と握りかえして見付けた店へと歩き出す。歩幅だけは変わらないようにリーフィアの前に立って。握りかえされた手にローランドの尻尾がご機嫌に揺れた。目指すはフルーツタルトのお店。

 甘い匂いに誘われるようにソウセイは足を止めた。微かに音をたてたのはシルバービーズと空色のガラスビーズをあわせたシンプルなブレスレッド。これは、手作りの品だ。渡された日の事を思いだしながら、ソウセイはほう、と息をつく。ピッシュブルゲの祭の話を聞いた時、「これだ!」と思ったのだ。こんな素敵なものを頂いたのだから、此処でケーキを買ってプレゼントにしたらどうか、と。ーーだが。
「無情だ……」
 持ち合わせが余りなかった。小さく息をつき、ソウセイは酒場で見かけた霊査士を思い出す。確か、店員を探していると言っていたはずだ。こうなったら、1日働いて報酬の代わりにケーキを分けてもらおう。するするりと人混みを抜けていくその姿を目の端に、ラフィキは「なぁ〜ん」と声を上げた。なになに? と聞こえてくるのは子供達の声。小さく頭を上げれば、ぱたぱたと駆け寄ってくるその姿を見ることができた。
「いらっしゃいませ〜! 美味しい美味しい、モンブランはいかがですか〜? ですの♪ これを食べたなら……! もう他のモンブランは食べられない……! という一品ですの〜」
「そこまで言うってのは気になるねぇ」
 手を打ったのはフィドルを手にした芸人だった。広場には、旅芸人の姿もある。賑やかさは人々の声だけではないのだ。
「あぁ、キニーネさん喉渇いてませんか?」
 コンサティーナを手にキニーネは顔を上げた。差し出されたカップは、職人の小さな息子から。ありがとう。とキニーネはカップを受けとった。此処からだと冒険者の店はすぐ近くになる。親子の店の前で演奏を始めたのは、それも理由にあった。
 再び聞こえだした音楽は広場から少し離れた場所で休憩をしていたベアリクスの耳にも届いていた。
「ケーキって不思議ね……人に笑顔を運んでくれるのね……」
 ―フォーナの祝福が、ありますように―
 穏やかに微笑み、ベアリクスはそっと祈った。買い物に付き合ってくれたフォルテが小さく頷くのを目の端にだけとらえながら。

 ノリスは見付けたケーキをじっと見た。客寄せ用に作られたのだろう。大きめなケーキの上には真っ白な砂糖が飾られている。
「これは日持ちするか?」
「そりゃぁ、しますが……。これは展示用のもので、食べるにはお勧めできませんよ」
 渋い顔をする店員にノリスは小さく首を振った。探していたのだ。あの地、エルヴォークにも持ち込むことができるようなケーキを。これを買いたい、という客と渋い顔をする店主の会話を耳にサラは人混みに足を止めた。探していたケーキは小さな箱に。木の実をふんだんに使ったブッシュ・ド・ノエルを潰さないようにサラはリュシスと人混みをすり抜けた。じっとこちらを見ていた少女にシンクはそっと膝を折った。
「内緒だよ」
 クッキーを手に握らせれば、驚きを見せた少年が勢いよく頷く。その子を見送ってシンクは賑やかになってきた祭を眺めた。雪こそ降らないが、少し寒くなってきた気もする。ちらり、とシンクは気にするようにクルワを見た。アーモンドパウダー入りのチョコレートスポンジにアプリコットジャムを塗り、グラズールをかけたクルワのザッハトルテは相変わらずの人気だ。
「ありがとうございます」
 シンクに取り出してもらった箱にクルワはケーキを入れた。幸せそうに笑った女性を見送り、さて、とクルワは小分けにしたザッハトルテを箱に詰めた。暇をみて、スズネの所へこれを持って顔を出すつもりだ。
 ザッハトルテを探して回っていたラジシャンはゆっくりと広場を見渡した。一つ二つ、あたりはつけた。中には酒場で見かけた姿もあるから冒険者なのだろう。試食のケーキを口に放り込み、指先についたパウダーを軽く払う。心の中で、店を出している皆を応援しながら。

●たった一つの
「いろんなケーキがいっぱいで匂いだけで幸せ空間ですねー♪」
 色とりどり、種類も豊富なケーキは甘い香りで広場を飾る。ふらりとソアは足を向けた。甘い、香りがする。これはーープリンだ。
「そこのおにーさん、ぷりんらぶって顔してるです!」
 王様ぷりんすぺしゃるDXを持って商売中のチェリートにソアは駆け寄った。
「えと、オレもお一ついただいてもいいでしょうか?」
 ピッシュブルゲの一角で始まったプリン布教を目の端に、キルはマシュマロをフワリンの形に整えた。ケーキに乗せればフワリンが沢山。ノソリンが心のオアシスである彼にとっては夢の楽園だ。
「やってみるかい?」
「い、いいの?」
 そっと、まるで壊さないように受けとった少女に作り方を教えれば目に入ったのは覚えのある服。
「お、美味そうだな……ベリーか」
 四種のベリーを見る霊査士の姿はクロウハットの目にも映る。「うまいけぇきあります」という幟だけをおいた彼の店だが、「ブラック・スタープラチナ」と名付けられたケーキに集まる客は多い。甘いよりは、どこかお酒の効いた大人なものを見ている。とストラタムは傍らのハシュエルを見た。
「ハシュエルさん、私とケーキを食べにいきませんか?」
 思えば唐突でもあった誘いに赤い瞳は微かな驚きを見せただけで笑みに変わった。あまり親しいわけでも無い仲だったが今はこうして2人して出店を見ては悩む。あれにこれに、と買って帰るわけにもいかない。
「んー……どう、ストラタムさんはいいの見つかった?」
 私は、と少し悩んだ後に口を開けばゆっくりと夕陽が射し込んできているのが分かった。
 ふ、と浮かべた笑みはそのまま硬くなりへたり、と尻尾が垂れた。人数分、何とか。とユーリースは呟く。差し入れはできるが、持ち合わせは一気に減りそうだ。
「わぁ、美味しそうなケーキ! なんて名前なんですか?」
 声を上げた少女ーーハナメにヴァインは笑みを見せた。アイコンタクトを交わし、本来応えるはずだったシーズを肩で示す。
「……」
 そこには売られていく我が子(モンブラン)を涙を飲んで何時までも見つめているシーズの姿があった。何が、悪いわけでもない。ただ一つ悪かったというのならば売るのが惜しい程の出来となったモンブランくらいだろう。売ってしまうくらいなら、全て自分で買いたいですが。と零すシーズの呟きは製作を手伝っているオルガの耳にも届いている。笑うでもなく、少しばかりわけてもらった材料でフォーナモンブランの抹茶版を作り上げた。
「……うん、これでどう? 並べてもなかなかの見栄えだと思うの」
 曖昧さを含んだシーズの頷きは予想通り。仕方ないですよね……、とまだ何処か諦めきれずにモンブランを見ている彼はラセンの目にも映っていた。
「こっからココまで全部下さい!」
 が、それとこれとはまた別の話で。一度言ってみたかった台詞にユーリースの横、ラセンはぐぅっと拳を握りしめていた。確認するセルト声はカフェテーブルを確保したデューンの耳にも届いている。試食用のケーキを一通り並べ、紅茶で口直ししながら味を見る。甘さの強いものは得意ではない。少し考えるようにケーキを見た瞳が、見知った姿を捉えた。
「ハシュエルもリュシスも口直しに紅茶を飲まないか?」
 良い香りね、とリュシス口直しには充分過ぎる紅茶を見た。ハシュエルは少し驚いた後に、いいケーキが見つかるといいねと笑みを見せた。
 ふんわりとしたスフレに粉砂糖の雪化粧。ティアラを模ったホワイトチョコがのったケーキは甘い空気を誘う。
「ふふっ、この冠に指輪を添えてプレゼントってェのも素敵だろォ?」
 笑みを浮かべたマユミは指輪、と繰り返した青年を見送る。恋人と初めて過ごすというのだから微笑ましい気分になる。
「フォルテは妾のケーキ買わずとも自分で作れちゃうよねェ。好きな男性から手作りケーキ貰った日にャ、さらに惚れちまうよねェ」
「そうか?」
 静かに笑んで振り返ったフォルテにマユミは試食用のケーキを渡した。そうして思う。
恋人達の為にケーキを作るのも楽しいが、いつか愛する人只一人だけの為にケーキを作ってみたい、と。食べ終わったフォルテは口元に笑みをのせた。
「うまいな。お前さんがたった一人の為に作ることがあったら、惚れなおすだろうな。ご馳走さん」
 
 夕刻を迎えてもピッシュブルゲは賑わっている。やっと辿り着いたフォルテの店で、シスは試食のケーキを味わっていた。
「美味しい」
「ありがとさん」
「うん」
 本当は手伝いをしようかと思ったけれど、手伝ってくれる子もいるから、その分褒めて貢献しようと思った。甘い香りのしてくるフォルテにシスはにこ、と微笑んだ。売り込みの口上が響く、音楽が鳴る。
「ソコの美人のオネーサン、一個どーっスか? ウチの美形パティシエが拘り抜いたこのケーキ、ちょっとそこらじゃ食えねェ味だぜー?」
 ヴァインの声が一際大きく響いた。ピッシュブルゲのケーキ祭は夕陽が落ちるその時まで、続けられるのだった。


マスター:秋月諒 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:34人
作成日:2007/01/05
得票数:ほのぼの22 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。